【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

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第六十一話訪れる静寂、そして新たな波乱の兆し

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第六十一話:訪れる静寂、そして新たな波乱の兆し

戦いが終わり、戦場に静けさが戻った。だが、その静寂は完全な平和を意味するものではなかった。カシムは勝利の余韻に浸る間もなく、次なる行動に移らざるを得なかった。戦場の混乱を収拾し、残された兵たちの士気を維持するために、やるべきことは山積みだった。

勝利の報告と残された者たち

「殿下、各隊の報告が上がってきました。我が軍の損害は軽微とは言えませんが、敵軍に比べれば大きな勝利と言えます。」

側近のリリアが簡潔に状況を説明する。その声には疲れがにじんでいたが、それ以上に勝利の喜びが見て取れた。

「そうか……。まずは負傷者の手当てを優先しろ。生き残った兵たちには休息を与えるよう手配してくれ。」

カシムは冷静に指示を出す。戦場での勝利は終わりではなく、新たな始まりであることを、彼は誰よりも理解していた。

「それから、グレン兄上はどうしている?」

「仮の拘束をしていますが、彼自身も疲弊しており、抵抗する気力はないようです。」

「そうか……。少し考えさせてくれ。」

カシムは腕を組みながら天幕の中を歩き回った。兄との対話をどう進めるべきか、その答えはまだ見つかっていなかった。

兄弟の再会

夜が更けたころ、カシムはグレンの拘束されている場所を訪れた。彼は簡素な椅子に座り、疲れ切った表情でカシムを見上げた。

「来たか、カシム。俺を処刑するつもりなら、さっさとやれ。」

その言葉には皮肉が混じっているが、同時にどこか諦めの色もあった。

「処刑などするつもりはない。兄上にはまだ果たすべき役割がある。」

「果たすべき役割だと?」

「兄上はこの帝国の未来を考えるべき立場にある。その知識と経験を、無駄にするつもりはない。」

グレンは苦笑しながら首を振った。

「随分と立派なことを言うじゃないか。だが、お前がそう思うなら、俺をどうするか決めるのはお前次第だ。」

その態度に苛立ちを覚えつつも、カシムは冷静さを保った。

「兄上、俺はあなたを敵として憎んだわけではない。ただ、あなたがこの国を支配する未来が正しいとは思えなかっただけだ。」

グレンはしばらく黙っていたが、やがて深いため息をついた。

「……分かった。お前の言う通りにしよう。ただし、この結果を後悔しないことだな。」

戦後の混乱

戦場での勝利の報せは瞬く間に帝国内に広がり、各地で騒然とした動きが起き始めた。第六皇子が兄であるグレンを倒したという事実は、帝国の政治情勢を大きく揺るがしていた。

「カシム殿下、この勝利を受けて、各地の有力貴族たちが動き出しました。彼らの多くが殿下に忠誠を誓う構えを見せています。」

リリアが報告する。

「……それはありがたいが、すぐに受け入れるのは危険だ。彼らが本当に忠誠を誓うのか、それともただ勝ち馬に乗りたいだけなのか、見極める必要がある。」

「その通りです。しかし、今後の展開次第では、彼らの支持を得ることが不可欠になるでしょう。」

カシムは頷きながら、再び考え込む。貴族たちの動きには常に裏がある。下手に取り込めば、後々足を引っ張られる可能性が高い。

次なる脅威

その夜、カシムは一通の密書を受け取った。それは帝国内の南方に位置する領地からのもので、ある一つの情報が記されていた。

「南方で新たな反乱の兆しがある……か。」

密書には、南方の領主が独立を目論んでいるという内容が書かれていた。これが事実ならば、今回の勝利が無意味になるほどの大きな問題を引き起こす可能性がある。

「リリア、すぐに南方の状況を詳しく調べてくれ。」

「承知しました。」

南方の反乱が本格化すれば、再び戦場に立たざるを得ない状況になる。だが、今のカシムには疲弊した軍を再編する時間が必要だった。

未来を見据えて

カシムは夜の空を見上げながら考え込んでいた。この勝利で一歩前進したように思えたが、新たな課題が次々と押し寄せている。

「俺が目指す未来は、まだ遠いな……。」

そのつぶやきに応えるように、冷たい風が吹き抜けた。

だがカシムの心に迷いはない。この帝国を新たな未来へ導くため、彼はその歩みを止めることはなかった。
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