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しおりを挟むいつもの場所、階段で座って2人は話していた。馨は凪の膝の上に投げ出されていた手を取り、柔らかい手を握ったり力を緩めたりと繰り返す。
付き合いたての頃にはなかったスキンシップが2人の間には生まれていた。
「凪、俺、先週の土曜日にあった試合に勝った」
「え!!そうなの!!すごい!」
凪は興奮でいつもは出ない、大きな声が出た。
「ありがと、これで全国大会までの道のりもちょっとは短くなった」
馨は少しだけ笑みを浮かべて、隣に座る凪へと視線を送った。
「…馨くんは本当にすごい人だね
僕みたいな人が付き合ってるなんて信じられない。
夢なんじゃないかって思うよ」
「…俺は凪と付き合えて嬉しいって思ってるけどね」
馨は一瞬の間をおいて答えた。
「そういえば凪、今日の放課後、俺の教室に来てくれない?」
「え?」
馨突然の誘いに、凪は目を丸くした。
「多分、凪は周りが気になるだろうから誰もいなくなってから来て」
「うん!わかった」
凪はどんな内容かわからないが、馨に誘われたこと自体が嬉しくて頷いた。
放課後
凪は鞄からラッピングを取り出し、馨の元へ向かおうとした。いつものお菓子のお裾分けだ。
教室を出ようとすると、背後からくすくすと笑い声が聞こえてきて、凪は思わず振り返った。
2人の女子生徒の視線は凪の方へと向いていた。凪はその視線に不快感を感じて足早に教室を出た。
「あれがあいつの作ったやつ?」
「気持ちわる~、馨くんかわいそう」
耳に入ってきた女子生徒たちの声に凪は悔しくて唇を噛み締めた。しかし、1つ疑問に思うことがあった。
"なぜ作ったお菓子を馨にあげていることを女子生徒たちが知っていたのか。"
凪はお菓子を持っていく際は、いつも人目につかない2人きりの時に渡していたはずだった。
凪もお菓子を持っていく時は何かしらの紙袋やポケットに入れて持っていったため、中身はあまり見えていなかったはず。
馨が部活の休憩中にお菓子を食べると言っていたため、その時に誰からもらったんだとか聞かれたのかもしれないと深くは考えないようにした。
馨の教室を覗き込むと、馨が窓辺の席に1人で座っていた。他クラスに入ることに抵抗がある凪は教室の扉の前に立って、馨が気づくのを待った。
しばらく外を眺めていた馨が凪の方を振り返った。
座っているなのに、人とは何か違う雰囲気を纏っていることがわかる。
「来てたなら声かけてくれてよかったんじゃない?」
馨は口元に笑みを浮かべつつ、凪の元に近づき、いつも通り頬を熱らせる凪の顔を覗き込んだ。
「ご、ごめんね!!早く部活いきたいもんねっ!!
時間取らせてごめんね」
「そういうことじゃないよ」
馨は凪の頭を軽く撫でた。
「あの、今日呼ばれた理由って…」
「ああ、それね」
馨は凪の目の前でポケットからあるものを取り出した。
「これ」
馨が凪に差し出したのはブレスレットだった。
凪は薫が差し出したブレスレットをすぐに受け取ることなく、じっと見つめる。
「えっとこれは馨くんのやつ?すごく素敵だね」
「違う、手貸して」
馨は凪の手首を掴むと、ブレスレットを凪の手首にはめた。
「これ、凪のやつ。
いつもブレスレットつけてるからそういうアクセサリー好きなのかなって」
馨がいつも手にはめているブレスレットを指差した。そのブレスレットは凪が亡くなった祖母と一緒に作り上げたブレスレットだ。小学生の時に作ったためデザインは少し子供らしさがあるが、凪はそれをいつもはめていた。
大好きだった祖母の形見のようにさえ感じていて、お守りのような意味合いでも使っている。
「あ、ありがとっ、本当に嬉しい…
人からこういう風に何かをもらうってことなかったから」
嬉しいという気持ちを伝えたいはずなのに、なぜか涙が込み上げてくる。突然、泣き出したら馨が困るはずだとなんとか堪えた。
「それに誕生日だったでしょ」
「え…」
まさか馨が自分の誕生日を覚えているとは思わず、凪は目を見開いた。
「覚えててくれたの…」
「いや、いつもいろんなものくれるからたまには俺からも何かあげたほうがいいかなって
。くれるやつだってそれなりの材料費とかがかかってんだろうし…」
「本当にありがとう…すごく嬉しい
大切にするね。馨くんのことやっぱり大好きだ。」
凪は涙を堪えながら、柔らかい笑みを浮かべ薫へとお礼を言ったが、馨は凪の顔を見て目を見開いたまま固まった。
「馨くん?」
「凪、俺さ」
馨が凪の髪に触れようとした時、教室の外からガタンという雑音が聞こえた。
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