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しおりを挟む凪は、自分の頬がじわりと赤く染まっていくのを感じて、思わずそっぽを向いた。
こんな表情、馨に見られたくない。見られた瞬間、何かを悟られてしまいそうな気がして。
馨はそんな凪の反応に納得がいかないのか、わずかに眉を寄せながらも、凪から顔を離した。
「まさか一緒に来ちゃうほど仲がいいとはね…」
「え?」
馨が小さく呟いたその言葉が凪の耳には曖昧にしか届かず、思わず聞き返す。だが、馨はそれ以上言葉を重ねようとはしなかった。
「とりあえず、どの辺に行きた——」
「あーー!!!いたいたかおるんだーー!!」
馨の言葉を遮るように、甲高くあどけない声が背後から響いた。
「ゔっ…」
聞き覚えのある声と、突如として凪の横を走り抜けていった人影。馨に勢いよく抱きついたのは、彼の友人であるりりだった。その勢いに馨は鈍い声を漏らしたが、りりはまったく気にする様子もない。
「かおるん、最近、連絡取ってくれないからりり達心配して来たんだよ~?」
腰にしがみついたまま、りりはうるんだ目で馨を見上げて訴えかける。
その視線はどこか演技めいているが、本人は至って本気だ。
「ねー??ルイルイもそう思うよね~?」
凪が反射的に振り返ると、そこには無言で立っているルイの姿があった。ルイもまた馨の友人で、普段は寡黙なタイプだが、今日は違った。馨の胸元を軽く拳で叩き、「いい加減にしろよ」とでも言いたげな視線を送る。
「お前ら、なんなの。呼んでないんだけど」
馨が呆れたように言うと、りりは顔をぷうっと膨らませた。
「えー、呼ばれてないと来ちゃダメなのぉ?かおるんが中々連絡くれないから、りり達寂しくて来たのに~!」
「そっ、連絡くらいよこせよ。冷たいやつ。」
りりの格好は派手で、短いプリーツスカートに、ヘソの見えるTシャツ。ダボっとした大きめのパーカー。背中にはウサギのぬいぐるみのようなリュックを背負っている。りりじゃないと似合わないと言わせるほどのファッションセンスだ。
ルイの金髪はよく目立つ。そこに馨と宗介までいるのだから、周囲の注目は否応なく集まっていた。
そして、りりの視線がふと凪へと向いた。
「あー!小鳥ちゃんだ!久しぶりだね!」
次の瞬間、りりは凪に向かって飛びつくように抱きついてきた。
「わっ、りりさん?!」
「相変わらずかわいーね!かおるんと仲良ししてる?」
「仲良し…??」
凪が戸惑いを浮かべると、馨が間髪入れずに口を挟む。
「りり、余計なお世話」
すると、ルイがりりの首根っこを掴んで、無言のまま凪から引き離した。
一方の馨は、凪の腰にそっと左腕を回し、自分の方へと軽く引き寄せた。凪の頭が馨の硬い胸元に当たる。その瞬間、凪の胸にどくんと大きな鼓動が響いた。
「余計なお世話じゃないもーん!りり達、かおるん応援団なんだから!」
りりはルイに引かれながらも、口をとがらせて抗議する。
「本当、うっさいっつーの…」
馨は眉を顰めて、煩わしそうにりりたちを見やった。
その様子に呆然としていた宗介の肩を、凪は指先でちょんちょんとつついた。そして、馨たちに聞こえないように手で口元を隠して、小さな声で囁く。
「宗介、この人たちは馨くんの友達の、りりさんとルイさんっていうの」
「ふーん。友達、こんな感じなんだな。意外」
「うん、そうだよね。私も最初、びっくりした」
クールで近寄りがたい印象を持つ馨が、こんなに賑やかな友人たちと親しいことに、凪は最初こそ違和感を抱いた。しかし今は、それも馨の魅力の一部だと感じている。
そのとき、りりが宗介に気づいて笑顔で問いかけた。
「もしかして小鳥ちゃんのお友達ですか~?」
「小鳥ちゃん?小鳥ちゃんって誰すか…?」
案の定、宗介は困惑したように眉をひそめてりりを見た。
「小鳥ちゃんはね、この子のことだよ!」
りりは凪の両肩を掴み、自分の方に引き寄せると、にこにことした笑顔で凪の肩をポンポンと叩いた。
「ふーん、お前、小鳥ちゃんなの?」
宗介がからかうような口調で言うと、凪は困ったように眉を下げた。
「宗介、馬鹿にしてるでしょ…?」
「あ?してねぇよ、小鳥ちゃん」
「やっぱりしてる!」
宗介の挑発的な笑みに、凪の頬はさらに赤く染まっていく。
「凪、出店案内するから、こっちおいで」
馨がそう言って凪の腰に回した腕の力を少し強める。まるでりりたちから凪を遠ざけるように。
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