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しおりを挟む「なあ、凪、マジでお願い!」
伊藤が凪の腕を引き止め、必死な顔で訴えかけてくる。
「一人くらい美形のやつがいないと、女の子たちのモチベが落ちるじゃん。でも、だからって宗介は連れて行きたくねえんだよ。あいつ、死ぬほどモテるから」
「僕は美形なんかじゃないし、そもそも女の子苦手だから行きたくないって……」
帰ろうとする凪の腕を、伊藤がさらに強く反対方向へ引っ張る。
「凪、お願い! 何も話さなくていいから! 女の子が話しかけてきても俺がフォローするし、別に無理して喋らなくてもいいから!!」
伊藤の必死な訴えを無視して、凪は腕を振り払おうとする。しかし、その瞬間——
「凪! じゃあお前がめちゃくちゃパンケーキ食べたがってたパンケーキ、奢ってやる! これマジ! ほら、予約取ってやるから!!」
伊藤がスマホの画面を凪の前に突き出す。そこには、巷で話題のパンケーキ店のホームページが映っていた。ふわふわのパンケーキにたっぷりのクリームとシロップがかかっている。そこは中々予約が取れないことでも有名だった。
「……パンケーキ?」
「お、食いついたな! さすが甘党」
伊藤がニヤリと笑い、凪の視線がパンケーキの写真に釘付けになるのを見逃さない。
「これ、食いたいだろ? だったら着いてきてくれよ。他のやつ誘えって思うかもしれないけど、凪は美形だし、他の男みたいにがっつきすぎないから、一番ちょうどいいんだよ」
「……本当に食べに連れてってくれるの……?」
「もちろん!」
「何も話さなくていいんだよね?」
「ああ、約束する!」
伊藤の言葉に乗せられ、凪は渋々頷いた。まさか、この時は伊藤の言葉をそのまま信じたことを後悔することになるとは思ってもいなかった。
「凪くんは、どんなことが趣味なの?」
隣に座る女子が明るい笑顔で話しかけてくる。
「私はドラマを見るのが好き! 韓国ドラマとか超面白いよ! 見たことある?」
「えーと……」
凪は不自然な笑みを浮かべながら、視線を彷徨わせた。どう答えたらいいのか迷う。
凪はただパンケーキに釣られて合コンに来ただけだ。伊藤に連れられてきた場所は個室のレストランでそれなりに値段が張りそうだった。凪がその雰囲気に怯えて値段を聞いたところクーポンを屈指すればなんとかなると適当な回答が返ってきて不安になる。
何も話さなくていいという約束だったはずなのに、突然目の前にいる女子が凪の方をじっと見つめ話しかけてきたのだ。
「え、見たことないの? 最近の韓国ドラマってめちゃくちゃ流行ってるんだよ? 例えばね——」
女子は凪が答えに詰まるのを気にせず、一方的に韓国ドラマの話を続ける。
凪は彼女の話を聞きながら、だんだんと居心地の悪さを感じ始めた。
(やっぱり来るんじゃなかった……)
そもそも、凪は中学時代にいじめられていたこともあり、今でも異性に対して苦手意識がある。厳しい視線を向けられたり、心ない言葉を浴びせられたりした記憶が、未だに心の奥底に残っているのだ。
そんな凪にとって、こういう場はどうにも落ち着かない。
ちらりと伊藤の方を見ると、彼はすっかり女子との会話に夢中になっていて、こちらには全く気を配る様子がない。
「えー? 凪くんって大人しいね~。」
隣の女子が、困ったように眉を寄せながら言う。その表情は、まるで「つまらない」と言わんばかりだった。
「……」
凪は返事をせずに、グラスの中の氷を指でいじる。
「もしかして、人見知り?」
「……まあ、そんな感じ。ごめんね…」
凪が小さく頷くと、女子は苦笑しながら肩をすくめた。
「そっかー。でも、せっかくの合コンなんだから、もうちょっと盛り上げてくれてもいいのに」
横目で伊藤を睨みつけるもやはりその視線には気づかない。
(僕だって来たくてきたわけじゃない)
そんな言葉が喉まで出かかったが、凪はぐっと飲み込んだ。
一旦、外の空気を吸おうと店の外に出た、
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