未来の地球と辺境の星から 趣味のコスプレのせいで帝のお妃候補になりました。初めての恋でどうしたら良いのか分かりません!

西野歌夏

文字の大きさ
26 / 107
1. 標的の選別 時は数億年先の地球

第15話 敵か味方か(沙織)

しおりを挟む
「叫ぶと命はない。」

 氷のように冷たい声で、牡丹がそう言うのが私の耳に聞こえる。
 男たちの全身から悪意あくいを感じて、私はゾワリとした底知そこしれぬ恐怖きょうふを感じてふるえが止まらなくなる。

 その間も恐車きょうしゃはどこかへ走りつづけている。

「いいわ。」
 無言の男たちに牡丹がそう言うのが聞こえる。
「こんな何の取りもない者が帝のお妃候補なんて、ふざけすぎているわ。」
 牡丹がそうはっきり言うのが聞こえて、私は悲しくて泣きたくなった。

 私は何とかしなければとあせった。どうしようもなく涙が出てくる。相手は忍びの中でも強烈きょうれつな力を持った相手で、私と五右衛門さんのような奉行所勤ぶぎょうしょづとめがかなう相手ではない。

 しばらくして恐車は走りつづけているのに、扉がひらく音がして、男たちの気配けはい|が消えた。外に飛びだしたのか?


 私は五右衛門さんに念じつづける。
「何とかせねば!」

 みじろぎせずに密かに自分の両手をしばっているなわに集中する。脱出方法を考えなければ。
 
 けれども、驚くことが起きた。

 男たちの気配けはいが消えてしばらくすると、足元で固く結ばれた布をしばる紐がかれたのだ。牡丹からする柔らかい香りが私の鼻をかすめる。

 袋が取られて手足をしばっていた紐がスルスルとかれる。

 貴和豪牡丹きわごうぼたん素早すばやく私の耳元に口を近づける。

「いい?トラビコンよ。あなた持っているでしょう?」
 袋が取られて、急に明るくなった視界しかいに目を細める私に、グッと貴和豪牡丹は顔を近づけて言った。

 牡丹の漆黒の髪は、さらに乱れていた。かなりの速さで私たちの拘束こうそくを解いたからであろう。

 あまりのことに目を見張る私と五右衛門さんは、お互いに顔を見合わせる。

「トラビコン。早く!」

 それだけ言うと、金茶色きんちゃいろ振袖姿ふりそですがたの貴和豪牡丹はあっと言う間に外に飛びだした。

 私も慌てて続いて飛びだそうとすると、恐車を引いていたはずのレエリナサウナが一匹だけになってしまったのに気づいてはっとする。男たちと牡丹はそれに乗って逃げたと気づいた。

 私はそこから早かった。
 忍び服のたもとから、ゲームで手に入れたトラビコンの粉を取りだし、五右衛門さんのしたにすりつけ、自分の舌にすりつける。

「飲みこんで!」
 私が五右衛門さんにそう言った瞬間、猛烈もうれつなスピードで走っていた恐車は傾き、橋から真っさかさまに落下した。

 ゆっくりと、周囲の世界がかたむいて落ちていくのが分かる。

 私と五右衛門さんはお互いの顔を見あわせると互いに同時に叫んだ。
「飛び降りましょう!」
「飛び降りるんだ!」


 私と五右衛門さんは真っさかさまに川に飛びこんだ。車のはしを足でって勢いつけて外に飛びだし、数回転し、そのまま川に飛びこんだ。

 奉行所勤めの忍びでも、寺子屋時代から鍛えられた俊敏しゅんびんさはそこなわれていない。

 川の水は冷たかった。

 あの高さから落ちたならば、本当に袋詰ふくろづめにされたままならば、簡単には浮かびあがることはできないであろう。

 私と五右衛門さんは身振りで合図をして水中に身をひそめた。

 トラビコンの粉のおかげで水中でエラ呼吸できる。
 
 命がねらわれるとは、このことか。

 私は水中で目をあけて、様子をうかがいながら帝の言葉を思い出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...