未来の地球と辺境の星から 趣味のコスプレのせいで帝のお妃候補になりました。初めての恋でどうしたら良いのか分かりません!

西野歌夏

文字の大きさ
71 / 107
3. 時間に広がるさざなみ(辺境の星からの刺客)

第56話 フランスの古い伯爵家に関する噂

しおりを挟む
 ー時は西暦2018年ー

 ルボワが食料品店で買い物をしていると、しわがら声で知らない老人に話しかけられた。
「あんた、伯爵家はくしゃくけで働いとる人だろ?」

「ボンジュール。ええ、私は伯爵家はくしゃくけで働いています。何か?」
 ルボワはじゅくしたアボガドを選びながら、にこやかに答えた。香をいでみる。良さそうだ。アボガドの皮の柔らかさを慎重に確かめる。

 今日は、パン屋でパンを買ってきてくれと頼まれていたのだ。この後は急いでパン屋に行かなければならない。ジュスタンが自分でパンを焼かないのは珍しいことだった。

「あんた、あいつはドラキュラじゃないかといううわさは本当かね?」
 老人は、声をひそめてルボワに聞いてきた。老人はかなり歳を取っているように見えた。七十代後半か?

「え?なんでですか?ジュスタンのことなら、彼はドラキュラなんかじゃありませんよ。」
 ルボワは、クスッと笑いながらも驚いてそう答えた。

「私は七十八歳だ。私が子供の頃から、あいつは二十歳ぐらいに見えた。今もそうじゃろ?」
 老人は声をひそめてルボワにささやいた。

「え?そんなこと。」
 ルボワは首をった。
「きっと、彼のおじいさんか誰かと間違えてらっしゃるのでは?」
 ルボワは笑いながら言った。

「あんた、この村の者じゃないじゃろ?」
 老人は食い下がった。
「むかしっから、あの伯爵家はくしゃくけにはドラキュラがいるという噂があったんじゃ。わしが子供の頃からだよ。お嬢さん。」
 老人の顔は真剣だった。ルボワは老人の顔を二度見した。真剣な顔をしている。

「メルシー。気をつけるわ。」
 ルボワはそう言って、アボガドを選ぶと食料品店の買い物カゴに入れた。

 ルボワはジュスタンに渡されているスマートフォンを使って、レジで支払いを済ませた。クレジットカードも、スマ-トフォンもジュスタンに渡されている。伯爵家はくしゃくけで使用する品々の買い物は全てそれで済ませるように言われていた。

 食料品店から出たルボワは、自転車のカゴに食料品を載せると、村のパン屋まで向かって自転車をこぎ始めた。

 村の大通りのはずれにある伯爵家はくしゃくけとは、真逆の方向にあるパン屋に向かって。
 通りの木々が緑になり、まもなく初夏を迎えようとしていた。気持ちの良い風が吹き、古くからあるという教会のかねが鳴り響いていた。

 確かに、ルボワはこの村の出身ではない。五年前に求人広告を見てやって来たのだ。住み込みではないが、村に使用人用の家を用意してくれているし、給料が格段かくだんに良かったのだ。

 ただ、今日は、老人がジュスタンはずっと二十歳ぐらいに見えると言われたことが、引っ掛かった。自分も最近、同じようなことを思ったのではなかったのか?

 ルボワは馬鹿らしいと首を振った。
 そんなはずはない。ドラキュラなんてこの2018年に?馬鹿らしい。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝🌹グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 そう名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  ✴️設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 ✴️稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

処理中です...