春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる

釧路太郎

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夏休み編

父さんの部下が二人やってくる

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 陽香たち三人がいないというのはこんなにも静かな感じになるのだと実感させられた。駅まで一緒に行って見送りをしてきたのだけれど、帰りのバスの中も家に帰ってからもとても静かに過語すことになるのだが、それは以前の生活に戻っただけとも言えるのではないだろうか。ただ、陽香たち三人がいない生活がどんな感じだったのか思い出すことは出来なかった。
 少なくとも、三人が戻ってくる予定の一週間後までの期間限定のもとの生活なのだ。

「そうだ。昌晃に入っていなかったが、明日の昼から父さんの部下が二人家に来るからな。まあ、父さんよりも昌晃に会ってみたいそうなんで頼むぞ」
「ちょっと待って、なんで僕に会いたいとかって話になってるの?」
「それがだな、その二人は今年入ってきた新人なんだがな、他の新卒者たちとなかなかどうして趣味が合わないようで孤立していたんだ。まあ、休憩中にゲーム機を出して遊んでいるような人たちを仲間に誘うなんてなかなか難しいものがあるのも事実なんだがな。父さんも昌晃たちと一緒に多少はゲームをするようになったんで少しくらいはゲームがわかるかなと思ってゲーム画面を覗き込んでみたんだが、父さんいは二人がやってるゲームがさっぱりわからなかったんだ。そこでな、二人は父さんにゲームをしているのを見られて良くないことをしているって言われると思って隠そうとしたんだが、父さんは別に休憩時間に何をしようが良いと思ってることと息子たちと一緒にゲームをしていることを二人に話してみたんだ。それで、二人が持っているゲームをいくつかみせてもらったところ、お前たちと一緒にやったゲームもたくさんあったんでそれについて話してみたんだ。まあ、それからも休憩時間にちょくちょく話すようになって、そのまま研修期間も終わって二人は父さんの部署に配属になったというわけだ。まあ、先週に行った歓迎会の時になんでかわからないが二人が父さんの家に遊びに来ることになってだな、沙緒莉さんたち三人もいればもっと良かったんだが、向こうの事情もあるという事で今回は昌晃が相手をしてくれると助かるんだよ。二人と一緒に遊んでくれるだけでいいんだが、何か予定でもあったりするのかな?」
「いや、予定はないけど、ちゃんと出来るかわからないよ」
「それは気にしなくても大丈夫だ。基本的には母さんの料理を食べてもらってみんなでゲームをするって流れだからな。二人とも夜には帰ると思うので、時間はそんなにかからないと思うぞ」
「まあ、それくらいだったら大丈夫だよ。でもさ、遊びに来るのって二人だけなの?」
「そうなんだよ。他の人達はゲームをやらないらしくてだな、二人も他の人は誘って欲しくないという事もあって、今回はその二人だけという事だ。ちなみに、二人は男性と女性だからな」

 陽香たちが三人の両親であるおじさんとおばさんに会いに九州に行っている間に一人でやろうと思っていたゲームをやる時間が半日無くなってしまったのだが、たまには父さんのために一肌脱ぐのもいいだろう。どんなゲームをやる人たちなのかわからないけど、僕が持っているゲームをやっているという事だし何とかなるだろう。
 午前中からやってくるみたいだし、今日は早めに寝てしまおうと思っていたのだが、ゲームをやっているといつの間にか真夜中の二時になっていた。急いでゲームをやめてベッドにもぐりこんだのだが、そういう時に限ってなかなか寝付けないものであった。

 翌朝、僕は久しぶりに自力で起きたのだが、真弓が起こしに来るのが当たり前になっていたので少し変な感じに思えていた。
 下に降りて自分で焼いたトーストを食べながらニュースを見ていると、沖縄の南に台風が発生したという情報が流れていた。出来ることなら陽香たちのいる九州に影響が無いといいなと思っていたのだけれど、待ち合わせが九州なだけで他の場所に移動しているという可能性もあったりするのだ。そんな事を考えているとスマホに新しいメッセージが届いていた。

「お兄ちゃんおはよう。真弓たちは大分県の黒川ってところに来ているよ。とっても景色が良くていい場所なんだけど、お兄ちゃんがいないとちょっと寂しいな。お土産をたくさん買っていくから楽しみにしててね。あと、沙緒莉お姉ちゃんは真弓よりも先に起きてて驚いちゃった。陽香お姉ちゃんは外国の人に道案内とかしてたよ。パパとママはお兄ちゃんに会えないのを残念がってたけど、今度ゆっくり話をしたいってさ。じゃあ、お兄ちゃんも真弓に会えなくて寂しいと思うけど、この写真で我慢してね」

 そのメッセージに少し遅れて写真が届いたのだが、寝ている陽香を挟むようにして真弓と沙緒莉姉さんが写っていた。ただ、真弓と沙緒莉姉さんは浴衣をちゃんと着ているのだけれど、一人だけ寝ている陽香の浴衣は前がはだけて何度か見たことのある下着が写っていた。二枚目の写真はなぜか陽香だけではなく、真弓と沙緒莉姉さんの浴衣もはだけて丸見えになっていたのだった。

 このメッセージは誰にも見せることが出来ないと思いつつも、僕はこの写真を消した方が良いのか悩んでしまい、食べかけのトーストに再び手を伸ばした時には完全に冷めたコーヒーと固くなったトーストを口に運ぶことになってしまっていた。

「じゃあ、父さんは駅まで二人を迎えに行ってくるよ。昌晃は母さんの手伝いをしててもらってもいいかな」
「それくらいならやっておくよ。何かしておくこととかある?」
「普段通りにしてくれていたら大丈夫だよ。二人もちょっと変わってるところがあるが、昌晃と仲良くなれそうな気はしているんだ」

 僕は父さんを見送ると、準備をしていた母さんの手伝いをすることにした。手伝いと言っても、料理自体は手を出せないのでテーブルをセッティングすることになるのだが、料理が無いのでどのようにしたらいいのかわからず、結局いつものようにテーブルの周りに適当にクッションを置くだけでで時間になってしまった。
 自分でも思うのだが、こういう時にセンスが無いと何をやるにも時間だけが無駄に過ぎてしまう。今もこれで納得しているわけではないのだが、何もしないよりマシだと思うことにした。そうでもしないと何もやっていないことになってしまうのだから。

 父さんの車の音が聞こえてきたのはそんな事を考えていた時だった。母さんはその音を合図に料理をテーブルに運んでいたのだが、僕はそれを手伝う間もなく一人でテキパキと運び終えてしまった。僕はいったい何の手伝いをしていたのだろうと自問自答してしまったのだが、何か失敗するよりは良かったと思う事で自分の役割を全うしたと思うことにしたのだ。

 父さんと一緒にやってきた二人は僕の想像していたような人ではなく、男の人は僕よりも頭一つ分くらい背が高くてスタイルも良く、女の人は真弓よりも背は低いように見えるのだけれど豊満な胸の持ち主だった。
 その二人は、モデルとアイドルのようにも見えた。

「お邪魔します。やあ、君が課長の息子さんだね。噂はかねがね聞いているよ。なんでも、君はゲームも得意で漫画もたくさん持ってるんだってね。会社じゃ萌ちゃんくらいしか話が合わなくて寂しかったんで、年はちょっと離れているかもしれないけどよろしくね」
「自己紹介をする前にそんな事を言うのはおかしいだろ。まずは自己紹介をしてからにしろって。私は中村萌と申します。本日はお招きいただき誠にありがとうございます。課長の奥様も息子さんも今日はよろしくお願いします」
「えっと、俺は中村信です。ゲーム好きのオタクなんで今日はここに来るの楽しみにしてました。課長よりもゲームが上手いって聞いてるんで、良かったら後でゲームしようね。それと、俺も萌ちゃんも同じ中村ですが、血縁関係とかないし全くの赤の他人です」
「そうなんですよ。同じ中村で休憩中にゲームやってる同士だってことで会社内では夫婦とか兄妹って思われてるんですけど、全くの赤の他人です。血縁関係があればこんなに身長差も生まれないと思うんですけど、名前だけしか見てない人はそれに気付かないんですよね。こいつはモデルをやってるくらいなんで見た目もいいんだけど、中身が完全にオタクなんで寄ってくる女も二日目には誰も話しかけてこなくなるんですよ」
「俺は身長が人より高いだけでモデルやってただけだし、その時の事務所からは誰とも話すなって言われてたんだけどさ、それって結構ストレスなんだよね。だから、会社に入ってもそんな感じなのかなって思ってたんですけど、そんな俺を受け止めてくれた課長には本当に感謝してますよ。萌ちゃんも俺と同じような趣味なんで会社の中でも唯一普通に話せる女性なんです」
「厳密に言うと、私と信の好きなジャンルは違うけどな」
「でも、俺は萌ちゃんがゲームやってるのを見るのも好きだよ。ほら、昨日だって仕事終わってからご飯も食べないでずっと配信してたじゃない」
「お前、私が配信してるのをずっと見てたのか?」
「まあね。だってさ、どんなゲームしてるのかって気になるじゃん」
「気になるって、お前の興味のないゲームだろ」
「なんでも食わず嫌いは良くないからね。試しに何でもトライするってのが俺の信条だからさ。モデルをやってたのだってそういう事なんだよ」
「もう、私が配信しているって事は言うなって言っておいたのに。まあ、言ってしまったものは仕方ないし、チャンネル名までは絶対に言うなよ。すいません、こいつがバカなばっかりに時間を取らせてしまいまして」
「まあ、二人が楽しそうにしてくれて良かったよ。じゃあ、母さんが作ってくれた料理が温かいうちにみんなでいただくことにしようか」

 僕はいつもの席に座ったのだけれど、僕の隣を信さんと萌さんが激しく争っていた。この席が良いのかと思って僕が席を移動すると、それに合わせるように二人もついてきた。結局、二人とも僕の隣に座りたいという事で僕は真弓が良く座っている誕生席に座ることになった。それを見ていた父さんと母さんもなぜか嬉しそうにしていたのだった。
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