【完結】君のことなんてもう知らない

ぽぽ

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昴side

琥珀さんと出会った時のことを思い出す。

転校初日

日本に来てから、どうにも周囲の視線が気になって仕方がない。

イギリスでは特に違和感のない俺の容姿も、この国では珍しいらしい。そのせいで、通りすがる人々から好奇の視線を向けられる。特に、前から歩いてくる女子たちがチラチラとこちらを見ては頬を赤らめるのが目に入る。

時々、母と共に日本を訪れることはあったが、この視線には相変わらず慣れない。

今回、日本に来た理由は、母方の祖母の体調が優れないためだった。祖父はすでに亡くなっていて、近くに頼れる親族もいない。母が面倒を見ざるを得ない状況だった。
父はイギリスで事業を営んでおり、日本に移り住むという選択肢はなかった。そのため、最初は母だけが日本へ行く予定だったが、なぜか俺も半強制的に連れてこられてしまった。

母の言い分は「せっかくの機会だから日本で勉強するのも悪くない」だったが、実際のところ、きっと単純に一人で行くのが寂しかっただけだろう。母は昔から人との交流が好きで、明るく社交的な性格だ。突然、家族と離れることになれば、心細く感じるのも無理はない。

だが、俺にとっては正直なところ、今回の環境の変化は憂鬱だった。

人目を引くのは好きではないし、日本の学校で馴染めるかも不安だった。できるだけ目立たず、波風を立てずに過ごそうと心に決めた。

しかし、その決意はある出会いによってあっさりと揺らぐことになる。

転校初日、俺はまず職員室へ行くことになっていた。しかし、どこの入り口から入ればいいのかわからず、校内を彷徨っていた。

それらしき場所が見当たらず、辺りを見回していると、視界の隅にふわふわとした何かが映る。

視線を下げると、その「ふわふわ」の持ち主が俺を見上げていた。

俺の目の前に立っていたのは、驚くほど綺麗な人だった。

小さな淡い桃色の唇、シミひとつないきめ細やかな肌。長いまつ毛に縁取られた大きな瞳が、好奇心に満ちた光を湛えている。その柔らかな髪は光を受けて揺れ、春風に舞う桜の花びらとともに揺れていた。

まるで幻想の中の存在のように、桜の美しさすら霞むほどの魅力を放っていた。


「どうしたの!」


突然、元気な声が耳に届く。


「……え?」


思わず固まってしまう俺に、相手はさらに言葉を重ねた。


「迷子?」

「迷子……?」


問いかけられて、俺は思わず同じ言葉を繰り返してしまう。俺は迷子と言われるような年齢ではないし、そもそもこの状況は迷子とは少し違う。


「うん、なんかあんまり見かけない顔だったから、もしかしてって!」


笑顔を浮かべる彼女?、いや、彼?一瞬判断がつかなかったが、制服は男子生徒のもので少しの驚きを覚える。こんな顔立ちが綺麗な男性は見たことなかったからだ。
その屈託のない笑顔が、まるで春の陽だまりのように温かかった。

こんなにも自然に話しかけられたのは、日本に来てから初めてだった。

俺の見た目のせいか、ほとんどの人は遠巻きに様子をうかがうか、戸惑ったような表情を浮かべるばかりだった。日本人離れした容姿が、余計に距離を生んでいたのかもしれない。

しかし、目の前のこの人はそんなことを気にする様子もなく、まるで昔からの知り合いのように話しかけてくる。そのことが、俺にとっては意外だった。
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