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番外編(馨)ラブなレター3
しおりを挟む「あ、そういえば」
スマホ越しに聞こえてきた凪の声は、少しだけためらいを含んでいた。
「どうした?」
「今日の試合の馨君も……すごく、よかった」
小さな声でそう呟く凪。頰が赤く染まり、視線を伏せている。聞き取れてはいたが馨がわざと問い返すと、ますます俯いてしまった。恥ずかしそうに言葉を濁すその仕草が、馨にはたまらなく愛しく思えた。
凪は、サブスクリプション契約をして試合配信をみていた。馨がそれに気づいたのはつい最近で、その日以来、契約料金は馨が払うようにしていた。そのため、凪はこの日の試合も生配信でしっかり目に焼き付けていた。
「馨くん、かっこよかった。すごく!」
今度は顔を上げ、力強くそう言葉を放つ。凪の瞳はまっすぐで、飾り気も嘘もない。
その瞬間、試合で蓄積していた疲労が、すっと消えていくのを馨は感じた。体の奥まで染み渡るようなその一言に心が緩み、同時に胸の鼓動が高鳴っていく。
「その言葉は、今度俺の目の前で聞かせて」
「え?」
驚いたように目を丸くする凪。その様子すら愛しくて仕方がない。
「でも……画面越しでこんなに癒されるんだ。直接言われたら、我慢できなくなるかも」
「が、我慢……?」
首をかしげる凪は、その意味を理解していないらしい。純粋な仕草が胸を締め付ける。触れられないもどかしさが募り、馨は無意識に指先でスマホの画面をなぞった。まるでそこにいる凪の頰を撫でるかのように。
「……凪は、ほんとかわいいね」
低く漏らした言葉に、凪は顔を真っ赤にして両手で塞いでしまった。
「恥ずかしいから……」
震える声が返ってきて、馨の心はさらに揺さぶられる。画面の向こうでしか触れられないことが、こんなにももどかしいなんて。
「馨君は……そろそろ寝ないとだよね? 明日も試合あるし……」
名残惜しそうに切り出した凪は、笑顔を浮かべているようで、その表情には寂しさが混じっていた。きっと凪の方が、会えない時間を強く堪えている。そう考えると馨の胸は痛む。
「凪……今回のシーズンの試合が終わったらすぐ帰れるように調整するから。待っててくれる?」
「……うん、待ってる」
小さな声で、精一杯の笑顔。それでも悲しみを隠しきれていないことはすぐにわかる。その姿を抱きしめたくてたまらないのに、今は画面越しでしか想いを届けられない。
「……凪」
名前を最後に呼ぶと、凪は何か言いかけてから、照れたように笑って首を振った。
そして、通話は切れる。
馨の部屋は一気に静けさに包まれる。ついさっきまで画面に映っていた凪の笑顔が消えてしまい、現実の寂しさが押し寄せる。
ベッドに寝転がり、凪の顔を思い出しながら目を閉じた。
そこから2週間後
凪はある出来事に直面していた。
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