【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり

文字の大きさ
53 / 59
番外編 

名もなき愛の行方・3.5「寂しい」

しおりを挟む


 セディウスが不在の夜。

 ネウクレアは彼の指示に従って、自分の天幕でベッドに横になった。


 ……眠れない。


 胸の奥に空洞があるような、何もかもが不足している感覚。

 これが、『寂しい』ということなのか。

 掛布を被っているのに、なぜか体が冷えているようにも感じる。セディウスの体温が足りない。逞しい腕に抱き締められて、頭を撫でられたい。

「セディウス……」

 早く帰還してほしい。

 魔導術式による遠距離通信を使うことを提案したが、却下された。

 セディウスは、『これは、お前にとっても、私にとっても大切な事項だ。直参でなければならない』と言っていた。ネウクレアは『駐屯地から研究機関まで、合計一ヵ月の期間をかけて往復するのは非効率だ』と反論したのだが――それでも、セディウスは頑なに直参を止めなかった。

 直参の必要性をまったく理解できなかった。

 だが、非効率な行動をしてまでゼスに直接会うことが、絶対的に必要だと彼が判断したのならば……直参すること自体に意義があるのだと自分も認識すべきなのだ。

「寂しい」

 言葉にするとなおさらに、胸の中の空洞が大きくなっていくようだ。

 ネウクレアはおもむろに起き上がり、鎧を手早く着て天幕を出た。そして、巡回の騎士の目をかいくぐり、夜闇を駆け抜けてセディウスの天幕へと忍び込む。

 自分の天幕とは違う彼の天幕の匂いに、寂しさが少しだけ減ったようだ。

 鎧を脱いで肌着姿になったところで、棚に置いてある砂糖菓子の器が目に入った。いつもセディウスが供給してくれるそれを、蓋を開けてひと粒だけ取り出して口に含む。

「……」

 いつもと同じように甘くて美味しい。

 だというのに、多幸感を感じない。セディウスに供給されるときと違う。


 ……理解不能だ。


 ひと粒だけで食べるのを止めて、浄化術式を発動してから、ベッドにもぐりこむ。  

 セディウスの使っている大きな枕を抱えて顔を埋めると、また少し寂しさが減った。

「ふぁ……」

 目を閉じてしばらくすると、欠伸が出た。セディウスのベッドは、睡眠の導入に効果的なようだ。

 自分の天幕で眠れない以上、やはりここで眠る以外に選択肢はない。指示に反するが、睡眠をとるためには止むを得ないだろう。

 彼が帰還した際に、今夜ここで感じたことをすべて報告すればいいのだ。



 こうして、セディウスのベッドで充分な睡眠をとることができたネウクレアは、彼が帰還するまでの一ヶ月間、もう二度と自分の天幕には戻らなかった。





 ※おまけのような話。近況ボードの小話に加筆したものです。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

猫を追いかけて異世界に来たら、拾ってくれたのは優しい貴族様でした

水無瀬 蒼
BL
清石拓也はある日飼い猫の黒猫・ルナを追って古びた神社に紛れ込んだ。 そこで、御神木の根に足をひっかけて転んでしまう。 倒れる瞬間、大きな光に飲み込まれる。 そして目を覚ましたのは、遺跡の中だった。 体調の悪い拓也を助けてくれたのは貴族のレオニス・アーゼンハイツだった。 2026.1.5〜

異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた

k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
 病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。  言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。  小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。  しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。  湊の生活は以前のような日に戻った。  一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。  ただ、明らかに成長スピードが早い。  どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。  弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。  お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。  あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。  後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。  気づけば少年の住む異世界に来ていた。  二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。  序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。

天涯孤独になった少年は、元軍人の優しいオジサンと幸せに生きる

ir(いる)
BL
※2025/11 プロローグを追加しました ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元軍人の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。 ※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。 ※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話) ※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい? ※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。 ※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。 ※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

【連載版あり】「頭をなでてほしい」と、部下に要求された騎士団長の苦悩

ゆらり
BL
「頭をなでてほしい」と、人外レベルに強い無表情な新人騎士に要求されて、断り切れずに頭を撫で回したあげくに、深淵にはまり込んでしまう騎士団長のお話。リハビリ自家発電小説。一話完結です。 ※加筆修正が加えられています。投稿初日とは誤差があります。ご了承ください。

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。

処理中です...