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しおりを挟む「凪、なんかあった?」
宗介と共に図書室に向かい、凪は1人勉強をしていると、ふと宗介が問いかけてきた。
一方の宗介は凪の方をじっと見ていた。
「ん? なんで?」
「なんか暗い顔してる」
そう言いながら、宗介は凪の頬に手を伸ばし、するりと撫でた。その指は頬から頸へと触れ、凪はくすぐったさに身を捩った。
「暗い顔してるかな? 別に特別なことなんてなかったよ」
「ふうん、でもなんかいつもと違う感じに見えるけど」
宗介がじっと凪の顔を覗き込む。何でそんなことがわかるんだろうと思いつつ、凪は再度首を振った。
「俺がお前と何年一緒にいると思ってんの? 感情が表に出にくいとか思ってるかもしれないけど、わかりやすいよ。その顔見るの、久々」
そう言って、宗介は凪の頭を乱暴に撫で、髪をくしゃくしゃにした。その瞬間、凪は宗介がわざわざ図書室についてきた理由を理解した。普段、宗介は図書室に立ち寄ることはない。
「僕はいつも感情が分かりにくいって言われるんだけど」
「ん? 俺には何があったかわかる。話してみ」
宗介の言葉に、凪は一瞬ためらった。
前の中学校であったことを、誰にも話したことがない。いじめられていたという事実を恥ずかしいと感じ、言葉にすることができなかった。
だからこそ、前の学校で何があったのかと聞かれても、適当に誤魔化していた。
「前の中学校の同窓会があったんだけど、そこでちょっとモヤモヤすることがあって」
「モヤモヤするって、どんなことがあった?」
宗介は、凪の暗い表情を覗き込みながら、柔らかい口調で問いかける。凪の目にかかった前髪に指を伸ばし、そっと払った。
「僕を嫌っていたはずの人が、同窓会で会った途端に優しくしてきたんだ。酷い言葉をかけてきたのに、今更なんで優しくするんだろうって……」
「さあ? 凪に悪いことしたって思ってるからこそ、そういう態度を取ってるんじゃないのか? でも、凪が許す必要ないって感じてるなら、別にそいつが何しようと気にしなくていいんじゃね?」
宗介の言葉に、凪は軽く頷いた。
その時、突然凪の隣に誰かが座り、肩に腕を回した。
「凪! ようやく見つけた!」
隣に勢いよく腰を下ろしたのは伊藤だった。彼は凪の顔を見て、安堵の息をつく。
「凪、この前話した合コンの話、考えてくれた?」
「何それ、なんのこと?」
凪はその話を覚えていたが、とぼけて返事をした。伊藤は、凪の目の前にいる宗介を見ると、途端に渋い顔になる。
「おい、なんで宗介と一緒にいんだよ」
伊藤と宗介の目が合った瞬間、宗介は眉間に皺を寄せた。
「お前、近いんだけど」
そう言いながら、宗介は伊藤の肩を押し、距離を遠ざける。
「なんだよ、別にいいだろ」
「よくねえよ。つーか、お前何の用?」
宗介が警戒するような目で伊藤を睨む。
「いや、それはちょっとお前の前では…なあ、凪、どうする?」
伊藤は凪の肩を軽く揺らしながら、促すように尋ねる。しかし、凪は苦笑して首を振った。
「僕、そういうの興味ないから」
「えー? せっかくセッティングしたのに」
「悪いけど、パスしようかな」
凪がきっぱりと断ると、伊藤は不満げに唇を尖らせた。
「なんだよ、つれねえな。」
渋々といった様子で伊藤は凪から手を離し、椅子に背を預ける。
「つか、お前、本当に宗介とばっか一緒にいるよな」
伊藤がポツリと呟くと、宗介は呆れたように溜め息をついた。
「なんか問題ある?」
「……別に」
伊藤は宗介を睨むように見た後、面白くなさそうに視線を逸らした。そして、不意に立ち上がると、肩をすくめながら言う。
「ま、いいや。今日は一旦引くわ」
そう言い残し、伊藤はそのまま図書室を後にした。
「ま、気にすんな」
そう言って、宗介はまた凪の頭をくしゃくしゃに撫でた。
「……もう、乱暴にしないでよ」
凪が眉をひそめると、宗介はクスッと笑う。
「お前、そうやって文句言う時はだいたい元気なんだよ」
「……そんなことないと思うけど」
「いや、あるね」
宗介の自信満々な言葉に、凪は小さくため息をついた。
「……まあ、ありがとう」
ぼそっと呟くと、宗介はまた満足げに笑った。
それを見て、凪は少しだけ心が軽くなったような気がした。
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