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第32話 ルテイン伯爵登場
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私は義母がこの噂を聞いたらどんな反応を示すか不安だった。
だけど、ことの意味が判明してから悟ったのだが、淑女としてはどうも説明がしにくい。
デブ専はとにかく、被虐性愛者だったなんて。
「いや、義母に言うなら、デブ専の方がまずいわ。アンとステラがふくよか過ぎで、加虐性愛者……」
ルテイン伯爵家のルイス様、ロス男爵家のロビン様、レシチン家のレオナルド様が、最近くっついているのは、同好の士と言うことだったのね。
「いやいや。悪いとかいいとか言うのはないから。ただの本人の趣味だから」
私はブツブツつぶやいた。
「そう言うことで人を判断してはいけないわ。でも、どうしてその趣味がバレたのかしら?」
もちろん私はモートン様に書き送った。こういう面白い話を聞いたときは必ず書くことにしている。
モートン様に書いて差支えがあるのは、求婚先が私だったと言う点だけで、義姉に求婚者ができる分には逆にモートン様は喜ぶかもしれない。
「ずっとあの家に居続けられたら困ると思うわ」
私の家の事情から言うと、アンとステラの結婚は歓迎だった。
伝えにくい話なので、家の者たちは、アンとステラ本人も含めて、誰もこの噂を全然知らなかったと思う。でも、噂は勝手にどんどん広まっていた。
義母と義姉たちは、社交に疎い。全く何も知らなかったに違いない。
と言うことはセバスも知らない。侍女のデイジーも知らないだろう。
「まずい。とてもまずい気がするわ……」
私は一人つぶやいた。
家人に説明するのはちょっとはばかられる内容だった。結局、私も何も言わなかった。
そして、起こるべくして事件は起こった。
ある日、三人の親を代表して、デブ専で被虐性愛愛好家のルイス様の父上が、我が家へ怒鳴り込みに来られたのだ。
客間で、シルクハットを傍らに置き、何も言わない先から口髭をぶるぶる震わせている様子を盗み見て、私はこれはマズいと直感した。
ルイス様によく似ている。眉毛が少し逆立ってところとか、憤怒の表情を受かベているが口元がおちょぼ口でちょっとかわいらしいところとか。いや、そんなこと、どうでもよかった。
「セバス、私ちょっと出かけてくるわ」
「お嬢様、どちらへ?」
セバスがあわてて聞いた。
「学園に行きますわ、そんな時間でしょう。遅刻しますわ」
「あれを置いてですか? 奥様には対応能力はないと思いますが?」
あれって、ルテイン伯爵のことかしら。
「私にもありません」
ルテイン伯爵がモノ扱いでも、今はどうでもいいわ。私は早口に答えた。
「お嬢様、事情をご存じなのでは? あれはどう見ても尋常な様子ではございません」
セバスがいつになく強く詰め寄った。
仕方がないので説明しなくてはならなかった。
「いいこと? 噂によると、ルテイン伯爵家のルイス様、ロス男爵家のロビン様、レシチン家のレオナルド様は、デブ専で被虐性愛者と言う噂が広がってしまったの」
「デブ専で被虐性愛者とは、どういう意味ですか?」
そこでひっかからないで欲しいわ。その説明に困るのよ。
「そのせいで、その三人がアンとステラを気に入っていると噂になっているの」
私は聞かれたことには答えないで、続きを簡単に言った。セバスは思わず喜色を浮かべた。セバスもあの二人に、一生この家に居座られたら、転職先を探さないといけないかも、くらいは考えているだろう。私だってアーネスティン様の侍女になるつもりだもの。
「アン様とステラ様を気に入った? よいお話ではございませんか」
「よく考えて。噂は噂。ありえないでしょ? それにルテイン様のあの形相」
セバスも我に返ったに違いない。
「はっ。その通りでございますね」
あの二人は、あんまりモテない気がする。セバスも現実に戻ってきた。
「噂の発信源がウチだとでも思ったのかしら?」
「いえ、奥様にそんな頭はありません。そもそも社交界から隔絶していますから、噂を流す相手がいません」
セバスがうっかり言った。
「だから、放っておくしかないでしょう。大丈夫よ、何を言われてもよくわからない答えを返すと思うの。下手に私がいると巻き込まれてしまうと思うの」
そう言うと、私はそそくさと学園に向けて出て行った。義母の応対なんか見たくない。
しかし、これはよくなかったかもしれない。
その日の昼、食事をとる生徒で混雑している学園の食堂において、ルイス様による前代未聞の婚約白紙宣言&婚約宣言事件が起きてしまったからだ。
だけど、ことの意味が判明してから悟ったのだが、淑女としてはどうも説明がしにくい。
デブ専はとにかく、被虐性愛者だったなんて。
「いや、義母に言うなら、デブ専の方がまずいわ。アンとステラがふくよか過ぎで、加虐性愛者……」
ルテイン伯爵家のルイス様、ロス男爵家のロビン様、レシチン家のレオナルド様が、最近くっついているのは、同好の士と言うことだったのね。
「いやいや。悪いとかいいとか言うのはないから。ただの本人の趣味だから」
私はブツブツつぶやいた。
「そう言うことで人を判断してはいけないわ。でも、どうしてその趣味がバレたのかしら?」
もちろん私はモートン様に書き送った。こういう面白い話を聞いたときは必ず書くことにしている。
モートン様に書いて差支えがあるのは、求婚先が私だったと言う点だけで、義姉に求婚者ができる分には逆にモートン様は喜ぶかもしれない。
「ずっとあの家に居続けられたら困ると思うわ」
私の家の事情から言うと、アンとステラの結婚は歓迎だった。
伝えにくい話なので、家の者たちは、アンとステラ本人も含めて、誰もこの噂を全然知らなかったと思う。でも、噂は勝手にどんどん広まっていた。
義母と義姉たちは、社交に疎い。全く何も知らなかったに違いない。
と言うことはセバスも知らない。侍女のデイジーも知らないだろう。
「まずい。とてもまずい気がするわ……」
私は一人つぶやいた。
家人に説明するのはちょっとはばかられる内容だった。結局、私も何も言わなかった。
そして、起こるべくして事件は起こった。
ある日、三人の親を代表して、デブ専で被虐性愛愛好家のルイス様の父上が、我が家へ怒鳴り込みに来られたのだ。
客間で、シルクハットを傍らに置き、何も言わない先から口髭をぶるぶる震わせている様子を盗み見て、私はこれはマズいと直感した。
ルイス様によく似ている。眉毛が少し逆立ってところとか、憤怒の表情を受かベているが口元がおちょぼ口でちょっとかわいらしいところとか。いや、そんなこと、どうでもよかった。
「セバス、私ちょっと出かけてくるわ」
「お嬢様、どちらへ?」
セバスがあわてて聞いた。
「学園に行きますわ、そんな時間でしょう。遅刻しますわ」
「あれを置いてですか? 奥様には対応能力はないと思いますが?」
あれって、ルテイン伯爵のことかしら。
「私にもありません」
ルテイン伯爵がモノ扱いでも、今はどうでもいいわ。私は早口に答えた。
「お嬢様、事情をご存じなのでは? あれはどう見ても尋常な様子ではございません」
セバスがいつになく強く詰め寄った。
仕方がないので説明しなくてはならなかった。
「いいこと? 噂によると、ルテイン伯爵家のルイス様、ロス男爵家のロビン様、レシチン家のレオナルド様は、デブ専で被虐性愛者と言う噂が広がってしまったの」
「デブ専で被虐性愛者とは、どういう意味ですか?」
そこでひっかからないで欲しいわ。その説明に困るのよ。
「そのせいで、その三人がアンとステラを気に入っていると噂になっているの」
私は聞かれたことには答えないで、続きを簡単に言った。セバスは思わず喜色を浮かべた。セバスもあの二人に、一生この家に居座られたら、転職先を探さないといけないかも、くらいは考えているだろう。私だってアーネスティン様の侍女になるつもりだもの。
「アン様とステラ様を気に入った? よいお話ではございませんか」
「よく考えて。噂は噂。ありえないでしょ? それにルテイン様のあの形相」
セバスも我に返ったに違いない。
「はっ。その通りでございますね」
あの二人は、あんまりモテない気がする。セバスも現実に戻ってきた。
「噂の発信源がウチだとでも思ったのかしら?」
「いえ、奥様にそんな頭はありません。そもそも社交界から隔絶していますから、噂を流す相手がいません」
セバスがうっかり言った。
「だから、放っておくしかないでしょう。大丈夫よ、何を言われてもよくわからない答えを返すと思うの。下手に私がいると巻き込まれてしまうと思うの」
そう言うと、私はそそくさと学園に向けて出て行った。義母の応対なんか見たくない。
しかし、これはよくなかったかもしれない。
その日の昼、食事をとる生徒で混雑している学園の食堂において、ルイス様による前代未聞の婚約白紙宣言&婚約宣言事件が起きてしまったからだ。
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