【完結】人前で話せない陰キャな僕がVtuberを始めた結果、クラスにいる国民的美少女のアイドルにガチ恋されてた件

中島健一

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第67話 下剋上

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~視聴者視点~

『エドヴァルドのラチェットボウが炸裂ーーー!!!圧倒的不利な状況で東堂キリカを1v1で倒した後、エイリアン帯のバーチャルオットセイとラミア・ラミールをシロナガックスと共に撃破!!いやぁー凄いですね!!』

『あの1v1には痺れましたねぇ。チームも勢いに乗りますよ』

『え~早い段階で続々と順位が決まっていきます。おおっと次はメルトダウンでの戦況に動きがありそうだぁ!!彼等は実況を休ませる気がないのかぁ!!』

──────────────────────────────────────────────────

~織原朔真視点~

 ラストゲーム開始早々に接敵し、なんとか強敵を倒すことができた僕らは、ようやく落ち着いてアイテムを拾うことができた。

 しかし、予定していた最終安地予測に基づき優位なポジションを取るといった作戦が後手に回ってしまう。

 2v2をなんとか勝利で終えた後、薙鬼流とも合流し、既に炎が狭まりつつある中、それでも次の安地を割り出すため、探索ビーコンを使用した。

 最初のラウンド1では、マップの中心から南西にかけて安地が形作られた。僕らのいる南西の端、ホワイトツリーはギリギリ安地外だったが、中々に近い距離だ。

 そして探索ビーコンによって明らかとなったラウンド2での安地はラウンド1の安地の西南西よってに形作られる。

 交戦のせいで初動の遅れをとった僕らだが、安地には恵まれていた。運も味方してくれているようだ。

「てかこれ見てくださいよ」

 僕はシロナガックスさんに、持っているラチェットボウを見せながら言った。

『フフフ。練習の成果が出たようですね』

「はい、お陰さまで……」

 今日の昼間、シロナガックスさんこと一ノ瀬さんと一緒にアーチェリー場へ行ったことを思い出す。勿論、そこまで言うつもりはない。この配信も恐らく音咲さんが見ている筈だ。それにしてもこの弓のお陰で僕は一命を取り留めることができた。アーチェリー場での経験がなければあそこでの1v1に敗れていたかもしれない。そんな嘘のようで本当のような想いを抱いて僕は走った。

 僕らはシロナガックスさんの最終安地予測に従ってランドマーク『中継基地』を目指して歩みを進める。その途中、まるで宇宙に向かって飛び立とうとしているロケットのように見えるランドマーク『火力発電所』を左側にして通り抜けようとしたが、狙撃される。敵の狙撃ポイントはロケット部分、実際には廃棄筒と呼ばれる煙突の中腹。最初の降下でそこを獲るか、高所を取れるアビリティを持つキャラクターでないとそのポジションに着くことは困難だ。

 彼等のいるポジションはラウンド1のギリギリ安地内。彼等は恐らく、ラウンド2の安地を祈るようにして待っているのだろうが、残念なことにラウンド2でその彼らのいる強ポジ(強いポジション)は外れる。

 僕らは彼等の銃撃に付き合わず、銃弾を掻い潜り、そのまま『中継基地』へと向かった。既に残存チーム数は15。開始早々僕らと同じように潰し合いがあったようだが、しかし総合ランキング上位のチームを倒したのは僕らだけであった。激戦を挑んだのは主に下位にいたチームだ。下剋上を目指して激戦区へと敢えて降りたようだ。 

「やっぱり新界さんや積飛さん、あとはルブタンさんのチームとかをやらないと優勝は厳しそうですね」

 僕は言った。

『そうですね…でも仮にさっきの火力発電所にいたチームが新界さん達のチームだとしたらあそこで叩くべきだったかもしれません』

「あぁそっか……」

『そうなんですよ。でもリスクを負って新界さん達を倒しても10位を取ってしまったら優勝はできません。やっぱり避けられる交戦はなるべく避けた方がいいかもしれませんね。それにオープニングゲームのように序盤から中盤にかけてソロになってしまった場合も優勝は厳しそうです。戦闘せざるを得ない場合、誰かが生き残ってハイドするよりも全員生き残るか全滅するかに絞った方が優勝は狙えそうです。勿論、時と場合によって判断は変わりますけどね、そこがこのゲームの難しいところですよね……』

 僕はシロナガックスさんの言葉を考えた。

「……」

 今まで殆ど無言で付いてくる薙鬼流ひなみを見る。実際に彼女を見たのではなく、彼女の操るキャラクターを画面越しに見たのだ。

 おそらく彼女の配信のコメント欄には、セカンドゲームでの失態を批判する声が今尚上がっていることだろう。また、先程の2v2。負けていたら助けに遅れた彼女を非難する者達があとをたたなかったと思われる。想像するだけでも胸が痛んだ。

 ──Vチューバー辞めたりしないよな?

 ん?僕は疑問に思った。彼女が辞めたいと思えば辞めれば良いだけなのに。実際に炎上し、目も当てられないような言葉が彼女の眼前に並べ立てられている。Vチューバーを続けていれば、それはいつまでも終わらない。だったら辞めた方が彼女の精神衛生上、ためになるのではないか?

 そう思う僕だが、心のどこかで薙鬼流に辞めてほしくない自分がいた。

 ──さっきからなんなんだろう……

 セカンドゲームから、答えのようなモノが浮かんでは消えていく感覚。何故か薙鬼流にVチューバーを辞めてほしくない自分と、何かに挑戦している自分。その何故と何かには深い関係がありそうな気がしていたが、シロナガックスさんの言葉で我に返る。

『取られてますね…強ポジ……』

 目的地である『中継基地』に着いた僕らだが、その『中継基地』にある強いポジションが先回りされ、取られていた。『中継基地』の北西にある『ヴァーススライド』に続く道を見下ろすことのできる山の上であったり、『中継基地』全体を見渡せるクレーンの上は強ポジとしてしられている。直角三角形を形作るように3つの大きな山に囲まれたこの『中継基地』。最も長い辺を形作る山側は絶壁となり、その山を支えるようにして白い大きな建物がたてられている。また、直角を形作る2つの山の中腹に沿って線路が設置されている。これらがこのランドマークの主な特徴だ。『火力発電所』からやって来た僕らは直角三角形の角度の最も鋭角となった部分から『中継基地』に入った。奥には高い位置の強ポジであるクレーン、その更に奥には絶壁に寄り添うように作られた白い建物が見えた。なるほど、確かにクレーンの上には微かに動く黒い点、つまりは敵が見える。

「どうします?」

『とりあえずこのラウンド2の収縮が終わるまで様子見ですかね?それに後ろからさっきのワンパが火力発電所からこっちに来るかもしれないので……』

 そう言うとシロナガックスさんは、アビリティのスキャンを使って線路にある掘っ建て小屋のような倉庫に誰もいないことを確認してから僕と薙鬼流を先導して入室した。倉庫内は扉のついていない入口が2つあり、ガラスの嵌め込まれていない窓が両サイドにあるため、ここで立て籠るには少々心許ない気はする。

 僕らはそれぞれの方角に見張りを立てて、お互いの装備とアイテムの種類や個数を確認した。

 その時、マップ北東を監視していたシロナガックスさんが疑問を呈する。

『ん?移動してますね……』

『中継基地』中央、先程強ポジであると説明したクレーンの上にいた人影が移動していくのが見えたとシロナガックスさんは言った。ラウンド1では南西、ラウンド2では西南西と安地が形作られている。だとすればラウンド3の安地はラウンド2内の更に西南西に形作られる筈だ。クレーンの上はまさに理想的なポジションであるのだが、そこから離れていくチームがいるというのだ。

『もしかして──』

 シロナガックスさんが何かしらの結論に至ったその時、僕の見張っていた『中継基地』の南東。『火力発電所』から先程僕らに銃撃を仕掛けてきたチームがやって来た。

「こっちから来てます!たぶんさっきのチームです!」

 迎え撃つ気満々の僕だが、シロナガックスさんは何か思い詰めた様子で呟く。

『これは…まずいですね……』

「何んでですか?ここから撃てばあのチームは一網打尽にできますよ?」

 僕は反論するが、シロナガックスさんの危惧していたことは別にあった。

『もしかするとラウンド3の安地はこの中継基地ではないのかもしれま──』

 シロナガックスさんの言葉を銃声が遮る。
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