婚約者の王子は正面突破する~関心がなかった婚約者に、ある日突然執着し始める残念王子の話

buchi

文字の大きさ
6 / 16

王子殿下、正面突破に出掛ける

しおりを挟む
 聞いた王妃様は、息子の王子殿下よりもっと驚いた。こちらは訳の分からない自称伯爵家の出現とマリゴールド嬢が姿を見せず、ダイエットに励んでいるという情報にびっくりしたのだ。

「絶対いじめられています!」

 王妃様は、正しく事情を理解して息子の王子向かって怒鳴ってしまった。

「確認してらっしゃい!」

 面倒くさい。

 正直、面倒なのはあの四人。
 訪問しても、バカ娘二人がギラギラしながら出てくるだけで、マリゴールド嬢のカケラも見当たらないに違いない。
 手紙は握りつぶされる気がするし、返事はあの姉妹から返ってきそう。
 マリゴールド嬢を招待しても、見知らぬ一家がなんとも下品に飾り立てて我が物顔に現れると言う噂は山ほど聞いた。王宮からの招きなら尚更だろう。空気が読めないとか言ったレベルの話ではない。

 王子殿下は正面突破することにした。

 夜間、伯爵邸を襲撃する。マリゴールド嬢に会う。婚約解消の確認をする。母の王妃様に報告する。終わり。

 だが、まずは邸内の間取りとか、家族の行動とかの調査が必要だ。
 夜中の伯爵邸に侵入して、まかり間違って、あの二人の姉妹の部屋のドアなんかを開けてしまったらおしまいだ。大歓迎されるに決まっている。
 それは全くよろしくない。

 もちろん自称伯爵ご夫妻の寝室もNGだ。見たくない。

 スパイには、殿下に負けず劣らず美形揃いと噂の側近の中から、特に美形を入念に選び出した。

「出入りの商人になりすまして、女中の誰かと仲良くなり、マリゴールド嬢の普段の様子を聞いてこい」

 王子殿下の命令は絶対なので、側近は不本意だったが、市民の服を着て現れた。

「こんなもんでいかがでしょう」

 王子殿下はつくづく側近を眺めたが、却下した。

「かっこだけ市民の、高位貴族にしか見えない」

 見かねた他の側近が忠告した。

「当たり前でしょう! 彼は侯爵家の嫡男、生粋の貴族ですよ? それに顔は抜群ですが、演技力はないんです」

 人選を誤ったか。

「それに、夜中に強行突破したいだなんて、もっとマシな方法がいくらでもあるでしょう!」

 側近たちに責められた。側近全員がこのプランには反対だった。

「他に方法があるでしょう! 王妃様に言いつけますよ!」

 別に次代の王になるわけじゃないので、側近と言っても気楽なものだ。
 王子殿下は反論した。
「さっさと片付けて終わりにしたいのだ。だが、あの一家はマリゴールド嬢を絶対に出してこないだろう。ならば家宅捜索するのみではないか」

 勝手な家宅捜索は罪に問われます……と言いたいところだったが、王子殿下は素早く侯爵家嫡男から平民服を奪い取って身につけた。

「何してるんですか!」
 全く似合わなかった。貴族臭がプンプンする。側近全員が思った。侯爵家の嫡男より悪化している。

「母上には内緒だぞ? 行ってくる」

「え……?」

 止める間もなく王子殿下は夜陰に消えてしまった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された侯爵令嬢ですが、帝国の次席秘書官になりました ――王の隣ではなく、判断を誤らせない場所へ

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として王宮に仕える侯爵令嬢ゼクレテァ。 彼女は華やかな場に立つことはなく、ただ静かに、しかし確実に政務と外交を支えていた。 ――その役割が、突然奪われるまでは。 公の場で告げられた一方的な婚約破棄。 理由はただひとつ、「愛している相手がいるから」。 ゼクレテァは感情を見せることなく、その決定を受け入れる。 だが彼女が王宮を去った後、王国には小さな歪みが生じ始めた。 些細な行き違い、遅れる判断、噛み合わない政策。 それらはやがて、国家全体を揺るがす事態へと発展していく。 一方、行き場を失ったゼクレテァの前に、思いもよらぬ「選択肢」が差し出される。 求められたのは、身分でも立場でもない。 彼女自身の能力だった。 婚約破棄から始まる、 静かで冷静な逆転劇。 王の隣に立つことを拒んだ令嬢は、 やがて「世界を動かす場所」へと歩み出す――。 -

どうぞ添い遂げてください

あんど もあ
ファンタジー
スカーレット・クリムゾン侯爵令嬢は、王立学園の卒業パーティーで婚約もしていない王子から婚約破棄を宣言される。さらには、火山の噴火の生贄になるように命じられ……。 ちょっと残酷な要素があるのでR 15です。

婚約者から妾になれと言われた私は、婚約を破棄することにしました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私エミリーは、婚約者のアシェル王子に「妾になれ」と言われてしまう。 アシェルは子爵令嬢のキアラを好きになったようで、妾になる原因を私のせいにしたいようだ。 もうアシェルと関わりたくない私は、妾にならず婚約破棄しようと決意していた。

【完結】エンディングのその後~ヒロインはエンディング後に翻弄される~

かのん
恋愛
 え?これは、悪役令嬢がその後ざまぁする系のゲームですか?それとも小説ですか?  明らかに乙女ゲームのような小説のような世界観に生まれ変わったヒロインポジションらしきソフィア。けれどそれはやったことも、読んだこともない物語だった。  ソフィアは予想し、回避し、やっと平和なエンディングにたどり着いたと思われたが・・・  実は攻略対象者や悪役令嬢の好感度を総上げしてしまっていたヒロインが、翻弄される物語。最後は誰に捕まるのか。  頭をからっぽにして、時間あるし読んでもいいよーという方は読んでいただけたらと思います。ヒロインはアホの子ですし、コメディタッチです。それでもよければ、楽しんでいただければ幸いです。  初めの土日は二話ずつ更新。それから毎日12時更新です。完結しています。短めのお話となります。  感想欄はお返事が出来ないのが心苦しいので閉じてあります。豆腐メンタルの作者です。

「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」 仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。

婚約破棄してくださいませ、王子様

若目
恋愛
「婚約破棄してくださいませ」 某国の王子アルフレッドは、婚約者の令嬢アレキサンドリアから、突然こんなことを言われた なぜそんなことを言われるかわからないアルフレッドに、アレキサンドリアはあることを告げる

私たち、殿下との婚約をお断りさせていただきます!というかそもそも婚約は成立していません! ~二人の令嬢から捨てられた王子の断罪劇

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「私たち、ハリル王子殿下との婚約をお断りさせていただきます!」伯爵家の姉妹フローラとミルドレッドの声がきれいに重なった。王家主催の夜会で、なんとハリル王子に対し二人の姉妹が婚約破棄を申し出たのである。国王も列席する場で起きた前代未聞の事態に、会場はしんと静まり返る。不貞を働いたことを理由に婚約破棄を申し渡したはずのフローラと、心から愛し合っていたはずの新しい婚約相手ミルドレッドからの婚約破棄の申し出に、混乱するハリル王子。しかもそもそもフローラとの婚約は受理されていないと知らされ、ハリルは頭を抱える。そこにハリルの母親であるこの国の側妃アルビアが現れ、事態は運命の断罪劇へと進んでいく。 一風変わった婚約破棄からはじまる断罪ざまぁストーリーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨム等他サイトでも掲載中です。

【完結】平凡な令嬢、マリールイスの婚約の行方【短編】

青波鳩子
恋愛
平凡を自認する伯爵令嬢マリールイスは、格上の公爵家嫡男レイフ・オークランスから『一目惚れをした』と婚約を申し込まれる。 困惑するマリールイスと伯爵家の家族たちは、家族会議を経て『公爵家からの婚約の申し込みは断れない』と受けることを決めた。 そんな中、レイフの友人の婚約パーティに招かれたマリールイスは、レイフから贈られたドレスを身に着けレイフと共に参加する。 挨拶後、マリールイスをしばらく放置していたレイフに「マリールイスはご一緒ではありませんか?」と声を掛けたのは、マリールイスの兄だった。 *荒唐無稽の世界観で書いた話ですので、そのようにお読みいただければと思います。 *他のサイトでも公開しています。

処理中です...