37 / 56
37
しおりを挟む「やだっ!やめて!!慶也、どこかに行って!! 何で来るの!!」
美沙は両手で頭を抱え、現実を拒絶するかのように首を振った。
「なぜ、どこかに行かせようとするんですか?」
昴は微笑を浮かべながら、美沙を見下ろす。
「愛しい彼氏ですよね? 琥珀くんに暴力を加えてまで、彼を繋ぎ止めようとしていたじゃないですか?」
美沙はその場に座り込み、力なく肩を落とした。
「琥珀に暴力…??暴力ってなんだよ」
慶也は琥珀の方に視線をやり、琥珀の腫れた頰を見て目を見開く。
「これ美沙がやったのか。」
慶也は威圧するような低い声を出す。
「違うのっ、私はこの子に煽られたからつい!」
「思わずで人の事叩いていいわけないだろ!!」
慶也は怒りに満ちた目で美沙を見下ろす。
「慶也さん、あなたに伝えないといけないことがあります。」
「嫌だ、慶也やめて…これからこの人の言うことを何も聞かないで!!」
必死に訴える美沙を、昴は冷めた目で見つめた後、ゆっくりとしゃがみこみ背中を摩った。
「わかりました…そこまで言うなら俺も考えます。でも、あれは事実だったということでいいでしょうか?」
昴は先ほどまでの口調とは違い、落ち着いた声で美沙に語りかける。しかし、美沙はその問いかけに対し、またも沈黙する。
「黙っているということは、肯定と捉えますよ。」
美沙の指の間から、チェーンが垂れ下がる。昴はそれを手に取り、ネックレスを美沙の手から抜き取った。そして立ち上がると、傍にいた琥珀の手を取り、慶也の方へと向き直る。
次の瞬間、昴は手元のネックレスを慶也へ向かって放った。反射的にそれを受け止める慶也。
「慶也さん、このネックレスに見覚えは?」
美沙は昴の行動に唖然とする。
「やめてっ!!言わないって言ったじゃない!!!」
「俺は何も約束していませんよ? それに、慶也さんに何も言わないとは、一言も言っていません。」
慶也は手元のネックレスを見つめ、目を見開いた。
「美沙、これってどういうこと…?」
「違うの、慶也!!聞いて!!」
「なんで…? なんで他の男の名前と美沙の名前がここに刻まれてるんだよ…。それに、この日付…俺と付き合う一ヶ月前じゃないか。」
慶也の手がわずかに震える。
「まさか、俺のことを騙してたのか?」
「違う!それは…たまたま元カレとのものがポケットに入っていただけで…」
「おかしいですね、美沙さん。」
昴が口を挟む。
「さっき、ペアネックレスのもう片方の持ち主は慶也さんだと言いましたよね?」
美沙は昴を鋭く睨んだ。
一方、慶也は手の中のネックレスを握りしめて、美沙を見る。
「なんで半年以上も経ってるのに、まだ持ってるの?」
「それは…」
美沙の声が途切れる。彼女は立ち上がるも、顔から血の気が引いたように青ざめていた。
「昴、これは何が起こってるの…?」
琥珀が困惑の表情を浮かべ、昴の手をぎゅっと握る。
「大丈夫です、琥珀さん。あなたは何も心配しなくていい。」
昴は優しく微笑み、琥珀の頭を撫でた。そして、再び慶也と美沙へ向き直る。
「慶也さん、彼女の携帯を見てみたらどうですか? 興味深い通知が届いてますよ。“ハートの片割れ”の持ち主から。」
慶也は驚き、美沙のポケットからスマホを取り出す。美沙は慌てて取り返そうとするが、慶也はそれを振り払った。
ロック画面に表示された通知
『美沙、今日はいつ会える?』
送信者の名前は、ネックレスに刻まれたものと同じだった。
「美沙、これ…どういうことだよっ!!
元カレって嘘なのか…まさかまだ付き合って…」
いつも冷静な慶也が、荒げた声を上げる。
「しゃがんだ時、ポケットから見えたんですよ。つい、気になってしまって。」
昴は申し訳なさそうに微笑んだ。しかし、その目にはまるで悪意がなかった。
「慶也さん、あなた随分と”見る目”があるんですね。」
昴は静かに続ける。
「好意を伝えてきた琥珀くんより、浮気をしている彼女を選んだんですから。どうです? あれほど独占欲の塊だった彼女が、他の男と浮気していたと知った気持ちは。」
慶也は拳を強く握りしめ、何か言いかけたが、それを飲み込んだ。
2,015
あなたにおすすめの小説
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
2026/01/23 19:00 アルファポリス版限定SS公開予定
累計で6300♡いいねと累計ポイント285000突破の御礼SSになります
君に不幸あれ。
ぽぽ
BL
「全部、君のせいだから」
学校でも居場所がなく、家族に見捨てられた男子高校生の静。
生きる意味を失いかけた時に屋上で出会ったのは、太陽に眩しい青年、天輝玲だった。
静より一つ年上の玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。
静は玲のことを好きになり、静の告白をきっかけに二人は結ばれる。
しかしある日、玲の口から聞いた言葉が静の世界を一瞬で反転させる。
「好きになられるからあいつには近づかない方がいいよ。」
玲に対する感情は信頼から憎悪へと変わった。
それから十年後。
静は玲に復讐するために近づくが…
【完結】好きな人の待ち受け画像は僕ではありませんでした
鳥居之イチ
BL
————————————————————
受:久遠 酵汰《くおん こうた》
攻:金城 桜花《かねしろ おうか》
————————————————————
あることがきっかけで好きな人である金城の待ち受け画像を見てしまった久遠。
その待ち受け画像は久遠ではなく、クラスの別の男子でした。
上北学園高等学校では、今SNSを中心に広がっているお呪いがある。
それは消しゴムに好きな人の前を書いて、使い切ると両想いになれるというお呪いの現代版。
お呪いのルールはたったの二つ。
■待ち受けを好きな人の写真にして3ヶ月間好きな人にそのことをバレてはいけないこと。
■待ち受けにする写真は自分しか持っていない写真であること。
つまりそれは、金城は久遠ではなく、そのクラスの別の男子のことが好きであることを意味していた。
久遠は落ち込むも、金城のためにできることを考えた結果、
金城が金城の待ち受けと付き合えるように、協力を持ちかけることになるが…
————————————————————
この作品は他サイトでも投稿しております。
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
目線の先には。僕の好きな人は誰を見ている?
綾波絢斗
BL
東雲桜花大学附属第一高等学園の三年生の高瀬陸(たかせりく)と一ノ瀬湊(いちのせみなと)は幼稚舎の頃からの幼馴染。
湊は陸にひそかに想いを寄せているけれど、陸はいつも違う人を見ている。
そして、陸は相手が自分に好意を寄せると途端に興味を失う。
その性格を知っている僕は自分の想いを秘めたまま陸の傍にいようとするが、陸が恋している姿を見ていることに耐えられなく陸から離れる決意をした。
生まれ変わりは嫌われ者
青ムギ
BL
無数の矢が俺の体に突き刺さる。
「ケイラ…っ!!」
王子(グレン)の悲痛な声に胸が痛む。口から大量の血が噴きその場に倒れ込む。意識が朦朧とする中、王子に最後の別れを告げる。
「グレン……。愛してる。」
「あぁ。俺も愛してるケイラ。」
壊れ物を大切に包み込むような動作のキス。
━━━━━━━━━━━━━━━
あの時のグレン王子はとても優しく、名前を持たなかった俺にかっこいい名前をつけてくれた。いっぱい話しをしてくれた。一緒に寝たりもした。
なのにー、
運命というのは時に残酷なものだ。
俺は王子を……グレンを愛しているのに、貴方は俺を嫌い他の人を見ている。
一途に慕い続けてきたこの気持ちは諦めきれない。
★表紙のイラストは、Picrew様の[見上げる男子]ぐんま様からお借りしました。ありがとうございます!
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる