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第122話 テキサスホールデム
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~織原朔真視点~
夏休みも終わりに近付いている。
昨日の歌枠はSNSのトレンドに乗ったくらいには話題となった。僕のように低いキーを歌う人はあまり注目されない。ましてや自分の歌でもないので、こういう歌声の人って最近じゃ珍しいよね、といった程度に盛り上った。
しかし洋楽を歌ったこともあって、海外の視聴者や海外勢のVチューバーから好意的なメッセージを受け取った。チャンネル登録者も昨日の配信で3000人程増えたので、初歌枠としては成功したと言えるだろう。
歌と歌の合間にララさんからのコメントがあったということは、音咲さんが昨日の歌配信を見てくれたということだ。僕が突発的に歌配信をしたのには彼女が関係している。
昨夜、彼女の弱さに直接触れた僕は、彼女の為に何かをしたいと思った。僕が配信をして間もない頃から彼女はずっと僕のことを支えてくれたのだから、今度は僕がその役を担いたい。それでも織原朔真として何かできるわけがなかった。エドヴァルドとしてじゃなきゃ音咲さんの為に何もしてあげられない。そんなもどかしさを抱きながら彼女の宿泊している部屋をあとにした。
そして歌を歌ったのだ。どうか僕の想いが伝わっていることを願う。
今は、来週に迫った積飛獏さん主催のポーカー大会の練習中だ。
大会といっても田中カナタさんのアーペックスの大会や一ノ瀬さんの出た大会と違って小規模である。全12人でAブロック6人とBブロック6人に分かれて、それぞれのブロックで勝ち上がった1人が最後1対1で勝負する形式だ。
小規模ではあるが、メンバーがかなり豪華でこの前ディスティニーシーで会ったカミカさんと伊角恋さんに、同じ事務所『ラバラブ』の榊さんに神楽坂さん、『ブルーナイツ』の新人、7期生である薙鬼流とパウラさん、同じくブルーナイツの2期生鷲見カンナさんと霧声麻未さん。『Vユニ』の東堂キリカさんに橘零夏さん。そして主催の積飛さんと司会でゲームには参加しない田中カナタさん。その中に僕みたいな個人勢Vチューバーが参加するとなると引け目を感じて仕方がない。
ルールは最近日本でもプレイヤーが急増中の『テキサス・ホールデム』だ。
初めに各プレイヤーはディーラーから2枚ずつ、カードをランダムに配られる。僕のプレイ画面に2枚のカードが渡された。
♥️のK
♠️のK
この2枚で勝負するか降りるかを決める。ポーカーはカード5枚で役を作るゲームだが、まず配られた2枚でそれを判断するのだ。
僕の配られたカードはKのペア、これはキングスとかキンポケとかって呼ばれている。この手はかなり強い。勝率で言えばこの時点で約80%の確率で勝てるとされている。
僕は掛け金を2倍に上げた。ちなみに掛け金を上げるなら2倍以上からでないといけない。
『レイズ』
掛け金を上げることを『レイズ』、前の人と同じ掛け金にすることを『コール』、勝負から降りることを『フォールド』という。こうして勝負する人達の掛け金が同じ額になった時、フロップといって場に3枚のカードがオープンされる。
♣️のK
♦️のA
♠️の3
この時点でも掛け金を上げることが可能だし、『チェック』といってパスすることにより、相手の出方を窺ったり、勝負する皆が『チェック』を選択するなら、場の4枚目ターンのカードを更なる掛け金なしで見ることもできる。
しかし僕の前のプレイヤーが『ベット』を選択して、掛け金を上げてきた。僕も場の3枚のカードの1つ、クローバーのKを使って、Kのスリーカードという強い役を作ることができる為、前のプレイヤーと同じ金額の『コール』を選択する。ここで掛け金を更に上げてしまうと僕の手が強いと悟られる恐れがあるため、勝負に降りてしまう人が増える可能性がある。なのでここは控え目に前の人と同じ額で『コール』した。僕よりも後ろのプレイヤーも『コール』を選択して、4枚目が捲られる。
♣️のJ
4枚目が明らかとなったことにより、またしても僕の前のプレイヤーが『ベット』を選択した為に、僕は『コール』を選択する。掛け金がつり上がったことにより、僕と初めに『ベット』を宣言したプレイヤー以外は皆『フォールド』を選択してしまった。僕ら2人だけの勝負となった。掛け金が同じになったことにより、5枚目リバーのカードが捲られる。
♦️の8
僕の前のプレイヤーはまたしても『ベット』を選択する。相手の持っている2枚がAのペア、エーシーズかストレートとなるQと10でなければ僕の勝ちだ。僕は相手の『ベット』された掛け金に『レイズ』を選択して2倍に吊り上げた。相手はそれに乗り『コール』を宣言する。
ここで初めて、お互いの持つ2枚のカードがオープンされ、場にある5枚のカードと自分の2枚のカードを使って最も強い役を作り、勝負することとなる。
相手の持つカードは
♥️のA
♥️の6
つまり場にある5枚を使って最も強い役を作るとしたらAのワンペアだ。Kのスリーカードを持つ僕の方が強い役なのでこの勝負は僕の勝利となる。
役の強さはポーカーと同じで、同じ役ならA、K、Q、J、10、9、と数字の高い順のカードで役を作った人の勝ち。
そしてこのテキサスホールデムの面白いルールとしては、ディーラーボタンなるものがある。このディーラーボタンは、ディーラーポジションのプレイヤーの目印として置かれる。このディーラーボタンを基準にして時計回り──左隣──に1回のゲームが終わるごとに回していく。ディーラーボタンの左隣にいる人をスモールブラインド、その更に左隣にいる人をビックブラインドと言って、彼等は最初にカードが配られる前に決まった掛け金をかけなくてはならない。そうすることによって、強い手札でないと永遠にゲームに参加しない者が出てくるからだ。どんな手札でも、その卓に座ったのならばスモールブラインド、ビックブラインドにいる人は強制的に参加費を払わなければならない。
先程僕の持っていた強い手札ならば良いのだがゲーム回数を重ねれば必ず弱い手札がやってくる。ゲームに参加しているだけで掛け金を必ずかけなければならないポジションにいずれなるのだから弱い手札でも勝負せざるを得ないときが必ず来るのだ。その時如何にして弱い手札を相手に強い手札だと勘違いさせることができるかが勝負の鍵である。
僕はこのゲームが好きだった。
──だって、僕の生き方そのものだから。
自分の手札が弱い時にわざと強気に『レイズ』を宣言したり、勝負に出たりする。
逆に強い手札なのに弱い振りをして相手の掛け金を吊り上げたり、相手がどんな手札の時にどういった賭け方をしているのかを観察したりして勝率を上げる。
〉エド強くね?
〉運が良い
〉かかったな
「弱い時こそ、強気でいくのがこのゲームと人生のコツだから」
〉名言っぽく言うなw
〉覚えておきます
〉グラウンドカートの時も同じこと言ってなかった?
後はこの大会に参加する人達のアーカイブを見てテキサス・ホールデムをどのようにプレイするのかを分析すれば勝てる筈だ。
僕は2時間程でこの配信を終えた。
ゲーミングチェアの背もたれに全体重をかけた後、両手を高く掲げて配信の疲れを伸ばした。
そして何気なく昨日の歌枠の視聴者を分析しようと思い再生回数を覗くと180万回再生を超えていた。
「え?」
今日の朝で3万回再生だったのだが、一体何が起きているのか僕が訝しむと次の瞬間、僕のスマホの通知が止まらなくなった。
この現象を僕は知っている。過去にシロナガックスさんとの一件で経験していた。つまり、僕の歌枠がバズったこと意味している。
夏休みも終わりに近付いている。
昨日の歌枠はSNSのトレンドに乗ったくらいには話題となった。僕のように低いキーを歌う人はあまり注目されない。ましてや自分の歌でもないので、こういう歌声の人って最近じゃ珍しいよね、といった程度に盛り上った。
しかし洋楽を歌ったこともあって、海外の視聴者や海外勢のVチューバーから好意的なメッセージを受け取った。チャンネル登録者も昨日の配信で3000人程増えたので、初歌枠としては成功したと言えるだろう。
歌と歌の合間にララさんからのコメントがあったということは、音咲さんが昨日の歌配信を見てくれたということだ。僕が突発的に歌配信をしたのには彼女が関係している。
昨夜、彼女の弱さに直接触れた僕は、彼女の為に何かをしたいと思った。僕が配信をして間もない頃から彼女はずっと僕のことを支えてくれたのだから、今度は僕がその役を担いたい。それでも織原朔真として何かできるわけがなかった。エドヴァルドとしてじゃなきゃ音咲さんの為に何もしてあげられない。そんなもどかしさを抱きながら彼女の宿泊している部屋をあとにした。
そして歌を歌ったのだ。どうか僕の想いが伝わっていることを願う。
今は、来週に迫った積飛獏さん主催のポーカー大会の練習中だ。
大会といっても田中カナタさんのアーペックスの大会や一ノ瀬さんの出た大会と違って小規模である。全12人でAブロック6人とBブロック6人に分かれて、それぞれのブロックで勝ち上がった1人が最後1対1で勝負する形式だ。
小規模ではあるが、メンバーがかなり豪華でこの前ディスティニーシーで会ったカミカさんと伊角恋さんに、同じ事務所『ラバラブ』の榊さんに神楽坂さん、『ブルーナイツ』の新人、7期生である薙鬼流とパウラさん、同じくブルーナイツの2期生鷲見カンナさんと霧声麻未さん。『Vユニ』の東堂キリカさんに橘零夏さん。そして主催の積飛さんと司会でゲームには参加しない田中カナタさん。その中に僕みたいな個人勢Vチューバーが参加するとなると引け目を感じて仕方がない。
ルールは最近日本でもプレイヤーが急増中の『テキサス・ホールデム』だ。
初めに各プレイヤーはディーラーから2枚ずつ、カードをランダムに配られる。僕のプレイ画面に2枚のカードが渡された。
♥️のK
♠️のK
この2枚で勝負するか降りるかを決める。ポーカーはカード5枚で役を作るゲームだが、まず配られた2枚でそれを判断するのだ。
僕の配られたカードはKのペア、これはキングスとかキンポケとかって呼ばれている。この手はかなり強い。勝率で言えばこの時点で約80%の確率で勝てるとされている。
僕は掛け金を2倍に上げた。ちなみに掛け金を上げるなら2倍以上からでないといけない。
『レイズ』
掛け金を上げることを『レイズ』、前の人と同じ掛け金にすることを『コール』、勝負から降りることを『フォールド』という。こうして勝負する人達の掛け金が同じ額になった時、フロップといって場に3枚のカードがオープンされる。
♣️のK
♦️のA
♠️の3
この時点でも掛け金を上げることが可能だし、『チェック』といってパスすることにより、相手の出方を窺ったり、勝負する皆が『チェック』を選択するなら、場の4枚目ターンのカードを更なる掛け金なしで見ることもできる。
しかし僕の前のプレイヤーが『ベット』を選択して、掛け金を上げてきた。僕も場の3枚のカードの1つ、クローバーのKを使って、Kのスリーカードという強い役を作ることができる為、前のプレイヤーと同じ金額の『コール』を選択する。ここで掛け金を更に上げてしまうと僕の手が強いと悟られる恐れがあるため、勝負に降りてしまう人が増える可能性がある。なのでここは控え目に前の人と同じ額で『コール』した。僕よりも後ろのプレイヤーも『コール』を選択して、4枚目が捲られる。
♣️のJ
4枚目が明らかとなったことにより、またしても僕の前のプレイヤーが『ベット』を選択した為に、僕は『コール』を選択する。掛け金がつり上がったことにより、僕と初めに『ベット』を宣言したプレイヤー以外は皆『フォールド』を選択してしまった。僕ら2人だけの勝負となった。掛け金が同じになったことにより、5枚目リバーのカードが捲られる。
♦️の8
僕の前のプレイヤーはまたしても『ベット』を選択する。相手の持っている2枚がAのペア、エーシーズかストレートとなるQと10でなければ僕の勝ちだ。僕は相手の『ベット』された掛け金に『レイズ』を選択して2倍に吊り上げた。相手はそれに乗り『コール』を宣言する。
ここで初めて、お互いの持つ2枚のカードがオープンされ、場にある5枚のカードと自分の2枚のカードを使って最も強い役を作り、勝負することとなる。
相手の持つカードは
♥️のA
♥️の6
つまり場にある5枚を使って最も強い役を作るとしたらAのワンペアだ。Kのスリーカードを持つ僕の方が強い役なのでこの勝負は僕の勝利となる。
役の強さはポーカーと同じで、同じ役ならA、K、Q、J、10、9、と数字の高い順のカードで役を作った人の勝ち。
そしてこのテキサスホールデムの面白いルールとしては、ディーラーボタンなるものがある。このディーラーボタンは、ディーラーポジションのプレイヤーの目印として置かれる。このディーラーボタンを基準にして時計回り──左隣──に1回のゲームが終わるごとに回していく。ディーラーボタンの左隣にいる人をスモールブラインド、その更に左隣にいる人をビックブラインドと言って、彼等は最初にカードが配られる前に決まった掛け金をかけなくてはならない。そうすることによって、強い手札でないと永遠にゲームに参加しない者が出てくるからだ。どんな手札でも、その卓に座ったのならばスモールブラインド、ビックブラインドにいる人は強制的に参加費を払わなければならない。
先程僕の持っていた強い手札ならば良いのだがゲーム回数を重ねれば必ず弱い手札がやってくる。ゲームに参加しているだけで掛け金を必ずかけなければならないポジションにいずれなるのだから弱い手札でも勝負せざるを得ないときが必ず来るのだ。その時如何にして弱い手札を相手に強い手札だと勘違いさせることができるかが勝負の鍵である。
僕はこのゲームが好きだった。
──だって、僕の生き方そのものだから。
自分の手札が弱い時にわざと強気に『レイズ』を宣言したり、勝負に出たりする。
逆に強い手札なのに弱い振りをして相手の掛け金を吊り上げたり、相手がどんな手札の時にどういった賭け方をしているのかを観察したりして勝率を上げる。
〉エド強くね?
〉運が良い
〉かかったな
「弱い時こそ、強気でいくのがこのゲームと人生のコツだから」
〉名言っぽく言うなw
〉覚えておきます
〉グラウンドカートの時も同じこと言ってなかった?
後はこの大会に参加する人達のアーカイブを見てテキサス・ホールデムをどのようにプレイするのかを分析すれば勝てる筈だ。
僕は2時間程でこの配信を終えた。
ゲーミングチェアの背もたれに全体重をかけた後、両手を高く掲げて配信の疲れを伸ばした。
そして何気なく昨日の歌枠の視聴者を分析しようと思い再生回数を覗くと180万回再生を超えていた。
「え?」
今日の朝で3万回再生だったのだが、一体何が起きているのか僕が訝しむと次の瞬間、僕のスマホの通知が止まらなくなった。
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