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優子、萌えゲーにハマる(目指せななみのビキニ姿)7

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優子、萌えゲーにハマる(目指せななみのビキニ姿)7

 学校から帰宅して夜になるまでの昼とか夕方っていうのは、だいたいにおいて母が家にいる。その場合、母は居間のテレビを見まくりが多い。一応頼めばゲームをさせてくれるが長時間は禁止。しかも萌えゲーにはあまりいい顔をしないと来ている。

 というわけで優子と真治は早起きしてゲームするが軸となる。今朝も午前3時40分に起きてゲームを開始。一応それにそなえて早寝はしているもののやはり眠い。

「なんで、おかしいじゃんか。なんで今もってななみはスクール水着ばっかりなの?」

 優子が耐えられないという声を出した。

「なんかあるのかもしれないね」

 姉の抱えるフラストレーションは弟の抱えるモノと同じ。よって真治もイライラが拭えないって顔をする。具体的に言うと……日曜日前にはななみをデートに誘って、日曜日になったらデートをくり返すって単純なモノではないからストレスがたまる。望んでもいない他の女が主人公にどんどん興味を持ち、誘わなかったら怒り狂うという設定がプレーヤーを苦しめる。
 
 つまり、ななみをデートに誘ったら、つぎは興味のない他女子をデートに誘わなければならない。しかもななみを誘うとしてもプールばっかり続ける事ができないので、やればやるほど目的地が遠のいていく。

「絶対になにかある」

 真治曰く、苦労してやっとプールに誘ってもひたすらスクール水着ばかりでてくるのはおかしい。主人公に対する好感度がかなり高いことを思えば、何かが引っ掛かっている可能性あり。

「お姉ちゃん、ここはネットで攻略法を見ようよ」

「ん……」

 ここで優子が豊かにしてやわらかい弾力に満ちた胸のふくらみいっぱいに思い悩む。ネットの攻略法を見るというのは、何より欲しているお目当ての画像を見るわけではない。あくまでもわからない問題の解き方を教えてもらうという、いわば参考書を覗くというモノ。

 しかし……頼ってもいいのだろうか、すべて自分の力でやり遂げるのが命を燃やすって事ではないのだろうかと優子は思うわけで、安易に逃げる癖が付くと達成感が薄まるのでは? という気もする。

「でもさぁ、お姉ちゃん……」

「なに?」

「もしさぁ、3年間卒業するまでプレイしてさぁ、それでビキニ姿が拝めなかったらきつくない? また最初からやり直しだよ? そうなった場合、もしかすると何ヶ月とか何年とか、場合によっては何十年くらいかかってしまうかもしれないよ」

「う……ん……」

 真治の言う通りかもしれない……と思った優子、これは逃げではなく正しい戦いを成すための勉強なのだって思いを受け入れるとした。

「じゃぁ真治、ちょっと調べてみて」

「了解!」

 真治はスマホを手にして心を震わせた。これは決して逃げじゃない、そして問題という氷が解けさえすれば輝かしいゴールにたどり着けるとキモチが高ぶる。

「あ、なるほど」

「なに、どうしたの?」

「えっとね、まずはななみを駅前モール内のアパレルショップに誘わないとダメなんだって」

「はぁ? アパレルショップ?」

「好感度が劇高な時に誘うと、ちょっといいかな? とかななみの方から言ってきて、どんなビキニがわたしに似合うと思う? って意見を求めてくるらしい。そしてプレーヤーの選んであげたビキニを、つぎのプールか海デートでななみが着てくれるんだって。この流れを経由しないとななみの水着姿は一生拝めないって書いてあるよ」

「くぅ……そんなルートがあったとは不覚!」

 ワナワナと怒りに震える優子だった。しかし問題点がわかれば光が見えるってことだから気を取り直す。

「くぅ……答えがわかったのに、なかなかななみとデートできない」

「お姉ちゃん、ここはひとつ落ち着いて」

「わかってる、わかってるから」

 姉弟は同じ目標へ励まし合ったりしながら進んでいく。主人公の能力あげ、本命以外の女に対するゴマスリなど、余計な苦労が多くてストレスは下級のごとく温度を上げる。だがガマン、優子も真治も今は人生の苦難と戦う戦士なのだからと。

「ハァハァ……やっとななみをアパレルに誘えたよ、真治」

「やっと水着選びだね」

 ここで2人は今の時計を見た。そうするともう5時という現実があって、そろそろ注意が必要になってくる。安全のためには6時前に終了した方がよい。それからするとうっかり時間を忘れないようにせねばならない。

「だいじょうぶ、ななみの水着姿にたどり着くまでの時間はあるはずだから、絶対にこいつのビキニ姿を拝む!」

 優子は心を高ぶらせながらゲームを勧めた。そしてななみのための水着選びとなり問答無用でビキニ、それ以外はすべてゴミ! と鉄の意志で推し進めていく。

「よし、これでななみをプールに誘いさえすれば……」

 ゲームはスピーディーかつ滑らかに進行していく。時間がないという焦りを背負いながら、早く早くと思いながら、5時35分の辺りでやっとこさななみに電話をすることができた。

「ばっちりだよ真治、だって来週は他の女とデートする予定はないから」

 優子、来週の日曜日にデートしようと誘う、場所は言うまでもなくプール。するとななみは拒んだりしないどころか、言うことが少し変わったりする。

―うん、わかった。ちょっとドキドキするけれど……きみにも見て欲しいと思うから、だからたのしみに待ってるよー

「来たこれ、来たよね、絶対にビキニだよね!」

 優子、コントローラーを膝の上に置くと両手をギュッとにぎる。それから室内時計を見て……どうしようか……と思ったが続行すると決意。時間はもうギリギリだが急いで飛ばしていけばななみのビキニ姿を拝める。そうすればどんなに眠くても今日は元気に乗り越えられるだろうと信じて疑わないのだった。

「真治、続行するよ、いよいよだよ」

「うん、お姉ちゃん……いよいよだね」

 いよいよ、いよいよ、ほんとうにいよいよ! 2人が同じ色合いでドキドキしながらテレビ画面を見入る。しかし……人生とは常に天より与えられる試練が優先される。どんなにがんばろうと、ダメなときはダメなのである。

「え……」

「ぁ……」

 優子と真治が青ざめてはげしい硬直状態に陥る。ゲーム内における金曜日、もうすぐ日曜日だ! という金曜日の夜、突然画面出てきたのである。最近の主人公は付き合いが悪く性格も悪いと言われているとか何とか。そして土曜日の朝になったその瞬間、あってはならない事が発生してしまうのだった。

―どっかーんー

 まるで水素爆弾が落とされたみたいな爆発画面が発生。それはもっとも主人公にホレやすくて嫉妬深い女子キャラの怒りであった。その女のごきげんとりという重要な仕事をうっかり忘れていた。だが悲劇はそれだけでおさまらない。

「くぅ……〇〇め!」

 優子、あまりの怒りにコントローラーを投げたくなる。それをガマンする代わり、自分の髪の毛をグシャグシャっと乱してしまう。この大爆発によりななみの主人公に対する好感度はダダ下がり。購入させたビキニの活用はまた遠のいたのだからたまらない。

「で、でもお姉ちゃん、保存したところからやれば……」

「そ、そうだった、戻れば……」

 優子、まだ望みはある! とセーブ画面に直行。するとどうだろう、今まで浮かれていたという事実に直面。小まめにセーブするという、何より大事な心得が抜けていた。

「え……こんなところまで戻らないといけないの?」

「お姉ちゃん、今日一度もセーブしていなかったんだね……」

 真治、あまりにも痛い展開に心が沈んだ。そして本来であれば、なんでセーブしなかったんだよ! と姉をののしるところ。しかし……放心状態で両目がすっかり死んでしまった優子を見たら、どうして冷淡な罵倒ができようか。

「真治……」

 声もまた死んでしまっている。

「お、お姉ちゃん……だいじょうぶ?」

「わたし……部屋で休んでくる」

 そう言って立ち上がる優子の姿はゆうれいみたいにフラフラっとしていた。もしこれがビルの屋上だったら冗談抜きで飛び降り自殺しかねない感じが生々しい。

「お、お姉ちゃん……」

「真治……わたし……思う……」

「な、なにを?」

「多分さ、真の安らぎっていうのは死んでこそ得られるんだよ、うん、絶対にそうだと思う」

「お、お姉ちゃん何言ってんの? だいじょうぶ?」

「だいじょうぶ……どうせ死にたいとか思っても死ねるわけじゃないんだから」

 優子はほんとうにヨタヨタっとしながら、数歩歩くだけで倒れそうって感じで部屋に戻っていく。それはあまりにもきびしい現実に打ちのめされた事により、生きる活力のほぼすべてをへし折られた存在ってこと。後ろから見る姉には前を見て生きていこうって気力がまったく感じられないのだった。
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