【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

第四十九話静寂の中で動き出す陰謀

第四十九話：静寂の裏で動き出す陰謀

夜が訪れ、街には一時的な静けさが戻ってきた。カイル公爵軍が撤退した後も、兵士たちの緊張感は抜けていない。俺たちの勝利はあくまで防衛線を維持したに過ぎず、戦争そのものが終わったわけではない。

俺は街の指揮所に戻り、リュークやリリア、そして主要な将校たちと共に次の戦略を練っていた。

迫り来る不安

「リューク、撤退した敵軍の動きはどうだ？」

「偵察部隊の報告によると、彼らは街から約10キロほど離れた平地に布陣を整えています。兵を休めながら、再度攻撃の準備を進めているようです。」

「……やはり、簡単には引き下がらないか。」

カイル公爵軍がこの街を攻めている理由は明白だった。この街は北東部をつなぐ重要な拠点であり、ここを制圧することで彼らは物資の輸送ルートを確保できる。俺たちにとっても、この街を失うことは戦略的に大きな痛手となる。

「殿下、このまま守備に徹するだけでは、持久戦に耐えられない可能性があります。」

リリアの言葉には一理あった。防衛戦を続けるだけでは、いずれ物資や士気の不足に直面する。

「何か、相手の動きを崩す手立てが必要だ……。」

戦場外での動き

その夜、俺たちが戦略を練っている最中、街の外で何者かが暗躍しているという報告が入った。

「殿下、街の西門付近で不審者の目撃情報があります。」

「西門だと？カイル公爵軍は東に布陣しているはずだが……。」

俺は即座にリュークと数名の兵士を引き連れ、西門へ向かった。

そこには数名の黒装束の人物が隠れるように行動しており、俺たちが近づくと彼らは慌てて逃げ出した。

「追え！捕らえるんだ！」

兵士たちが追跡を開始し、俺も馬を走らせて彼らを追い詰めた。やがて黒装束の一人を取り押さえることに成功する。

「貴様、何者だ？ここで何をしている！」

俺が問い詰めると、男は頑なに口を閉ざしていた。しかし、彼の所持品からはカイル公爵家の紋章が彫られた指輪が見つかった。

「……やはり、カイル公爵の手の者か。」

リュークが眉をひそめる。彼らが何を目的にこの街に潜入していたのか、調べる必要がある。

捕虜の尋問

指輪を所持していた男はすぐに牢に送られ、俺たちは彼から情報を引き出すための準備を進めた。

「リリア、尋問の準備をしてくれ。リューク、彼が持っていた荷物を調べてみろ。」

「承知しました。」

リュークが荷物を調べると、そこから複数の地図や、城内の見取り図が出てきた。

「殿下、これを見てください。城内の配置や物資の保管場所が詳細に記されています。」

「……内通者がいるということか。」

俺の言葉に、リリアも険しい表情を浮かべた。

「可能性は高いですね。カイル公爵がこの情報を持っていた理由を考えれば、こちらの内部情報が漏れていると見るべきでしょう。」

「厄介なことになったな……。内通者をあぶり出す必要がある。」

反撃の準備

内通者の問題を解決しつつ、次の防衛戦の準備を進める必要がある。カイル公爵軍は必ず再び攻めてくる。

「リューク、前回の戦いで使用した罠をさらに強化しろ。新たな罠を複数仕掛けて、敵の動きを制限する。」

「かしこまりました。次は森林地帯を活用して、大規模な伏兵を配置する計画を立てます。」

「リリア、街の内部の士気をさらに高めるために、住民たちにも協力を呼びかけてくれ。物資の配給や避難計画の再確認も忘れるな。」

「分かりました。住民たちの不安を少しでも和らげるよう、私が対応します。」

俺たちはそれぞれの役割を全うしながら、迫りくる戦いに備えた。

謎の手紙

その日の夜、俺の部屋に一通の手紙が届けられた。それは差出人不明のものであり、簡潔な文面が記されていた。

「敵は表だけではない。裏にも目を向けよ。」

誰がこの手紙を送ってきたのかは分からなかったが、その言葉の意味は十分に理解できた。カイル公爵軍だけではなく、内部の裏切り者や隠された陰謀にも注意を払う必要があるということだ。

「……面白くなってきたじゃないか。」

俺は手紙を机に置き、次の戦いへの決意を新たにした。

翌朝

翌朝、偵察部隊から新たな報告が入った。カイル公爵軍が再び動きを見せ始めたというのだ。

「殿下、敵が再び進軍を開始しました。今回は前回よりも兵力を増強しているようです。」

「分かった。全軍に準備を整えさせろ。今度こそ奴らを完全に退ける。」

俺たちは街全体を戦場に変える覚悟で、最終的な準備に取り掛かった。