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ゴールデンウィーク編前半
沙緒莉姉さんと二人きりのリビング
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ゴールデンウィークはどこかへ出かけることも無く家で過ごして終わりなのかなと思っていると、四月ももう今日で終わりという事に気が付いた。休みが続くと曜日の感覚が失われてしまうと思うのだが、日付の概念も消失してしまうことがあるんだなと感じてしまった。
僕たちの通う大紅団扇大学付属高校は春のこの時期と秋にも二週間の休みがあるのだ。秋の休みは前半に体育祭があるのだが、これは自由参加で休んだとしても問題は無いらしい。後半のシルバーウィークは普通に休みなのだが、それでも他の高校よりは長い休みになると思う。
体育祭自体は幼稚園児から大学生まで参加することが可能なのだが、本気で競うのではなく運動を楽しむといったことの方が目的になっているようだ。僕たちは去年まで別の学校に通っていたので想像はつかないが、普段いくことに無い校舎にも入ったりできるので楽しいとは聞いたことがある。
今日の晩御飯は真弓と陽香が作ってくれるのだが、二人だけで買い物に行ってしまった。そうなってしまうと、僕は沙緒莉姉さんと二人で家に残ることになってしまうのだけれど、二人っきりは何となく気まずいので外へ行くことにした。
「ちょっと外へ行ってこようと思いますけど、何か買ってきますか?」
「欲しいものは無いんだけど、どこに行くの?」
「図書館か学校近くの本屋に行こうかと思ってますよ」
「そうなんだ。じゃあ、私も一緒に着いていこうかな」
こうなることは何となく予想していたけど、家の中に二人っきりでいるよりは気が楽に思えた。沙緒莉姉さんは家では色々と見せてくるのに外では大人しくなるからだ。
沙緒莉姉さんは図書館よりも学校近くの本屋へ行きたいらしいのだが、高校近くの本屋ではなく大学近くの本屋に行きたいらしい。僕は大学の近くにはあんまり行ったことが無いのでどんな店なのかわからないけれど、いつもと違う店に行くことはワクワク感もあって楽しさの方が勝っていた。
「今日は天気も良いし風も強くないから春っぽい服に着替えようかな。昌晃君も着替えてから行くよね?」
「いや、僕はべつに着替えないですよ。今の格好で大丈夫ですし」
「そっか、じゃあ、私は着替えてくるね。そんなに時間はかからないと思うけど、着替えている時に覗いたりしたらダメだからね」
本気なのか冗談なのかわからないが、沙緒莉姉さんはそう言うと僕の目の前で着ている服を脱ぎだした。僕はそっと沙緒莉姉さんに背中を向けて見ないようにしたのだけれど、その姿は何も映っていないテレビに反射していたのだった。画面越しで目が合った沙緒莉姉さんは少し嬉しそうに見えたけれど、はっきりと映っているわけではないので気のせいだったかもしれない。
服を脱いだ沙緒莉姉さんはそのままリビングを出てお風呂方面に向かっていった。もしかしたら、脱いだ服を洗濯籠に入れに行ったのかもしれないと思ったけれど、それなら部屋で着替えてから持っていけばいいのになと思ってしまったのだ。それを直接沙緒莉姉さんに言うことは出来ないけれど、陽香と真弓がいる時にはそんな事をしないので今後はこういった場面に遭遇することも少ないとは思う。
なんで僕にだけ沙緒莉姉さんが見せてくるのかわからないけど、きっと深い意味なんて無いんだろうなと思うところは多少あるのだが、僕が恥ずかしがっている姿を見るのが好きなだけなのかもしれない。なぜなら、さっきみたいに僕が恥ずかしがって顔をそむけたときは嬉しそうな顔をしているのだけれど、皆の前で見せてきたときのように無反応を決め込むと寂しそうにうつむく沙緒莉姉さんの姿を見ることが多い気がしていた。
「まだ早いかもしれないけれど、今日はワンピースにしてみたよ。外は寒いかもしれないからちょっと厚めのニットカーディガンも来てみたんだけど、昌晃君はこういう格好好きかな?」
「良いと思いますよ。沙緒莉姉さんに似合ってると思いますし」
「あ、そんなに褒めてくれるなんて嬉しいな。じゃあ、嬉しいついでに回って見せようかな」
沙緒莉姉さんは露出趣味さえなければ普通に綺麗な方だと思う。変な事さえしなければいとこの僕でも綺麗な人だとは思うのだが、なぜか僕の前では下着を見せてきたりするのが謎なのだ。
今も嬉しそうにクルクルと回転しているのだけれど、きっとその勢いでスカート部分をひらひらとさせながらパンツを見せてくるんだろうなと思っていた。
だが、僕の予想は外れたようで、沙緒莉姉さんはパンツが見えるくらいの勢いにはならず、上目遣いになって恥ずかしそうに僕を見ていた。
そうか、パンツを見せようとする前に直接褒めてしまえば恥ずかしがってそういう事をしなくなるんだ。僕はおそらくこのゴールデンウィーク中に学べることの中で一番有用な事を得たのだ。
「なんか昌晃君に直接褒められると嬉しくなっちゃうね。陽香も真弓もそうなのかな?」
「陽香はわからないですけど、真弓も褒めると嬉しそうですよ。沙緒莉姉さんも普通にしてたら綺麗なんだし、変な事をするのはやめてくださいね」
「ん、変な事って何かな?」
「変な事は変な事ですよ。ほら、行きましょうか」
「ダメ、教えてくれるまで行かないよ。昌晃君の思う変な事って何かな?」
「何かなって、沙緒莉姉さんが一番よく知ってるじゃないですか」
「ええ、わかんないな。あ、もしかして、これを見たいって事かな?」
「違います」
沙緒莉姉さんがワンピースのスカート部分に手をかけたと同時に僕は叫んでいた。別に見せてくれることはいいと思うのだけれど、これでは僕が見たいと催促したみたいに感じたのでいつもより恥ずかしくなってしまった。
僕だってパンツは見たいと思う。でも、それが自分から求めるのは恥ずかしい。見せてくれる分には何の問題も無いと思う。そんな考えは卑怯だとは思うのだけれど、僕がそう思ってしまっているのは事実なのだ。
「そっか。昌晃君は私のパンツが見たいってわけじゃないんだね。それだから、さっきも視線を逸らして見てくれなかったのかな?」
「いや、見たくないって事でもないですし、見たいってわけでもないんですけど」
「そうなのかな。昌晃君くらいの年代の子だったら興味あると思ったんだけどな。昨日だって陽香と真弓がいるのに私のパンツをじっと見てたりしたし、好きなのかと思ってたけどそうじゃなかったんだね」
「それは、沙緒莉姉さんが見せてきたからだし。陽香と真弓がそれを見たらどう思うんだろうって思ってただけですよ。変な意味で見てたわけじゃないです」
「変な意味って、私のパンツはもう見たくないって事?」
「なんて言うか、見たいとか見たくないって事でもないですし、見える時は見てしまうというか。自分から進んで見ようとはしないけれど、見える分には見てしまっているってことですかね」
「じゃあ、今まで通り私から見せてもらいたいって事?」
「いや、そう催促しているわけじゃないですし」
「うーん。昌晃君が見たくないっていうのだったら、見えないように努力はするけど、それで昌晃君は嬉しいって事かな?」
「嬉しいとか嬉しくないってことは無いですけど、見える分には見てしまうんだろうなって思いますよ」
「さっきみたいに直接は見ないふりをしてても、テレビの反射を利用して見ちゃうって事?」
「え、そういう意味ではないんですけど。見ないようにしたらたまたま見えたって感じです」
「そういうのはズルいと思うな。それだったら、ちゃんと見て欲しいって思うかも。私は昌晃君だから見せてるんだけどな」
「え?」
僕はなぜか沙緒莉姉さんには口で勝てないと思う。それは陽香や真弓も同様なのだが、なぜかこの三人には口で勝つことが出来ないのだ。小学校の時も中学校の時も言い合いで負けたことなんてなかったし、それが原因でクラスから除け者にされたことだって何度もある。それなのに、この三人にはいつも言い負かされてしまう。
それよりも、僕にだけ見せてるというのはやはり故意に見せていたという事だったのだ。今までの状況を考えてもそれは間違いないと思うのだけれど、ハッキリ言われると僕はそれを意識してしまう。
「それって、どういう意味ですか?」
「どういう意味って、昌晃君にだけ見せてあげてるって事だよ。もちろん、男の子の中ではって事だけどね」
「それはわかるんですけど、なんでそんな事をするんですか?」
「なんでって、私もどうしてかを説明できないんだけどね。昌晃君が小さい時から私のパンツを見ようとしてたからかな。それで、見たいのなら見せてあげた方がいいのかなって思ったからだよ」
「いや、僕はべつに小さい時から見たいって思ってたわけじゃないですし。隠されているところが少し見えたら気になっただけだと思います」
「あれ、あんなに小さい時の事を覚えているんだ。もしかして、その時からずっと見たかったのかな?」
「そういう事じゃないですけど」
「もしかして、さっきも私が回ってる時にパンツが見えるんじゃないかなって思って見てたのかな?」
「そうじゃないですけど。見せてくるんだろうなとは思ってました」
「ええ、それは酷いな。私は昌晃君が褒めてくれたから嬉しかったのに。そんな目でしか見られていなかったなんて、悲しくなっちゃうな」
「そうじゃないです。普通に似合ってるなって思ってます。それは本当です」
「本当に?」
「本当です。嘘じゃないです」
「じゃあ、それを信じてあげるね。もう一回回って見せるからちゃんと見ててね」
「はい」
沙緒莉姉さんは小さいバッグと着ていたニットカーディガンをソファの上に置いて僕の正面に立った。何故か沙緒莉姉さんは壁際に移動したのだけれど、僕はスカートが舞い上がることなんて気にしないという気持ちで沙緒莉姉さんを見つめていた。
少しの時間だけだったが二人の目が合っていたのに、沙緒莉姉さんは恥ずかしくなってしまったのか僕から視線を外してしまった。僕は無意識のうちに沙緒莉姉さんの視線を追っていた。沙緒莉姉さんは一瞬だけ僕と目が合ったのだけれど、そのまま恥ずかしくなったのか、その場にしゃがみこんでしまった。
こんなに恥ずかしがるなんて、学校にいる時の陽香みたいだなと思った。やはり、性格が微妙に違っていても姉妹は似ているんだなと感じていたのだけれど、その後の沙緒莉姉さんの行動は僕の予想していたものと違った。
「どう、一回転してみたけどちゃんと見てくれたかな?」
「見てましたけど、予想外でした」
「でしょ。人間ってさ、予想外の出来事に遭遇すると、それを見ちゃうんだって」
確かに。僕は沙緒莉姉さんが立ちあがってから先ほどのようにクルクルと回ると思っていたのだけれど、なぜか沙緒莉姉さんはしゃがみこんだ姿勢から僕の方へ向かって開脚前転をしてきたのだ。
壁やテーブルにぶつからないようにして、僕の前でだけ器用に開脚していたのだけれど、そのお陰で僕の視線は沙緒莉姉さんに釘付けになってしまった。
先ほど見ていたパンツとは違うパンツが僕の目の前にあるのだけれど、それを見せながら沙緒莉姉さんは勝ち誇ったような表情を僕に向けてきたのだ。
僕に見せるために前転をするなんてどうかしてると思いつつも、僕はそう考えるよりも驚きの方が勝っていたようだ。僕の視線は沙緒莉姉さんのパンツに固定されてしまっていた。
「見せたのは私だけどさ、そんなに見つめられると少し恥ずかしいかも」
沙緒莉姉さんの言葉を聞いて僕も急に恥ずかしくなってしまい、慌てて視線を逸らした。沙緒莉姉さんはゆっくりと立ち上がるとスカート部分を直してからニットカーディガンを着ていた。
その時に目が合ったのだけれど、先程とは違って勝ち誇った表情ではなく恥ずかしそうな表情が印象的だった。
きっと、僕も同じような表情をしていたと思うのだ。
僕たちの通う大紅団扇大学付属高校は春のこの時期と秋にも二週間の休みがあるのだ。秋の休みは前半に体育祭があるのだが、これは自由参加で休んだとしても問題は無いらしい。後半のシルバーウィークは普通に休みなのだが、それでも他の高校よりは長い休みになると思う。
体育祭自体は幼稚園児から大学生まで参加することが可能なのだが、本気で競うのではなく運動を楽しむといったことの方が目的になっているようだ。僕たちは去年まで別の学校に通っていたので想像はつかないが、普段いくことに無い校舎にも入ったりできるので楽しいとは聞いたことがある。
今日の晩御飯は真弓と陽香が作ってくれるのだが、二人だけで買い物に行ってしまった。そうなってしまうと、僕は沙緒莉姉さんと二人で家に残ることになってしまうのだけれど、二人っきりは何となく気まずいので外へ行くことにした。
「ちょっと外へ行ってこようと思いますけど、何か買ってきますか?」
「欲しいものは無いんだけど、どこに行くの?」
「図書館か学校近くの本屋に行こうかと思ってますよ」
「そうなんだ。じゃあ、私も一緒に着いていこうかな」
こうなることは何となく予想していたけど、家の中に二人っきりでいるよりは気が楽に思えた。沙緒莉姉さんは家では色々と見せてくるのに外では大人しくなるからだ。
沙緒莉姉さんは図書館よりも学校近くの本屋へ行きたいらしいのだが、高校近くの本屋ではなく大学近くの本屋に行きたいらしい。僕は大学の近くにはあんまり行ったことが無いのでどんな店なのかわからないけれど、いつもと違う店に行くことはワクワク感もあって楽しさの方が勝っていた。
「今日は天気も良いし風も強くないから春っぽい服に着替えようかな。昌晃君も着替えてから行くよね?」
「いや、僕はべつに着替えないですよ。今の格好で大丈夫ですし」
「そっか、じゃあ、私は着替えてくるね。そんなに時間はかからないと思うけど、着替えている時に覗いたりしたらダメだからね」
本気なのか冗談なのかわからないが、沙緒莉姉さんはそう言うと僕の目の前で着ている服を脱ぎだした。僕はそっと沙緒莉姉さんに背中を向けて見ないようにしたのだけれど、その姿は何も映っていないテレビに反射していたのだった。画面越しで目が合った沙緒莉姉さんは少し嬉しそうに見えたけれど、はっきりと映っているわけではないので気のせいだったかもしれない。
服を脱いだ沙緒莉姉さんはそのままリビングを出てお風呂方面に向かっていった。もしかしたら、脱いだ服を洗濯籠に入れに行ったのかもしれないと思ったけれど、それなら部屋で着替えてから持っていけばいいのになと思ってしまったのだ。それを直接沙緒莉姉さんに言うことは出来ないけれど、陽香と真弓がいる時にはそんな事をしないので今後はこういった場面に遭遇することも少ないとは思う。
なんで僕にだけ沙緒莉姉さんが見せてくるのかわからないけど、きっと深い意味なんて無いんだろうなと思うところは多少あるのだが、僕が恥ずかしがっている姿を見るのが好きなだけなのかもしれない。なぜなら、さっきみたいに僕が恥ずかしがって顔をそむけたときは嬉しそうな顔をしているのだけれど、皆の前で見せてきたときのように無反応を決め込むと寂しそうにうつむく沙緒莉姉さんの姿を見ることが多い気がしていた。
「まだ早いかもしれないけれど、今日はワンピースにしてみたよ。外は寒いかもしれないからちょっと厚めのニットカーディガンも来てみたんだけど、昌晃君はこういう格好好きかな?」
「良いと思いますよ。沙緒莉姉さんに似合ってると思いますし」
「あ、そんなに褒めてくれるなんて嬉しいな。じゃあ、嬉しいついでに回って見せようかな」
沙緒莉姉さんは露出趣味さえなければ普通に綺麗な方だと思う。変な事さえしなければいとこの僕でも綺麗な人だとは思うのだが、なぜか僕の前では下着を見せてきたりするのが謎なのだ。
今も嬉しそうにクルクルと回転しているのだけれど、きっとその勢いでスカート部分をひらひらとさせながらパンツを見せてくるんだろうなと思っていた。
だが、僕の予想は外れたようで、沙緒莉姉さんはパンツが見えるくらいの勢いにはならず、上目遣いになって恥ずかしそうに僕を見ていた。
そうか、パンツを見せようとする前に直接褒めてしまえば恥ずかしがってそういう事をしなくなるんだ。僕はおそらくこのゴールデンウィーク中に学べることの中で一番有用な事を得たのだ。
「なんか昌晃君に直接褒められると嬉しくなっちゃうね。陽香も真弓もそうなのかな?」
「陽香はわからないですけど、真弓も褒めると嬉しそうですよ。沙緒莉姉さんも普通にしてたら綺麗なんだし、変な事をするのはやめてくださいね」
「ん、変な事って何かな?」
「変な事は変な事ですよ。ほら、行きましょうか」
「ダメ、教えてくれるまで行かないよ。昌晃君の思う変な事って何かな?」
「何かなって、沙緒莉姉さんが一番よく知ってるじゃないですか」
「ええ、わかんないな。あ、もしかして、これを見たいって事かな?」
「違います」
沙緒莉姉さんがワンピースのスカート部分に手をかけたと同時に僕は叫んでいた。別に見せてくれることはいいと思うのだけれど、これでは僕が見たいと催促したみたいに感じたのでいつもより恥ずかしくなってしまった。
僕だってパンツは見たいと思う。でも、それが自分から求めるのは恥ずかしい。見せてくれる分には何の問題も無いと思う。そんな考えは卑怯だとは思うのだけれど、僕がそう思ってしまっているのは事実なのだ。
「そっか。昌晃君は私のパンツが見たいってわけじゃないんだね。それだから、さっきも視線を逸らして見てくれなかったのかな?」
「いや、見たくないって事でもないですし、見たいってわけでもないんですけど」
「そうなのかな。昌晃君くらいの年代の子だったら興味あると思ったんだけどな。昨日だって陽香と真弓がいるのに私のパンツをじっと見てたりしたし、好きなのかと思ってたけどそうじゃなかったんだね」
「それは、沙緒莉姉さんが見せてきたからだし。陽香と真弓がそれを見たらどう思うんだろうって思ってただけですよ。変な意味で見てたわけじゃないです」
「変な意味って、私のパンツはもう見たくないって事?」
「なんて言うか、見たいとか見たくないって事でもないですし、見える時は見てしまうというか。自分から進んで見ようとはしないけれど、見える分には見てしまっているってことですかね」
「じゃあ、今まで通り私から見せてもらいたいって事?」
「いや、そう催促しているわけじゃないですし」
「うーん。昌晃君が見たくないっていうのだったら、見えないように努力はするけど、それで昌晃君は嬉しいって事かな?」
「嬉しいとか嬉しくないってことは無いですけど、見える分には見てしまうんだろうなって思いますよ」
「さっきみたいに直接は見ないふりをしてても、テレビの反射を利用して見ちゃうって事?」
「え、そういう意味ではないんですけど。見ないようにしたらたまたま見えたって感じです」
「そういうのはズルいと思うな。それだったら、ちゃんと見て欲しいって思うかも。私は昌晃君だから見せてるんだけどな」
「え?」
僕はなぜか沙緒莉姉さんには口で勝てないと思う。それは陽香や真弓も同様なのだが、なぜかこの三人には口で勝つことが出来ないのだ。小学校の時も中学校の時も言い合いで負けたことなんてなかったし、それが原因でクラスから除け者にされたことだって何度もある。それなのに、この三人にはいつも言い負かされてしまう。
それよりも、僕にだけ見せてるというのはやはり故意に見せていたという事だったのだ。今までの状況を考えてもそれは間違いないと思うのだけれど、ハッキリ言われると僕はそれを意識してしまう。
「それって、どういう意味ですか?」
「どういう意味って、昌晃君にだけ見せてあげてるって事だよ。もちろん、男の子の中ではって事だけどね」
「それはわかるんですけど、なんでそんな事をするんですか?」
「なんでって、私もどうしてかを説明できないんだけどね。昌晃君が小さい時から私のパンツを見ようとしてたからかな。それで、見たいのなら見せてあげた方がいいのかなって思ったからだよ」
「いや、僕はべつに小さい時から見たいって思ってたわけじゃないですし。隠されているところが少し見えたら気になっただけだと思います」
「あれ、あんなに小さい時の事を覚えているんだ。もしかして、その時からずっと見たかったのかな?」
「そういう事じゃないですけど」
「もしかして、さっきも私が回ってる時にパンツが見えるんじゃないかなって思って見てたのかな?」
「そうじゃないですけど。見せてくるんだろうなとは思ってました」
「ええ、それは酷いな。私は昌晃君が褒めてくれたから嬉しかったのに。そんな目でしか見られていなかったなんて、悲しくなっちゃうな」
「そうじゃないです。普通に似合ってるなって思ってます。それは本当です」
「本当に?」
「本当です。嘘じゃないです」
「じゃあ、それを信じてあげるね。もう一回回って見せるからちゃんと見ててね」
「はい」
沙緒莉姉さんは小さいバッグと着ていたニットカーディガンをソファの上に置いて僕の正面に立った。何故か沙緒莉姉さんは壁際に移動したのだけれど、僕はスカートが舞い上がることなんて気にしないという気持ちで沙緒莉姉さんを見つめていた。
少しの時間だけだったが二人の目が合っていたのに、沙緒莉姉さんは恥ずかしくなってしまったのか僕から視線を外してしまった。僕は無意識のうちに沙緒莉姉さんの視線を追っていた。沙緒莉姉さんは一瞬だけ僕と目が合ったのだけれど、そのまま恥ずかしくなったのか、その場にしゃがみこんでしまった。
こんなに恥ずかしがるなんて、学校にいる時の陽香みたいだなと思った。やはり、性格が微妙に違っていても姉妹は似ているんだなと感じていたのだけれど、その後の沙緒莉姉さんの行動は僕の予想していたものと違った。
「どう、一回転してみたけどちゃんと見てくれたかな?」
「見てましたけど、予想外でした」
「でしょ。人間ってさ、予想外の出来事に遭遇すると、それを見ちゃうんだって」
確かに。僕は沙緒莉姉さんが立ちあがってから先ほどのようにクルクルと回ると思っていたのだけれど、なぜか沙緒莉姉さんはしゃがみこんだ姿勢から僕の方へ向かって開脚前転をしてきたのだ。
壁やテーブルにぶつからないようにして、僕の前でだけ器用に開脚していたのだけれど、そのお陰で僕の視線は沙緒莉姉さんに釘付けになってしまった。
先ほど見ていたパンツとは違うパンツが僕の目の前にあるのだけれど、それを見せながら沙緒莉姉さんは勝ち誇ったような表情を僕に向けてきたのだ。
僕に見せるために前転をするなんてどうかしてると思いつつも、僕はそう考えるよりも驚きの方が勝っていたようだ。僕の視線は沙緒莉姉さんのパンツに固定されてしまっていた。
「見せたのは私だけどさ、そんなに見つめられると少し恥ずかしいかも」
沙緒莉姉さんの言葉を聞いて僕も急に恥ずかしくなってしまい、慌てて視線を逸らした。沙緒莉姉さんはゆっくりと立ち上がるとスカート部分を直してからニットカーディガンを着ていた。
その時に目が合ったのだけれど、先程とは違って勝ち誇った表情ではなく恥ずかしそうな表情が印象的だった。
きっと、僕も同じような表情をしていたと思うのだ。
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