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しおりを挟む桜の携帯電話を奪い取り、睨みつける。
「ん? さっき話してた他校の人だけど、何?」
桜は眉をひそめ、邪魔するなと言いたげな視線を俺に向けた。
彼女は本気だ。
冗談で言ったわけではない。
桜は、気に入らない相手を排除するためならどんな手でも使う。
俺は、それを知っていた。
「……俺が、凪のことを傷つけ続ければ、お前から危害は与えないってことでいいの?」
喉が焼けつくように痛い。
それでも、この言葉を口にするしかなかった。
もし俺がここで桜に反抗すれば、凪は取り返しのつかない目に遭う。
俺がどれだけ謝ろうと、どれだけ守ろうと、そんなことは桜にとって何の意味も持たない。
「そう、物分かりいいね! 馨! さすが頭いいなぁ」
桜は拍手しながら笑う。
まるで俺のことを嘲笑うような、その口調が胸に突き刺さった。
違う。こんなの、ただの負け犬じゃないか。
俺は、何も守れない。
もし俺が勇気を出して、桜に逆らえば。それだけで、凪を守ることができたのかもしれないのに。
だけど、その時の俺にはできなかった。
俺は、また桜の望み通りに、凪を傷つける言葉を吐いた。
言葉を吐くたび、心臓が抉られるように痛かった。けれど、それを顔には出せなかった。
凪が俺を見上げる。
怯えた瞳だった。
あの目が、脳裏から離れない。
凪が転校すると聞いた時は、心に何かぽっかりと穴が空いたような虚しさもあったが、同時に少し安堵する気持ちもあった。
もう凪を傷つけるようなこともせずに、桜からの危害が凪に与えられることはない。
俺は、なんとか凪の居場所を知りたくて、色んな人に聞いて回った。
だけど、誰も知らなかった。
凪は、誰にも何も言わずに消えた。
まるで最初から存在しなかったみたいに。
凪に親しい友達はいなかった。
誰かと話すことはあっても、深く関わるような相手は見なかった。
孤独だった凪の世界に何も知らずに土足で入り込んでかき乱したのは俺だ。あの時、別の選択をしていたらどんな未来が待っていたのだろうなんて何度も後悔して過ごした。
だが、ある日、俺は街中で凪と似た人物の姿を見かけたことがあった。
部活帰り1人で歩いている時、向かいから歩いてきた少年は数人の友人に囲まれ、楽しげに話していた。咄嗟に声をかけたくなったが、俺はそれができなかった。
もし、その人物が本当に凪だったとしたら俺の姿を見た途端、凪の笑顔を奪ってしまうような気がしたからだ。
もう凪と会う資格なんてない、凪が幸せに暮らしていてくれればそれでいいとさえ思えるようになったが、同窓会で凪を目の前にしたらそんなことを考えることができないほど舞い上がってしまい、また凪が怖がるような行動に出てしまった。
我ながら情けなくて、思い出すだけでため息が出た。
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