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1 あなた裏切ったわね
破廉恥な姉 アリス・ブレンジャーSide(2)
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「今日の新聞に昨日のミラコッタ競馬場での騒ぎのことが乗っているわよ」
「アルベルト王太子様はフローラ嬢に会いにきたとお話しなさったという記事でしょう?」
「アルベルト王太子様は、フローラ嬢とデートしていたのね。羨ましいわ」
「その後、フローラ嬢の婚約者であるオズボーン公爵の嫡男は、メイドと浮気をしていてそれがばれたわ」
「昨夕のオズボーン公爵の嫡男の騒ぎの時、ガトバン伯爵も騒ぎを目撃して婚約破棄を言い渡したらしいわ」
「待って?待って?」
「アルベルト王太子様は最初からフローラ嬢を愛してらしたの?」
「きゃーっ!」
貴族令嬢たちは興奮したように噂話に興じている。この種の会話は止まらないものだ。
――何がきゃーっだ……。
私の心の平穏をかき乱すような噂話はやめてほしい。
といっても、私の耳はダンボのように令嬢たちの話を聞きいっていたのだが。
私が興味津々で聞き入っているのを察したメイドのレイチェルが私の耳元で囁いた。
「アリス様、ご興味がおありでしたら、みなさんとご一緒にお話に興じられたら……」
「興味なんかないわ」
私はメイドのレイチェルの言葉をすかさず遮って、にっこりと微笑んだ。
私はフローラ嬢がアルベルト王太子に心惹かれるとは思えない。彼女は誠実なレディだ。
「フローラ・ガトバン伯爵令嬢が、昨夕の騒動でアルベルト王太子に抱き抱えられて王宮に運ばれたとしても、彼女がアルベルト王太子になびくとは思いませんわよ」
私は輝くような笑顔で噂話に興じているレディたちに一言言うと、自分の部屋に引き上げた。
――わたくしは、浮気をする輩を断じて許しませんわ。姉がしたことも許しません。フローラ嬢もわたくしと同じ気持ちのはずよ。
私はメイドのレイチェルに聞いた。
「そういえば、お姉さまは今はどこかしら?」
「さあ、先週、お戻りになったと執事のデービットから聞きましたが」
――アルベルト様がフローラ嬢に近づいたと聞いて、お姉さまが大人しくしていられるかしら?
――エミリーお姉さまがまたアルベルト王太子の婚約者候補の邪魔をしようとするならば、私は今度は止めて見せるわ。
――フローラ嬢がアルベルト王太子になびくとは思えないけれど、世間と同じでお姉さまもフローラ嬢がアルベルト王太子と婚約するのではないかと思うはずよ。
――ブレンジャー子爵家は王立魔術博物館の館長を務めあげ、「魔力」供給を監督しているのよ。立派な職位だわ。エミリーお姉さまの行動は家名を傷つけているわ。
「レイチェル、エミリーお姉様の居場所を執事のデービットから聞き出してくれるかしら?」
「アリスお嬢様、わかりました。でも、アルベルト王太子様の久し振りの恋のお相手のお話は、皆様の嫉妬もあるとは思いますが、社交シーズンの幕開け時にはヤキモキさせられるお話ですわね……」
「だから……さっきもあの世間知らずの娘たちに言ったけれど、フローラ嬢はアルベルト王太子になびかないわ」
私はキッパリとメイドのレイチェルに言った。
――かけてもいいわ。フローラ嬢はアルベルト王太子に心惹かれないはずよ。わたくしと同じで、見た目に惑わされずにこの世で一番まともな男性を探し求めるスキームを持っている人だから。
なぜそこまでフローラ嬢と自分が同士だと思い込むのか分からない。
同じデビュタントとして、多くのドレス製作のために仕立て屋に通わされた時に言葉を交わしたが。
私はフローラ・ガトバン伯爵令嬢は、一際違うと思っていた。
フローラ嬢とは射撃場で一緒になったこともある。
つまり、趣味が同じだからそう思うのか分からないが、とにかくアルベルト王太子とフローラ嬢で盛り上がる状況が私は気に食わなかったのだ。
――さあて、エミリーお姉様?悪いことを企んでないわよね?今度は許さないわよ……。
――スケベで破廉恥なお姉さまが何かしでかそうとしても、妹のこの私が止めて見せるわ。
姉のスパイ活動を行うと決めた私は、午後からのドレスの試着の時間を確かめようと手帳を開いた。テールのイーストエンドにある、一流どころのドレス仕立て屋での試着時間は午後2時だ。この季節の月曜日の午後は、デビュタントは授業を免除される。
ブレンジャー家の執事のデーヴィッドから、姉のエミリーが魔力供給の仕組みを学びに父の務める王立魔術博物館に連日詰めかけているとの情報がもたらされたのは、辣腕を誇る仕立て屋で採寸中のことだった。
馴染みのドレスメーカーの前で、私は「はぁ?」と呆れた声を上げた。
――魔力供給の仕組みをお姉さまが調べるですって!?
――怪しすぎるわ……。
大流行りの宮廷用女性小物店を訪ねる予定をキャンセルして、父の職場である王立魔術博物館を訪ねようと私は決めた。
――スケベで破廉恥な姉が、ど真面目な王立魔術博物館にいるなんておかしすぎるのよ。必ず姉の企みを暴いて今度は止めてみせるわ……。
「アルベルト王太子様はフローラ嬢に会いにきたとお話しなさったという記事でしょう?」
「アルベルト王太子様は、フローラ嬢とデートしていたのね。羨ましいわ」
「その後、フローラ嬢の婚約者であるオズボーン公爵の嫡男は、メイドと浮気をしていてそれがばれたわ」
「昨夕のオズボーン公爵の嫡男の騒ぎの時、ガトバン伯爵も騒ぎを目撃して婚約破棄を言い渡したらしいわ」
「待って?待って?」
「アルベルト王太子様は最初からフローラ嬢を愛してらしたの?」
「きゃーっ!」
貴族令嬢たちは興奮したように噂話に興じている。この種の会話は止まらないものだ。
――何がきゃーっだ……。
私の心の平穏をかき乱すような噂話はやめてほしい。
といっても、私の耳はダンボのように令嬢たちの話を聞きいっていたのだが。
私が興味津々で聞き入っているのを察したメイドのレイチェルが私の耳元で囁いた。
「アリス様、ご興味がおありでしたら、みなさんとご一緒にお話に興じられたら……」
「興味なんかないわ」
私はメイドのレイチェルの言葉をすかさず遮って、にっこりと微笑んだ。
私はフローラ嬢がアルベルト王太子に心惹かれるとは思えない。彼女は誠実なレディだ。
「フローラ・ガトバン伯爵令嬢が、昨夕の騒動でアルベルト王太子に抱き抱えられて王宮に運ばれたとしても、彼女がアルベルト王太子になびくとは思いませんわよ」
私は輝くような笑顔で噂話に興じているレディたちに一言言うと、自分の部屋に引き上げた。
――わたくしは、浮気をする輩を断じて許しませんわ。姉がしたことも許しません。フローラ嬢もわたくしと同じ気持ちのはずよ。
私はメイドのレイチェルに聞いた。
「そういえば、お姉さまは今はどこかしら?」
「さあ、先週、お戻りになったと執事のデービットから聞きましたが」
――アルベルト様がフローラ嬢に近づいたと聞いて、お姉さまが大人しくしていられるかしら?
――エミリーお姉さまがまたアルベルト王太子の婚約者候補の邪魔をしようとするならば、私は今度は止めて見せるわ。
――フローラ嬢がアルベルト王太子になびくとは思えないけれど、世間と同じでお姉さまもフローラ嬢がアルベルト王太子と婚約するのではないかと思うはずよ。
――ブレンジャー子爵家は王立魔術博物館の館長を務めあげ、「魔力」供給を監督しているのよ。立派な職位だわ。エミリーお姉さまの行動は家名を傷つけているわ。
「レイチェル、エミリーお姉様の居場所を執事のデービットから聞き出してくれるかしら?」
「アリスお嬢様、わかりました。でも、アルベルト王太子様の久し振りの恋のお相手のお話は、皆様の嫉妬もあるとは思いますが、社交シーズンの幕開け時にはヤキモキさせられるお話ですわね……」
「だから……さっきもあの世間知らずの娘たちに言ったけれど、フローラ嬢はアルベルト王太子になびかないわ」
私はキッパリとメイドのレイチェルに言った。
――かけてもいいわ。フローラ嬢はアルベルト王太子に心惹かれないはずよ。わたくしと同じで、見た目に惑わされずにこの世で一番まともな男性を探し求めるスキームを持っている人だから。
なぜそこまでフローラ嬢と自分が同士だと思い込むのか分からない。
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私はフローラ・ガトバン伯爵令嬢は、一際違うと思っていた。
フローラ嬢とは射撃場で一緒になったこともある。
つまり、趣味が同じだからそう思うのか分からないが、とにかくアルベルト王太子とフローラ嬢で盛り上がる状況が私は気に食わなかったのだ。
――さあて、エミリーお姉様?悪いことを企んでないわよね?今度は許さないわよ……。
――スケベで破廉恥なお姉さまが何かしでかそうとしても、妹のこの私が止めて見せるわ。
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――魔力供給の仕組みをお姉さまが調べるですって!?
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