【完結】それ以上近づかないでください。

ぽぽ

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番外編(馨)遠距離2

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空港の到着ゲート前。凪は、不安と緊張を抱えながらその場に立っていた。

馨と再会するのは、3ヶ月ぶりだ。本当は、連絡のひとつでもあれば、それだけで安心できたのに。

そのとき、人の波の中からひときわ目を引く姿が見えた。白いTシャツとジーンズというシンプルな服装。それでも人目を惹くのは、彼の持つ空気が明らかに“特別”だったから。凪の心臓が跳ねた。

馨は周囲を見渡し、やがて列車改札の方へと歩き出す。凪は慌てて馨を追いかけ、足を早めた。


「待って!」


呼びかける声は届かない。彼はイヤホンをしていた。焦る気持ちを抑えきれず、凪は彼の前に回り込んだ。


「待ってよ」


ようやく馨が足を止めた。目を見開き、驚いたような表情を見せる。


「誰?」

「…え??」


凪は聞こえてきた馨の言葉に呆然としてしまう。


「だから、誰。」


その言葉はナイフのように鋭く、凪の胸に突き刺さった。


「…馨くん、ふざけてるの?」

「そこどいてもらっていい?」


彼は凪の肩を軽い力で押しのけると、無表情のまま通り過ぎていった。その一瞬が、まるで永遠のように凪には思えた。

涙がにじむ。声も出ない。全部、終わってしまったんだ。何もかも無かったことにされてしまったんだ。

膝が崩れ落ちそうになったその瞬間、ふいに肩に腕が回される。


「ねえ、一人?俺とどっか行かない?」


その声。聞き慣れた、茶化すようなトーン。まさかナンパのような行為をされると思わず、凪は固まってしまった。


「まあ、他のやつとどっか行くとか、許さないんだけど」


振り向くと、さっきまで冷たい態度を取っていたはずの馨が、今度は笑顔でそこにいた。


「…え?な、なんで…」

「泣きそうになってる。こんな可愛い子俺が置いて帰れるわけないでしょ」


馨は凪の頭をポンと撫でた後、腕を引いて空港のベンチへ凪を連れて行った。


「意地悪してごめんね。」


馨はそう言いながら、凪の額に軽くキスを落とす。いつもの馨と変わらない様子に凪の頭が混乱する。


「でもさ、なんでここにいんの?俺、帰国のこと言ってなかったよね?」

「…僕たち、もう別れるかと思って」

「は?」


馨が目を丸くした。


「だって最近、全然連絡くれなかったから…飽きられたのかと思って…」


凪は馨から顔を逸らすが、馨は凪の顎をそっと掴み、自分の方へ向ける。


「別れる??何言ってんの。やっと手に入れたのに。言っていいことと言っちゃいけないことあるの知ってる?」


凪の目からまた涙があふれる。馨はその涙を指先でそっと拭う。


「ごめんね、不安にさせたよね。でも俺、別れるなんて考えたこともない。凪のこと、毎日考えてた」

「じゃあなんで…最近返事遅かったりしたの…?」


こんなことを言ったら馨を束縛しているようで、負担に感じさせるかもしれない。だけど我慢できなかった。

凪が声を詰まらせると、馨は少しバツが悪そうに笑った。


「その…くだらない理由なんだけど、この前、凪と会ったとき、凪が『馨くんが何にもない日に急に帰ってきてくれたりしたらすごく嬉しいなあ』なんて言ってたじゃん。だからサプライズで会いに行って驚かせようかなって」


馨は気まずそうな顔を浮かべて頬をかいた。


「それで帰れるようにスケジュール調整してたら、寝る時間もあんま取れないほど忙しくなってさ…」

「だから、返事遅かったの?」

「うん。それと凪に会いたくて、凪とメールとか電話したら普通に帰国するとか言っちゃいそうだから、できるだけ連絡とるのは控えてたっていうのもある…」


凪はその言葉に小さくため息をついたあと、馨の胸元を軽くトンと叩いて、胸元に頭を押し当てた。すると、馨が凪の頭に手を回して優しく撫でた。


「ごめんね、凪」

「嫌だ」


凪がピシャリと言い切ると、馨の頭を撫でていた手を止めた。


「連絡来なかったから、迎えにきたら知らない人扱いされたもん」

「本当にごめん。凪、許してよ。めっちゃ反省してる。でも本当に一瞬誰かわからないくらいには綺麗になったよ凪は。俺のいない間に本当は綺麗にならないでほしいんだけど」


馨は凪の頭上で愛おしげに髪に口づけを落とした。


「あそこのケーキ買ってくれたらいいよ」


凪は空港にある有名なケーキ屋を指差した。その行動に、馨がふっと笑う。


「うん、いくらでも買ってあげる。あと、凪にはこれ」


馨はポケットからあるものを取り出すと、凪の首に巻きつけた。首元にはひんやりとした感覚が伝わる。


「これ、俺なりの牽制ね」


首元についたものを手に取ると、それはネックレスだった。馨はネックレスを着けた凪を見て、満足げな表情を浮かべる。


「牽制って?」

「うん、そのうちわかるから。とりあえずそれつけておいて」


馨は凪の頬や額に口づけを落とした。そして馨は耳元で囁く。


「凪、不安にさせることも多いかもしれないけど、これだけは忘れないで。俺が凪のこと愛してるってこと」

「…じゃあ、それ証明して」


凪は小さな声で呟き、馨の服を握った。馨は頬を緩ませて、凪の手を握る。


「うん、これから一生かけて証明させて」


馨は凪の頬に手を添えて、そっと口づけを交わした。
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