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しおりを挟む昴は慶也の鋭い視線を正面から受け止め、怯むことなく言葉を投げかけた。
「俺がお二人の関係を知らなかったとしても、貴方の琥珀くんに対する態度は、いただけないものであったことは、貴方自身も理解していたでしょう?」
その言葉に慶也は一瞬、反論しようと口を開きかけたが、言葉を紡げないまま口を閉ざした。
「昴…」
琥珀が呟く。
二人の言い合う内容が自分のことに関係しているのは、琥珀にも明らかだった。しかし、彼らの間に漂う険悪な空気に耐えきれず、琥珀は思わず昴の制服の端をぎゅっと掴む。そして不安げな瞳で昴を見上げた。
昴はそんな琥珀に気づくと、さっきまでの剣幕が嘘のように柔らかい笑みを浮かべた。
そして、そっと琥珀の頭を撫でる。その動作に、琥珀は少し安心したように目を伏せた。
だが、昴が離れようとした瞬間、琥珀はとっさにその手を掴んだ。そして、まるで不安を紛らわせるように、昴の手のひらに自分の頬を押し付ける。
「不安にさせてごめんなさい。俺が来たせいで、ややこしい話になってしまいましたね?」
昴は琥珀の目をじっと見つめながら、優しく話しかけた。そして続ける。
「今から琥珀くんがあまり聞きたくないような話が出てくるかもしれません。ちょっとの間だけ耳を塞いでいてもらうことはできますか?」
琥珀は声に出さず、ただ一度だけ首を縦に振った。その様子に安堵した昴は、琥珀の頬を撫でた後、背後から抱きしめるようにして、耳を塞いだ琥珀の手の上に自分の手を重ねる。
二人の親しそうな様子を目の当たりにした慶也は、強く拳を握りしめた。
「君の噂は聞いたことあるよ」
慶也の声は低く、どこか苛立ちが混じっている。
「とんでもない美少年が転校してきたって。最初、そんな噂を聞いても信じていなかったけど、実物を見たときは想像以上だった。
琥珀はそういう噂に興味ないし、そんな君が琥珀に近づいているとは思わなかったけどね。」
慶也の声は低く、どこか苛立ちが混じっている。
その言葉に昴は微笑みながら静かに答えた。
「琥珀くんがあまりにも魅力的な人だったので、一瞬で惹かれてしまったんです。こんな魅力的な人の好意を受け取らない人の神経が、正直、俺には理解できませんけど。」
その淡々とした言い方に、慶也は目に怒りの色を宿した。
「…何がわかるんだよ」
慶也の声が少し荒くなる。
「これが俺なりの琥珀を守るための方法だったんだよ…!!それ以外どうすればいいのかわからなかった。俺には君みたいな勇気がなかったから…」
慶也の言葉に昴は、驚くほど冷静な口調で返す。
「そうですか。だとしたら、もう琥珀くんのことは諦めてください。」
一切の同情を含まない、あまりに軽い口調に慶也は呆気に取られた。
「は…?」
昴の言葉に対する問い返しも、声にならない。
昴は慶也の反応に構うことなく、静かに続けた。
「どんな理由かあろうと、あなたは琥珀くんを選ばす、自分の彼女を選んだ。それが事実です。
こうなることが本望だったんですよね?それとも琥珀くんがずっと言い寄ってきてくれることに甘えていたんですか?琥珀くんはあなた以外に好きになることないなんて、思い込んでいたんですか?」
「…。」
慶也は言葉に詰まる。昴にそう言われても仕方ないようなことを琥珀にしてきたからだ。
「俺はずっと琥珀のそばでずっと面倒を見てきたんだ…自分勝手だともわかってる…最低だってわかってる。でもどうしても離れられない。」
慶也は震える声を出して、絞り出すように呟く。ただ昴はそんな様子をみても一切態度を変えることはない。
「だからなんなんですか?随分調子がいいこといいますね?あんな関係性が永遠に続くわけないのに。
琥珀くんとあなたの今の関係はただの"幼馴染"です。その関係に執着しすぎですね。」
「…ただの幼馴染??」
昴の言葉は慶也の心を少しずつ抉っていく。
「ただの幼馴染」という言葉に眉間に皺を寄せた。琥珀と慶也の関係はそんな言葉で流せないくらいには深い関係だと思っていたからだ。それを出会ってすぐの男に「ただの幼馴染」で片付けられたことに苛立ちを覚える。
それに、今までの全ての行いが間違っているといわれるような感覚とこんな男に長年思い続けた琥珀を持っていかれるのかという焦りが怒りへと変わっていき、思わず昴の胸ぐらに手を伸ばしかけた時。
「…いやだっ!!」
2人の間から小さな声が漏れた。
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