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第一章
ベラトリスの星座と罠
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地図上でベラトリスの星座があると思われる場所には、小屋があった。このあたりの建物とは違う建築様式で建てられたようだ。ロマネスク建築の修道院とは明らかに違った。
畑の農機具を入れる小屋にしては、随分と華やかだ。ただ、扉の中には最近普及している鉄製の農機具があるだけで、シャベルやつるはしが整然としまわれていた。中はなんの変哲もない農具をしまう小屋にしか見えない。修道女たちが日常的に畑仕事をする時に使っているようだった。
小屋の周りを歩き回っておかしな部分が無いことを確かめて、私たちは小屋の入り口で足を止めた。
小屋の周りには何もない。
正しくは畑だったけれども、冬は枯れる植物を植えているのか、今は何も植えられていないようだ。たまたま春耕地で、秋に収穫して次の春の種蒔きの時期まで寝かせる畑か、もしくは今年は休耕地なのかもしれない。
少なくとも何年も放っておかれた畑ではなく、修道女たちによって定期的に耕したり作物が植えらる事が繰り返されている畑のようだ。
「畑の中に宝石を埋めるのは得策ではないわ。鉄製の耕運機を使ったり、シャベルやつるはしで繰り返し耕すことを繰り返す土地は、宝石の隠し先に適さないわね。となると、やっぱりこの小屋の中だわ」
私の言葉にケネス王子がうなずいて小屋の壁を確かめながら考え込んでいた。
「そうだろうね。ここだけ建築様式が違う。修道院を建てた人たちと、この小屋を建てた人たちは文化圏が違うようだ」
「頻繁に日常的にたくさんの人が出入りしている場所にあるなんて、今までで初めてだ。修道女の方たちは1年中毎日のようにこの小屋に誰かしら出入りしているのだろうから。こんなにハーブや畑があれば、毎日この小屋には人が来るだろう」
ラファエルも首を傾げて考え込んだ。
「『毒消し草!』」
レティシアが突然叫んだ。
「これはトラップがあるかもしれないわ。日常的に使う場所には今まで宝石の隠し場所は選ばれていなかったわ。さっき、修道院長は皇后様は別の名前で『毒消し草』を呼んだとさっきおっしゃっていたわよね」
レティシアの言葉に私もハッとした。
「そうだわ。『毒消し草』は防御の意味で使えるわ。何か毒を摂取してしまった後に使う場合もある。もしくは、敵を罠に嵌めるために毒を塗った場所に、味方だけは最初から『毒消し草』を服用して近づけば、目的のものを無事に取り出せるわ。秘密の隠し場所が、日常的に皆が近づける場所にあるのは、そう言う意味なのかもしれないわ」
私は考え込みながら話した。
――少なくとも後から毒消しする場合、薬が体内に回り切るまでは、数時間もの間は毒に苦しまなければならないわ。でも、もしも、最初から薬を服用することで、毒に苦しまずに過ごせるものがあったとしたら?
「そうだとすると、暗号が『毒消し草』だった意味がはっきりするな」
ケネス王子とラファエルとレティシアはうなずいた。
「戻ろう。修道院長に『毒消し草』を僕らも飲ませてもらおう」
私たちは、地図を頼りに歩いてきた道を戻り始めた。
「『蘇る土』もきっと意味があるのよ。ここで私たちはそれを使わなければならない局面があるはずだわ。国内屈指のヴィッターガッハ伯爵家の葡萄畑の下に地下通路があって、そこに第3の宝石と『蘇る土』が刻まれた石があった。秘密の地下通路の中には、ヴィッターガッハ伯爵家の畑の土壌とは違う土がそこにあった……」
私は声に出して考えながら歩いていた。
「あ、ワインだ。あの畑で採れた葡萄で作ったワインも、もしかすると関係しているかもしれないぞ」
ラファエルがワインと言うと、その言葉にニヤッと笑ったのはケネス王子だった。
「ワインなら任せてくれ。今朝、フリードリヒからヴィッターガッハ伯爵家の最高級ワインをお土産にもらったんだよ。眠り薬が入っていない、正真正銘の最高級ワインだ」
「おぉ、君がいてくれて本当にありがたいよ」
ファラエルはケネス王子の肩を抱いた。
「とんでもない。こんなスリリングでわくわくする旅は僕だって初めてだ。雪が降る前にコンラート地方に着かなければならないし、『オリオン座が救う者を決める』という言葉は、大国ジークベインリードハルトの『次の皇帝』を決めるブロワ谷の伝説に出てくる言葉なんだろう?君が皇帝候補に明確に指定されていたのは、間違いないね」
ケネス王子は感慨深い様子で、彼の従兄弟であるラファエルの瞳をのぞき込んだ。ケネスの顔を見つめたラファエルは、分からないといった様子で首を振った。
「母は本当に亡くなったのだろうか。もしかしたら生きているかもしれない」
ラファエルはケネス王子と私たちにささやいた。
「なぜ?なぜそう思うの?」
「ただの願望なのかもしれないけれど。僕は母からこの修道院のことを聞いたことが一度もなかったんだ。それが不思議で仕方がない。この仕掛けをしたことに、おばあさまはからんでいるけれど、今のところ母はからんでいないように見える。母は、若い頃にどこで医薬と薬草学を学んだのか、僕に話すのが普通な気がするんだ。何かがおかしい」
ラファエルは真剣な表情だった。私たちの誰もが言葉を失った。ラファエルがどれほど嘆き悲しんだかを知っているために、彼のそう思いたい期待も理解できる。
「不可解なことは、早馬よ」
私はぽつんとつぶやいた。
「え?どういう意味?」
レティシアが私に聞いてきた。
「陛下に悲しい知らせが伝わった。ケネスさまが早馬を飛ばして私たちのところまでやってきた。それは特命の任務の者が絡んで初めて実現できるわ。修道院長がラファエルのお母様の死を早くも知っているのはなぜなのかしら?なぜそんなに早く修道院長に伝わるのかしら?宿泊する先で伝書鳩を二羽ずつラファエルは必ず陛下に向けて飛ばしていた。だから、ケネスさま、あなたが私たちの場所まで正確に辿りつけたのはわかるのよ。修道院長はなぜこの悲しい知らせを知っていたのかしら?」
私が畑に咲く花をぼんやり見つめながら言うと、ケネス王子がハッとした顔をした。
「そうか。ブロワの街のエーリヒ城へは、君たちが宝石を見つけた後に僕は辿り着いた。早馬を夜通し飛ばしたんだよ。君の父上から陛下に密かに知らせがあったからだ。修道院長がもう君の母上の死を知っているのは、確かに早すぎる。おかしいな」
レティシアも私たちの顔を見つめてささやいた。
「敵か味方かのどちらかよ。この暗殺騒ぎに無関係だとしたら、既に叔母様の死を一介の修道院長が知っているのは不自然だわね」
私たちはレティシアの言葉に顔を見合わせた。4人とも薬草畑の途中で完全に立ち止まった。
「この陰謀に深く関わっていないと、このスピードで知ることはないだろう」
「そうだな。ただ、敵だとしても、彼女は宝石の隠し場所は知らないはずだ。なぜなら、エーリヒ城の紙を持ってこないとオリオン座のベラクリスの場所はわからなかったはずだから。僕らが初めて知ったはずだ。皇后様の手紙はどこに預けられたのか、それぞれの預けられた人たちは知らなかった」
私たちはうなずいた。騎士たちと私の侍女、それにレティシアの侍女と彼女が連れてきた騎士の3名は、修道院の中で休憩してもらっていた。
「誰かに修道院長の様子を見張ってもらわないとならないわね」
「そうだな」
私たちは顔を見合わせて、小さくうなずきあった。そして、何事もなかったように修道院の中に戻ったのだ。
修道院の暖炉に薪がくべられている広い部屋で、騎士と侍女たちは待機していた。レティシアが連れてきた騎士は、ジークベインリードハルトからやってきた騎士だ。彼女が幼い頃ラファエルの許嫁だった頃から仕えていた騎士が2人いた。ラファエルの騎士の中には、ジークベインリードハルトからわざわざやってきて陛下の騎士になってラファエルに仕えている騎士が何人もいて、ラファエルが陛下に預けられる前からレティシアの騎士と互いに知り合いだった者たちだった。そういうわけで、旧知の中の者が互いの仲間にいると言うことで、すっかり意気投合しあっていた。私の目から見ても、皆が一致団結しているように見えた。
ラファエルは小さな声で彼らを隅に呼び、修道院長のことを見張るように指示を出した。騎士たちは素早くうなずき、部屋から出て行った。
私たちは騎士たちが窓の外やドアに待機するのを見て、修道院長の部屋をノックした。
「どうぞ」
穏やかな声がして中に入った私たちは、息を呑んだ。
「母上!」
「おばさま!?」
ラファエルとレティシアが叫ぶのはほぼ同時だった。陛下によく似た女性が暖炉の前に立っていて、私たちが部屋に入るとゆっくりと振り向いたのだった。
畑の農機具を入れる小屋にしては、随分と華やかだ。ただ、扉の中には最近普及している鉄製の農機具があるだけで、シャベルやつるはしが整然としまわれていた。中はなんの変哲もない農具をしまう小屋にしか見えない。修道女たちが日常的に畑仕事をする時に使っているようだった。
小屋の周りを歩き回っておかしな部分が無いことを確かめて、私たちは小屋の入り口で足を止めた。
小屋の周りには何もない。
正しくは畑だったけれども、冬は枯れる植物を植えているのか、今は何も植えられていないようだ。たまたま春耕地で、秋に収穫して次の春の種蒔きの時期まで寝かせる畑か、もしくは今年は休耕地なのかもしれない。
少なくとも何年も放っておかれた畑ではなく、修道女たちによって定期的に耕したり作物が植えらる事が繰り返されている畑のようだ。
「畑の中に宝石を埋めるのは得策ではないわ。鉄製の耕運機を使ったり、シャベルやつるはしで繰り返し耕すことを繰り返す土地は、宝石の隠し先に適さないわね。となると、やっぱりこの小屋の中だわ」
私の言葉にケネス王子がうなずいて小屋の壁を確かめながら考え込んでいた。
「そうだろうね。ここだけ建築様式が違う。修道院を建てた人たちと、この小屋を建てた人たちは文化圏が違うようだ」
「頻繁に日常的にたくさんの人が出入りしている場所にあるなんて、今までで初めてだ。修道女の方たちは1年中毎日のようにこの小屋に誰かしら出入りしているのだろうから。こんなにハーブや畑があれば、毎日この小屋には人が来るだろう」
ラファエルも首を傾げて考え込んだ。
「『毒消し草!』」
レティシアが突然叫んだ。
「これはトラップがあるかもしれないわ。日常的に使う場所には今まで宝石の隠し場所は選ばれていなかったわ。さっき、修道院長は皇后様は別の名前で『毒消し草』を呼んだとさっきおっしゃっていたわよね」
レティシアの言葉に私もハッとした。
「そうだわ。『毒消し草』は防御の意味で使えるわ。何か毒を摂取してしまった後に使う場合もある。もしくは、敵を罠に嵌めるために毒を塗った場所に、味方だけは最初から『毒消し草』を服用して近づけば、目的のものを無事に取り出せるわ。秘密の隠し場所が、日常的に皆が近づける場所にあるのは、そう言う意味なのかもしれないわ」
私は考え込みながら話した。
――少なくとも後から毒消しする場合、薬が体内に回り切るまでは、数時間もの間は毒に苦しまなければならないわ。でも、もしも、最初から薬を服用することで、毒に苦しまずに過ごせるものがあったとしたら?
「そうだとすると、暗号が『毒消し草』だった意味がはっきりするな」
ケネス王子とラファエルとレティシアはうなずいた。
「戻ろう。修道院長に『毒消し草』を僕らも飲ませてもらおう」
私たちは、地図を頼りに歩いてきた道を戻り始めた。
「『蘇る土』もきっと意味があるのよ。ここで私たちはそれを使わなければならない局面があるはずだわ。国内屈指のヴィッターガッハ伯爵家の葡萄畑の下に地下通路があって、そこに第3の宝石と『蘇る土』が刻まれた石があった。秘密の地下通路の中には、ヴィッターガッハ伯爵家の畑の土壌とは違う土がそこにあった……」
私は声に出して考えながら歩いていた。
「あ、ワインだ。あの畑で採れた葡萄で作ったワインも、もしかすると関係しているかもしれないぞ」
ラファエルがワインと言うと、その言葉にニヤッと笑ったのはケネス王子だった。
「ワインなら任せてくれ。今朝、フリードリヒからヴィッターガッハ伯爵家の最高級ワインをお土産にもらったんだよ。眠り薬が入っていない、正真正銘の最高級ワインだ」
「おぉ、君がいてくれて本当にありがたいよ」
ファラエルはケネス王子の肩を抱いた。
「とんでもない。こんなスリリングでわくわくする旅は僕だって初めてだ。雪が降る前にコンラート地方に着かなければならないし、『オリオン座が救う者を決める』という言葉は、大国ジークベインリードハルトの『次の皇帝』を決めるブロワ谷の伝説に出てくる言葉なんだろう?君が皇帝候補に明確に指定されていたのは、間違いないね」
ケネス王子は感慨深い様子で、彼の従兄弟であるラファエルの瞳をのぞき込んだ。ケネスの顔を見つめたラファエルは、分からないといった様子で首を振った。
「母は本当に亡くなったのだろうか。もしかしたら生きているかもしれない」
ラファエルはケネス王子と私たちにささやいた。
「なぜ?なぜそう思うの?」
「ただの願望なのかもしれないけれど。僕は母からこの修道院のことを聞いたことが一度もなかったんだ。それが不思議で仕方がない。この仕掛けをしたことに、おばあさまはからんでいるけれど、今のところ母はからんでいないように見える。母は、若い頃にどこで医薬と薬草学を学んだのか、僕に話すのが普通な気がするんだ。何かがおかしい」
ラファエルは真剣な表情だった。私たちの誰もが言葉を失った。ラファエルがどれほど嘆き悲しんだかを知っているために、彼のそう思いたい期待も理解できる。
「不可解なことは、早馬よ」
私はぽつんとつぶやいた。
「え?どういう意味?」
レティシアが私に聞いてきた。
「陛下に悲しい知らせが伝わった。ケネスさまが早馬を飛ばして私たちのところまでやってきた。それは特命の任務の者が絡んで初めて実現できるわ。修道院長がラファエルのお母様の死を早くも知っているのはなぜなのかしら?なぜそんなに早く修道院長に伝わるのかしら?宿泊する先で伝書鳩を二羽ずつラファエルは必ず陛下に向けて飛ばしていた。だから、ケネスさま、あなたが私たちの場所まで正確に辿りつけたのはわかるのよ。修道院長はなぜこの悲しい知らせを知っていたのかしら?」
私が畑に咲く花をぼんやり見つめながら言うと、ケネス王子がハッとした顔をした。
「そうか。ブロワの街のエーリヒ城へは、君たちが宝石を見つけた後に僕は辿り着いた。早馬を夜通し飛ばしたんだよ。君の父上から陛下に密かに知らせがあったからだ。修道院長がもう君の母上の死を知っているのは、確かに早すぎる。おかしいな」
レティシアも私たちの顔を見つめてささやいた。
「敵か味方かのどちらかよ。この暗殺騒ぎに無関係だとしたら、既に叔母様の死を一介の修道院長が知っているのは不自然だわね」
私たちはレティシアの言葉に顔を見合わせた。4人とも薬草畑の途中で完全に立ち止まった。
「この陰謀に深く関わっていないと、このスピードで知ることはないだろう」
「そうだな。ただ、敵だとしても、彼女は宝石の隠し場所は知らないはずだ。なぜなら、エーリヒ城の紙を持ってこないとオリオン座のベラクリスの場所はわからなかったはずだから。僕らが初めて知ったはずだ。皇后様の手紙はどこに預けられたのか、それぞれの預けられた人たちは知らなかった」
私たちはうなずいた。騎士たちと私の侍女、それにレティシアの侍女と彼女が連れてきた騎士の3名は、修道院の中で休憩してもらっていた。
「誰かに修道院長の様子を見張ってもらわないとならないわね」
「そうだな」
私たちは顔を見合わせて、小さくうなずきあった。そして、何事もなかったように修道院の中に戻ったのだ。
修道院の暖炉に薪がくべられている広い部屋で、騎士と侍女たちは待機していた。レティシアが連れてきた騎士は、ジークベインリードハルトからやってきた騎士だ。彼女が幼い頃ラファエルの許嫁だった頃から仕えていた騎士が2人いた。ラファエルの騎士の中には、ジークベインリードハルトからわざわざやってきて陛下の騎士になってラファエルに仕えている騎士が何人もいて、ラファエルが陛下に預けられる前からレティシアの騎士と互いに知り合いだった者たちだった。そういうわけで、旧知の中の者が互いの仲間にいると言うことで、すっかり意気投合しあっていた。私の目から見ても、皆が一致団結しているように見えた。
ラファエルは小さな声で彼らを隅に呼び、修道院長のことを見張るように指示を出した。騎士たちは素早くうなずき、部屋から出て行った。
私たちは騎士たちが窓の外やドアに待機するのを見て、修道院長の部屋をノックした。
「どうぞ」
穏やかな声がして中に入った私たちは、息を呑んだ。
「母上!」
「おばさま!?」
ラファエルとレティシアが叫ぶのはほぼ同時だった。陛下によく似た女性が暖炉の前に立っていて、私たちが部屋に入るとゆっくりと振り向いたのだった。
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