32 / 185
第32話 炎上商法
しおりを挟む
~織原朔真視点~
屋上で薙鬼流ひなみというVチューバーに不本意ながら身バレしてしまった。あの後すぐにチャイムが鳴ってしまい、僕はこれからどうしようかと悩みながら学校を終え、帰途につく。
『エド先輩!これから同じVチューバーとして宜しくお願いします♪また会いに行きますからね♡』
そう言って彼女は片目を瞑ってウインクをしていたのを思い出す。ウインクと同時に彼女のトレードマークであるウサギの耳のようなリボンカチューシャの一つが折れて一礼したように見えた。
『ブルーナイツ』からデビューした薙鬼流ひなみというVチューバーを僕はもう一度調べ直した。炎上直後にはトレンドにも入っていたのを覚えている。同じ界隈で活動している僕にとってはチェックすべき事柄であった。
SNSやまとめ動画からわかるように新学期と同時期に華々しくデビューを果たした薙鬼流ひなみだが、彼女はその前に僕と同じように個人勢Vチューバーとしてデビューしていた。それがバレてしまったようだ。所謂、前世バレだ。過去にただデビューしていただけならまだ良いのだが、彼女が個人Vチューバーを引退した理由に問題があった。
当時人気だったスマホアプリのゲーム実況配信で、ゲーム内に出てくるキャラクターやその設定を貶めるような発言をして炎上したのが彼女の前世の引退理由だったのだ。
人気ゲームの人気キャラクターを貶める発言は決して許されない。ましてや実況配信させて貰っている側が製作者さん達に恩を仇で返すような真似はしてはいけない。
しかし、情状酌量の余地はあると僕は思っている。彼女の問題となった前世の動画を見たが、同じVチューバーとしては彼女が一生懸命、面白おかしい発言をしようと努力していたのがわかるからだ。
配信を盛り上げようとして、しばしばいつもだったら言わないことをつい言ってしまう。神楽坂さん達とのコラボ配信の時、僕が音咲さんの話題に触れる発言をしてしまったように、それがよくないとわかっていてもついやってしまうものなのだ。
また、攻撃的な言葉が面白い時と、嫌悪感を抱かせる時、それを見極めて発言しないといけない。てっきりそれが政治家や芸能人達だけの問題だと思っていたが、僕のような弱小Vチューバーも、いやSNSを使う全ての人にとっても、とても近しい問題となってしまったようだ。
薙鬼流ひなみの前世の発言が再び問題視されると、それは瞬く間に広がった。『ブルーナイツ』は海外のリスナーも多いため、この炎上した内容が英語やら韓国語やらに翻訳されて世界中にしれ渡る。
〉過去の発言を蒸し返す奴多くて草
〉炎上する可能性を孕んでるってだけでかなりリスクあるだろ?
〉犯罪者は犯罪者のまま
〉他のブルメンに迷惑かけるのだけはやめろ
〉運営は何してんの?なんで調べないの?
〉どうせまた逃げるように引退する
勿論、過去に起きたことなので薙鬼流ひなみを擁護する者もいたが、僕の目の前にいた僕より1つ年下の女の子にとって多くの人から叩かれれば精神的にかなりキツイ筈だ。
──僕なんて攻撃的な言葉ではなく他人の哀れむような目で声が出なくなってしまったというのに……
しかし当の薙鬼流ひなみ、本名鶴見慶子は屋上で相対した時、そんな炎上をしているなんて微塵も感じられなかった。とても快活で元気だったのを覚えている。
──よくよく思い出してみれば、かなり可愛い女の子だったな……
しかし僕は、電車の中で痴漢されている彼女のことも知っていた。俯いて人生に悲観している表情を僕は覚えている。屋上にいた彼女とはまるで別人だった。
家に着きPCを起動させ、薙鬼流ひなみのチャンネルへと飛んだ。彼女のチャンネル登録者は52万人もいた。これは『ブルーナイツ』からデビューしたVチューバーで最も早くチャンネル登録者数50万人に到達したこととなる。
この驚異的な早さはやはり炎上したからだろう。炎上した分注目度が上がったのだと予測される。僕は炎上というまさに火遊びのような、ギャンブル商法に目移りしてしまった。一瞬でこれだけの登録者が増えるのかとゴクリと唾を飲み込む。
ふと時計を見ると、僕は慌てて彼女のチャンネルから田中カナタさんのチャンネルへと移動した。
これから田中カナタさんのチャンネルによって田中さん主催のアーペックス大会に出場するVチューバーやストリーマーが発表されるのだ。
そしてその参加メンバーがルーレットによりチームを組み分けられる。
僕は一体、誰と組むことになるのだろうか。
田中さんの配信画面にcoming soonの文字が脈打つように表示され始めた。それは僕の鼓動と同調し、期待と不安を募らせる。
──あ、そういえば昼休みから戻ってから音咲さんが何やら物凄い剣幕で僕を見ていたけれど、あれは一体なんだったんだろう……
薙鬼流からの身バレにより音咲さんから身バレしてしまうのではないかという懸念をこの時の僕は忘れていた。
屋上で薙鬼流ひなみというVチューバーに不本意ながら身バレしてしまった。あの後すぐにチャイムが鳴ってしまい、僕はこれからどうしようかと悩みながら学校を終え、帰途につく。
『エド先輩!これから同じVチューバーとして宜しくお願いします♪また会いに行きますからね♡』
そう言って彼女は片目を瞑ってウインクをしていたのを思い出す。ウインクと同時に彼女のトレードマークであるウサギの耳のようなリボンカチューシャの一つが折れて一礼したように見えた。
『ブルーナイツ』からデビューした薙鬼流ひなみというVチューバーを僕はもう一度調べ直した。炎上直後にはトレンドにも入っていたのを覚えている。同じ界隈で活動している僕にとってはチェックすべき事柄であった。
SNSやまとめ動画からわかるように新学期と同時期に華々しくデビューを果たした薙鬼流ひなみだが、彼女はその前に僕と同じように個人勢Vチューバーとしてデビューしていた。それがバレてしまったようだ。所謂、前世バレだ。過去にただデビューしていただけならまだ良いのだが、彼女が個人Vチューバーを引退した理由に問題があった。
当時人気だったスマホアプリのゲーム実況配信で、ゲーム内に出てくるキャラクターやその設定を貶めるような発言をして炎上したのが彼女の前世の引退理由だったのだ。
人気ゲームの人気キャラクターを貶める発言は決して許されない。ましてや実況配信させて貰っている側が製作者さん達に恩を仇で返すような真似はしてはいけない。
しかし、情状酌量の余地はあると僕は思っている。彼女の問題となった前世の動画を見たが、同じVチューバーとしては彼女が一生懸命、面白おかしい発言をしようと努力していたのがわかるからだ。
配信を盛り上げようとして、しばしばいつもだったら言わないことをつい言ってしまう。神楽坂さん達とのコラボ配信の時、僕が音咲さんの話題に触れる発言をしてしまったように、それがよくないとわかっていてもついやってしまうものなのだ。
また、攻撃的な言葉が面白い時と、嫌悪感を抱かせる時、それを見極めて発言しないといけない。てっきりそれが政治家や芸能人達だけの問題だと思っていたが、僕のような弱小Vチューバーも、いやSNSを使う全ての人にとっても、とても近しい問題となってしまったようだ。
薙鬼流ひなみの前世の発言が再び問題視されると、それは瞬く間に広がった。『ブルーナイツ』は海外のリスナーも多いため、この炎上した内容が英語やら韓国語やらに翻訳されて世界中にしれ渡る。
〉過去の発言を蒸し返す奴多くて草
〉炎上する可能性を孕んでるってだけでかなりリスクあるだろ?
〉犯罪者は犯罪者のまま
〉他のブルメンに迷惑かけるのだけはやめろ
〉運営は何してんの?なんで調べないの?
〉どうせまた逃げるように引退する
勿論、過去に起きたことなので薙鬼流ひなみを擁護する者もいたが、僕の目の前にいた僕より1つ年下の女の子にとって多くの人から叩かれれば精神的にかなりキツイ筈だ。
──僕なんて攻撃的な言葉ではなく他人の哀れむような目で声が出なくなってしまったというのに……
しかし当の薙鬼流ひなみ、本名鶴見慶子は屋上で相対した時、そんな炎上をしているなんて微塵も感じられなかった。とても快活で元気だったのを覚えている。
──よくよく思い出してみれば、かなり可愛い女の子だったな……
しかし僕は、電車の中で痴漢されている彼女のことも知っていた。俯いて人生に悲観している表情を僕は覚えている。屋上にいた彼女とはまるで別人だった。
家に着きPCを起動させ、薙鬼流ひなみのチャンネルへと飛んだ。彼女のチャンネル登録者は52万人もいた。これは『ブルーナイツ』からデビューしたVチューバーで最も早くチャンネル登録者数50万人に到達したこととなる。
この驚異的な早さはやはり炎上したからだろう。炎上した分注目度が上がったのだと予測される。僕は炎上というまさに火遊びのような、ギャンブル商法に目移りしてしまった。一瞬でこれだけの登録者が増えるのかとゴクリと唾を飲み込む。
ふと時計を見ると、僕は慌てて彼女のチャンネルから田中カナタさんのチャンネルへと移動した。
これから田中カナタさんのチャンネルによって田中さん主催のアーペックス大会に出場するVチューバーやストリーマーが発表されるのだ。
そしてその参加メンバーがルーレットによりチームを組み分けられる。
僕は一体、誰と組むことになるのだろうか。
田中さんの配信画面にcoming soonの文字が脈打つように表示され始めた。それは僕の鼓動と同調し、期待と不安を募らせる。
──あ、そういえば昼休みから戻ってから音咲さんが何やら物凄い剣幕で僕を見ていたけれど、あれは一体なんだったんだろう……
薙鬼流からの身バレにより音咲さんから身バレしてしまうのではないかという懸念をこの時の僕は忘れていた。
0
あなたにおすすめの小説
クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル
諏訪錦
青春
アルファポリスから書籍版が発売中です。皆様よろしくお願いいたします!
6月中旬予定で、『クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル』のタイトルで文庫化いたします。よろしくお願いいたします!
間久辺比佐志(まくべひさし)。自他共に認めるオタク。ひょんなことから不良たちに目をつけられた主人公は、オタクが高じて身に付いた絵のスキルを用いて、グラフィティライターとして不良界に関わりを持つようになる。
グラフィティとは、街中にスプレーインクなどで描かれた落書きのことを指し、不良文化の一つとしての認識が強いグラフィティに最初は戸惑いながらも、主人公はその魅力にとりつかれていく。
グラフィティを通じてアンダーグラウンドな世界に身を投じることになる主人公は、やがて夜の街の代名詞とまで言われる存在になっていく。主人公の身に、果たしてこの先なにが待ち構えているのだろうか。
書籍化に伴い設定をいくつか変更しております。
一例 チーム『スペクター』
↓
チーム『マサムネ』
※イラスト頂きました。夕凪様より。
http://15452.mitemin.net/i192768/
【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。
東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」
──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。
購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。
それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、
いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!?
否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。
気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。
ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ!
最後は笑って、ちょっと泣ける。
#誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
隣の席のクールな銀髪美少女、俺にだけデレるどころか未来の嫁だと宣言してきた
夏見ナイ
恋愛
平凡な高校生、相沢優斗。彼の隣の席は『氷の女王』と噂のクールな銀髪美少女、雪城冬花。住む世界が違うと思っていたが、ある日彼女から「私はあなたの未来の妻です」と衝撃の告白を受ける。
その日から、学校では鉄壁の彼女が、二人きりになると「未来では当然です」と腕を組み、手作り弁当で「あーん」を迫る超絶甘々なデレモードに!
戸惑いながらも、彼女の献身的なアプローチに心惹かれていく優斗。これは未来で結ばれる運命の二人が、最高の未来を掴むため、最高の恋をする糖度MAXの青春ラブコメディ。
俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた
夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。
数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。
トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。
俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。
昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件
マサタカ
青春
俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。
あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。
そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。
「久しぶりですね、兄さん」
義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。
ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。
「矯正します」
「それがなにか関係あります? 今のあなたと」
冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。
今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人?
ノベルアッププラスでも公開。
小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!
竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」
俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。
彼女の名前は下野ルカ。
幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。
俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。
だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている!
堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!
イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について
のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。
だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。
「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」
ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。
だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。
その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!?
仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、
「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」
「中の人、彼氏か?」
視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!?
しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して――
同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!?
「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」
代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる