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ウルトラ巨乳マウスパッドが欲しい!
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ウルトラ巨乳マウスパッドが欲しい!
「あそこだ」
真治のとなりを歩く橘高重が声を出し人差し指を前に向ける。
「ユメの下支えかぁ……店の名前にしては冴えないねぇ」
あんまり期待していないって顔の真治は、センスのない名前を持つ店にアクビをした。
「いや、名前は冴えないけど、おもしろいアイテムが一杯あるらしいぞ」
友だちに話を聞いたという重は、興味津々にズンズン歩く。たのしいアイテムからお色気まで揃うビッグな店らしく、金さえあればどんなユメも支えてくれるのだという。
「ま、ちょっと入ってみようか」
正面まで来るとちょっと期待感が動いたらしい。真治は重と共に出来て間もないピカピカの店内に進入。
「先にさぁ、ユメアイテムコーナーに行かない?」
重は入店してすぐ案内板を指差す。3階はこういうフロアですよ! というのを目にして、ぜひ見てみたい! とうずいている。
「ユメのアイテムってどんなだろうね」
ウィーンと自動で上がる階段にのっかり、真治は期待度を40%くらい持った。ユメとか言えば人は惹かれてしまうが、それは食い物にされやすい事を知っていた。外面がよくて中身はヘボい商品なんてよくある話。でもそれが分かっていながら、期待してしまうのが人の哀しい性質。
「さて……どんなモノがありますやら」
シュワ! っとエスカレーターから離れた真治、デカく広くきれいなフロアに突入。そこは思ったよりは妙な魅力に溢れていた。いったい誰が作った? 他に売っている店なんかあるの? という、怪しげ満載なアイテムがてんこ盛り。アマゾンの森林に迷い込んでドキドキハラハラするようなキブンが味わえる。
「真治、ちょっと、ちょっと」
ここで重が息を切らしながら近づいてくる。
「なに?」
「いいから来いよ」
「んぅもう……」
コーフンしまくりの重に引っ張られ、とある場所にたどり着いた真治が目にしたのは、顔は萌キャラで胴体は巨乳マウスパッドという商品。それだけならよくある萌え商品。でもそれはひと味もふた味もちがっていた。
「な……」
真治がギョッとしたのはムリもない。まずサイズがデカい。デカい事を差別するな! と主張しているかのようにデカい。それは机の上にのっけるのが大変ってくらいのモノ。マウスパットとしては狂気じみたスケール。
しかし! 胴体がその大きさで、それに見合うだけ豊満なバストが付いているとなればドキドキさせられてしまうのが男という生き物。
「デカいよなぁ、バスト93cmのFカップ実寸らしいぞ」
「じ、実寸って……ほんとうの大きさってことだよね?」
「こんなにデカかったらさ……楽しみ方は無限大って感じだよなぁ」
欲しい! めちゃくそに欲しい! と真治のハートが動き出す。でもプライドってやつがあるので、そうかんたんに喜ぶわけにはいかなかった。
「だけどさぁ、橘高……い、いくら実寸とか巨大とか言ってもさぁ、しょせんはマウスパッドだから、別にそんな……リアルおっぱいと同じキモチ良さが味わえるわけじゃない」
冷静な男を振る舞う真治がいた。でもそれは非常に重要な事だった。いくら実寸とか言われても、肝心の魅力が低品質なフェイクでは興ざめ。それで購入して場所に困るとかなれば笑えないギャグだ。
「まぁなぁ……」
重も一瞬テンションが下がりかけた。しょせんユメはユメ、ユメはどんなにがんばっても現実にはならないと思いかけた。しかしそのとき、商品パッケージのある部分に書かれているモノを目にする。
「お、おい真治……」
「うん?」
「す、すごい事が書いてあるぞ」
「どんな?」
「大きくてやわらかい弾力のおっぱいをテッテー的に研究し、その気持ち良い弾力や手触りを完全再現することに成功。これがあればもうリアル女性は不要となる。この商品は永遠にあなたの恋人になるでしょう……だって!」
ショーゲキ! ウルトラにショーゲキ! まさかそんな、それってマジで奇跡じゃん! というおどろき電流が走った。真治は赤い顔をして悩んでしまった。いくらプライドがあるといっても、本音としては商品が欲しいからだ。
(大きくてやわらかい弾力のおっぱいを再現、そのキモチ良さが完全に味わえるって……)
内心ドキドキしていたら、頭の中に姉という女子の姿が浮かんだ。小6でEカップという巨乳で豊かでやわらかい弾力の持ち主。
(も、もし……このマウスパッドを買ったら……お姉ちゃんとかお姉ちゃんのおっぱいにドキドキする必要はなくなるんだ。ぼくは解放されて自由なシアワセを手に入れられるんだ)
―これはもう買うしかないでしょうー
天からの声が脳に響いたので、真治はそれとなく値札を見た。こういうスーパーアイテムはバカ高い事が多い。ユメとかなんとか言いながら、最後は結局お金というのが世の常だから。
「え、えぇ?」
マジでおどろく真治の目が見たのは、魅力的なおっぱい特価という数字。なんと2000円で購入できるという。真治は何回も0の数を見返した。そうして2000円だったら買うと決めてしまう。
「真治、ほんとうに買うのか?」
「いま……サイフの中に2500円あるんだ。税込みで2000円なら買える。これさえあれば人生だって変えられる。もう悲しくドキドキしたりしなくてもいいんだ。好きなだけ自由におっぱいとか谷間に甘えられるんだ」
真治の目がちょっと危なっかしい。このアイテムを買うためなら、邪魔するやつは誰だって消し去ると言わんばかりになっている。
「買っちゃえ真治、シアワセになってしまえ!」
「うん、シアワセになる」
そんなこんなで真治はほんとうにバカでかいユメアイテムを購入した。でっかい袋に入れてもらって、重いなぁ……と思いながら歩いて家を目指す。
橘高重は別れ間際にこう言った。絶対に家族、とくにお姉ちゃんには見つかるなよ! と。女はそういうアイテムをすぐに捨てたりする、つまり女はロマンスを理解できない生き物、だから気をつけろよ! とアドバイスしてくれた。
(お姉ちゃんがこのアイテムを見たら……絶対お母さんに言いつけたり捨てたりするだろうなぁ。じゃぁおっぱい触らせてよ! とか言ったらビンタされちゃうだろうなぁ)
うんせうんせ……と歩き考え事をしていたら、今日の真治は神さまに愛されていないのだと知る。
「真治!」
突如として耳慣れた女子の声。それは言うまでもなく身内の声。つまり姉という巨乳女子こと中野優子。
「あぅ!」
たまらず変な声が出かかる。この展開はあまりにひどいだろう! って、神さまに文句を言うヒマなんかどこにもない。
「真治、何持ってんの?」
やはり……当然! という感じで優子がでっかい袋を意識する。
「こ、これはその……」
こんな風に詰まったり間を生じさせるから、いけない話だってバレてしまう。バレた後では何を言おうとムリ。女ってやつは男を追い詰めるのが大好きだから。
「こ、これは……ね、粘土細工……」
「粘土細工ぅ? どんな? 見せてみ」
「だ、ダメだよ……こ、これは芸術品なんだから」
「はぁ? 真治、一体何を持ってる!」
こうなるともうカンペキにダメだった。優子はケーサツ犬で真治はオドオドする容疑者。優秀なるケーサツ犬に勝てる容疑者などいないのだ。
「見せろ!」
「ダメってば!」
姉と弟が路上ですったもんだを起こす。真治はとりあえず必死にがんばってみた。その努力は男なら誰しもが評価するだろうレベル。でも不幸なことに持っているモノがデカい、ゆえに袋ってやつもデカい。それでハデに動いたりすると、袋の中がチラっと優子に見えてしまう。
「あん?」
思わず両目をぱちくりさせる優子。いま一瞬袋の中に豊満な谷間というモノが見えた。それはマウスパッドというモノなのだけど、あまりにもデカいから優子は理解できなかった。
「そ、それ……」
ちょいと動きを止めた優子は、思わず自分の胸のふくらみに手を当てる。小6ながらも89cmというボリュームで、上から見れば自分でも大きいと思わずにいられないやわらかい弾力の美巨乳。それよりもうちょい大きなモノが袋の中に入っているように見えたら、マウスパッドなどとは思いもしない。
「くわしい話は家の中で聞こうか」
優子いう名のデカに連行される真治という罪人がいた。家は空っぽだったから、完全に姉が空気を支配する。
「ほれ、テーブルの上に袋の中身を出すべし!」
その命令はずいぶんと屈辱的なモノだった。プライバシーに泥を塗られ、自分のプライドを笑われるような感があり、男に生まれた哀しさですら笑いのネタにされているように思える。
ドーン! と真治によってテーブルにのっけられたブツ。それを見て優子はほんのり口を開けて固まる。よく聞くポカーン……って表現そのもの。
「これ……マウスパッドです」
正直に購入罪を認める弟。
「マウスパッドぉ?」
我に戻った優子、真治の頬を情け容赦なく思いっきりつねりながら言い放った。こんなデカいマウスパッドがあるか! と。
「いててて……だって書いてあるじゃん……マウスパッドって」
「何がマウスパッドよ……え、Fカップおっぱいの実寸? Fカップ? 93cmの実寸? ねぇ、マウスパッドでこんなにデカい乳を買う必要がどこにあるの? ねぇ? ねぇ? ねぇ?」
優子は明らかに腹を立てている。弟のバカさ加減が許せない事もあろうし、小6にして89cmという自身の豊満を小物扱いされたことがムカつくって感情もあるみたいだ。
バッカじゃないの? ときびしい口調を放つ姉。真治なんかさっさと死ねばいいのにと辛辣な表現が次から次に飛び出す。
「まったく男っていうのは……どうしてこんなにバカなの?」
呆れまくる優子は商品を見つめるが、そこでまたある事に気づいた。それはその商品が最大のウリとすること。
「大きくてやわらかい弾力のおっぱいをテッテー的に研究? その気持ち良い弾力や手触りを完全再現することに成功? これがあればもうリアル女性は不要となる? この商品は永遠にあなたの恋人になるでしょう?」
優子はそのアピール文を到底無視できなかった。早くからバスト豊かな女子として、この一文を無視するなんて事は絶対にありえなかった。
「ちょ、ちょっとお姉ちゃん」
真治が慌てるのは優子が外の包みを開け始めたから。どこぞに突撃するような目でビリビリ破いていく姿は、ちょっとした狂気に見えなくもない」
そうして中を完全に取り出したら、優子はまったく遠慮することなく、所詮テメェはつくりもの! と言わんばかりに、乱暴な手つきでマウスパッドの乳を両手でつかみ揉む。それを見た真治は、その役目はぼくにやらせてと言いたかったが、フンイキ的にはとても言えない。
「は?」
ピリピリっと電流を食らったような顔をする優子。スーッと色白な両手をマウスパッドから離すと、クッと右手を自分のふくらみに当てて少しばかり揉む。それから小さな声でつぶやく。
「プッ! 笑っちゃう……ま、まぁ……真治みたいなバカはこのマウスパッドでシアワセになってしまえばいいのかな。これでキモチ良さを完全再現とか、リアル女性が不要とか、一瞬気にしてしまった自分が愚かだった」
急に表情がゆるい感じになる優子。一見やさしそうに見えるが、バカな存在を根底から哀れむような感じに満ちている。
「真治、ジャマしてごめんね。ま、せいぜい楽しんで」
こういう展開になると逆の意味でたまらない。見捨てられてしまったようなさみしさと悔しさが真治の胸を突く。
「ったくお姉ちゃんは横暴だから……」
腹を立てる弟だったが、それが平穏という神さまの怒りを買ったらしい。マウスパッドに向けようと思った手が、どうしてかテーブル上のグラスに当たった。それが空っぽなら問題なし、入っていたのが水だったらまだだいじょうぶ、でも濃厚にしてドロドロなトマトジュースではたまらない。
「あぁ!」
ドッパーン! 大量のトマトジュースがマウスパッドに襲いかかる。豊満な谷間だけでなく、全体をカンペキに濡らす。
「早く拭かないと」
買ったばかりでまだ楽しんでいない! と、本気で焦ったのがいけなかった。ティッシュを取ろうとした手が、今度は醤油入れに当たってしまう。
ドワー! と大量の醤油が商品にぶっかかる。それはもうマウスパッドが終わったことを意味していた。
「あ~かわいそう。せっかくユメが手に入ったのにねぇ」
優子はたのしそうに言うと、哀しげな目つきの弟が見る前で、ちょっとばかり自分のTシャツ(谷間の辺り)に手を当てにっこりやる。それはシアワセになれると思った真治が、ユメの回収という現実に負けた瞬間だった。
「あそこだ」
真治のとなりを歩く橘高重が声を出し人差し指を前に向ける。
「ユメの下支えかぁ……店の名前にしては冴えないねぇ」
あんまり期待していないって顔の真治は、センスのない名前を持つ店にアクビをした。
「いや、名前は冴えないけど、おもしろいアイテムが一杯あるらしいぞ」
友だちに話を聞いたという重は、興味津々にズンズン歩く。たのしいアイテムからお色気まで揃うビッグな店らしく、金さえあればどんなユメも支えてくれるのだという。
「ま、ちょっと入ってみようか」
正面まで来るとちょっと期待感が動いたらしい。真治は重と共に出来て間もないピカピカの店内に進入。
「先にさぁ、ユメアイテムコーナーに行かない?」
重は入店してすぐ案内板を指差す。3階はこういうフロアですよ! というのを目にして、ぜひ見てみたい! とうずいている。
「ユメのアイテムってどんなだろうね」
ウィーンと自動で上がる階段にのっかり、真治は期待度を40%くらい持った。ユメとか言えば人は惹かれてしまうが、それは食い物にされやすい事を知っていた。外面がよくて中身はヘボい商品なんてよくある話。でもそれが分かっていながら、期待してしまうのが人の哀しい性質。
「さて……どんなモノがありますやら」
シュワ! っとエスカレーターから離れた真治、デカく広くきれいなフロアに突入。そこは思ったよりは妙な魅力に溢れていた。いったい誰が作った? 他に売っている店なんかあるの? という、怪しげ満載なアイテムがてんこ盛り。アマゾンの森林に迷い込んでドキドキハラハラするようなキブンが味わえる。
「真治、ちょっと、ちょっと」
ここで重が息を切らしながら近づいてくる。
「なに?」
「いいから来いよ」
「んぅもう……」
コーフンしまくりの重に引っ張られ、とある場所にたどり着いた真治が目にしたのは、顔は萌キャラで胴体は巨乳マウスパッドという商品。それだけならよくある萌え商品。でもそれはひと味もふた味もちがっていた。
「な……」
真治がギョッとしたのはムリもない。まずサイズがデカい。デカい事を差別するな! と主張しているかのようにデカい。それは机の上にのっけるのが大変ってくらいのモノ。マウスパットとしては狂気じみたスケール。
しかし! 胴体がその大きさで、それに見合うだけ豊満なバストが付いているとなればドキドキさせられてしまうのが男という生き物。
「デカいよなぁ、バスト93cmのFカップ実寸らしいぞ」
「じ、実寸って……ほんとうの大きさってことだよね?」
「こんなにデカかったらさ……楽しみ方は無限大って感じだよなぁ」
欲しい! めちゃくそに欲しい! と真治のハートが動き出す。でもプライドってやつがあるので、そうかんたんに喜ぶわけにはいかなかった。
「だけどさぁ、橘高……い、いくら実寸とか巨大とか言ってもさぁ、しょせんはマウスパッドだから、別にそんな……リアルおっぱいと同じキモチ良さが味わえるわけじゃない」
冷静な男を振る舞う真治がいた。でもそれは非常に重要な事だった。いくら実寸とか言われても、肝心の魅力が低品質なフェイクでは興ざめ。それで購入して場所に困るとかなれば笑えないギャグだ。
「まぁなぁ……」
重も一瞬テンションが下がりかけた。しょせんユメはユメ、ユメはどんなにがんばっても現実にはならないと思いかけた。しかしそのとき、商品パッケージのある部分に書かれているモノを目にする。
「お、おい真治……」
「うん?」
「す、すごい事が書いてあるぞ」
「どんな?」
「大きくてやわらかい弾力のおっぱいをテッテー的に研究し、その気持ち良い弾力や手触りを完全再現することに成功。これがあればもうリアル女性は不要となる。この商品は永遠にあなたの恋人になるでしょう……だって!」
ショーゲキ! ウルトラにショーゲキ! まさかそんな、それってマジで奇跡じゃん! というおどろき電流が走った。真治は赤い顔をして悩んでしまった。いくらプライドがあるといっても、本音としては商品が欲しいからだ。
(大きくてやわらかい弾力のおっぱいを再現、そのキモチ良さが完全に味わえるって……)
内心ドキドキしていたら、頭の中に姉という女子の姿が浮かんだ。小6でEカップという巨乳で豊かでやわらかい弾力の持ち主。
(も、もし……このマウスパッドを買ったら……お姉ちゃんとかお姉ちゃんのおっぱいにドキドキする必要はなくなるんだ。ぼくは解放されて自由なシアワセを手に入れられるんだ)
―これはもう買うしかないでしょうー
天からの声が脳に響いたので、真治はそれとなく値札を見た。こういうスーパーアイテムはバカ高い事が多い。ユメとかなんとか言いながら、最後は結局お金というのが世の常だから。
「え、えぇ?」
マジでおどろく真治の目が見たのは、魅力的なおっぱい特価という数字。なんと2000円で購入できるという。真治は何回も0の数を見返した。そうして2000円だったら買うと決めてしまう。
「真治、ほんとうに買うのか?」
「いま……サイフの中に2500円あるんだ。税込みで2000円なら買える。これさえあれば人生だって変えられる。もう悲しくドキドキしたりしなくてもいいんだ。好きなだけ自由におっぱいとか谷間に甘えられるんだ」
真治の目がちょっと危なっかしい。このアイテムを買うためなら、邪魔するやつは誰だって消し去ると言わんばかりになっている。
「買っちゃえ真治、シアワセになってしまえ!」
「うん、シアワセになる」
そんなこんなで真治はほんとうにバカでかいユメアイテムを購入した。でっかい袋に入れてもらって、重いなぁ……と思いながら歩いて家を目指す。
橘高重は別れ間際にこう言った。絶対に家族、とくにお姉ちゃんには見つかるなよ! と。女はそういうアイテムをすぐに捨てたりする、つまり女はロマンスを理解できない生き物、だから気をつけろよ! とアドバイスしてくれた。
(お姉ちゃんがこのアイテムを見たら……絶対お母さんに言いつけたり捨てたりするだろうなぁ。じゃぁおっぱい触らせてよ! とか言ったらビンタされちゃうだろうなぁ)
うんせうんせ……と歩き考え事をしていたら、今日の真治は神さまに愛されていないのだと知る。
「真治!」
突如として耳慣れた女子の声。それは言うまでもなく身内の声。つまり姉という巨乳女子こと中野優子。
「あぅ!」
たまらず変な声が出かかる。この展開はあまりにひどいだろう! って、神さまに文句を言うヒマなんかどこにもない。
「真治、何持ってんの?」
やはり……当然! という感じで優子がでっかい袋を意識する。
「こ、これはその……」
こんな風に詰まったり間を生じさせるから、いけない話だってバレてしまう。バレた後では何を言おうとムリ。女ってやつは男を追い詰めるのが大好きだから。
「こ、これは……ね、粘土細工……」
「粘土細工ぅ? どんな? 見せてみ」
「だ、ダメだよ……こ、これは芸術品なんだから」
「はぁ? 真治、一体何を持ってる!」
こうなるともうカンペキにダメだった。優子はケーサツ犬で真治はオドオドする容疑者。優秀なるケーサツ犬に勝てる容疑者などいないのだ。
「見せろ!」
「ダメってば!」
姉と弟が路上ですったもんだを起こす。真治はとりあえず必死にがんばってみた。その努力は男なら誰しもが評価するだろうレベル。でも不幸なことに持っているモノがデカい、ゆえに袋ってやつもデカい。それでハデに動いたりすると、袋の中がチラっと優子に見えてしまう。
「あん?」
思わず両目をぱちくりさせる優子。いま一瞬袋の中に豊満な谷間というモノが見えた。それはマウスパッドというモノなのだけど、あまりにもデカいから優子は理解できなかった。
「そ、それ……」
ちょいと動きを止めた優子は、思わず自分の胸のふくらみに手を当てる。小6ながらも89cmというボリュームで、上から見れば自分でも大きいと思わずにいられないやわらかい弾力の美巨乳。それよりもうちょい大きなモノが袋の中に入っているように見えたら、マウスパッドなどとは思いもしない。
「くわしい話は家の中で聞こうか」
優子いう名のデカに連行される真治という罪人がいた。家は空っぽだったから、完全に姉が空気を支配する。
「ほれ、テーブルの上に袋の中身を出すべし!」
その命令はずいぶんと屈辱的なモノだった。プライバシーに泥を塗られ、自分のプライドを笑われるような感があり、男に生まれた哀しさですら笑いのネタにされているように思える。
ドーン! と真治によってテーブルにのっけられたブツ。それを見て優子はほんのり口を開けて固まる。よく聞くポカーン……って表現そのもの。
「これ……マウスパッドです」
正直に購入罪を認める弟。
「マウスパッドぉ?」
我に戻った優子、真治の頬を情け容赦なく思いっきりつねりながら言い放った。こんなデカいマウスパッドがあるか! と。
「いててて……だって書いてあるじゃん……マウスパッドって」
「何がマウスパッドよ……え、Fカップおっぱいの実寸? Fカップ? 93cmの実寸? ねぇ、マウスパッドでこんなにデカい乳を買う必要がどこにあるの? ねぇ? ねぇ? ねぇ?」
優子は明らかに腹を立てている。弟のバカさ加減が許せない事もあろうし、小6にして89cmという自身の豊満を小物扱いされたことがムカつくって感情もあるみたいだ。
バッカじゃないの? ときびしい口調を放つ姉。真治なんかさっさと死ねばいいのにと辛辣な表現が次から次に飛び出す。
「まったく男っていうのは……どうしてこんなにバカなの?」
呆れまくる優子は商品を見つめるが、そこでまたある事に気づいた。それはその商品が最大のウリとすること。
「大きくてやわらかい弾力のおっぱいをテッテー的に研究? その気持ち良い弾力や手触りを完全再現することに成功? これがあればもうリアル女性は不要となる? この商品は永遠にあなたの恋人になるでしょう?」
優子はそのアピール文を到底無視できなかった。早くからバスト豊かな女子として、この一文を無視するなんて事は絶対にありえなかった。
「ちょ、ちょっとお姉ちゃん」
真治が慌てるのは優子が外の包みを開け始めたから。どこぞに突撃するような目でビリビリ破いていく姿は、ちょっとした狂気に見えなくもない」
そうして中を完全に取り出したら、優子はまったく遠慮することなく、所詮テメェはつくりもの! と言わんばかりに、乱暴な手つきでマウスパッドの乳を両手でつかみ揉む。それを見た真治は、その役目はぼくにやらせてと言いたかったが、フンイキ的にはとても言えない。
「は?」
ピリピリっと電流を食らったような顔をする優子。スーッと色白な両手をマウスパッドから離すと、クッと右手を自分のふくらみに当てて少しばかり揉む。それから小さな声でつぶやく。
「プッ! 笑っちゃう……ま、まぁ……真治みたいなバカはこのマウスパッドでシアワセになってしまえばいいのかな。これでキモチ良さを完全再現とか、リアル女性が不要とか、一瞬気にしてしまった自分が愚かだった」
急に表情がゆるい感じになる優子。一見やさしそうに見えるが、バカな存在を根底から哀れむような感じに満ちている。
「真治、ジャマしてごめんね。ま、せいぜい楽しんで」
こういう展開になると逆の意味でたまらない。見捨てられてしまったようなさみしさと悔しさが真治の胸を突く。
「ったくお姉ちゃんは横暴だから……」
腹を立てる弟だったが、それが平穏という神さまの怒りを買ったらしい。マウスパッドに向けようと思った手が、どうしてかテーブル上のグラスに当たった。それが空っぽなら問題なし、入っていたのが水だったらまだだいじょうぶ、でも濃厚にしてドロドロなトマトジュースではたまらない。
「あぁ!」
ドッパーン! 大量のトマトジュースがマウスパッドに襲いかかる。豊満な谷間だけでなく、全体をカンペキに濡らす。
「早く拭かないと」
買ったばかりでまだ楽しんでいない! と、本気で焦ったのがいけなかった。ティッシュを取ろうとした手が、今度は醤油入れに当たってしまう。
ドワー! と大量の醤油が商品にぶっかかる。それはもうマウスパッドが終わったことを意味していた。
「あ~かわいそう。せっかくユメが手に入ったのにねぇ」
優子はたのしそうに言うと、哀しげな目つきの弟が見る前で、ちょっとばかり自分のTシャツ(谷間の辺り)に手を当てにっこりやる。それはシアワセになれると思った真治が、ユメの回収という現実に負けた瞬間だった。
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