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番外編
手合わせくじ引き・4.5「心地良い熱」
しおりを挟むセディウスが天幕から立ち去った後。
ネウクレアはベッドに横たわったまま、じっと天井を見詰めていた。陽光に照らされ、黄色味を帯びた布がまばゆく輝いている。
疲労感が強いが、神経が高ぶっていて眠ることはできない。それほどに今日の手合わせは刺激的だったのだ。
「手合わせ! 手合わせしよう!」
ファイスの一言から始まった、セディウスとの手合わせを決めるくじ引き。
周囲の騎士たちから、彼に向けられる視線を目の当たりにしたとき……ネウクレアは胸の中を炙られているような、熱と痛みを感じた。
不快だ。
原因不明の感覚だが、不快だということだけは理解できる。
セディウスとの手合わせを、彼らにさせたくない。今の状況も不快だが、そうなった場合を想定しても胸の痛みが強くなった。
この状況を解消するためには、自分が当たりを引くことが最適解だ。
加えて、セディウスの実力を把握することは、有事の際に彼を守る上でも重要な事項だ。
この機を逃すことは、不利益に繋がるだろう。
そう結論を出したネウクレアは、騎士たちの間をすり抜けてくじの箱に素早く手を入れた。
始まった手合わせは、激しいものとなった。
深い青の瞳に、柔らかい常のそれとは真逆の鋭い光を宿したセディウスが、攻撃を繰り出してくる。
ぶつかり合う剣と剣。
飛び交う術式。
視線が強く絡み合う。
セディウスは強かった。
前線部隊長のファイスも群を抜いている強さだが、それを遥かに上回る。おそらく、皇国で彼に並ぶ者はいないだろう。
殺傷を目的としない手合わせで許される、最大限の力を振り絞っても完璧に追い込むことはできなかった。
目まぐるしく思考は回転し、次から次へと新たな手段を実行していく。
繰り返される駆け引きに、不快さを感じたときとは別種の燃えるような熱が胸の奥から込み上げてきた。
激しい打ち合いの衝撃で腕に痛みを感じても、体力の限界が近付き呼吸が困難になっても、ネウクレアは止まらなかった。
これは、非常に有意義な行為だ。
ファイスたちが、手合わせを要求する理由が理解できた。
互いの存在だけが思考のすべてを占める感覚が、心地良い。
もっと、セディウスと手合わせをしていたい。
何度でも、何時間でも、何日でも。
沸き上がる強い願望に翻弄されながら、ネウクレアはセディウスに挑み続けた。
――結局、体力の限界を迎たことで、その願望は潰えたのだが。
酷使した体は、早くも痛み始めている。
明日もベッドから出られない可能性があるが、胸の中は心地良い熱で満たされていた。
次の手合わせも、当たりを引くのは絶対に自分でありたい。
そんなことを考えながら、ネウクレアはセディウスの枕に顔を埋めて心地良い熱に浸った。
※ネウクレア、初めての嫉妬と独占欲。「手合わせくじ引き」完結です。
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ありがとうございます。面白いといって頂けてとてもほっとしております。コテコテ設定大好き人間なので、人物紹介や冒頭はやたら盛ります。そして首が締まるという(ギャア)。
この小説の最大の難関は「どうやってネウクレアの鎧を矛盾なくひっぺがすか」でした。ネウクレア、実戦らしい実戦は冒頭の防衛線が初で、「自分の能力の限界を試す」という目的がありました。よって、枯渇は想定内。そして作者的に早く鎧を剥ぎたかったので枯渇させました。なんか身もふたもない話ですみません(目を逸らす)。
セディウスがチョロキャラならベタな甘やかし展開になったと思います。最初の短編のノリはややそんな感じで、連載版でも初稿はだいぶ暴走していたんですが……いつのまにかガチガチの団長父性モードに。さすが団長。でも団長、ネウクレアのこと凄く可愛いって思っていて、とっくにメロメロ。
副官コンビはお気に入り。ネウとは違う方向で純粋で無邪気なファイスはとてもよく動くキャラなので、助けられました。リュディードとセットでいると生き生きしていて楽しいです。
リュディードは真にできる部下なのですセディウス至上主義。あるあるな暴走部下とはちがうのですよ(キリッ)。セディウスとリュディードの上司部下的やり取りが好きすが、きっとリュディード&ファイスの方が需要ありそうです。
ほかの人達(名前すらないごめんな)ちょろっとしか出てきませんけど、気のいい連中なので「いい人」とか言われると暑苦しく喜んでいそうです。ちな、前線部隊の副隊長が2m超えの巨漢。ファイスと並ぶと非常に高低差の激しい絵面(無駄情報)。
話の構成、お気に召して頂けて非常に嬉しいです。「こんなんでいいのかな」と悩んで何度も修正した苦労が報われました。褒められ過ぎて恥ずかしい……。番外もまだ何話かありますので、また楽しんで頂けたら嬉しいです。
これからも小説創り頑張ります。山盛り感想ごちそうさまでした!
連載開始ありがとうございます!副団長ふたりも大変魅力的で、この後の展開が楽しみです♪
めちゃくちゃ甘やかされるネウクレアがみたい〜〜〜パパさんの葛藤も〜〜
ネオンさん感想ありがとうございます。お陰様で連載開始いたしました。
凸凹コンビもお気に召して頂けて嬉しいです。じゃれ合いだけでなく、メイン二人に関してもこの二人がいないと面白さが半減するどころか話が分解するほど重要な役回りをしまですので、ぜひ色々と楽しみにしていてください。
セディウスはもうなんというか……もう、パパですね。ネウクレアが可愛くて仕方ない! そして立派な騎士団長。愛情と任務の板挟みで葛藤しながら、やっぱり溺愛してしまうという……。もはや沼。
真面目に戦記物展開なので展開がシリアスですが、その分だけ甘やかしと葛藤がばっちり展開されますので、しんみりドキドキして頂けたら嬉しいです。