春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる

釧路太郎

文字の大きさ
60 / 100
高校生編1

陽香のファンに囲まれる僕

しおりを挟む
「ちょっといいかな?」

 僕はおそらくこの学校に入学してから初めて男子生徒に話しかけられた。要件も何も言ってこない辺り怪しさ満開ではあったが、この学校に来てから一度も男子生徒と会話をしたことが無い僕からしたらそれでも嬉しいものではあった。

「ここだとなんだからさ、俺達の部室に来てもらってもいいかな」
「部室ってどのあたり?」
「三階の音楽室の近く」
「わかった。そこまでついていくよ」
「悪いな」

 僕はこれだけの会話で名前も知らない子の男子生徒と十年来の付き合いのように感じていた。女子と違って無駄な会話が一切なく目的を達成すれがあとは興味が無いといった様子なのだが、なぜかお互いに緊張感が漂っているように思えた。
 そんな僕たちの様子を見守っていた吉川さんと今井さんはいつもよりも心配した感じに見えたし、遠くから僕を見守ってくれている林田さんは明らかに動揺を隠しきれていなかった。

「別にさ、あんたを殴ったり蹴ったりなんかしないから安心してよ。ウチの部長があんたに聞きたいことがあるってだけなんで、そんなに時間も取らせないと思うからさ。あんたが変な事しなければすぐに終わるって言ってたから」
「部長って、何の部活なの?」
「それは行けばわかるから。それにさ、俺はあんまり注目されるの好きじゃないんで。早く行こうぜ」

 注目されるのが嫌なのに僕に話しかけてくるというのは完全に矛盾していると思うのだけれど、彼はそれに全く気付いていないようだった。今まで男子生徒と会話をしたことも無い僕に話しかけているんだからそれだけでも注目されるというのに、僕にくっつくんじゃないかと言うくらい接近しているのだから変な風に思われても仕方のない事なのだ。
 でも、彼はそれに全く気付いていない。

 そして、なぜか彼は道案内をする時に僕の腕を掴もうとしてきたのだ。僕はとっさにその腕を避けたのだけれど、彼は僕が避けたのを見て間違えたというような表情を見せていたのだ。
 僕たちは階段を上って廊下を奥へと進んでいったのだが、昼休みも始まったばかりという事もあって部室棟にいる生徒の数はまばらだった。
 お料理研究会の前を通り過ぎる時に軽く中を覗こうと思ったのだけれど、入り口に鍵がかかっているので林田さんは部室にはいないようだ。まあ、僕が彼に連れ出される時にも教室にいたのを見ているので、今のタイミングで部室に林田さんがいたとしたら、春化移動が出来るか秘密の近道があるとしか思えないのだが、当然その二つの可能性は全くないモノである。

「着いたからさ、中に入るよ。失礼します。齋藤君を連れてきました」
「おう、ご苦労。中に入ってもらってくれ」

 部室の中からはとても同じ高校生とは思えないような落ち着いた低い声が聞こえてきた。部室の看板は裏返されているので何部なのかは読めないのだが、部室の中には少なくとも四人以上の生徒がいるようだった。

「じゃあ、ここまで連れてきたんであとは中に入って幹部の人達の話を聞いてください。俺はここで失礼します」
「え、中まで案内してくれないの?」
「すいません。俺はここまで連れてくるようにしか言われてないんで」
「じゃあ、僕もここで失礼して帰ることにしようかな」
「いや、それは困ります。確かに俺は自分の役目を果たしたと言えるけど、ここで齋藤君に帰られたらお互いに無駄な時間を過ごしたって事になるでしょ。お願いだから中に入って幹部の人達の話を聞いてくださいよ」
「そう言われてもな。一人で知らない部室に入るのって結構勇気がいると思うよ。君はそんなこと出来るの?」
「出来ないけど、齋藤君はそれをやってくれると信じているよ。どうだろう、俺がドアを開けるから齋藤君がそのまま入っていくってのは?」
「いや、ドアくらい一人で開けられるけど。でもさ、なんで一緒に中に入りたくないの?」
「なんでって、普通に教室に戻ってお弁当食べたいからなんだけど」
「お弁当って聞いたらお腹空いてきたかも。隣の部屋の机を借りてお弁当を食べててもいいかな?」
「いや、良くないでしょ。それに、お弁当を持ってきてるなら中に入って話を聞きながら食べてればいいと思うよ」
「そんな事をしても怒られたりしないかな?」
「大丈夫だと思うよ。どっちかって言うと、今みたいに入り口前でウダウダやってるこの時間の方が怒られるような気もするんだけどね」
「それはあるかもしれないけどさ、いざとなると勇気なんて出ないよね。今はもう教室に帰っちゃおうかなって気持ちの方が強いよ」
「そうは言わないでさ、一回だけでもいいから中に入って話を聞いてもらえないかな?」
「どうしても聞かなきゃダメかな?」
「うん、出来ることならそうして欲しい」
「じゃあ、お昼休みも時間が限られているし、ちょっと話を聞いてきてみるよ」

 僕はそんなやり取りを急にやめて思いっきり扉を開けた。
 勢い良く開けた扉は思いっきり横にスライドして大きな音を立てていた。その音か扉の開く勢いに驚いたのか、入口のすぐそばに立っていた女子生徒は変な悲鳴をあげていた。

「ちょっと、いきなり勢いよく開けるなんてどうかしてますよ。そんなことして何になるって言うんですか。ちょっとは考えて行動してもらえませんかね」
「そうよ。いきなり開けるとか常識無いんじゃないですかね。ま、あなたにそんな常識があるとは思ってないですけどね」
「確かに。でも、そんな男でも一年一組の前田陽香さんと仲が良いって言うんだからこの世ももう終わりなのかもね」
「でもさ、ただのいとこ同士って噂もあるけど、それを先に確かめた方がいいんじゃない?」
「それもそうね。齋藤君って、前田陽香さんといとこ同士って噂は本当なの?」
「噂って言うか、それは事実なんですけど。嘘だと思うなら僕の担任の佐久間先生に聞いてみてくださいよ。間違いないって言ってくれるはずですから」
「一応それは信じるけどさ、いとこ同士って肉体的接触が頻繁にあるもんなの?」
「肉体的接触って、そんな事しないですけど」
「そう言ってもさ、千枝ちゃんが撮ったこの写真はどういう事なのか教えてもらってもいいかな?」

 僕の目の前に出された大判サイズに印刷された写真は先日僕と陽香が学校からの帰りに公園に行った時の物だとすぐに理解した。なぜなら、僕の太ももの上に乗っている陽香が写っていたからだ。
 僕の足の上に陽香が座ってきたというのは後にも先にもあの時一回だけだし、そんな印象に深く残るような出来事があった日を間違えるはずは無いのだ。

「もう一度聞くけどさ、なんで君の足の上に前田さんが座って抱き着いているの?」
「どうしてって、それは陽香に聞いてもらわないとわからないけど。それよりも、外にいる時に聞こえた低い声の人ってどこにいるの?」
「私達がしてる質問に答えないで質問をしてくるのはやめてもらってもいいかな。もう一度聞くけど、この写真の状況はいったいどういう意味なんですか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

高校生なのに娘ができちゃった!?

まったりさん
キャラ文芸
不思議な桜が咲く島に住む主人公のもとに、主人公の娘と名乗る妙な女が現われた。その女のせいで主人公の生活はめちゃくちゃ、最初は最悪だったが、段々と主人公の気持ちが変わっていって…!? そうして、紅葉が桜に変わる頃、物語の幕は閉じる。

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...