【完結】公爵令嬢の育て方~平民の私が殿下から溺愛されるいわれはないので、ポーション開発に励みます。

buchi

文字の大きさ
3 / 97

第3話 校内恋愛事情

しおりを挟む
たった一人の平民の女子生徒(私)は、最下位のクラスに分類された。

何しろ事情が事情なので、多分、誰も友達なんかできないだろうなと私は思った。平民だし、悪い実例(婚約破棄事件)があったし。

ただ、よくは知らないが、以前、大問題を引き起こした平民の少女は大変な美少女だったそうである。

そこへ行くと、私は自慢ではないが、平凡極まる茶色の髪と茶色の目、目鼻立ちもはっきりせずぼんやりとした顔立ちだった。

「ちっとも、きれいじゃないわよね」

誰かがそう噂するのを聞いた。
ええ、どうせ不美人ですよ。村でだって、一度も美人だなんて言われたことなかったし。

誰も友達になってやろうと言う者はいなかったが、結構、関心の的になっているらしい。また、やらかすんじゃないかって。

これは下手に刺激しない方がよろしい。

私はそう判断した。

大人しく勉強に専念した。

そして、どうして自分が文官試験にあっさり受かったのか、理由を理解した。

要するに、貴族の子女は勉強をしない。
もちろん例の寄付金入学の平民組も混ざっているが、彼らとて、勉強する必要はない連中だ。

ここへは、社交のために来ているらしい。

婚活も活発らしい。授業の中には、男子生徒と合同の場合があるしね。

さらに学校内で、知り合いになるなら、どうやら親同士で縁談をまとめるよりお安くすむ模様。恋愛結婚となると、親は子供の勝手を嫌々認めるだけの立場なので、見栄を張る必要がなくなるらしい。

そのせいで親の方も、実は、こっそり自由恋愛を推奨しているらしい。ただし、条件が合うことが前提だが。公爵家と平民なんか、もってのほかだろう。

そりゃあくだんの平民嬢も周りの雰囲気に当てられたのだろう。公爵家の令息も。
こんなにユルユルな雰囲気じゃあな。
男女が一緒になる食堂や、男女合同の礼儀作法の教室では、それなりに盛り上がっているらしい。

私だけは平民なので、無関係に勉強に専念していた。

だって、他にやることがないでしょう! 他人の恋愛劇場なんか見てたって面白いわけがない。……面白いけど。……結構、面白いな。

だけど、勉学に励んでいると言っても、えある一位に輝くだなんてことはなかった。なぜなら、私は別に頭がいいわけではなかったから。

遊びまくっているくせに、成績がいい人物って、結局、地頭がいいんだと思う。


私は成績表が張られた食堂で、順位を見上げながら考えた。

三年生の一位は、第二王子のルーカス王子殿下である。

王子か! 見たこともない。多分、一番上のクラスに在籍しているからだろう。

「国務でお忙しいのに、一位だなんて」

第二王子はそこまで忙しくないのでは?

「勉強なさる時間もないと聞いていますわ」

ため息がちに賛美するご令嬢方が数名。

「お優しくて、容姿も端麗。本当にあこがれてしまいますわ」

へえ。

「あなた、でも、そんなこと、おっしゃってはダメよ?」

聞いていた一人が急いで周りに目を走らせた。

おっ。平民が聞いていて、ターゲット物件にしてはダメだから、早速用心を……ではなかった。

「ベアトリス様やカザリン様に聞かれたらどうするの?」

回れ右して帰ろうとしていたが、つい聞き耳を立てた。もっとも視線は成績順位表に釘付けのままだ。

だが、彼女たちの方が去って行ってしまった。わずかに婚約者候補とか言う言葉が聞き取れただけだ。きっとルーカス王子様の婚約の話なのね。きっとお家柄が、とか相手をおとしめる、とかやってるんでしょうね! 面白そうだけど、怖そう。関係なくて、よーかった。でも、応援はさせてもらいますよ? 面白い方のね。

視線を戻すと、次点は、公爵家の令息、以下伯爵家の令息、たまに女子生徒が混ざり、さすがにポチポチ平民男子の名前も上位クラスに食い込んでいた。

ちなみに私は二十位だった。
強いて言えば優秀に分類されるが、取り立てていう程ではない。

だが、よくやった、私。

平民の特待生として問題なく、しかもできるだけ下の順位。
平民なんかに時間を取られるのを嫌がる例の山羊髭の担任の先生に時間を割いてもらって、どこまでが許容範囲か聞いたのだ。
特待生のくせにバカなのかと、あからさまに軽蔑の表情を浮かべた先生は、「最低でも二十位くらいには入っていてもらわないと」とのたまった。

もちろん、一位だなんて取れるはずがないけど、闇雲に好成績は問題だと思う。
だって、平民だから。平民なんかに、一位乗っ取られたら、プライドの高い貴族の皆様はどう考えるかしら?

この通り、私には立派な平民根性が染み付いているのだ。

しかし、特待生の成績が悪いのは、問題だろう。何のためにお金を出してやっているのかと言われるのは目に見えている。

慎重に考慮を重ねた二十位。

過去問とかいろいろ検討しないと、狙ってこの順位は取れない。

心晴れ晴れと、私は黙ってその場を去った。

二十位! 素晴らしい!

この学校に来てから、一月ほどが過ぎようとしているけれど、私は誰とも話したことがない。(山羊髭の担任の先生を除く)

もちろん、食堂を利用しているので注文の時には声を出すし、アンナさんに文句を言われた時はすみませんとかあやまるけど、先生は絶対に私に当てないし、何かの注意もしない。

私が模範生だからではなくて、出来れば無視したいからだ。

おかげで、ある意味、居心地は良かったが、やっぱりちょっと陰気な気分だった。

クラスの中は、もはや慣れたもので、私なんかいないも同然の扱いになった。

みんな、好き放題にやっている。

そもそも、学校なので、そこまで派手な格好は自粛しているが、女子生徒はやはり華やかなファッションが多い。
男子生徒も、まさか、赤や黄色を着てくる生徒はいなかったが、飾りの銀の紐やボタン、靴の留め金に高価なものを使うとか、袖口にちらっとレースを見せるとか、なかなかおしゃれだった。

見る分には楽しいが、参加するとなると相当お金がかかる。
目は肥やしてもらったが、私は平民。参加する必要もなければ、参加しようものなら、おそらくこの身の程知らずと叱られるだろう。少なくとも、あの山羊髭に。

いえいえ、参加しないですんで、本当に気楽ですわ。

いっつも同じ濃い灰色の服。地味で目立たない。濃緑色とかの方がこの茶色の髪には似合うと思うんだけど、ないものは仕方ない。

そしてお年頃の貴族の皆様の恋バナ。
私は教室の机くらいにしか認識されていないので、内緒話を漏れ聞くことがある。

おおお。

結構、修羅場が形成されているではありませんか。

大変ですね、みなさん。現実は小説より奇なりとか言いますけど、本当ですねっ。

アドバイスや感想をぜひとも言いたくなるが、絶対関わらないようにしなくっちゃ。山羊髭にも念を押されているしな。

ちょっと残念ではあった。何しろ、村に住んでいたころには、アドバイザーとしての地位を確立していましたからね。もっぱら聞き役に徹していましたけど。

ただ、聞き役が聞き役として機能するのは、相槌を打つからである。

相槌を打たない聞き役なんて、ただのモノである。何の値打ちもない。

とは言え、ややこしい人間関係は、観察するだけに留める方がよさそうだ。

村人の噂は、聞き流しても大事には至らない。何しろ、みんな金がないから。
だけど、貴族の結婚は大量の金が動くらしい。金ぐらいならいいが、領地だとか、先祖代々の恨みつらみなんかも結構引きずっているらしい。くわばらくわばら。

黙って、文房具を片付け、私は寮に引き上げた。

何しろ、自分の分だけとは言え、洗濯やふろの準備はやらなくてはならない。本来、どうも、アンナさんがやる仕事らしいのだが、入寮者は一人だけなんだから自分でやってと投げられてしまった。職務怠慢だ。

だが、ここで、生活魔法の授業が役に立った。


入寮者が一人だけだったのは、もはや神に感謝したいレベルだった。

しおりを挟む
感想 74

あなたにおすすめの小説

働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』

鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。 だからこそ転生後に誓った―― 「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。 気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。 「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」 ――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。 なぜか気づけば、 ・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変 ・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功 ・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす ・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末 「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」 自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、 “やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。 一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、 実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。 「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」 働かないつもりだった貴族夫人が、 自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。 これは、 何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

『身代わりに差し出された令嬢ですが、呪われた公爵に溺愛されて本当の幸せを掴みました』

鷹 綾
恋愛
孤児院で「九番」と呼ばれ、価値のない存在として育った少女ノイン。 伯爵家に引き取られても待っていたのは救いではなく、実の娘エミリアの身代わりとして、“呪われた化け物公爵”フェルディナンドの婚約者に差し出される運命だった。 恐怖と嘲笑の中で送り出された先で出会ったのは―― 噂とは裏腹に、誰よりも誠実で、誰よりも孤独な公爵。 角と鱗に覆われたその姿は、血筋ではなく、長年にわたる呪いと心の傷によるものだった。 そしてノインは気づく。 幼い頃から自分が持っていた、人の痛みを和らげる不思議な力が、彼の呪いに届いていることに。 「身代わり」だったはずの婚約は、やがて 呪いと過去に向き合う“ふたりだけの戦い”へと変わっていく。 孤独を知る公爵と、居場所を求めてきた少女。 互いを想い、手を取り合ったとき―― 止まっていた運命が、静かに動き出す。 そして迎える、公の場での真実の発表。 かつてノインを蔑み、捨てた者たちに訪れるのは、痛快で静かな“ざまぁ”。 これは、 身代わりの少女が本当の愛と居場所を手に入れるまでの物語。 呪いが解けた先に待っていたのは、溺愛と、何気ない幸せな日常だった。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

辺境の侯爵令嬢、婚約破棄された夜に最強薬師スキルでざまぁします。

コテット
恋愛
侯爵令嬢リーナは、王子からの婚約破棄と義妹の策略により、社交界での地位も誇りも奪われた。 だが、彼女には誰も知らない“前世の記憶”がある。現代薬剤師として培った知識と、辺境で拾った“魔草”の力。 それらを駆使して、貴族社会の裏を暴き、裏切った者たちに“真実の薬”を処方する。 ざまぁの宴の先に待つのは、異国の王子との出会い、平穏な薬草庵の日々、そして新たな愛。 これは、捨てられた令嬢が世界を変える、痛快で甘くてスカッとする逆転恋愛譚。

白い仮面の結婚を捨てた私が、裁かれない場所を作るまで

ふわふわ
恋愛
誰もが羨む、名門貴族との理想の結婚。 そう囁かれていたジェシカの結婚は、完璧な仮面で塗り固められた**「白い誓約」**だった。 愛のない夫。 見ないふりをする一族。 そして、妻として“正しく在ること”だけを求められる日々。 裏切りを知ったとき、ジェシカは泣き叫ぶことも、復讐を誓うこともしなかった。 彼女が選んだのは――沈黙と、準備。 名を問われず、理由も裁きもない。 ただ「何者でもなくいられる時間」が流れる、不思議な場所。 そこに人が集まり始めたとき、 秩序は静かに軋み、 制度は“裁けないもの”を前に立ち尽くす。 これは、声高な革命の物語ではない。 ざまぁを叫ぶ復讐譚でもない。 白い仮面を外したひとりの女性が、 名を持たずに立ち続けた結果、世界のほうが変わってしまった―― そんな、静かで確かな再生の物語。

神様、恋をすれば世界は救われるのですか? 〜余命二年の侯爵令嬢が、選ばれなかった未来の先で最愛を見つける物語〜

お月見ましろ
恋愛
余命は、十八歳の卒業式まで。 彼女の死は、そのまま世界の終わりを意味していた。 世界を救う条件は――「恋をすること」。 入学式の朝、神様は笑って言った。 「生きたいなら、全力で恋をしなさい」 けれど誰かを選べば、誰かの未来が壊れる。 魔法学園で出会った三人の少年は、それぞれの形でアイリスを必要としていた。 守ることに人生を捧げ、やがて“忠誠”を失っていく従者。 正しさを失わないため、恋を選択として差し出す王族。 未来を視る力ゆえに、関わることを拒み続けた天才魔術師。 「恋は、選択なのか」 「世界より、大切なものはあるのか」 これは、「正解のない選択」を何度も突きつけられながら、最後に“自分の意志”で未来を選び取る少女の物語。 ――世界よりも、運命よりも、 ひとりにしないと決めた、その選択の先へ。 【毎日更新・完結保証作品(全62話)🪄】 ※運命選択×恋愛、セカイ系ファンタジー ※シリアス寄り・溺愛控えめ・執着・葛藤・感情重視 ※ハッピーエンド

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

処理中です...