4 / 16
婚約者のすげ替えを狙う
しおりを挟む
一方で、兄夫妻の死後、叔父夫婦は、熱心に社交界に顔を出していた。だが、マリゴールドの話題には出来るだけ触れず、他人からどうして連れてこないのか聞かれた時も、まだ子どもですからで済ませていた。彼らにはそれより大事なことがあったのだ。年ごろの二人の娘を貴族社会に売り出すことだ。
「せっかく伯爵家になれたんですものね」
認識がよくわからないが、マリゴールドの叔母はよくそう口にした。嘘も百回も言えば本当になると言うヤツだろうか。
エレンとアメリアは、マリゴールドに比べたら格段に、何と言うか貴族的な雰囲気がなかった。
物欲しそうにあたりをキョロキョロし、年頃の男性を見かけるとガン見して、二人で何ごとかコソコソささやいている。
ドレスは豪華なのだが、なんだか似合っていない。
「伯爵家の娘ですから」
叔父夫婦は誇らしげに娘たちをそう紹介した。正確には伯爵家の娘ではないだろう。それに、だから何だと言うのだろう。
誰もがそう感じ、どの男性も遠巻きにしていたが、ある夜会で二人に接触してきた男性がいた。
誰あろう、エドワード王子その人である。
「「「「まあ、殿下の方からお越しくださるだなんて!」」」」
四人はとても嬉しそうだった。理由はわからなかったが、どうも夜会では浮いているような気がしていたのである。
新生伯爵家一家という触れ込みで、マリゴールド宛ての招待状も伯爵家宛ての招待状も、一通も漏らさず全部出席してきた。なにしろ新伯爵家一家なのだ。皆様に早く知っていただきたい。
それなのに、なんだかいつも会の雰囲気が芳しくない。
みんな愛想はよいのだが、聞くことはマリゴールドの話題のみ。その後、話が続かない。ぜひ聞いて欲しい自称・新伯爵家一家の話には興味がないようで、気持ちよく相槌を打ってくれるが、それで終わり。それに高位貴族になればなるほど、二度と話しかけてこないのだ。
「貴族って、冷たくて失礼な人が多いのねえ」
だが、王子殿下が話しかけてくだされば、事情は変わるだろう。
実は叔母はマリゴールドの婚約のことを知っていた。
王子との婚約! まるで夢のようではないか!
夫が伯爵になれば、娘たちも王子と結婚できるのか? 王子様って何人いたっけ?
「男兄弟は3人だな。なぜ、そんなことを聞く」
王子殿下はうるさそうに手を振った。
「じゃあ、もう売り切れですね」
偽伯爵夫人は残念そうに感想を述べた。
「それより、マリゴールド嬢はどうしている? 母に一度家を訪ねるよう言われているのだが」
王子殿下は不機嫌そうに尋ねた。
「マリゴールドは勉強熱心なんです」
叔母は答えた。答えになっていない。
「勉強? 婚約に興味がないなら、そう言ってもらえばいい」
「当家との婚約ですか? マリゴールドでなくても、もっと美しくて王子殿下をお慕いする娘が二人も当家にはおりますわ」
エドワード殿下は、自分と同じ黒髪と茶色い目の二人の娘を見つめた。
もっと、年上がいいなーと思っていた王子の望みをかなえるような豊満な娘たちである。それが尊敬とあこがれの目でエドワード殿下を見つめていた。
「マリゴールドはちっとも肉が付かなくて」
「今でも子供のようですわ」
これはまごう方なき真実だった。マリゴールドは痩せて幽霊みたいになっていた。
「一度、お邪魔させていただこう。マリゴールド嬢本人にお目にかかり、婚約について意見をお聞きしたい」
婚約解消はよくある話だった。条件が折り合わなくなれば当然の話だ。
「マリゴールドは殿下との結婚を望んでおりませんわ」
姉のエレンが思いがけないことを言い始めた。
「せっかく伯爵家になれたんですものね」
認識がよくわからないが、マリゴールドの叔母はよくそう口にした。嘘も百回も言えば本当になると言うヤツだろうか。
エレンとアメリアは、マリゴールドに比べたら格段に、何と言うか貴族的な雰囲気がなかった。
物欲しそうにあたりをキョロキョロし、年頃の男性を見かけるとガン見して、二人で何ごとかコソコソささやいている。
ドレスは豪華なのだが、なんだか似合っていない。
「伯爵家の娘ですから」
叔父夫婦は誇らしげに娘たちをそう紹介した。正確には伯爵家の娘ではないだろう。それに、だから何だと言うのだろう。
誰もがそう感じ、どの男性も遠巻きにしていたが、ある夜会で二人に接触してきた男性がいた。
誰あろう、エドワード王子その人である。
「「「「まあ、殿下の方からお越しくださるだなんて!」」」」
四人はとても嬉しそうだった。理由はわからなかったが、どうも夜会では浮いているような気がしていたのである。
新生伯爵家一家という触れ込みで、マリゴールド宛ての招待状も伯爵家宛ての招待状も、一通も漏らさず全部出席してきた。なにしろ新伯爵家一家なのだ。皆様に早く知っていただきたい。
それなのに、なんだかいつも会の雰囲気が芳しくない。
みんな愛想はよいのだが、聞くことはマリゴールドの話題のみ。その後、話が続かない。ぜひ聞いて欲しい自称・新伯爵家一家の話には興味がないようで、気持ちよく相槌を打ってくれるが、それで終わり。それに高位貴族になればなるほど、二度と話しかけてこないのだ。
「貴族って、冷たくて失礼な人が多いのねえ」
だが、王子殿下が話しかけてくだされば、事情は変わるだろう。
実は叔母はマリゴールドの婚約のことを知っていた。
王子との婚約! まるで夢のようではないか!
夫が伯爵になれば、娘たちも王子と結婚できるのか? 王子様って何人いたっけ?
「男兄弟は3人だな。なぜ、そんなことを聞く」
王子殿下はうるさそうに手を振った。
「じゃあ、もう売り切れですね」
偽伯爵夫人は残念そうに感想を述べた。
「それより、マリゴールド嬢はどうしている? 母に一度家を訪ねるよう言われているのだが」
王子殿下は不機嫌そうに尋ねた。
「マリゴールドは勉強熱心なんです」
叔母は答えた。答えになっていない。
「勉強? 婚約に興味がないなら、そう言ってもらえばいい」
「当家との婚約ですか? マリゴールドでなくても、もっと美しくて王子殿下をお慕いする娘が二人も当家にはおりますわ」
エドワード殿下は、自分と同じ黒髪と茶色い目の二人の娘を見つめた。
もっと、年上がいいなーと思っていた王子の望みをかなえるような豊満な娘たちである。それが尊敬とあこがれの目でエドワード殿下を見つめていた。
「マリゴールドはちっとも肉が付かなくて」
「今でも子供のようですわ」
これはまごう方なき真実だった。マリゴールドは痩せて幽霊みたいになっていた。
「一度、お邪魔させていただこう。マリゴールド嬢本人にお目にかかり、婚約について意見をお聞きしたい」
婚約解消はよくある話だった。条件が折り合わなくなれば当然の話だ。
「マリゴールドは殿下との結婚を望んでおりませんわ」
姉のエレンが思いがけないことを言い始めた。
150
あなたにおすすめの小説
【短編】将来の王太子妃が婚約破棄をされました。宣言した相手は聖女と王太子。あれ何やら二人の様子がおかしい……
しろねこ。
恋愛
「婚約破棄させてもらうわね!」
そう言われたのは銀髪青眼のすらりとした美女だ。
魔法が使えないものの、王太子妃教育も受けている彼女だが、その言葉をうけて見に見えて顔色が悪くなった。
「アリス様、冗談は止してください」
震える声でそう言うも、アリスの呼びかけで場が一変する。
「冗談ではありません、エリック様ぁ」
甘えた声を出し呼んだのは、この国の王太子だ。
彼もまた同様に婚約破棄を謳い、皆の前で発表する。
「王太子と聖女が結婚するのは当然だろ?」
この国の伝承で、建国の際に王太子の手助けをした聖女は平民の出でありながら王太子と結婚をし、後の王妃となっている。
聖女は治癒と癒やしの魔法を持ち、他にも魔物を退けられる力があるという。
魔法を使えないレナンとは大違いだ。
それ故に聖女と認められたアリスは、王太子であるエリックの妻になる! というのだが……
「これは何の余興でしょう? エリック様に似ている方まで用意して」
そう言うレナンの顔色はかなり悪い。
この状況をまともに受け止めたくないようだ。
そんな彼女を支えるようにして控えていた護衛騎士は寄り添った。
彼女の気持ちまでも守るかのように。
ハピエン、ご都合主義、両思いが大好きです。
同名キャラで様々な話を書いています。
話により立場や家名が変わりますが、基本の性格は変わりません。
お気に入りのキャラ達の、色々なシチュエーションの話がみたくてこのような形式で書いています。
中編くらいで前後の模様を書けたら書きたいです(^^)
カクヨムさんでも掲載中。
望まない相手と一緒にいたくありませんので
毬禾
恋愛
どのような理由を付けられようとも私の心は変わらない。
一緒にいようが私の気持ちを変えることはできない。
私が一緒にいたいのはあなたではないのだから。
なにひとつ、まちがっていない。
いぬい たすく
恋愛
若くして王となるレジナルドは従妹でもある公爵令嬢エレノーラとの婚約を解消した。
それにかわる恋人との結婚に胸を躍らせる彼には見えなかった。
――なにもかもを間違えた。
そう後悔する自分の将来の姿が。
Q この世界の、この国の技術レベルってどのくらい?政治体制はどんな感じなの?
A 作者もそこまで考えていません。
どうぞ頭のネジを二三本緩めてからお読みください。
彼に「真実の愛」を問う
四折 柊
恋愛
ブランカは婚約者であるエーリクから一方的に婚約を解消された。理由は「真実の愛を見つけたから」と。その相手はよりによってブランカの異母妹だった。ショックを受けたブランカはエーリクに「真実の愛とはなに?」と問いかける。
あなたを愛するつもりはない、と言われたので自由にしたら旦那様が嬉しそうです
ワイちゃん
恋愛
「あなたを愛するつもりはない」
伯爵令嬢のセリアは、結婚適齢期。家族から、縁談を次から次へと用意されるが、家族のメガネに合わず家族が破談にするような日々を送っている。そんな中で、ずっと続けているピアノ教室で、かつて慕ってくれていたノウェに出会う。ノウェはセリアの変化を感じ取ると、何か考えたようなそぶりをして去っていき、次の日には親から公爵位のノウェから縁談が入ったと言われる。縁談はとんとん拍子で決まるがノウェには「あなたを愛するつもりはない」と言われる。自分が認められる手段であった結婚がうまくいかない中でセリアは自由に過ごすようになっていく。ノウェはそれを喜んでいるようで……?
お前なんかに会いにくることは二度とない。そう言って去った元婚約者が、1年後に泣き付いてきました
柚木ゆず
恋愛
侯爵令嬢のファスティーヌ様が自分に好意を抱いていたと知り、即座に私との婚約を解消した伯爵令息のガエル様。
そんなガエル様は「お前なんかに会いに来ることは2度とない」と仰り去っていったのですが、それから1年後。ある日突然、私を訪ねてきました。
しかも、なにやら必死ですね。ファスティーヌ様と、何かあったのでしょうか……?
幼馴染に裏切られた私は辺境伯に愛された
マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のアイシャは、同じく伯爵令息であり幼馴染のグランと婚約した。
しかし、彼はもう一人の幼馴染であるローザが本当に好きだとして婚約破棄をしてしまう。
傷物令嬢となってしまい、パーティなどでも煙たがられる存在になってしまったアイシャ。
しかし、そこに手を差し伸べたのは、辺境伯のチェスター・ドリスだった……。
遺言による望まない婚約を解消した次は契約結婚です
しゃーりん
恋愛
遺言により従兄ディランと婚約しているクラリス。
クラリスを嫌っているディランは愛人に子を産ませてクラリスの伯爵家の跡継ぎにするつもりだ。
どうにか婚約解消できないかと考えているクラリスに手を差し伸べる者。
しかし、婚約解消の対価は契約結婚だった。
自分の幸せと伯爵家のために最善を考える令嬢のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる