婚約者の王子は正面突破する~関心がなかった婚約者に、ある日突然執着し始める残念王子の話

buchi

文字の大きさ
5 / 16

王子の婚約者に立候補する偽伯爵令嬢たち

しおりを挟む
「マリゴールドは殿下との結婚を望んでおりませんわ」

 姉のエレンが思いがけないことを言い始めた。

「ええ?」

 王子殿下は思いっきり驚いた。

 本人ではない姉のエレンが口出ししたのに驚いたのではない。

 不肖エドワード、はばかりながらこれまで女性には事欠かなかった。皆さんからイケメン、イケボと讃えられ、剣の腕前も一流、学業も一流とケチのつけようがない全宇宙のあこがれだったからだ。
 自分との婚約を望まない女性なんて、想像の圏外である。

 エレンは訳知り顔にうなずいた。

「自宅にこもって出てこないのです。それに過剰なダイエットに励んでいまして」

「そうそう! ダイエットに励んでいます」

 自称伯爵夫人も声を上げた。
 食べ物をやらなければいずれ死ぬ。
 あの娘さえいなければ、合法的に伯爵位と財産はすべて自分たちのものになる。
 でも、だからと言って直接手を下すのは嫌だった。
 だが、料理番の顔を見た時にひらめいたのだ。

 料理番の女は、自分より残酷なのだと。
 自称伯爵夫人は自分の手を下さずに、最もこの世で要らない人間をあの世送りにする方法を見つけたのだ。無意識のうちに。

 それと、今、ダイエットという言葉を聞いた途端、過剰なダイエットは死に至ることがあると思いだした。

 素晴らしい。よくできた話だ。

「そうか」

 王子殿下は、婚約解消を持ち出されても、ちっとも残念そうではなかった。

「まあ、最終的な意思確認は必要だと思うが……」

「絶対に大丈夫です。マリゴールドは結婚など望んでいません」

 今度は妹のアメリアが自信たっぷりに言った。

「本人に手紙を書かせますわ」

 自称伯爵夫人がいそいそと言った。

「それなら確かでしょう」

 王子殿下は流石に首をひねった。
 自分との婚約解消を推進する家があるとは新鮮だった。

「代わりにわたくしが!」
「いえ! わたくしが!」

 自称伯爵令嬢の二人が争うように王子殿下の前に出てきた。

 うん。この反応が普通だよね。

 王子殿下は冷たく手を振った。

「王妃様に伝えておく」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された侯爵令嬢ですが、帝国の次席秘書官になりました ――王の隣ではなく、判断を誤らせない場所へ

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として王宮に仕える侯爵令嬢ゼクレテァ。 彼女は華やかな場に立つことはなく、ただ静かに、しかし確実に政務と外交を支えていた。 ――その役割が、突然奪われるまでは。 公の場で告げられた一方的な婚約破棄。 理由はただひとつ、「愛している相手がいるから」。 ゼクレテァは感情を見せることなく、その決定を受け入れる。 だが彼女が王宮を去った後、王国には小さな歪みが生じ始めた。 些細な行き違い、遅れる判断、噛み合わない政策。 それらはやがて、国家全体を揺るがす事態へと発展していく。 一方、行き場を失ったゼクレテァの前に、思いもよらぬ「選択肢」が差し出される。 求められたのは、身分でも立場でもない。 彼女自身の能力だった。 婚約破棄から始まる、 静かで冷静な逆転劇。 王の隣に立つことを拒んだ令嬢は、 やがて「世界を動かす場所」へと歩み出す――。 -

どうぞ添い遂げてください

あんど もあ
ファンタジー
スカーレット・クリムゾン侯爵令嬢は、王立学園の卒業パーティーで婚約もしていない王子から婚約破棄を宣言される。さらには、火山の噴火の生贄になるように命じられ……。 ちょっと残酷な要素があるのでR 15です。

婚約者から妾になれと言われた私は、婚約を破棄することにしました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私エミリーは、婚約者のアシェル王子に「妾になれ」と言われてしまう。 アシェルは子爵令嬢のキアラを好きになったようで、妾になる原因を私のせいにしたいようだ。 もうアシェルと関わりたくない私は、妾にならず婚約破棄しようと決意していた。

【完結】エンディングのその後~ヒロインはエンディング後に翻弄される~

かのん
恋愛
 え?これは、悪役令嬢がその後ざまぁする系のゲームですか?それとも小説ですか?  明らかに乙女ゲームのような小説のような世界観に生まれ変わったヒロインポジションらしきソフィア。けれどそれはやったことも、読んだこともない物語だった。  ソフィアは予想し、回避し、やっと平和なエンディングにたどり着いたと思われたが・・・  実は攻略対象者や悪役令嬢の好感度を総上げしてしまっていたヒロインが、翻弄される物語。最後は誰に捕まるのか。  頭をからっぽにして、時間あるし読んでもいいよーという方は読んでいただけたらと思います。ヒロインはアホの子ですし、コメディタッチです。それでもよければ、楽しんでいただければ幸いです。  初めの土日は二話ずつ更新。それから毎日12時更新です。完結しています。短めのお話となります。  感想欄はお返事が出来ないのが心苦しいので閉じてあります。豆腐メンタルの作者です。

4人の女

猫枕
恋愛
カトリーヌ・スタール侯爵令嬢、セリーヌ・ラルミナ伯爵令嬢、イネス・フーリエ伯爵令嬢、ミレーユ・リオンヌ子爵令息夫人。 うららかな春の日の午後、4人の見目麗しき女性達の優雅なティータイム。 このご婦人方には共通点がある。 かつて4人共が、ある一人の男性の妻であった。 『氷の貴公子』の異名を持つ男。 ジルベール・タレーラン公爵令息。 絶対的権力と富を有するタレーラン公爵家の唯一の後継者で絶世の美貌を持つ男。 しかしてその本性は冷酷無慈悲の女嫌い。 この国きっての選りすぐりの4人のご令嬢達は揃いも揃ってタレーラン家を叩き出された仲間なのだ。 こうやって集まるのはこれで2回目なのだが、やはり、話は自然と共通の話題、あの男のことになるわけで・・・。

あの、初夜の延期はできますか?

木嶋うめ香
恋愛
「申し訳ないが、延期をお願いできないだろうか。その、いつまでとは今はいえないのだが」 私シュテフイーナ・バウワーは今日ギュスターヴ・エリンケスと結婚し、シュテフイーナ・エリンケスになった。 結婚祝の宴を終え、侍女とメイド達に準備された私は、ベッドの端に座り緊張しつつ夫のギュスターヴが来るのを待っていた。 けれど、夜も更け体が冷え切っても夫は寝室には姿を見せず、明け方朝告げ鶏が鳴く頃に漸く現れたと思ったら、私の前に跪き、彼は泣きそうな顔でそう言ったのだ。 「私と夫婦になるつもりが無いから永久に延期するということですか? それとも何か理由があり延期するだけでしょうか?」  なぜこの人私に求婚したのだろう。  困惑と悲しみを隠し尋ねる。  婚約期間は三ヶ月と短かったが、それでも頻繁に会っていたし、会えない時は手紙や花束が送られてきた。  関係は良好だと感じていたのは、私だけだったのだろうか。 ボツネタ供養の短編です。 十話程度で終わります。

私たち、殿下との婚約をお断りさせていただきます!というかそもそも婚約は成立していません! ~二人の令嬢から捨てられた王子の断罪劇

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「私たち、ハリル王子殿下との婚約をお断りさせていただきます!」伯爵家の姉妹フローラとミルドレッドの声がきれいに重なった。王家主催の夜会で、なんとハリル王子に対し二人の姉妹が婚約破棄を申し出たのである。国王も列席する場で起きた前代未聞の事態に、会場はしんと静まり返る。不貞を働いたことを理由に婚約破棄を申し渡したはずのフローラと、心から愛し合っていたはずの新しい婚約相手ミルドレッドからの婚約破棄の申し出に、混乱するハリル王子。しかもそもそもフローラとの婚約は受理されていないと知らされ、ハリルは頭を抱える。そこにハリルの母親であるこの国の側妃アルビアが現れ、事態は運命の断罪劇へと進んでいく。 一風変わった婚約破棄からはじまる断罪ざまぁストーリーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨム等他サイトでも掲載中です。

殿下、婚約破棄は承りましたので、戻ってと懇願されても知りませんよ?~白い結婚の契約内容に溺愛は含まれていなかったと思うのですが~

水上
恋愛
王太子から理不尽に婚約破棄されたたセレフィーナ。 「俺の領地には、お前の知識が必要だ」 そんな彼女を拾ったのは、強面な辺境伯グレイグ。 白い結婚から始まる領地改革。 井戸も馬車も人間関係も、彼女の手にかかれば全て滑らかに!  一方、彼女を失った王太子は、自らの行いのせいで、自滅していき……。 堅物令嬢と不器用辺境伯の、計算外な溺愛ラブストーリー!(243文字)

処理中です...