【完結】エレクトラの婚約者

buchi

文字の大きさ
26 / 72

第26話 三人に取り囲まれる

しおりを挟む
翌朝、義母が意を決したように私に向かって命令した。

「ルテイン伯爵家、ロス男爵家、レシチン家の、アンとステラへの誤解を解いてちょうだい」

「誤解とは?」

「せっかくお手紙をもらえたのに、あなたが悪口を言ったせいでアンとステラの縁談がダメになってしまいました」

「どんなお手紙を受け取ったのですか?」

「アンとステラと交際したいと言う手紙ですわ」

「見せていただいてもいいかしら?」

デイジーも涙目でこちらを見ていたが、急いで手紙を持ってきた。

初めて見る手紙を私は念入りに検分した。

「いいですか? 宛先は私になっています。アンとステラは関係ありません」

どう読んでも私宛てだ。これのどこを読み間違える気だ。

「でも、この家には交際を申し込めるような年頃の、良い娘はアンとステラしかいません」

義母が訴えた。どういう思考回路だ。もう我慢がならぬ。しかし、私は我慢して説明した。

「私宛ての手紙の主は、私に用事があるのです。あなたやアンやステラに用事があるわけではありません。大体、爵位もない男性をお呼びしてどうするのです」

「全員、嫡男だと答えてくれましたわ」

ええ、失礼なことばっかり聞くな、もう!

「伯爵家では不足です! 侯爵令嬢なら侯爵令嬢らしく、相応の身分の方をお呼びしなさい。身分の低い私宛ての手紙を、高位貴族のあなたが開けてどうするのですか」

ハードルを上げてやった。

「でも……」

これくらいではへこたれないと思うが、一応念押しした。もう、関わらないで欲しい。

「洗濯女の親戚からの手紙をいちいち開けて読むのですか? 侯爵家なのですよ。今後は相手をお選びになるように!」



そして翌日学園に行くと、私は三人の男性に取り囲まれた。

三人はハワード家の客間で知り合いになったらしい。

「ハワード嬢」

彼らは私と同い年くらいの普通の男性だった。礼儀正しく、身なりもきちんとしていた。

「突然、話しかけて申し訳ございません」

「ルテイン伯爵家のルイスと申します」

「ロス男爵家のロビンです。こちらはレシチン家のレオナルド様」

だろうなと思ったのだけど、やはり、あの物凄いお茶会に参加なさった三人だった。

「ハワード家のエレクトラですわ」

もう、ここは平謝りに謝るしかなかった。

それから、義母が手紙を取り上げてしまったこと、昨日のお茶会については全く知らないこと、モートン様との婚約はお話が出ているものの決定ではなく、婚約破棄にもならないことなどを説明しなくてはならなかった。


「どこのお家でも、お話はそろそろ出てくる頃かと存じます」

私は殊勝に言った。

「モートン様とのお話は、父が持ってきました。他の方からのお誘いも、できれば父を通していただければと思います」

お父様、便利。

「それから、私の婚約話はまだ検討の段階に過ぎませんので、他の方にお知らせするようなものではございません。それぞれの家の思惑がありますので、他言なさらないでいただくと助かります」

人の家のことは放っておいてほしい。

「検討の段階なら、候補に入れてほしいものです」

「モートン様も父を通じてのお話ですので」

父が何を考えて、モートン様を婚約者にしたのか理由がわからない。それがわからないと、判断できないわ。

「父を通してくださいませ」

「それは現実的には少し難しいですね」

真面目な様子のルイス様がおっしゃった。眉毛の端がちょっと反り返って、口元はおちょぼ口だ。あくまで個人的な意見だけど、ちょっとゾォッとする顔のような気がする。

「あなたのお父様は隣国におられる。直接、お会いすることができないので、おうちに手紙を出したのです。婚約を検討している家があるのでと一度はお断りされましたが、その後、婚約はまだ確定しているわけではないからと、お屋敷に招かれました」

ルテイン伯爵家のルイス様が、後についてきた二人を振り返ると、二人がうなずいた。ロス男爵家のロビン様とレシチン家のレオナルド様ね。どっちがどっちかわからないけど。

「あなたの家から正式にエレクトラ様の婚約者候補としてお招きいただいた上は、私たちは全員、大いに期待しました」

そう言われると一言もない。

義母の大馬鹿。

婚約を検討している家があるのでお断りしますで 終わっておけばいいのだ。なんで家に呼んだのよ。












しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

大好きなあなたを忘れる方法

山田ランチ
恋愛
あらすじ  王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。  魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。 登場人物 ・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。 ・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。 ・イーライ 学園の園芸員。 クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。 ・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。 ・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。 ・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。 ・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。 ・マイロ 17歳、メリベルの友人。 魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。 魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。 ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。

貴方に私は相応しくない【完結】

迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。 彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。 天使のような無邪気な笑みで愛を語り。 彼は私の心を踏みにじる。 私は貴方の都合の良い子にはなれません。 私は貴方に相応しい女にはなれません。

【完結済】政略結婚予定の婚約者同士である私たちの間に、愛なんてあるはずがありません!……よね?

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
「どうせ互いに望まぬ政略結婚だ。結婚までは好きな男のことを自由に想い続けていればいい」「……あらそう。分かったわ」婚約が決まって以来初めて会った王立学園の入学式の日、私グレース・エイヴリー侯爵令嬢の婚約者となったレイモンド・ベイツ公爵令息は軽く笑ってあっさりとそう言った。仲良くやっていきたい気持ちはあったけど、なぜだか私は昔からレイモンドには嫌われていた。  そっちがそのつもりならまぁ仕方ない、と割り切る私。だけど学園生活を過ごすうちに少しずつ二人の関係が変わりはじめ…… ※※ファンタジーなご都合主義の世界観でお送りする学園もののお話です。史実に照らし合わせたりすると「??」となりますので、どうぞ広い心でお読みくださいませ。 ※※大したざまぁはない予定です。気持ちがすれ違ってしまっている二人のラブストーリーです。 ※この作品は小説家になろうにも投稿しています。

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

公爵家の赤髪の美姫は隣国王子に溺愛される

佐倉ミズキ
恋愛
レスカルト公爵家の愛人だった母が亡くなり、ミアは二年前にこの家に引き取られて令嬢として過ごすことに。 異母姉、サラサには毎日のように嫌味を言われ、義母には存在などしないかのように無視され過ごしていた。 誰にも愛されず、独りぼっちだったミアは学校の敷地にある湖で過ごすことが唯一の癒しだった。 ある日、その湖に一人の男性クラウが現れる。 隣にある男子学校から生垣を抜けてきたというクラウは隣国からの留学生だった。 初めは警戒していたミアだが、いつしかクラウと意気投合する。クラウはミアの事情を知っても優しかった。ミアもそんなクラウにほのかに思いを寄せる。 しかし、クラウは国へ帰る事となり…。 「学校を卒業したら、隣国の俺を頼ってきてほしい」 「わかりました」 けれど卒業後、ミアが向かったのは……。 ※ベリーズカフェにも掲載中(こちらの加筆修正版)

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~

キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。 両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。 ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。 全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。 エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。 ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。 こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。

(完)イケメン侯爵嫡男様は、妹と間違えて私に告白したらしいー婚約解消ですか?嬉しいです!

青空一夏
恋愛
私は学園でも女生徒に憧れられているアール・シュトン候爵嫡男様に告白されました。 図書館でいきなり『愛している』と言われた私ですが、妹と勘違いされたようです? 全5話。ゆるふわ。

処理中です...