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マリゴールド嬢を知っている?
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伯爵邸への道順はよく知っていた。彼は行く道すがら情報を整理してみた。
ダイエットに励んで、社交界に出てこない変わり者の娘……本当だろうか。あのマリゴールドは律儀だ。招待状が来て、応じられないなら詫び状を必ず書く。読んでいないのではないか?
母の王妃様が言う通り、なんとなく看視されている感がある。あるいは虐待されているかも?
ようやく暗くなったばかりのころだった。王子殿下は目的の建物にたどり着くと、軽々と塀を乗り越え、物陰に佇んだ。ここはどうやら厨房の近くらしい。
彼は婚約者だっから、何回もこの屋敷に来たことがあった。最後に来たのはいつだっただろう。その頃、マリゴールドは完全に子どもだったので、屋敷の中の誰もいない図書室や使われていないゲスト用の静かな寝室、花がいっぱいの庭が好きだった。
「海賊が宝物を隠した地図を見つけて宝探しの旅に出るお話なの」
貸してくれた本は、本当にドキドキして面白かった。あの本は返しただろうか。
「このゲスト用の寝室は狭いので使っていないの。先生に見つからないで本を読むのに最適なの」
それから、
「庭の大きな木にはうろがあるの。私が入れるくらい大きいの。あと小鳥が巣を作っていたわ」
マリゴールドは年の割にあどけない顔をしていたが、彼女の話は予想とはちょっと違っていた。
「先生を黙らせるには、先生より先にたくさん本を読んどかないといけないの」
「あ、そうなの」
「歴史とかね。おもしろいわ。算術も好きよ。どうして私の先生は答えを出すのにあんなに説明するのかしら。見ればわかるのに」
「あ、そうなの」
「鳥と虫の攻防は楽しいわ。でも、私は虫の味方なの」
普通は鳥の味方になるのでは?
なんか色々思い出してきた。
王子殿下は学園に入ってから、大勢の令嬢(先輩含む)に取り囲まれるようになった。マリゴールドとは全然違うタイプの、すごく魅力的な大人な令嬢たちである。
王子殿下をあこがれの目で見つめ、殿下を褒め称え、お近づきになりたがった。
したがって、王子殿下はそれなりに忙しかったのだ。浮かれていたともいえよう。大事に至らなかったのは、婚約者がいたからではなくて、本人が王太子殿下ではなかったから。
一歩間違えれば国の大惨事、とか、特大級玉の輿のチャンス!と言う投機性が低い分、気軽に手練手管が使え、相手が成績優秀な殿下なだけに頭脳戦、恋愛ゲーム化した。
ターゲットは美貌の第三王子。賞品に不足はない。
結果、王子殿下はまれに見るモテ王子として名を馳せた。不本意だ。
「婚約者なんか本当はいらないが、ずいぶん盾には使わせてもらったからな」
ふと目の前のドアが開いて、がりがりにやせ細った娘が出てきた。ちょっと病気ではないかと心配になるような娘である。しかも服がボロい。
しかし、この娘が出て行ったあと、厨房の明かりが消えてしまった。この娘が今晩のラストチャンスかもしれない。
「ねえ、君!」
王子殿下は声を掛けた。
「マリゴールド嬢を知っている?」
ダイエットに励んで、社交界に出てこない変わり者の娘……本当だろうか。あのマリゴールドは律儀だ。招待状が来て、応じられないなら詫び状を必ず書く。読んでいないのではないか?
母の王妃様が言う通り、なんとなく看視されている感がある。あるいは虐待されているかも?
ようやく暗くなったばかりのころだった。王子殿下は目的の建物にたどり着くと、軽々と塀を乗り越え、物陰に佇んだ。ここはどうやら厨房の近くらしい。
彼は婚約者だっから、何回もこの屋敷に来たことがあった。最後に来たのはいつだっただろう。その頃、マリゴールドは完全に子どもだったので、屋敷の中の誰もいない図書室や使われていないゲスト用の静かな寝室、花がいっぱいの庭が好きだった。
「海賊が宝物を隠した地図を見つけて宝探しの旅に出るお話なの」
貸してくれた本は、本当にドキドキして面白かった。あの本は返しただろうか。
「このゲスト用の寝室は狭いので使っていないの。先生に見つからないで本を読むのに最適なの」
それから、
「庭の大きな木にはうろがあるの。私が入れるくらい大きいの。あと小鳥が巣を作っていたわ」
マリゴールドは年の割にあどけない顔をしていたが、彼女の話は予想とはちょっと違っていた。
「先生を黙らせるには、先生より先にたくさん本を読んどかないといけないの」
「あ、そうなの」
「歴史とかね。おもしろいわ。算術も好きよ。どうして私の先生は答えを出すのにあんなに説明するのかしら。見ればわかるのに」
「あ、そうなの」
「鳥と虫の攻防は楽しいわ。でも、私は虫の味方なの」
普通は鳥の味方になるのでは?
なんか色々思い出してきた。
王子殿下は学園に入ってから、大勢の令嬢(先輩含む)に取り囲まれるようになった。マリゴールドとは全然違うタイプの、すごく魅力的な大人な令嬢たちである。
王子殿下をあこがれの目で見つめ、殿下を褒め称え、お近づきになりたがった。
したがって、王子殿下はそれなりに忙しかったのだ。浮かれていたともいえよう。大事に至らなかったのは、婚約者がいたからではなくて、本人が王太子殿下ではなかったから。
一歩間違えれば国の大惨事、とか、特大級玉の輿のチャンス!と言う投機性が低い分、気軽に手練手管が使え、相手が成績優秀な殿下なだけに頭脳戦、恋愛ゲーム化した。
ターゲットは美貌の第三王子。賞品に不足はない。
結果、王子殿下はまれに見るモテ王子として名を馳せた。不本意だ。
「婚約者なんか本当はいらないが、ずいぶん盾には使わせてもらったからな」
ふと目の前のドアが開いて、がりがりにやせ細った娘が出てきた。ちょっと病気ではないかと心配になるような娘である。しかも服がボロい。
しかし、この娘が出て行ったあと、厨房の明かりが消えてしまった。この娘が今晩のラストチャンスかもしれない。
「ねえ、君!」
王子殿下は声を掛けた。
「マリゴールド嬢を知っている?」
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