19 / 220
魔法のTシャツ(巨乳・貧乳どっちにも味方してくれる!)・後編
しおりを挟む
魔法のTシャツ(巨乳・貧乳どっちにも味方してくれる!)・後編
ー誰も優子を気にしないー
びし! っと伝わるのはそういう空気だった。誰もまな板の優子を見ようとしない。まるで道端の石ころという感じで知らんぷり。
男子とか男性なんて、優子の乳をチラ見するのがお約束だった。でもまな板になってみると、見る気ねぇよ! っていじわるなオーラが漂っている。そんなこと、優子にとっては久しぶりすぎて衝撃だった。
「ね? 誰も優子なんか見ないでしょう?」
「ぅ……」
見られてもうれしくない! と言いたいところだが、誰も見ないと言われたら、それはそれでさみしさとか物悲しさをおぼえる。
「それに比べてわたしの胸は見られまくりだよ」
オホホと笑う香苗だった。事実、行き交う人間の多くが、特に男子や男性は香苗の乳具合を一瞥する。チラ! っと抜け目なく職人のように見る。それは本当なら優子が独占するはずのモノだった。
ーおぉ、小学生だけど巨乳気味かー
そういう心の声が聞こえる。むろんそれは香苗に対する賛辞であり、横にいる優子はどうでもよい存在。
「ま、まぁ……見られないから気が楽でいい」
「今だったら誰も優子の胸を触りたいとか思わないだろうねぇ」
「べ、べつに思われたくないし」
「優子、声がふるえてるよ。もしかしてくやしいの? あるいはさみしいの?」
「ち、ちがうし!」
そんな会話をやっているとき、ひとりの中学生らしき男子が後ろから駆けてきた。急ぎの用事でもあるのかな? と思いきや、フッと優子の方を見た。そして露骨なまでに顔と声で示したのである。
「なんだ……全然胸がないじゃん、期待ハズレかよ……」
つまりこのスケベ野郎というのは、後方から優子を見た時、こいつは乳のデカい女! と勝手にコーフンした。その期待がうらぎられてしまい、よっぽどがっかりしたのか、やや大きめの声で言うのだった。
「期待をうらぎるようなまな板は家に引っ込んでりゃいいんだよ」
そういってケケっと笑いサッサと立ち去って行った。
「むかつくぅ!」
ぐぎぎ! っと怒りをにじませる優子だった。
「まぁまぁ、内側にはデカくてやわらかいのがあるんだからさ、ああいう奴はバカにして笑ってやればいいじゃん」
「で、でもまな板とかって……」
「あぁ、優子はまな板と言われた事がないからねぇ」
一応気づかう香苗だった。でもその目は自己満足の方にひたっている。行き交う人間がチラッとふくらみを見れば、デザートを勝ち取ったかのようによろこぶ。
「ったく……どいつもこいつも」
香苗の真横を歩きながら優子は腹が立った。誰も自分を見ない。今まで散々に豊満バストを見入っていたくせに、手のひらを返したように見ない。お前なんかに興味はないという、アウト・オブ・眼中って感じだ。
そのくせ香苗の方をチラ見するやつは多い。お! もしかして巨乳か!? って目を一瞬向けたりする。
「香苗、胸ばっかり見られてイヤにならない?」
「全然。むしろめっちゃくちゃ快感。これだけでイキそうだよ」
香苗に浮かぶ大満足の顔。特大の余裕を持ったという顔だ。いかなる苦悩も乗り越えられるという笑みである。
「でも香苗、そろそろ着替え直した方がよくない?」
優子はちょっと不安気な声を出す。このまま家に帰ると家族に見られる。どっちの家族もびっくりすることは確実。
「大丈夫、うちのお母さんはユーモアーが備わってるから」
「ユーモアーの問題なの?」
「優子のお母さんはダメなの?」
「絶対につっこまれると思う」
「だったらさ、これくらいいいじゃん! とか言い返すんだよ。それが小6の乙女ってもんだよ、ちがう?」
香苗のかっこうよい言いっぷりに優子はシビレた。その気になりやすいって特徴のど真ん中に硬球がヒットした。
「うん、このまま帰るよ」
2割くらいのドキドキと8割ほどの勇気。その融合体を胸のふくらみに入れ込んで、優子は自宅に戻った。
「ただいま」
「おかえり」
母の声というのはトイレから聞こえた。あぁ、今なら間に合う、さっさと手洗いして二階の部屋に入ろう! と、早くも乙女心は弱っちいモードに降格していた。でもそれを神さまがダメだと叱咤する。
洗面所から出たとき、母もトイレから出た。めでたくご対面というメロディーが空気中に流れる。母は特に気にせず居間へ行きかけた。でもすぐにビリっと反応を示して、慌てて体の向きを変える。
「は? ゆ、優子?」
大げさなほど両目をパチクリさせる母。
「な、なに?」
ドッキン・ドッキンと心臓が緊張で固くなる優子。
「優子でしょう? 優子だよね?」
得体のしれない魔物でも見るような目をして、母はそっと左手を伸ばした。ドキ! っとしたが動けない優子、冷や汗しながら制止。
母の手は娘の頬にふれた。あぁ、このふっくらと色白の融合。これはまちがいなく優子だと思うのだが、それならこれは? という風に目線を下げていく。
「な、なに?」
「優子、どうしたの? なにこれ? おっぱいは?」
「あ、あるよ……」
「どこに? なんで母より大きいおっぱいがまな板になるわけ? 朝はあったじゃん、あれどこにやったの?」
少々コーフン状態の母は、真っ赤な顔の優子をつよく揺さぶる。ローマは一日にならず! とはいうが、地球崩壊も一日ではあらず! とか力説している。
「こ、これはその魔法のTシャツで……」
「魔法だぁ?」
母の顔にイラっと感がうかぶ。魔法なんて聞いて、あ、そうなんだ? とは言えないらしく、ふざけんなよ! という目つきになってきた。
そこで娘は仕方なく、ちょっと触ってみてよと訴えた。もちろん母はすぐに行動する。相手の恥じらいなど無関係に、サッと手を動かしピタ! っと平面Tシャツの胸へとあてたのだった。
ぼわん! ムニュ! っと豊かでやわらかい弾力が、すごい手触りとか揉み応えというモノが、母の手に当たる。外見からは想像できなかったモノに対して、母の脳内はブシューっと軽快な音を鳴らした。
「え? こ、この大きさとかやわらかい弾力とか……」
「ちょ、ちょっとお母さん」
優子の慌てる反応なんぞに興味はない! とばかり、母は攻撃するかのようにTシャツをまくり上げた。
プルン! ゆれ動いた白いフルカップ、そして優子の第二フェイスともいえる魅惑の谷間などが姿を現す。
「えぇ? 優子……こ、このおっぱい、どうやって隠してた?」
「だからその、これは魔法のTシャツなんだよ」
優子はTシャツをまくり上げられたまま、ブラのふくらみや谷間を見つめられたまま、本日の出来事をわかりやすく語った。それを聞く母の顔っていうのは、どうしたの? なんて思うくらい真剣だった。
「さ、300円? このTシャツが?」
「うん、だからさっくり買えたんだよ」
ここで数秒ほどの間が生じる。スワーっと薬品みたいな感覚が家中に満ちあふれる。そうして母は突然に、買い物を忘れていたと口にする。今からでも行ってくるわ! と、いきなり忙しいみたいに変貌した。
買い物かぁと小さな声でつぶやく娘。なんとなく母のやりたいことが分かった。でも止めるっていうのはできそうにないとも感じた。
「なんかつかれた……」
ほんのり疲労を精神に抱え、ゆっくり階段を上がっていこうとする優子。すると母と入れ替わるようにして、中野家のおっぱい星人こと真治が帰宅。
「ただいま」
小4ボーイの声を聞いたとき、小6の姉は足を止めた。ここはぜひとも弟の反応を見たいと思った。いや、見るべき! という気さえした。
真治は手洗いを済ませると、ノドの渇きを解決しようと居間でジュースを飲むことにする。トクトクと音を立てるオレンジ色の液体が、透明グラスに注がれていく。それを左手に持ち、クッと顔を傾ける。
「真治、ちょっと」
ここで姉が居間にやってきた。
「うん?」
深くかんがえる事もなく、クイっと姉の方を見る弟。するとオレンジジュースを気前よくテーブルに吹き出してしまう。
「ゴホゴホ……ぅ」
慌ててティッシュをつかむ。ズワーっとテーブルを拭いた後、もう一枚でおのれの口を拭く。そして先ほどの母みたいな目をやる。
「なに? どうした?」
フン! っと冷静に立つ姉。
「な、何って……」
「だから言いたいことがあるなら言えって」
「ほ、ほんとうにお姉ちゃんなの?」
「どういう意味?」
「だ、だって……お、お、おっぱいが……」
「はぁ? おっぱいがなんだって?」
「おっぱいが消えてる?」
そういうとゴクリ生唾を飲んだ。今の姉から見えるのは、着痩せでもなければ乳隠しでもない。もはや別体への移動という感じそのもの。中野優子の弟して、これほど驚くことは他にない。
対する優子はたのしみたいので、まぁ仕方ない! みたいな表情をして言うのだった。これからはずっとこうなんだよねぇと。
「ず、ずっと?」
「実はさ、おっぱい小さくする手術したんだ」
「うそ!、マジで?」
「だってさ小6で巨乳とか女神過ぎるじゃん? これからは平凡な女になろうと思ったんだ」
通常ならこんなウソは通じない。でも魔法Tシャツを着ていれば、このようなウソもリアルとして人を信じさせる。
「じゃぁ、もう巨乳じゃないの?」
「うん、もう終わったんだ」
「あ、あのおっぱいはもうないの?」
「ないよ。でもさ、今の方がよくない?」
そう言って軽く両腕を広げる。その内側にはフルっと揺れるふくらみがあっても、表向きは真っ平ら。それは真治の顔つきを、ずいぶんさえないモノに切り替えさせていった。
「べつに……いいんじゃないの」
まったくやる気のない声と顔。真治の変わりっぷりは電流のように速く、もうすでに優子を見ようとしはない。興味の対象外、見る価値なし、横にいたってチラ見さえする気なしと顔に書いてある。
「真治、こっち見なさいよ」
誘ってみれば従いはするが、つまらなそうな目が印象的だ。そこには優子を見るとき専用の、ドキドキしながらチラチラ! って色合いが皆無。まるっきりつめたい人って目線そのもの。
「じゃぁぼく宿題してくるから」
さようなら! と別れを告げるような声色。
「まったくなんてやつ!」
うぐぐ! とご立腹な優子だった。豊かなふくらみばかり見られると、それはそれでイライラさせられる。弟が姉の心をイラつかせた回数はもはや天文学的数字。しかしまったく興味がないって豹変されると、別のイラつきが発生してしまう。
「こうなったら……ひたすらこのTシャツで生活してやる」
優子があつい決意を固めた。ほんとうに消えてしまうわけじゃないから、内側にはふっくらやわらかい弾力はちゃんとあるから、外側が貧しくなっても関係ない。むしろ見た目に反するお金持ちって考えればよいとした。
「ただいま」
ここで母の帰ってきた声と音がする。ついで優子の名前を呼ぶ声もする。
「なに?」
魔法Tシャツを買ったのかな? なんて思っていたら、クイクイっと応接間に手招きされた。
「優子、これあんたにあげる」
そう口にする母は、買い物袋からすっきり感のあるパープルTシャツを取り出す。それはたしかに優子に合いそうだった。
「あ、でもね、魔法Tシャツと交換よ」
「へ? こ、交換?」
「そ、小学生が偽りの人生送っちゃダメ。女は正直に生きないとダメ、だからそれはわたしがもらうわ」
「えぇ、そんな急に言われても……」
「大丈夫、それMサイズでしょう? わたしでも着れる」
「そういう問題じゃないよ」
ここは突っ込ませてもらおうと優子が口を開く。女は正直にとかいうが、魔法Tシャツを欲しがる時点で、母もまた正直にあらず。言ってみれば不誠実というモノ。
「大人はいいのよ、子どもはダメって事なのよ」
「えぇ、それってワガママっぽくない?」
「いいから! あとで魔法Tシャツ持ってきなさいよ?」
「お母さん、一応Cカップあるじゃん、わざわざこのTシャツ着なくてもいいじゃん。まだ欲望とかあるわけ?」
やれやれと小6の娘があきれると、母はバカ正直な声で反論した。娘を超えた巨乳になって優越感を味わいたいんだよと。
母の強烈な押しに優子は負けてしまった。仕方ないねと言った後、この魔法Tシャツはすごいよと室内の空気を切り替える。
「さっき買いに行ったら売り切れてた」
素直に自分の行動をうちあける母。すべての女のキモチに寄り添うこのTシャツは、一生の宝物にしなきゃいけないよねと、まるで女子高生みたいなノリで語ったりするのだった。
「そうよ、優子には巨乳が似合ってる。大きくてやわらかいおっぱい、それでこそ中野優子よ」
魔法Tシャツをゲットできるとあって母は浮かれている。でもそれ以上にウキウキしているのが、ドアの外で盗み聞ぎしていた真治だった。
(そうか……やっぱりお姉ちゃんはお姉ちゃんなんだ!)
母娘の会話を聞いていた真治はホッとした。大切なモノを失わくて済んだって、そんな感じで深呼吸をかます。それから居間に入ると、応接間から出てきた優子と、バッタリ出くわしたという演出をこさえた。
「お姉ちゃん」
ニコニコ顔で優子に声をかける。
「なによ」
ブルーデーを思わせるほど不機嫌な優子。
「ぼくさぁ、お姉ちゃんはやっぱり魅力的だと思うんだ」
「は?」
「うん、お姉ちゃんは魅力的な女の子。そう思う」
「急になに?」
「なんでもないよ、ただ大切なキモチを言っておきたかっただけ」
純真ボーイって印象的な笑顔で、真治は手を振ると先に階段を上がっていった。なんだあいつ? と首をかしげたものの、悪い気はしない優子だった。魔法Tシャツが母の手に渡っても、別にいいかと大きな心で思うことができていた。
ー誰も優子を気にしないー
びし! っと伝わるのはそういう空気だった。誰もまな板の優子を見ようとしない。まるで道端の石ころという感じで知らんぷり。
男子とか男性なんて、優子の乳をチラ見するのがお約束だった。でもまな板になってみると、見る気ねぇよ! っていじわるなオーラが漂っている。そんなこと、優子にとっては久しぶりすぎて衝撃だった。
「ね? 誰も優子なんか見ないでしょう?」
「ぅ……」
見られてもうれしくない! と言いたいところだが、誰も見ないと言われたら、それはそれでさみしさとか物悲しさをおぼえる。
「それに比べてわたしの胸は見られまくりだよ」
オホホと笑う香苗だった。事実、行き交う人間の多くが、特に男子や男性は香苗の乳具合を一瞥する。チラ! っと抜け目なく職人のように見る。それは本当なら優子が独占するはずのモノだった。
ーおぉ、小学生だけど巨乳気味かー
そういう心の声が聞こえる。むろんそれは香苗に対する賛辞であり、横にいる優子はどうでもよい存在。
「ま、まぁ……見られないから気が楽でいい」
「今だったら誰も優子の胸を触りたいとか思わないだろうねぇ」
「べ、べつに思われたくないし」
「優子、声がふるえてるよ。もしかしてくやしいの? あるいはさみしいの?」
「ち、ちがうし!」
そんな会話をやっているとき、ひとりの中学生らしき男子が後ろから駆けてきた。急ぎの用事でもあるのかな? と思いきや、フッと優子の方を見た。そして露骨なまでに顔と声で示したのである。
「なんだ……全然胸がないじゃん、期待ハズレかよ……」
つまりこのスケベ野郎というのは、後方から優子を見た時、こいつは乳のデカい女! と勝手にコーフンした。その期待がうらぎられてしまい、よっぽどがっかりしたのか、やや大きめの声で言うのだった。
「期待をうらぎるようなまな板は家に引っ込んでりゃいいんだよ」
そういってケケっと笑いサッサと立ち去って行った。
「むかつくぅ!」
ぐぎぎ! っと怒りをにじませる優子だった。
「まぁまぁ、内側にはデカくてやわらかいのがあるんだからさ、ああいう奴はバカにして笑ってやればいいじゃん」
「で、でもまな板とかって……」
「あぁ、優子はまな板と言われた事がないからねぇ」
一応気づかう香苗だった。でもその目は自己満足の方にひたっている。行き交う人間がチラッとふくらみを見れば、デザートを勝ち取ったかのようによろこぶ。
「ったく……どいつもこいつも」
香苗の真横を歩きながら優子は腹が立った。誰も自分を見ない。今まで散々に豊満バストを見入っていたくせに、手のひらを返したように見ない。お前なんかに興味はないという、アウト・オブ・眼中って感じだ。
そのくせ香苗の方をチラ見するやつは多い。お! もしかして巨乳か!? って目を一瞬向けたりする。
「香苗、胸ばっかり見られてイヤにならない?」
「全然。むしろめっちゃくちゃ快感。これだけでイキそうだよ」
香苗に浮かぶ大満足の顔。特大の余裕を持ったという顔だ。いかなる苦悩も乗り越えられるという笑みである。
「でも香苗、そろそろ着替え直した方がよくない?」
優子はちょっと不安気な声を出す。このまま家に帰ると家族に見られる。どっちの家族もびっくりすることは確実。
「大丈夫、うちのお母さんはユーモアーが備わってるから」
「ユーモアーの問題なの?」
「優子のお母さんはダメなの?」
「絶対につっこまれると思う」
「だったらさ、これくらいいいじゃん! とか言い返すんだよ。それが小6の乙女ってもんだよ、ちがう?」
香苗のかっこうよい言いっぷりに優子はシビレた。その気になりやすいって特徴のど真ん中に硬球がヒットした。
「うん、このまま帰るよ」
2割くらいのドキドキと8割ほどの勇気。その融合体を胸のふくらみに入れ込んで、優子は自宅に戻った。
「ただいま」
「おかえり」
母の声というのはトイレから聞こえた。あぁ、今なら間に合う、さっさと手洗いして二階の部屋に入ろう! と、早くも乙女心は弱っちいモードに降格していた。でもそれを神さまがダメだと叱咤する。
洗面所から出たとき、母もトイレから出た。めでたくご対面というメロディーが空気中に流れる。母は特に気にせず居間へ行きかけた。でもすぐにビリっと反応を示して、慌てて体の向きを変える。
「は? ゆ、優子?」
大げさなほど両目をパチクリさせる母。
「な、なに?」
ドッキン・ドッキンと心臓が緊張で固くなる優子。
「優子でしょう? 優子だよね?」
得体のしれない魔物でも見るような目をして、母はそっと左手を伸ばした。ドキ! っとしたが動けない優子、冷や汗しながら制止。
母の手は娘の頬にふれた。あぁ、このふっくらと色白の融合。これはまちがいなく優子だと思うのだが、それならこれは? という風に目線を下げていく。
「な、なに?」
「優子、どうしたの? なにこれ? おっぱいは?」
「あ、あるよ……」
「どこに? なんで母より大きいおっぱいがまな板になるわけ? 朝はあったじゃん、あれどこにやったの?」
少々コーフン状態の母は、真っ赤な顔の優子をつよく揺さぶる。ローマは一日にならず! とはいうが、地球崩壊も一日ではあらず! とか力説している。
「こ、これはその魔法のTシャツで……」
「魔法だぁ?」
母の顔にイラっと感がうかぶ。魔法なんて聞いて、あ、そうなんだ? とは言えないらしく、ふざけんなよ! という目つきになってきた。
そこで娘は仕方なく、ちょっと触ってみてよと訴えた。もちろん母はすぐに行動する。相手の恥じらいなど無関係に、サッと手を動かしピタ! っと平面Tシャツの胸へとあてたのだった。
ぼわん! ムニュ! っと豊かでやわらかい弾力が、すごい手触りとか揉み応えというモノが、母の手に当たる。外見からは想像できなかったモノに対して、母の脳内はブシューっと軽快な音を鳴らした。
「え? こ、この大きさとかやわらかい弾力とか……」
「ちょ、ちょっとお母さん」
優子の慌てる反応なんぞに興味はない! とばかり、母は攻撃するかのようにTシャツをまくり上げた。
プルン! ゆれ動いた白いフルカップ、そして優子の第二フェイスともいえる魅惑の谷間などが姿を現す。
「えぇ? 優子……こ、このおっぱい、どうやって隠してた?」
「だからその、これは魔法のTシャツなんだよ」
優子はTシャツをまくり上げられたまま、ブラのふくらみや谷間を見つめられたまま、本日の出来事をわかりやすく語った。それを聞く母の顔っていうのは、どうしたの? なんて思うくらい真剣だった。
「さ、300円? このTシャツが?」
「うん、だからさっくり買えたんだよ」
ここで数秒ほどの間が生じる。スワーっと薬品みたいな感覚が家中に満ちあふれる。そうして母は突然に、買い物を忘れていたと口にする。今からでも行ってくるわ! と、いきなり忙しいみたいに変貌した。
買い物かぁと小さな声でつぶやく娘。なんとなく母のやりたいことが分かった。でも止めるっていうのはできそうにないとも感じた。
「なんかつかれた……」
ほんのり疲労を精神に抱え、ゆっくり階段を上がっていこうとする優子。すると母と入れ替わるようにして、中野家のおっぱい星人こと真治が帰宅。
「ただいま」
小4ボーイの声を聞いたとき、小6の姉は足を止めた。ここはぜひとも弟の反応を見たいと思った。いや、見るべき! という気さえした。
真治は手洗いを済ませると、ノドの渇きを解決しようと居間でジュースを飲むことにする。トクトクと音を立てるオレンジ色の液体が、透明グラスに注がれていく。それを左手に持ち、クッと顔を傾ける。
「真治、ちょっと」
ここで姉が居間にやってきた。
「うん?」
深くかんがえる事もなく、クイっと姉の方を見る弟。するとオレンジジュースを気前よくテーブルに吹き出してしまう。
「ゴホゴホ……ぅ」
慌ててティッシュをつかむ。ズワーっとテーブルを拭いた後、もう一枚でおのれの口を拭く。そして先ほどの母みたいな目をやる。
「なに? どうした?」
フン! っと冷静に立つ姉。
「な、何って……」
「だから言いたいことがあるなら言えって」
「ほ、ほんとうにお姉ちゃんなの?」
「どういう意味?」
「だ、だって……お、お、おっぱいが……」
「はぁ? おっぱいがなんだって?」
「おっぱいが消えてる?」
そういうとゴクリ生唾を飲んだ。今の姉から見えるのは、着痩せでもなければ乳隠しでもない。もはや別体への移動という感じそのもの。中野優子の弟して、これほど驚くことは他にない。
対する優子はたのしみたいので、まぁ仕方ない! みたいな表情をして言うのだった。これからはずっとこうなんだよねぇと。
「ず、ずっと?」
「実はさ、おっぱい小さくする手術したんだ」
「うそ!、マジで?」
「だってさ小6で巨乳とか女神過ぎるじゃん? これからは平凡な女になろうと思ったんだ」
通常ならこんなウソは通じない。でも魔法Tシャツを着ていれば、このようなウソもリアルとして人を信じさせる。
「じゃぁ、もう巨乳じゃないの?」
「うん、もう終わったんだ」
「あ、あのおっぱいはもうないの?」
「ないよ。でもさ、今の方がよくない?」
そう言って軽く両腕を広げる。その内側にはフルっと揺れるふくらみがあっても、表向きは真っ平ら。それは真治の顔つきを、ずいぶんさえないモノに切り替えさせていった。
「べつに……いいんじゃないの」
まったくやる気のない声と顔。真治の変わりっぷりは電流のように速く、もうすでに優子を見ようとしはない。興味の対象外、見る価値なし、横にいたってチラ見さえする気なしと顔に書いてある。
「真治、こっち見なさいよ」
誘ってみれば従いはするが、つまらなそうな目が印象的だ。そこには優子を見るとき専用の、ドキドキしながらチラチラ! って色合いが皆無。まるっきりつめたい人って目線そのもの。
「じゃぁぼく宿題してくるから」
さようなら! と別れを告げるような声色。
「まったくなんてやつ!」
うぐぐ! とご立腹な優子だった。豊かなふくらみばかり見られると、それはそれでイライラさせられる。弟が姉の心をイラつかせた回数はもはや天文学的数字。しかしまったく興味がないって豹変されると、別のイラつきが発生してしまう。
「こうなったら……ひたすらこのTシャツで生活してやる」
優子があつい決意を固めた。ほんとうに消えてしまうわけじゃないから、内側にはふっくらやわらかい弾力はちゃんとあるから、外側が貧しくなっても関係ない。むしろ見た目に反するお金持ちって考えればよいとした。
「ただいま」
ここで母の帰ってきた声と音がする。ついで優子の名前を呼ぶ声もする。
「なに?」
魔法Tシャツを買ったのかな? なんて思っていたら、クイクイっと応接間に手招きされた。
「優子、これあんたにあげる」
そう口にする母は、買い物袋からすっきり感のあるパープルTシャツを取り出す。それはたしかに優子に合いそうだった。
「あ、でもね、魔法Tシャツと交換よ」
「へ? こ、交換?」
「そ、小学生が偽りの人生送っちゃダメ。女は正直に生きないとダメ、だからそれはわたしがもらうわ」
「えぇ、そんな急に言われても……」
「大丈夫、それMサイズでしょう? わたしでも着れる」
「そういう問題じゃないよ」
ここは突っ込ませてもらおうと優子が口を開く。女は正直にとかいうが、魔法Tシャツを欲しがる時点で、母もまた正直にあらず。言ってみれば不誠実というモノ。
「大人はいいのよ、子どもはダメって事なのよ」
「えぇ、それってワガママっぽくない?」
「いいから! あとで魔法Tシャツ持ってきなさいよ?」
「お母さん、一応Cカップあるじゃん、わざわざこのTシャツ着なくてもいいじゃん。まだ欲望とかあるわけ?」
やれやれと小6の娘があきれると、母はバカ正直な声で反論した。娘を超えた巨乳になって優越感を味わいたいんだよと。
母の強烈な押しに優子は負けてしまった。仕方ないねと言った後、この魔法Tシャツはすごいよと室内の空気を切り替える。
「さっき買いに行ったら売り切れてた」
素直に自分の行動をうちあける母。すべての女のキモチに寄り添うこのTシャツは、一生の宝物にしなきゃいけないよねと、まるで女子高生みたいなノリで語ったりするのだった。
「そうよ、優子には巨乳が似合ってる。大きくてやわらかいおっぱい、それでこそ中野優子よ」
魔法Tシャツをゲットできるとあって母は浮かれている。でもそれ以上にウキウキしているのが、ドアの外で盗み聞ぎしていた真治だった。
(そうか……やっぱりお姉ちゃんはお姉ちゃんなんだ!)
母娘の会話を聞いていた真治はホッとした。大切なモノを失わくて済んだって、そんな感じで深呼吸をかます。それから居間に入ると、応接間から出てきた優子と、バッタリ出くわしたという演出をこさえた。
「お姉ちゃん」
ニコニコ顔で優子に声をかける。
「なによ」
ブルーデーを思わせるほど不機嫌な優子。
「ぼくさぁ、お姉ちゃんはやっぱり魅力的だと思うんだ」
「は?」
「うん、お姉ちゃんは魅力的な女の子。そう思う」
「急になに?」
「なんでもないよ、ただ大切なキモチを言っておきたかっただけ」
純真ボーイって印象的な笑顔で、真治は手を振ると先に階段を上がっていった。なんだあいつ? と首をかしげたものの、悪い気はしない優子だった。魔法Tシャツが母の手に渡っても、別にいいかと大きな心で思うことができていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる