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しおりを挟む「この子はね、ルイだよ~」
りりはしんとした場の雰囲気を賑わすように明るい声を出す。
「私たちと同い年のモデルなんだよ! 美人さんでしょ! この子もね、高校からのベスフレ~」
そう言いながら、りりは手を伸ばし、ルイの顎を掴んで強引に凪の方へ向かせる。
改めて見ると、ルイの顔は驚くほど整っていた。
端正な顔立ちに、透き通るような金髪。まるで作り物のような美貌に、思わず見惚れそうになる。
こんな美男美女ばかりの空間に、自分がいていいのだろうかと凪は居た堪れなくなり、視線をそらした。
「りり、こいつどっかから連行してきたの?」
ルイが少し面倒くさそうに言う。
「違う~! だって、かおるんのお友達だよ! 中学生の頃の!」
「ふうん……」
ルイは興味なさげに鼻を鳴らす。だが途端に何かを思い出したかのようにりりを見た。
「中学の頃ってことは、あいつのこと知ってんじゃないの?」
「そう! だから聞いてみたんだけど、知らないんだって~」
「全く知らないってことはないんじゃねえの? 馨って中学の頃でさえ、それなりの有名人だったんだろ? てか……」
ルイは片眉をぐいっと上げた後、腰を屈めて再び凪の顔を正面からじっと見つめた。
凪はその視線に耐えきれず、思わず目をそらす。しかし、ルイは視線を逸らすことなく、じっと凪を観察するように見続けた。
「……ま、似てるけど違うか」
「なんですか?」
凪が不審に思いながら尋ねると、ルイは肩をすくめて言った。
「いや、一瞬、馨の好きだった人かと思ったけど、こいつはないだろって思っただけ~」
「ぼ、僕が?!」
凪は思わず自分を指差し、目を見開いた。
「えー!! そうなの?! でも、よく考えてみると、かおるんが言ってた大好きちゃんの特徴に似てるかも!!」
りりが驚いた声を上げる。
「そう、太ってたってところ以外は、意外と当てはまる部分多いなとは思ったけど」
「いえ、僕は馨くんに嫌われてるんです……」
凪が俯きながら小さく呟いた途端、りりとルイの表情が変わった。
「なんで、嫌われてるって思ってんの? なんか馨にされたの?」
「お前のことなんか好きになるわけないって…」
凪はぎゅっと拳を握りしめながら、静かに言葉を続ける。
「そう言われたんです……だから、馨くんが僕のことを好きになるわけがないし、僕もこれ以上、馨くんと関わりたくない。もう、あの時のことを思い出したくないんです……全部……馨くんといると、あの時の嫌な記憶が蘇ってくるから……」
その言葉に、りりとルイは再度顔を見合わせた。
「いきなりこんなことを話してしまい、すいません……お二人には関係のないことなのに」
重苦しい沈黙が流れたその時、個室の扉が再び開いた。
「ごめん、凪。待たせて、電話が来てて」
馨が携帯を片手に戻ってくる。馨の顔を見た途端、なんでこんなところにいるんだろうという思いが湧いてきて、凪は馨の体の隙間を通り抜け、足早に部屋を出た。
自分の荷物を取りに、元いた個室へ向かおうとした時
「凪、どこ行くの」
腕を強く掴まれる。
「どこ行くも何も……帰るだけだよ」
振りほどこうとするが、馨の手は思ったよりも強く、逃れることができなかった。
「俺は凪と話したい」
その言葉に、心の奥底から怒りと悔しさがこみ上げてくる。
凪は馨の目をまっすぐに見つめた。
「君はまるで何もかも忘れちゃったみたいだね」
「……」
「だけど、僕は全部覚えてる。だからこそ、君の行動が理解できない」
馨の手を振り払うようにして、凪は一歩後ずさる。
「なんで僕のことを嫌がってたくせに、今さら近づいてくるの? 何が目的? 僕はあのブスでデブな小鳥遊凪だよ?早く目を覚ました方がいいよ」
馨の表情が一瞬、強張った。
「凪、それは」
「君から僕と離れたがってたくせに、本当に理由がわからないんだ」
喉の奥が締めつけられるような感覚に襲われながら、それでも凪は言葉を続けた。
「なんでわざわざ近づいてくる必要があるの? 僕はあの時、本当に傷ついたんだ……だから、平然と接してくる君のことが理解できない」
馨は何か言いたげに口を開きかけたが、言葉が出てこないようだった。
「いじめた側に、いじめられた側の気持ちなんて、わかるわけない!」
凪の瞳が、徐々に潤んでいく。
馨は静かに凪を見つめたまま、唇を噛みしめていた。
「僕は君のことなんて大嫌いだ。もう一生、近づかな——」
その瞬間だった。
馨の手が背後から伸び、大きな手で凪の口元を塞いだ。
「……っ?!」
馨の腕に閉じ込められ、凪は動けなくなる。
馨は、凪の耳元で震えるように囁いた。
「ごめん、いきなり口塞いで。でも……それだけは本当に聞きたくないかも……」
馨の声は、かすかに震えていた。
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