【完結】人前で話せない陰キャな僕がVtuberを始めた結果、クラスにいる国民的美少女のアイドルにガチ恋されてた件

中島健一

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第68話 賭けに出る

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積飛獏つみとばく視点~

『ちょっと獏さぁ~ん!!安地外れちゃったじゃないですかぁぁ~!!』

 チーム名、罪深き民の一員である島津葵しまづあおいが俺を糾弾する。先程『火力発電所』の強ポジにて待機していた俺達は祈るようにしてラウンド2の安地の行く末を見守っていた。

◆ ◆ ◆ ◆

 ラウンド1の収縮が終わるカウントダウンに合わせて俺達は叫んだ。

 3、2、1……

「こい!こい!こい!!」
『こい!!』
『きて……』

 見事に外れたのを見て俺達は意気消沈した。

◆ ◆ ◆ ◆

 チーム罪深き民を率いる俺、積飛獏は所謂ギャンブル系Vチューバーだ。右頬に傷痕をつけて、金以外信じていないような鋭い目付きがチャームポイントのキャラクターが俺だ。パチスロ配信に競馬配信、麻雀配信と老若男女の、特に若と女には受け入れがたい配信を主にしている個人Vチューバーだ。

 何故こんなアングラまっしぐらな配信をしているかというと、単純にそれらが好きだからである。 

 建前や名目、表面だけ取り繕ったかのような発言に写真、動画。そんなものがこの世の中にはいささか溢れ過ぎている。

 休日の朝に、お洒落な格好をして、お洒落なカフェでオリジナルにブレンドされたコーヒーを嗜みがら、これまたお洒落な本を読んでいる奴よりも、同じく休日の朝、開店前のパチ屋に並んでいる奴等の方が余程信用できる。

 欲望に忠実な奴等。芸能人であったり起業家や社長連中が最近、暴露系ユーチューバーによって明かされた飽くなき性欲を裏では満たしていることを知って俺は彼等のことを逆に好きになったくらいだ。

 このアーペックスの大会に出てる奴等も、殆どは名を挙げたいから、チャンネル登録者数を伸ばしたいからという理由が大半を占めるだろう。勿論、大会に出て多くの人と関わりたいだとか、アーペックスが単純に好きだからだとか、自分の成長を促したいとか色々とあるだろう。それらを俺は否定しない。しかしその延長線上にはチャンネル登録者数が伸びて、収入につながるといった道がある。

 それを意識していなくとも、ここに出場を決めた奴等、この大会に賭けた奴等を見ると全身の血がたぎる。自分と同類の奴等がここにはたくさんいる。ソイツ等としのぎを削るやり取りは心が踊るものだ。

『ねぇ獏さぁ~ん?外れましたよぉ~?』

 同じチームの島津葵しまづあおいとは知れた仲だ。ラバラブに所属する彼女だが、よく一緒に麻雀配信をする。

「るせぇ!たった1回外れたからって責めるなよ!!」

『だってぃぇ~、やっぱりギャンブルはしない方がいいんじゃ……』

「いやそのお陰でさっきは1位獲れたじゃねぇか!!ギャンブル辞めたけりゃお前、2度とガチャ配信するなよ!?」

『ぃや……それは……ガチャはギャンブルじゃないし……感謝みたいな?飲み物みたいな?お賽銭みたいな……おみくじみたいな?そう!おみくじだよ!!貴方は神社のおみくじをギャンブルだと糾弾するおつもりですかぁぁ!!』

 島津葵の目がかっぴらく。話が飛躍してはいるが俺は反論した。

「大吉のでる確率が0.02%で凶と大凶の出る確率が95%だったらたちの悪いギャンブル……というか新手の脅迫に近いかもな?」

『なぁんてこと言うんだ!!謝れよ!!全国の仏閣関係者とジンジャーに謝れぇぇ!!』

「なんで生姜にまで謝らなきゃなんねぇんだよ!?てかささっきの安地の確率は、トリステでいうところの星3が出る確率と同じくらいだぞ?」

『…あぁ、そりゃ外れるは……うん、じゃあ謝らなくてよし!!』

 実際には星2くらいの確率だったが、葵を納得させることに成功したのだからこの際なんでもよい。俺達は迫る炎の収縮と同じくらいの速度でラウンド2の安地へと向かった。

 その時、このチームで最もアーペックスの上手いVユニに所属するすめらぎくるみが言葉を発する。

『前の倉庫にいる』

 俺と葵はらぎさん(皇くるみのあだ名)の背後で足を止め『中継基地』を形作る山の1つの岩影に隠れた。

「どうする?炎も迫ってくるし、ここ安地外だろ?」

 俺の質問にらぎさんが答える。

『回り道する時間ないから、ここで突っ込む。けど2人は囮で本命は私のこれ』

 らぎさんはここまでの道中、輸送物質で手に入れたスナイパーライフル、当たれば大ダメージを与えることの出来る通称キャリバーをみせつけた。

『このキャリバーで2人を狙ってくる敵の頭飛ばす』

「物騒ですよ、物言いが……」

『飛ばして飛ばしてぇ!!』

 俺達は装備の最終確認をした。そして俺と葵は示しを合わせて、せーので前へ突進する。

「チェスト~~!!!」

『おらぁぁぁぁ!!!』

 銃弾の雨が飛んでくる。勿論こちらも負けじとトリガーを引いて弾をぶっぱなす。正直こっちの弾は当たっても当たらなくてもよい。突進してくる俺らに注意を引いてくれさえすればそれで良いのだ。途中スライディングをしながらであったり、カプセル型のアイテムボックスの裏に隠れたりと動きが単調にならないようにして前進したのだがしかし、相手は俺らの動きを読んでいるかのように弾を命中させてくる。

『あっ…あっ……あぁぁぁぁん♡』

 とてもじゃないがお茶の間では流せないような葵の喘ぎ声にも似た断末魔が俺の鼓膜を刺激する。やめろお前!と指摘したい俺だが、こちらも相応のダメージを負わされツッコム余裕がない。倉庫の窓からこちらを撃ってくる敵の2人はチラリと顔を覗かせたり隠れたりしながらこちらの弾に当たらないように動く。そんな動きなのにこちらには弾を当ててくるのはなんとも不思議な気がした。

『ちっ!当たんない!!』

 らぎさんも唸るような声をあげる。

 背後から炎が迫る中、葵がダウンし、前に俺、後ろにスナイパーライフルを構えるらぎさんがいる。葵がダウンしたことにより、葵を狙っていた敵は俺に照準を合わせて狙ってくる。お陰で着ていた防具が砕け散り、生身のライフにダメージを負う。

 俺は眼前にある、まだ開いていないカプセル型のアイテムボックスを開き、盾を形成させると同時に中に入っていた新しい青色防具に着替えた。

「よっしゃついてる!!」

 ギャンブルに勝利した俺は、更に回復アイテムを使って減ったライフの回復に努めようとしたがしかし、らぎさんの叫ぶような声が聞こえた。

『こっちに来てる!!』

 その叫びと同時にらぎさんは倉庫から飛び出してきた敵に向かって持っている武器をアサルトライフルに切り替えて引き金を引いた。

 俺も加勢したいが、回復中のゲージもあと少しで溜まる。ここで回復を中断すべきか、このまま回復をして万全の状態で戦いに挑むか迷ったその時、アイテムボックスを飛び越える敵の影が俺を覆った。

 この時俺は思った。

 ──この戦いに賭けなきゃ良かったな……

──────────────────────────────────────────────────

~視聴者視点~

『鮮やかに仕止めたぁぁぁ!!またしてもジャイアントキリング!!チームキアロスクーロがセカンドゲーム覇者の罪深き民を撃破!!』

『いやぁ~詰めるタイミングが正にあそこしかなかったですねぇ』

『回復に専念するか、心許ないライフで戦いに挑むか、この選択が勝敗を別けましたね』

『これで総合ランキング上位にいたバーチャル動物園に続いて罪深き民が優勝争いから離脱……ですか?』

『はい!キルポイントも大いに稼いだチームキアロスクーロが優勝候補に名乗りを挙げました!!』

 画面は神視点。既にラウンド2の収縮が終わったが、シロナガックスは敢えて炎の中に入り、ダメージを受けながらも先程倒した皇くるみのデスボックスを漁っている。

 そして、神視点の運営はマップを表示した。既に7割近くが炎によって埋め尽くされている。ラウンド2の安地を丸く囲う炎と次のラウンド3の安地が白く写し出されていた。

 これを見て実況の田中カナタが口を開く。

『しかしラウンド3の安地がここ中継基地ではなく、その北にあるヴァーススライド!!既にビーコンで探索を済ませたチームは優位なポジションをとって待ち構えている!!』

 神視点からその優位なポジションをとったとされるルブタンの一人称視点に切り替わった。『中継基地』から『ヴァーススライド』へ入る坑道の出口。小高い山の頂上からラウンド3の安地に入ろうとするプレイヤーに向けて集中放火を行っている映像が流された。

『うわぁ~、これ絶対笑いながら撃ってますよ?』

『めちゃくちゃ想像できますね』
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