【完結】それ以上近づかないでください。

ぽぽ

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番外編(馨)遠距離

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「寂しい……」


馨と結ばれてから数ヶ月が経った。だが、馨はアメリカへ行ってしまい、ふたりは離れ離れの生活を送っていた。

馨は3日以上の休みが取れると日本に帰国して凪に会いに来てくれるが、そう頻繁に長期の休みがあるわけではない。もちろん連絡は取り合っているものの、時差の影響でうまく時間が合わない。こちらが夜の時間帯は、あちらは朝だったりするのだ。

最近では、以前よりも馨からの連絡が減っているように感じられ、凪の中に不安が募っていた。

昨日も、凪が朝に「おはよう」と送ったメッセージに対し、一度も返信がなかった。

「飽きられてしまったのかもしれない」という思いが膨らみ、どんどん不安になっていく。

“アメリカには美人が多い”という印象も凪の頭の中にあった。もし言い寄られたりしたら、太刀打ちできない。こんな不安な気持ちを抱えながら、夜な夜な「もしかしたら自然消滅してしまうのでは……」と考えて、眠れない日も増えていた。


「……もしかしたら、僕たち……もう終わりかもしれない……」

「え? なに突然。僕たちってかおるんと小鳥ちゃん?」

「……はい」


凪の目の前でパフェを頬張っていたリリが、スプーンの動きを止めた。

講義が終わった後、りりとルイに誘われて凪はカフェに来ていた。ふたりは馨と凪が付き合い始めたことを知っていて、最初は相談することに抵抗があったものの、最近では自然と話せるようになっていた。馨のことをよく知るふたりだからこそ、打ち明けやすいというのも大きかった。


「なんで~?」


りりは小首をかしげ、間延びした声で凪に問いかける。


「最近、連絡が全然なくて……昨日なんて、僕から『おはよう』って送ったのに、一度も返事がなかったんだ。だから、もしかして向こうでいい人に出会ったんじゃないかって……。向こうには綺麗な人がたくさんいるし……馨くんってあの見た目だから、国を問わずモテそうだし……」

「……つまり、かおるんが浮気してるってこと~??」


直球で言われ、凪の心臓が大きく跳ねた。


「そんなの、ありえないよ。ねぇ、ルイルイ?」

「百パー、ない」


二人は驚く様子もなく平然と告げた。
ルイは無表情でアイスコーヒーをすすった。

ふたりがあまりにも落ち着いた様子で断言するため、凪は驚いてしまう。


「え、なんでそんな自信あるの?」

「ずっと近くで見てたらわかるよ。浮気する、しないの次元じゃなくて、できないんだよ。かおるんは。はい、あ~ん」


リリは季節限定の桃のパフェをスプーンですくい、ルイの口元に差し出した。ルイは何のためらいもなく、それを口に入れる。


「小鳥ちゃんも、はい、あ~ん」


凪の前にもスプーンが差し出され、凪はそれを素直に口に運んだ。桃の爽やかな甘さと濃厚なソフトクリームの風味が口いっぱいに広がり、思わず頬が緩む。

その瞬間、リリはスマホを取り出して、凪の写真を撮った。


「美味しい?」

「……うん、とっても美味しい」

「でしょ~?」


リリはさっきまでの凪の不安を忘れたかのように、上機嫌でパフェを食べ進める。
 

「マジで浮気とかないから。……まあ、このバカが適当なこと言ってるって思ってるかもしれないけど」

「ちょっとぉ! ルイルイ! バカって誰~~!!」


リリは隣に座るルイの肩を叩きながら抗議したが、ルイはそれを完全に無視して話を続ける。


「あいつさ、高校の頃から、学校で有名な美人に告白されても『俺には諦めきれない好きな人がいる』って全部断ってたくらいだよ」

「……でも、その“好きな人”って、僕じゃない可能性だってあるかもしれないし……」


凪が弱々しくそう呟くと、りりとルイは顔を見合わせた。


「……その自信のなさは馨が原因だろうな。明日帰ってくるんだし、もう思いっきり甘えてやればいいじゃん」

「え? 明日帰ってくる?」

「……あれ? 聞いてない? 明日、帰国するって」

「え!? そうなの!? しかも明日!?」


凪の声が、驚きでひときわ大きくなる。


「あれ、馨、言ってなかったんだ……」


ルイが驚いたように眉を上げると、りりも呆気に取られた顔をして固まっていた。

凪は慌てて、二人から「何時に帰国するのか」「どこの空港を使うのか」などの詳細を聞き出した。

納得のいかない気持ちが、胸の中でモヤモヤと渦巻いていく。なぜ自分には連絡すら返さないくせに、友達には予定を知らせているのか。

もしかして、本当に終わりなのかもしれない。もう会いたくないから、連絡してこないのかも。

悲しみと不安が、再び凪の胸を強く締めつける。


「……もう、こうなったら直接聞くしかない」

凪は、ついに覚悟を決めた。
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