春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる

釧路太郎

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始まりの春休み編

三女真弓は優秀である

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 僕の親が作った料理はとても好評だったようで、三人とも美味しそうに食べていた。僕にとっては普段食べている料理よりも少しだけ気合が入っているとしか思えないのだが、それでも三人にとってはとても美味しく感じられるようなものだったようだ。
 僕が食器をまとめて持っていくのだが、いつもの倍の量なので一度で運ぶことは難しかった。何も一度に運ぶ必要なんてないのだけれど、出来ることなら運ぶ回数は少ない方がいいと思っていた。そんな事を考えていると、僕が運べなかった分の食器を沙緒莉姉さんが運んでくれていた。

「随分と慣れた感じだけど、いつも片付けは昌晃君がやっているの?」
「そうだよ。ウチでは料理をしてない人が片付けるって決まりになってるんだよね。沙緒莉姉さんたちが増えたからその決まりも変わるかもしれないけど、今日は僕が洗い物まで終わらせることになってるよ」
「へえ、結構立派なんだね。もっとダラダラしてるのかと思ったけど、意外だったな」
「どんなイメージなんだよ。他の家がどうなのかわからないけどウチではそれがスタンダードだからさ」

 沙緒莉姉さんはウチのルールに感銘を受けたようで、陽香と真弓にもそれを教えていた。陽香と真弓も手伝おうとはしているのだけれど、明らかに食べ過ぎていて動きたくないというのがキッチンにいても伝わるくらいだ。

「もう、二人はそこで休んでていいから、明日からはちゃんとお手伝いするのよ」
「はーい、明日から頑張ります」
「真弓も明日からお手伝い頑張ります」

 僕が洗い物をしていると、沙緒莉姉さんは隣に立っていて、今度は僕の手際の良さに感心していた。

「へえ、ちゃんとしてるね。小さい時のイメージしかなかったからビックリしたよ。でもさ、洗い物を二人でするにはシンクがちょっと小さいかもね」
「そうかもね。沙緒莉姉さんもあっちで休んでていいよ」
「何言ってるのよ。残りは私がやっておくから昌晃君もあっちで休んでていいよ」
「でも、今日はやる日だからさ」
「まあまあ、そんな事はいいから、今日はお買い物も行って疲れてるんだろうし、先にお風呂に入ってきてもいいんだよ。何だったら、背中とか流してあげようか?」
「いや、それはいいです。じゃあ、みんな動きたくなさそうだしお風呂に入っちゃおうかな」
「そうしちゃいなよ。でも、私が入ったすぐ後に昌晃君が入るって考えると、少し恥ずかしくなっちゃうね」

 そんな事を全く意識していなかったのだけれど、確かに沙緒莉姉さんの入ったすぐ後にお風呂に入るのは少し抵抗がある。と言うか、そのまま続けて入っても良いモノなのか?
 意識すれば意識するほど変な感情が芽生えてくるようだ。僕は別にやましいことなんてしようとは思ってないし、普通にお風呂に入ろうと思っているだけなのだ。それなのに、沙緒莉姉さんが意識するようなことを言い出してしまったから意識しないわけにはいかなくなっているのではないだろうか。
 僕がそう思ってしまうのはなんでだろうと思っていたのだけれど、その原因として沙緒莉姉さんが言った言葉と沙緒莉姉さんから漂ってくるいい香りも影響しているだろう。むしろ、隣に立って洗い物を見られていた時からいい匂いがするという事には気が付いていたのだ。それがシャンプーなのか化粧水なのかわからないけれど、今まで嗅いだことのないような女子っぽい香りがしていたのだ。僕はその香りが意外と好きなのかもしれないと思うくらいイイ匂いだったのだ。

「あ、待って。昌晃がお風呂に入るなら私が先に入ってもいいかな?」
「え、別にいいけど」
「良かった。八時からちょっと見たいものがあるから先に頂いちゃうね」
「うん、僕の事なら気にしなくていいよ。いつもはもっと遅い時間に入ってるからさ」
「そうなんだ。あ、お姉ちゃんの時みたいに私の事を覗いたらダメだからね」

 さっきまで食べ過ぎて動けいない感じだった陽香ではあるが、お風呂の準備をするためなのか軽快に階段を上って自分の部屋に行ったようだ。僕は特にやることも無くなったのでリビングに戻ってソファのいつもの席に座って流れている番組を見ていた。ただ、いつもと違うのは、僕の隣に真弓がいるという事だ。父さんと母さんはテレビを見ているのだけれど、真弓はテレビに興味は無いのか辺りをキョロキョロと見て落ち着きが無かった。

「ねえ、昌兄ちゃんとゲームしたいんだけどさ、今やったら怒られるかな?」
「怒られはしないと思うけど、そんなにしたいんだったらテレビに繋げないでやるかい?」
「うん、それでもいいよ。昌兄ちゃんの部屋でもいいけどさ、二人で部屋に入ってゲームしてたら陽香お姉ちゃんに怒られるかもしれないな。でも、ゲームやるだけならいいよね」
「なんで怒られるのさ。ゲームくらい誰とでもやるでしょ」
「そうなんだけどさ、陽香お姉ちゃんに昌兄ちゃんと二人っきりになったらダメだよって言われたんだ。真弓は気にしてないし昌兄ちゃんも平気だと思うんだけど、陽香お姉ちゃんはダメって言うんだよ。たぶんなんだけど、陽香お姉ちゃんってゲーム下手だから二人で遊ばれるの悔しいんじゃないかな。きっと仲間に入れてもらいたいんだよ」
「そうなのかな」
「だってね、陽香お姉ちゃんってすっごいゲームが下手なんだ。だから、仲間外れにされるの嫌なんじゃないかなって思うんだよね」
「じゃあ、ゲーム取りに行ってこようか」
「あ、昌兄ちゃんが持ってるゲーム見たいんで全部持ってきてね。switchのだけで良いからさ」

 僕と真弓は一緒に階段を上っているのだけれど、さっきみたいにショートパンツの隙間から見えてしまってもこちらが気まずいので僕が先に上っていた。真弓はそんな事を微塵も気にしていないようではあったが、僕がそれを気にしてしまっているので気付かなくてもいい話なのだ。ただ、僕は背後に人がいるという状況が得意ではないので自然と早歩きになってしまっているのは不自然かも知れなかった。

「ねえ、全部持ってきてって言ったけどさ、たくさん持ってたりするの?」
「そうだね。結構持ってる方だと思うな。ほとんど一人用だったりするけどさ」
「え、それじゃあ、一緒に出来ないじゃない。でもね、真弓がやったことないのがあったら貸してもらってもいいかな?」
「今やってないやつだったらいいよ。真弓はどんなゲームが好きなの?」
「ゲームなら何でもやるよ。文字を読む系のゲームはあんまりやらないけど、それ以外だったら何でもやるかも」
「へえ、じゃあ、マイクラとかもやったりするの?」
「やってみたいとは思うんだけど、アレって結構時間かかるからやってないんだよね。でも、学校のお友達に頼まれて設計図を作ったりはしてたよ。私だけ中学が別になるからって、最後にみんなで小学校を作った時は楽しかったな。凄い大きいの出来たんだよ」
「マイクラで設計図を作るって凄いね。僕はダイヤを掘って満足してたよ」
「真弓は全然ダイヤ持ってないよ。装備だってずっと鉄だし。ねえ、今度一緒にサーバー創って遊ぼうよ。誰にも公開しないで二人だけでどうかな」
「別に僕は構わないけど、そんな事をしてたら陽香に怒られるんじゃない?」
「なんで私がそんな事で怒らなくちゃいけないのよ」

 僕と真弓がちょうど部屋の前で話していたからなのか、陽香がドアを開けて僕たちの会話に混ざってきた。これからちょうどお風呂に入るところだからなのか陽香はパジャマに着替えていて右手にバスタオルと白い小さい布を持っていた。きっとアレはタオルとか手ぬぐいとかではなくアレなんだろうなと思ってはいたのだけれど、僕はそれをあえて口にすることは無かった。

「あのね、私は別に昌晃と真弓が仲良くなったって怒らないわよ。それどころか、真弓の遊び相手になってくれるって言うんなら大歓迎よ。でも、部屋に二人っきりってのはどうなのかなって思っただけなのよ」
「でも、さっき買い物に行く前に陽香お姉ちゃんは昌兄ちゃんの部屋に入ってたよね?」
「え、そうだったかしら」
「うん、真弓は沙緒莉お姉ちゃんと一緒に見てたからね。でも、すぐに出てきたから慌てて隠れたんだけどさ」
「ちょっと、覗きとか趣味が悪いわよ。別に私はやましいことなんて何もしてないんだから部屋に入ってくれば良かったのに」
「でも、勝手に昌兄ちゃんの部屋に入るのって変じゃないかな」
「昌晃の部屋なんだから勝手に入ったってイイでしょ。私の部屋は勝手に入っちゃだめだけど。いい、わかった?」
「わかってないけどわかったよ。でも、勝手に入るのは良くないと思うけどな」
「それは、昌晃だからいいのよ。でも、寝てる時は可哀想だからそっとしておいてあげようね」

 よくわからないけれど、この子らは僕の部屋に勝手に入っても気にしないらしい。僕は普通に嫌なので遠慮して欲しいのだが、それ以上に気になっていることがある。先ほどから陽香が真弓に注意とも取れない注意をしているのだ。ただ、その度に陽香が腰を軽く曲げて真弓に対して前傾の姿勢になっているのだが、そうなるとサイズの合っているのか不安になるくらい大きいパジャマの襟首が大きく空いてしまっていて、僕の角度からだと陽香の胸元が丸見えになっているのだ。僕はなるべく見ないようにしているのだけれど、なぜか陽香は真弓だけではなく僕にも諭すように言ってくるのでそちらを向かないわけにはいかないのだ。それでも、陽香は僕の目を見て話そうとするので、僕は視線を上から陽香の眼もとに移動させるたびに視界の端に映ってくる胸元が気になってしまっていた。

「二人ともちゃんと聞いてよね。私だって嫌がらせで言ってるわけじゃないんだからね」
「それはわかってるけどさ、早くお風呂に入った方が良いよ。陽香お姉ちゃんが入らないと後がつかえちゃうからね」
「そうだね。じゃあ、二人で仲良く遊んでるのよ」
「うん、二人でゲームした後に二人で一緒にお風呂に入ろうかな」
「「え」」
「いやだな、冗談だよ。いくらなんでもこの年で男の人と一緒にお風呂に入るわけないじゃない」
「そ、そうよね」
「うン、そうだよな」
「もう、二人とも冗談が通用しないんだね」

 僕と陽香は真弓の言葉に驚いてしまっていたが、真弓なりの冗談だと知って思わず乾いた笑いが出てしまった。それは陽香も同じだったようで、陽香も僕と同じように笑っていた。そんな僕らを見て真弓も楽しそうに笑っていたのだが、その無邪気な笑顔を見ていると怒るのも変な気がしていた。
 陽香もそんな風に思ったのか、僕と再び目が合うと、同じように笑っていたのだった。
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