春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる

釧路太郎

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始まりの春休み編

陽香は僕に見られたくない

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 真弓とのオセロ対決は僕の圧勝劇で幕をあげた。どんなゲームでもほぼ互角の戦いをしていたのでこれは油断させる作戦なのかと思って身構えていたのだけれど、続く二戦目も僕の圧勝で終わってしまった。三戦目に突入しても良かったのだけれど、そうなってしまうと勝負をつけるのに長くて五戦目までかかってしまうと思い、そうなると晩御飯の時間に突入してしまうのではないかと心配になってしまった。
 だが、三戦目は試合途中で全て僕の色に染めてしまうというとんでもない事態になってしまった。その要因としては、後の事を考えずに現時点で一番多く取れる石を取りに行っているという事があげられる。三戦目でその弱点が露呈したのだが、最後に僕が過度に置いたことによって真弓の石は全て無くなってしまったのだ。

「うう、アナログゲームなんて嫌いだ。汚い手ばっかり使うお兄ちゃんの事も嫌いだ」
「僕は別に汚い手なんて使ってないよ。それに、真弓が目先の多いところばっかり狙ってるからそうなるんじゃないかな。もう少し先の事を読んだ方がいいと思うよ」
「それはわかってるんだけどさ、お兄ちゃんがたくさん取っていいよって言ってくれたらそこを取っちゃうじゃん。だって、お兄ちゃんがここがお勧めだよって教えてくれてるんだよ」
「そんなことは無いんだけどね。でもさ、真弓はアナログゲームが苦手なんだね。トランプとかもあんまり得意じゃないの?」
「トランプはあんまりやったことないかも。昔お姉ちゃんたちがやってるのを見てたことがあるけど、真弓は小さかったから全然ルールとかわからなくて出来なかったんだよね。でも、将棋だったらお兄ちゃんに勝てるかも。結構将棋の本とか読んでたらからね」
「将棋が出来るのにオセロが出来ないってのも凄いことだよ。じゃあ、気を取り直して別のゲームでもやる?」
「うん、沙緒莉お姉ちゃんも来たことだし、三人でテニスやろうよ。真弓は一人で良いから昌兄ちゃんと沙緒莉お姉ちゃんはチーム組んでね」
「いや、僕と君達姉妹対決で良いよ。その方が楽しそうだしね」
「でも、昌兄ちゃんは沙緒莉お姉ちゃんと一緒の方がいいと思うよ。その方が強そうだし、いい感じのペアだよ」
「ちょっと二人とも、私を押し付け合うのはやめてよ。私だってそのテニスは何回かやったことがあるから大丈夫だって。昌晃君は私を信じて一緒に戦いましょ」

 僕は沙緒莉姉さんのその言葉を信じてペアを組むことにした。真弓は一人なのでCPUと組むことになった。
 沙緒莉姉さんは宣言通りにこのゲームをちゃんとやったことがあるようで基本的な動きは問題なく、ミスもほとんどない状態で練習は終わった。真弓は動きが緩慢でトリッキーな動きをするキャラを選択していた。僕と沙緒莉姉さんはなぜか二人ともパワー系を選んでいたのだが、これはすぐに失敗だったと思い知らされることになるのだ。
 ちなみに、僕はテレビの前の床に座っていて、左隣には沙緒莉姉さんがローチェアに座っている。僕の右隣には正座をしている真弓がいるのだけれど、点を取るたびに膝立ちになって僕たちを煽ってきていた。こんな子ではなかったはずなのだが、先程のオセロで僕にボコボコにされたのがとても悔しかったようで、点を取った後に必要以上に僕たちを煽り散らかしていた。しかも、真弓は普通にショットを決めるのではなく、動きの遅い僕か沙緒莉姉さんのキャラを的確に狙ってボールを当ててきているのだ。それでも僕は三回に一回くらいしか危ない球は来ないのだが、沙緒莉姉さんに至っては飛んできた球が全て自キャラに命中して得点を与えてしまっていた。きっと、真弓は沙緒莉姉さんの動きを完全に読んでカーブをかけたりしているのだろう。
 結局僕らは一セットも取れないまま第一ゲームが終了した。これは完全にオセロの恨みを晴らされているなと思っていたのだけれど、僕は大人なのでこれ以上やられたとしてもやり返すような事はしない。何せ、僕のチームの失点のほとんどは僕が原因ではなく沙緒莉姉さんにあるのだ。でも、僕はそんな事で沙緒莉姉さんを責めたりなんてしないのだ。
 結局第二ゲームも何も出来ずに終わってしまったのだが、真弓の気はまだまだ晴れていなかったようで、その後も執拗に沙緒莉姉さんを狙い撃ちにしていたのだが、さすがに沙緒莉姉さんも徐々にではあるが動きに慣れてきて、何回かに一回は当たらずに打ち返せるようにまで成長していた。だが、勝負を決めるのには少し遅すぎたようで、第三ゲームも真弓に取られて試合は終了してしまった。

「これで一勝一敗だね。これは真弓と昌兄ちゃんの勝負だから沙緒莉お姉ちゃんは負けを数えなくて大丈夫だよ。何で決着を付けようか?」
「何でもいいけどさ、そろそろご飯の時間だから食べてからにしようよ」
「え、晩御飯の後も真弓と遊んでくれるの?」
「ああ、もちろん。真弓は遊びたくなかった?」
「そんな事ないよ。真弓は皆と遊びたいけど、昌兄ちゃんとは本気で出来るから楽しいんだ。沙緒莉お姉ちゃんも陽香お姉ちゃんもゲームが下手っぴだから逆に気を使っちゃうんだよね。でもさ、昌兄ちゃんなら大丈夫だから楽しいの」
「僕も真弓がゲーム上手いから一緒にやってて楽しいよ」
「ねえ、ちょっと気になることがあるんだけど聞いてもいいかな?」
「え、何ですか?」
「あ、昌晃君じゃなくて真弓に聞きたいんだけどさ、何で誰かがいる時は昌兄ちゃんって呼んでるのに二人の時はお兄ちゃんって呼んでるの?」
「え?」

 沙緒莉姉さんの質問は真弓の虚を突いたのだろう。真弓は今まで見たことが無いくらい動揺していた。その動揺を落ち着けようと思ったのか飲みかけのお茶を口に運ぼうとしていたのだろうが、口に届く前に湯飲みを傾けすぎてしまって自分の服に思いっきりお茶をこぼしてしまっていた。ただ、幸いなことにそのお茶はオセロの時に淹れたものだったのでほとんど熱は無い状態であったので火傷をすることは無かった。だが、それでも着ていたシャツがビショビショになってしまって肌に張り付いているようだった。真弓はグレーっぽいスポーツブラを付けているようで胸の形は綺麗だったのだが、僕がそれに見惚れているのもおかしな話ではあるので、僕は脱衣所からバスタオルとハンドタオルを持ってくることにした。なぜか脱衣所から出たところで陽香とぶつかりそうになってしまったのだが、お互いに止まることが出来たのでぶつかることは無かった。ぶつかりはしなかったのだが、かなりの至近距離まで接近してしまっていたのだ。ただ、陽香には出るべきものが出ていなかったこともあって接触事故は起きずに済んだのだった。
 ちょうどそこへ着替えをもった真弓がやってきたのだけれど、僕と陽香が物凄く接近しているのを見てしまった。真弓は僕の手を引っ張って陽香との距離を離そうとしていたようなのだが、そんな事をしなくても陽香はすっと僕から距離を取ったのだった。
 陽香は服が濡れている真弓を見たのだが、そのまま僕の持っているタオルを取って真弓の体を拭き始めた。顔には全然かかっていないはずなのに陽香は執拗に顔を拭いていたのだ。真弓は嫌がるそぶりを見せてはいたのだが、激しく抵抗することも無く陽香の行動を受け入れているようだった。

「陽香お姉ちゃんありがとう。もういいよ。あとは昌兄ちゃんにやってもらうから大丈夫」
「何言ってるのよ。私がやってあげるから真弓は気にしなくていいよ」
「でも、そのタオルを持ってきてくれたのは昌兄ちゃんだからさ、昌兄ちゃんにお願いするよ」
「お願いって、着替えをさせてもらおうとしてるってこと?」
「まさか、そんなわけないじゃない。真弓だって子供じゃないんだから自分一人で着替えられるよ。でも、陽香お姉ちゃんはご飯の用意をしておいてくれればいいんだからね。ほら、昌兄ちゃんも行くよ」
「ちょっと待ちなさいって」

 真弓は僕を連れて脱衣所に入ると間髪入れずに鍵をかけたのだ。思えば、三人姉妹で鍵をちゃんとかけることが出来たのは真弓が初めてなのではないだろうか。でも、仕組みを考えればどうやって鍵をかけるのかわかりそうなものではあるのだが。

「じゃあ、着替えるからそっち向いてて。これから下着も脱ぐからこっち見ちゃ駄目だよ」
「それは良くないよ。全部着替えるって言うなら僕は出ていくから。一人でも大丈夫でしょ?」
「嫌、大丈夫じゃない。一人だと寂しいの。待っててほしいの」
「それなら僕じゃなくても沙緒莉姉さんとか陽香とかの方がいいんじゃない?」
「でもでも、この家をよく知っているお兄ちゃんの方がいいの。お兄ちゃんじゃなきゃダメなの」
「どうしても?」
「うん、どうしても」
「じゃあさ、そこまで言うなら残ってもいいけど、お互いの立ち位置を変えようよ」
「なんで?」
「だってさ、ここで後ろを向いたら鏡があるから丸見えなんだよね」
「え、そんなわけないじゃない。ちょっとだけ場所を変えるけど、って、本当じゃない。もっと早く言ってよ」

 とは言ったものの、さすがに真弓が着替えているところに僕一人で隣に立っているというのはよろしくないだろう。立ち位置を変えないと着替え中の真弓を好きなだけ見ることが出来るのだが、それはよろしいことではないように思える。
 そんな僕が取る行動は一つしかないだろう。そう、鍵を開けて出ていくという事だ。僕は立ち位置を変えたまま前にに二歩進んでそのまま脱衣所の扉を開けた。きっとそこには陽香か沙緒莉姉さんがいるはずだ。だが、僕の予想に反してそこには誰もいなかった。なぜ誰もいないのだろうと思っていると、トイレから水を流す音が聞こえてきた。そして、トイレの中から出てきたのは陽香だった。

「ちょっと、私がトイレから出るのを待ってるのよ。ちょっと何を考えているのよ」
「違うって、脱衣所から出ようとしたらたまたま陽香が出てきたタイミングと重なっただけだって」
「そんな言い訳なんてしなくていいわよ。変態」

 僕は陽香がトイレから出るのを待っているような変態ではない。そもそも、陽香がトイレに入っていたという事は今知った事実なのだ。そんな不確かな状況で僕が変態というレッテルを貼られるのはどうしても避けたい。そうだ、真弓に証言して貰えば僕が陽香の言っているような変態ではないと証明できるはずだ。
 僕はそのまま助けを求めようとして後ろを振り返ったのだが、そこには淡いピンクで上下セットになっている下着を身に纏った真弓がこちらに背中を向けて立っていた。後ろから見ただけでも陽香よりは大人っぽいなと思っていたのだけれど、今の状況でそれを言うのはとてもよろしくない事にしかならないという事はわかっているので、僕は真弓に助けを求めることも無く陽香から何度も何度も「変態」という言葉をぶつけられることになってしまった。

 でも、僕は陽香が使ってすぐのトイレに入りたいとは思わないし、覗こうなんて気持ちは一切ないのだ。
 とは言ったものの、僕の今の状況を整理してしまうと、目の前には僕を変態扱いしたい陽香がいて、後ろにはお茶をかぶってしまったため着替えをしている真弓がいるのだ。陽香が脱衣所に来る前に着替えが終わってくれと願っていたのだが、僕の願いもむなしく真弓は先程とは違う色の下着をつけていた。僕はそれを見ながら絶望と同時にパステルカラーの下着も可愛いかもと思うのだった。

 陽香はどこ行くにも脱衣所の前を通らないといけないのに、なぜか近付いてくることは無かったのだ。それは僕にとって好都合ではあるのだが、なぜあそこから陽香が動かないのかは全くもって謎なのであった。
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