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しおりを挟む「そっか……やっぱりそうだよね……」
りりは楽しげに笑いながら、ストローでグラスの中の氷をかき混ぜる。
「でも、最近のかおるん、すごくテンション高め! いつもはクールぶっちゃってるけどね」
「そう、なんですね……」
馨がテンションが高いところなんて、想像もつかない。
彼はいつも冷静で、感情の起伏が激しいタイプではなかったはずだ。
けれど、最近の馨がそうなら、その理由はきっと同窓会で彼女と再会したことにあるのだろう。
「ところで、りりさんは馨くんとどういうご関係なんですか?」
凪が尋ねると、りりは楽しげにピースサインを作った。
「ん? 高校の時からの同級生だよ! 大学も一緒! あとはモデル仲間でもあるよ~」
「モデル?!」
凪の声が思わず声が裏返る。
「うん、モデル~」
りりはピースサインの指を曲げたり伸ばしたりしながら、凪の反応を面白そうに見つめている。
「馨くんもモデルもやってるんですか?」
確かに、馨の容姿ならモデルをやっていても違和感はない。
むしろ、並んでいても浮かないどころか、その場の空気を支配するような存在感がある。
だが、馨の性格上、芸能関係の仕事に興味を持つとは思えなかった。
「うん、本当はかおるん、バスケ雑誌に載る有名な高校生プレイヤーだったの。でも、そのときに芸能事務所が目をつけて、しつこくスカウトしてきたの」
「へえ……」
「事務所の人、かおるんのこと絶対逃したくなかったみたいで、毎日のように学校の前に来てたんだよ? 確か、計30回くらい誘われたって言ってた」
「30回?!」
思わず声が大きくなる。
そこまで執拗にスカウトをする芸能事務所もすごいが、それを断り続けた馨の意志の強さも驚きだった。
「でもね、かおるんのペースでいいから、せめて半年に一回だけでも雑誌に出てほしいって言われたの。で、試しに出てみたら……かおるんのキラーフェイスにみんなやられちゃったの!」
りりは大げさに手を広げながら言う。
「それで雑誌の販売数が一気に伸びちゃって、事務所が『やっぱり絶対逃したくない!』ってなったわけ。だから、それなりのお金を出して契約してるんだよ。だからね、かおるん、大学生なのに結構お金持ちなの!」
その言葉とともに、りりは凪の耳元に顔を寄せ、小声で囁く。
「りりはね、かおるんのついでにスカウトされたって感じ。それがちょっとムカつく! りりだって衝撃的な可愛さしてるのに!」
「は、はあ……」
確かに、りりは派手な雰囲気で美人だ。
しかし、「ついで」と言われたことが相当不満だったのか、頬を膨らませながらぶつぶつと文句を言っている。
「でもね、かおるんってバスケと大好きちゃんには一途だからモデルには専念しないんだって!」
りりは意地悪そうに笑って肩をすくめる。
「それに大好きちゃんのために、お金は大胆に使わないんだって。冗談だろうけどそんなこと言ってたよ!
大好きちゃんが言うこと、全部叶えられるくらいの経済力を持ちたい んだってさ!」
「……」
「でも、まだ付き合ってもないのにそれはちょっとキモいよね! 大好きちゃんにだって、大好きちゃんがいるかもしれないのに!」
りりは「ありえないでしょ!」とでも言うように笑いながらグラスを傾けた。
馨相手に「キモい」とはっきり言う人物を初めて見た凪は、ただ目を丸くするしかなかった。
そんなやり取りをしている個室の扉が開いた。
「りり、こいつ誰?」
その声に、凪は思わず耳を疑う。
扉から現れたのは、透き通るような金の髪を持つ男だった。
まるで生まれつきそうであったかのように違和感のない金髪。
タバコの香りを漂わせながら、気だるそうな表情で凪を見下ろしている。
「こいつ って……?」
初対面の相手に対して、あまりにも無遠慮な物言いだった。
「あ、ルイルイ~遅いんだけど!」
りりがルイと呼んだ男に向かって手を振る。
「この子はね、小鳥ちゃんだよ! かおるんのお友達なんだって! 可愛いでしょ!」
「こいつが? 馨の友達?」
ルイは腰をかがめ、凪の顔を正面からじっと覗き込む。
「馨って、こういう系の友達いるんだ。」
「こういう系?」
思わず反芻する。
「ルイ~!こいつなんて言っちゃダメだよ~!」
りりがルイの腕に抱きつき、上目遣いで見上げる。
これが一般的な男であれば、ドキリとするような仕草だ。
しかし、ルイは何の動揺も見せず、ただ無表情のまま凪を見下ろしていた。
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