【完結】エレクトラの婚約者

buchi

文字の大きさ
66 / 72

第66話 大人になってからもう一度

しおりを挟む
なんだかよくわからないけど、マーク様は父のお供で帰ってきたらしい。そして隣国へは一緒に戻らないといけないらしい。

父が王宮に、隣国の王位継承問題とやらで缶詰めになっている間、マーク様は花束や流行のお菓子を持って家を訪ねてきた。

お金に糸目をつけない豪華な花束の時もあったし、デートの時に、私が何気なく目を留めた装飾品を取り寄せてくれることもあった。

「こんなに買ってくださらなくても」

「これまで何もできなかった。手紙さえも思うようには出せなかった。埋め合わせと思ってほしいんです」

「でも、こんな高いもの、申しわけなくて受け取れませんわ」

ビジョンブラッドのルビーをはめ込んだブローチをもらった時は、さすがに恐縮した。

「ちょっと代償があります」

何かしら。ビビったが、お礼に、マークと呼んで欲しいとねだられた。



「また隣国の学校に戻らなくちゃならない。グラント伯爵になったので、留学の実績は要らなくなったのだけど」

留学の実績?

「あなたが僕では不満だと思っていることを知っていた。僕はあなたにふさわしくなりたかった。だから留学生に立候補した。総合的に一番優秀なものが選ばれる。なんでもいいから、目を引くものを取っておきたかった」

そんな理由だったの? 私は困惑した。

「不満だなんて思っていませんわ」

不満だと思っていた訳じゃない。本当は私はあなたのことを子どもだと思っていたの。あなたが大人になったら、二つも年上の女なんか嫌になるんじゃないかと心配だったの。

「子どもだと思っていた」

マーク様は追及した。

マーク様、相変わらず鋭すぎる。私は困った顔になってしまったと思う。顔を背けて庭の花を眺めることにした。

「だから留学した。少しだけ離れて、大人になってからもう一度申し込みたい。そう思った。年だけは縮められない。あのままだと相手にされない。悔しかった。だけど、もし、その間にあなたが他の誰かを好きになってしまったら、もう僕にチャンスはなくなる。だから婚約の予定をお願いした。あなたは約束を守る人だ。婚約も婚約の予定も同じ効果がある」

私は驚いてマーク様を振り返った。なんですって? 婚約の予定って、そう言う意味だったの?

「卑怯者だと思う?」

マーク様は私の手を取って上目遣いに見上げてきた。この人はどうして今でもお肌がきれいで、目が澄んでいるのかしら。体つきはすらりと大人になったが、顔はあまり変わらない。やることはあざといと言うか、あくどいと言うか……。

私は手をそっと引き抜いた。

「私は、あなたが大人になったら、きっと二歳も年上の女性なんか嫌になるのではないかと思っていたの。それに、まだ婚約の意味をわかっていないのではないかと思っていて……」

澄んだ灰色の目が大きく見開かれた。そしてマーク様の手が再び私の手を捕まえた。

「わかっていたし、そのために婚約を進めたんだ」

じわじわと意味が形を成してきた。
ピエール夫人はあなたを縛るだけの婚約予定ではないですかと怒ってくれたけど、文字通りそれが狙いだっただなんて。

もう一度、こっそり手を引き抜こうとしたけれど、今度は抜けなかった。

「放さない」

目を見つめ続けながら、マーク様はゆっくりと、手を口元に持って行ってキスした。

こんな年下、どうしたらいいの?



マーク様のものすごく派手な婚約発表のせいで、学内どこへ行っても暖かく見守られるようになった。

「あれだけ派手にやっておけば、もう誰一人、僕たちの婚約に文句は言わないよ」

モートン様、いえマーク様は満足気だった。

私も、一人くらいあなたはふさわしくないとか言ってくるどこかの令嬢がいるのではと警戒していたが、全くそんなことはなかった。

「王立高等学院だけではなく、騎士学校にも伝手ができたしね」

何の話かしらと思ったが、例の武芸大会で戦った騎士学校の優勝者をめぐって騎士学校と友好関係が結ばれたらしい。

「でも、優勝者の方と仲良くなったわけではないと?」

「うん。僕に勝つだなんて、そんなこと許せるとでも?」

見かけによらず雄感が強いと言うか。マーク様は騎士学校内で優勝者に反感を持つグループの旗印になったらしい。在籍している学校が違うんですけど。違う学校で影響量を持つってどういうこと? よくわからないわ。

「だから騎士学校の連中は、あなたを見ても絶対に求婚したりしないと思うな」

優しく、しかしニンマリと微笑むマーク様。あのかわいらしかったマーク様は一体どこへ?

「みんな、あなたが僕の唯一無二と知っているから」

普通、婚約者は唯一無二だと思う。そんなことを言われても、目のやり場に困るわ。

それに、正式な婚約者は、こんなにベタベタにしなくてはいけないものだなんて知らなかったわ。

「しっかり一緒にいないと。よくないことが起きてはいけないからね。僕は、隣国に一度戻らなくてはならないので。義兄上にも、よく頼んでおくけれど、なんだか頼りにならなくて。ローズマリー嬢にお願いしようかな」

お兄様、読まれてる。読まれてるわ。










しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【本編完結】王子の寝た子を起こしたら、夢見る少女では居られなくなりました!

こさか りね
恋愛
私、フェアリエル・クリーヴランドは、ひょんな事から前世を思い出した。 そして、気付いたのだ。婚約者が私の事を良く思っていないという事に・・・。 婚約者の態度は前世を思い出した私には、とても耐え難いものだった。 ・・・だったら、婚約解消すれば良くない? それに、前世の私の夢は『のんびりと田舎暮らしがしたい!』と常々思っていたのだ。 結婚しないで済むのなら、それに越したことはない。 「ウィルフォード様、覚悟する事ね!婚約やめます。って言わせてみせるわ!!」 これは、婚約解消をする為に奮闘する少女と、本当は好きなのに、好きと気付いていない王子との攻防戦だ。 そして、覚醒した王子によって、嫌でも成長しなくてはいけなくなるヒロインのコメディ要素強めな恋愛サクセスストーリーが始まる。 ※序盤は恋愛要素が少なめです。王子が覚醒してからになりますので、気長にお読みいただければ嬉しいです。 ※本編完結しました。 ※後日談を更新中です。

大好きなあなたを忘れる方法

山田ランチ
恋愛
あらすじ  王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。  魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。 登場人物 ・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。 ・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。 ・イーライ 学園の園芸員。 クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。 ・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。 ・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。 ・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。 ・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。 ・マイロ 17歳、メリベルの友人。 魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。 魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。 ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。

貴方に私は相応しくない【完結】

迷い人
恋愛
私との将来を求める公爵令息エドウィン・フォスター。 彼は初恋の人で学園入学をきっかけに再会を果たした。 天使のような無邪気な笑みで愛を語り。 彼は私の心を踏みにじる。 私は貴方の都合の良い子にはなれません。 私は貴方に相応しい女にはなれません。

【完結済】政略結婚予定の婚約者同士である私たちの間に、愛なんてあるはずがありません!……よね?

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
「どうせ互いに望まぬ政略結婚だ。結婚までは好きな男のことを自由に想い続けていればいい」「……あらそう。分かったわ」婚約が決まって以来初めて会った王立学園の入学式の日、私グレース・エイヴリー侯爵令嬢の婚約者となったレイモンド・ベイツ公爵令息は軽く笑ってあっさりとそう言った。仲良くやっていきたい気持ちはあったけど、なぜだか私は昔からレイモンドには嫌われていた。  そっちがそのつもりならまぁ仕方ない、と割り切る私。だけど学園生活を過ごすうちに少しずつ二人の関係が変わりはじめ…… ※※ファンタジーなご都合主義の世界観でお送りする学園もののお話です。史実に照らし合わせたりすると「??」となりますので、どうぞ広い心でお読みくださいませ。 ※※大したざまぁはない予定です。気持ちがすれ違ってしまっている二人のラブストーリーです。 ※この作品は小説家になろうにも投稿しています。

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

公爵家の赤髪の美姫は隣国王子に溺愛される

佐倉ミズキ
恋愛
レスカルト公爵家の愛人だった母が亡くなり、ミアは二年前にこの家に引き取られて令嬢として過ごすことに。 異母姉、サラサには毎日のように嫌味を言われ、義母には存在などしないかのように無視され過ごしていた。 誰にも愛されず、独りぼっちだったミアは学校の敷地にある湖で過ごすことが唯一の癒しだった。 ある日、その湖に一人の男性クラウが現れる。 隣にある男子学校から生垣を抜けてきたというクラウは隣国からの留学生だった。 初めは警戒していたミアだが、いつしかクラウと意気投合する。クラウはミアの事情を知っても優しかった。ミアもそんなクラウにほのかに思いを寄せる。 しかし、クラウは国へ帰る事となり…。 「学校を卒業したら、隣国の俺を頼ってきてほしい」 「わかりました」 けれど卒業後、ミアが向かったのは……。 ※ベリーズカフェにも掲載中(こちらの加筆修正版)

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~

キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。 両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。 ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。 全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。 エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。 ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。 こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。

(完)イケメン侯爵嫡男様は、妹と間違えて私に告白したらしいー婚約解消ですか?嬉しいです!

青空一夏
恋愛
私は学園でも女生徒に憧れられているアール・シュトン候爵嫡男様に告白されました。 図書館でいきなり『愛している』と言われた私ですが、妹と勘違いされたようです? 全5話。ゆるふわ。

処理中です...