【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり

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番外編 

手合わせくじ引き・4「愛おしい」

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 全身鎧に包まれていながらも、驚くほど軽いネウクレア。


 第一駐屯地に派遣された初日の、平原での光景がセディウスの脳裏を横切った。


 砲撃部隊を単独で殲滅し、立ち上る煙と残り火の中で佇んでいた姿に畏怖さえ感じたというのに、今では何ものにも代えがたいほどに愛おしい。

 なんとも、不思議なものだ。

 感慨深い思いに満たされながら、脱力した彼の体をしっかりと腕に抱いて立ち上がる。

「ファイス、今日はもうネウクレアは休ませるぞ」

「うん、凄く疲れてるみたいだしな。団長、ネウを頼んでいいのか?」

「ああ。天幕まで私が運んでいこう」

「じゃあ、ネウのことは心配しなくていいな。こっちは鍛錬の続きをするぞ。お前ら、今から団長とネウクレアの真似して遊ぶぞ! 組に別れろ!」

 ファイスの指示にどっと上がる笑い声に続き、興奮と気迫の入り混じった声が全員から上がる。


 緩んでいた空気が、引き締まったように感じた。


 最初の意図からは思いも寄らない着地になったが、気合が入ったのなら良いことだ。

「程々にしておくように。今の手合わせは少し……本気になり過ぎていたからな」

「承知! 程々に暴れる!」

 なんとも危なっかしいファイスの返事に苦笑しながら、ネウクレアを抱えて演習場を後にした。





 セディウスは、自身の天幕へとネウクレアを運び入れた。

 立っていることすらままならない状態の彼を椅子に座らせて、まず兜を脱がしに掛かる。金属音を立てながら外れた兜の下から現れた素顔は、いつもと違う様相だった。

 白磁の肌がうっすらと上気し、瞳の潤みが強い。僅かに乱れた純白の髪と相まって、無表情ながらも少々興奮しているように見えた。

 手合わせの後の『面白かった』という言葉も珍しいと思ったが、この様は驚愕に値する。

「顔が少し赤いが……、苦しくはないか」

 まろやかに赤みを帯びた白磁の肌。無機質な美貌に、艶めいた華やかさが備わっていた。

 稀有な美しさに惹かれながら、頬に触れる。

「異常はない」

 ネウクレアは静かに答えて、手の平に頬をすり寄せて甘えてきた。


 今日はいつもにも増して、可愛い。


 強い胸の高鳴りを覚えた。

 
 無意識のうちに顔を寄せ、唇が触れ合う直前。


「……セディウス」 


 涼やかな声で、はっと我に返った。


「また手合わせしたい」


 そして、幼子のようにせがまれて、思わず苦笑してしまった。

 ファイスの影響もあるのだろうが、ネウクレアの本質もまたやんちゃなようだ。


 それはそれで、とても可愛らしいものだ。


 感情を垣間見せ始めたネウクレアのひと言ひと言が、愛おしくてたまらない。

「すぐにでもと、言いたいところだが……優先してお前と手合わせをしては、他の者たちから不満が出る」

「そうか。では、三日に一度のくじ引きを要求する」

「……三日に一度は無理かもしれないが、またくじ引きをするとしよう。そのときを楽しみにしているといい」

「了解した」

「よし、いい子だ」

 頭を撫でてやると、ネウクレアは心地よさそうに目を細めた。

 兜に続いて鎧や手袋などを外して、肌着姿になったところでネウクレアを横抱きにして持ち上げて、ベッドに寝かせる。

「では、執務に戻る。大人しく寝ているのだぞ」

「ん……」

 頭を何度も優しく撫でて、額に口付けを落としてから、静かに天幕を出た。






 ……いつか移住する領地には、大きな鍛錬場を造る必要がありそうだ。

 そんなことを考えながら、セディウスはリュディ―ドが書類と格闘しているであろう執務用の天幕へと、足早に向かって行った。
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