【完結】人前で話せない陰キャな僕がVtuberを始めた結果、クラスにいる国民的美少女のアイドルにガチ恋されてた件

中島健一

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第11話 働く理由

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~音咲華多莉視点~

 部屋に忘れたスマートフォンを手にした私はその画面に指を意味もなく走らせる。

 現在、加賀美の運転する車の中だ。

 予定より30分も遅れての出発だ。その為、いつもより車の走る速度が速かった。窓の外の景色はあっという間に置き去りにされ、私はそれをただ眺めていた。

 ホテルでの出来事は支配人の白州しらすがおさめた。織原には仕事を続けるようにと伝え、私にはその織原の素性を説明する。

 ──…織原朔真がうちのホテルの清掃員だったなんて……しかも私の泊まっていた部屋を……

 今まさに現在進行形で散らかった客室を織原朔真が清掃しているところを想像した。

 ──いや、結局私の部屋は違うハウスキーパーさんが担当することになったんだけど……

 今日じゃなくても、過去に織原が私の部屋を清掃したことはきっとある筈だ。恥ずかしさが込み上げてくる。込み上がったそれを私は吐き出した。

「はぁ……」
 
 そして先程までやっていた支配人の白州しらすとのやりとりを私は思い出した。

◆ ◆ ◆ ◆

 私は恥ずかしさのあまり言ってしまった。

「織原朔真、彼を首にしてちょうだい!」

 ホテルの廊下で私は白州に言った。たぶん織原にもその声は聞こえていたと思う。

「それはできません。彼はとても勤勉で解雇する要素が見当たりません」

 織原朔真が私のお父さんの経営するホテルの清掃員であることはわかったが、私の気はまだおさまっていない。廊下に出て今度は新たな考えが頭に過った。織原朔真が私をストーカーする為にあのホテルで働いているのかもしれない。

「ア、アイツが私をストーキングするためにうちのホテルで働いているのかもしれないじゃない!?」

 支配人の白州はしばし間をとってから答えた。

「彼は……」

 少し言い淀んでからもう一度言葉を発する。

「彼には両親がいません」

「ぇ……」

 思ってもみない解答に私は再び思考停止になった。

「それにまだ中学生の妹さんがおります。彼は妹さんや自分の学費、自分達の生活費の為にも殆ど毎日働いておりました。お嬢様がこのホテルで寝泊まりをする前からの話です。もし今の仕事を解雇されたとなれば彼はまた職を探すこととなります。彼はコミュニケーションというものがなかなかとれません。それには──」

 私は淡々とした口調で説明する支配人の話を遮るようにして、声を漏らした。

「そう…だったの……」

 支配人は私の声に反応を示す。

「彼とはどういった関係なのですか?」

「クラスの同級生……」

 私が変態呼ばわりしていた織原朔真の人生を私は想像した。だけど想像できるはずがなかった。私には両親がいる。 

「わかりました。確かに異性にして同じクラスメイトが自分の泊まった部屋を清掃するとなると、抵抗がございますよね?彼には別の階の清掃を担当してもらいます」

 私はわかったと返事をした。

「ストーカー疑惑が解消されたことは私から彼に伝えておきますね」

 支配人の言葉に私は反論する。

「…ぃえ、私から彼に伝えるわ……」 

 それだけは自分でしなければならない。私はそう思った。

◆ ◆ ◆ ◆

「はぁ……」

 私はもう一度溜め息を漏らし、織原朔真のことについて思考を巡らせていた。

 彼に助けられ、胸を触られてビンタをした。私の汚部屋を見られて、恥ずかしい勘違いを起こした。そしてさっき、彼の家族構成を聞かされた。働く理由も知った。昨日初めて出会ったというのに、彼に多くのことを知られ、私も彼について知った。

 今度学校で会う時は、助けてくれたお礼と勘違いしたことを謝らなければならない。

 私は手をスマホの画面からエドヴァルド様のロザリオへと移動させた。指で形を確かめる。

 この日の撮影は集中できないと思われたが、ホテルでの一件で探偵役のリハーサルのようなことが出来たため、監督にめちゃくちゃ褒められた。これもアイツのおかげなら、余計にお礼を言わなければならない。

 次、学校で会った時どんな顔をしていいのやら。あまり良い考えが浮かばない。そんな時はやっぱり、エドヴァルド様の配信を見るに限る。

 撮影を終え、ホテルの清掃が入った綺麗な部屋に戻り、部屋のWi-Fiに接続して、私はララへと人格を変えてエドヴァルド様の配信を待った。

 配信まであと少し、私は胸を踊らせて彼を待つ。
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