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夏休み編
小柄で巨乳なお姉さんと僕の夏休み
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「ねえ、二人で楽しそうに何を話していたのかな?」
「別に、普通に世間話をしていただけだよ。昌晃君と話をしていると、俺も高校生に戻ったような気がしててさ」
「そうなんだ。じゃあさ、私も昌晃君とお話をしてたら高校生みたいに見えるって事かな?」
「まあ、萌ちゃんは背も低いから制服も似合いそうだけどね。許されるのなら、昌晃君のいとこの制服を借りて着てみてもいいかもね」
「いや、さすがにそれはダメでしょ。私だってそれくらいは良くない事だってわかるよ。でも、大紅団扇大付属高の制服って一度くらいは着てみたいかも」
「でも、制服の持ち主がいないんじゃそれも叶わないね。さすがに昌晃君の制服を着るわけにもいかないしな」
「私は別に男子の制服でもいいんだけど、ちょっといけないことをしているような気分になりそうだからやめておこうかな」
「萌ちゃんが昌晃君の制服を着たとしても、前のボタンを留められなさそうだからだらしない格好になりそうだよね」
「それって、私が太ってるって言いたいわけ?」
「そうじゃなくて、ほら、萌ちゃんは胸が大きいからそのせいでボタンがとめられないんじゃないかなって思っててね」
「その言い方もちょっとセクハラっぽいよ。私は気にしない方だからいいんだけど、他の人に言ったら一発でアウトになる発言かもね」
「そういうつもりじゃないんだけどな。でも、確かに言い方は良くないかもしれないな。今後気を付けるよ」
「ま、私は気にしてないからいいんだけど、他の女性は気にしちゃうかもね。私と比べると小振りな人が多いみたいだからね」
僕らは三人で楽しく漫画やゲーム談議に花を咲かせていたのだけれど、楽しい時間というのは唐突に終わるもので、気付いた時には二人が帰る時間も差し迫っていた。
二人とも名残惜しそうに僕の部屋を見ているのだが、いつかまた遊びに来てもいいと伝えたところ、二人ともとても嬉しそうに喜んでいた。その様子はまるで、新しいおもちゃを買ってもらった子犬のようにも見えていた。
僕たちは連絡先を交換して機会が合えばまた遊ぼうと言っていたのだが、社会人であり忙しい二人と遊ぶ機会なんてほとんどないだろうという事は僕もわかってはいた。それでも、時間が合えば一緒にオンラインでゲームをやったりして過ごすことが出来ていた。
三人ともそれなりにゲームが得意なので様々なジャンルのゲームで遊んだりしたのだが、最終的には雑談をして終わることも多かったりした。それはそれで楽しかったし、僕は男性と話すことが学校でほとんどなかったので信さんとの会話は普通に楽しかった。
そして、その次の土曜日。僕はなぜか萌さんの車の助手席に座って目的地のわからないドライブへ出かけていた。
「ねえ、昌晃君は三人で遊んでる時に私の事よりも信の事ばかり気にしているのってなんでかな?」
「なんでと言われましても。僕くらいの年代だと年上の女性よりも男性の方が話しやすいとか思うからですかね」
「それって、私とは喋りにくいって事かな?」
「いや、そう言うわけじゃないですけど」
「そうだよね。私と喋りにくかったらこうして二人でドライブなんてしないよね。私と喋りたくなかったら車になんて乗ってこなかったよね」
「いや、信さんも一緒だと思ったのもあって萌さんの車に乗ったんですよ。信さんは今日来ない感じですか?」
「信なら来ないよ。だって、誘ってないもん。でもさ、どうしても誘いたいって昌晃君が言うんだったら誘ってもいいんだけどさ、それって、ゲームを一緒にやってる時みたいに私を置いて楽しみたいって事なのかな?」
「別にそういう意図は無いんですけど。結果的に萌さんがそう感じてたんだとしたら、僕の配慮が欠けていたんだと思います。ごめんなさい」
「あのね、私は昌晃君の配慮が欠けているとは思ってないし、謝ってほしいわけじゃないの。私が言いたいのはね、なんで私よりも信の方が好きなのかなって思ってね。もしかしてだけど、昌晃君って本当にそっち方面の人だったりするの?」
「そっち方面とは?」
「ほら、信と一緒にポーズをとってもらってたあれよ。女性よりも男性の方が好きってやつ。そうなの?」
「違いますよ。僕は普通に女の子が好きです。それは間違いないです」
「それならいいんだけどさ、ところで、今はどこに向かっているかわかっているかな?」
「いや、全然わからないです。こっち方面に来たことがほとんど無いからどこにいるのかもわかってないです」
「それならそれでいいんだけど、喉乾いてたりしないかな?」
「喉は乾いてないですよ。お腹もそんなに空いてないですし」
「そっか、そうなんだね。じゃあ、喉が渇いたりお腹が空いた時は遠慮なく言ってね」
その言葉を交わしたっきりで僕と萌さんは無言のままだった。一本道なのでここがどこへ向かっているのかは大体わかるのだけれど、どうして僕がそっち方面に行かないといけないのかその理由がわからず、僕は少しだけ良くない想像をしてしまっていた。
山道を抜けた先で綺麗な海岸線が僕たちを待ち受けていた。すれ違う車もほとんどいない道ではあったのだけれど、時々農作業をしている人を見かけるだけでも不思議と安心感を抱いてしまっていた。
「昌晃君のいとこの子たちって明日帰ってくるんだっけ?」
「明日じゃなくて月曜なんで明後日に帰ってくるはずですよ」
「そうなんだ。昌晃君は迎えに行ったりするの?」
「たぶん行くと思いますよ。父さんと母さんと三人で迎えに行くと思います。でも、車の調子があまり良くない見たいんで、いつもと違う車だったらみんなで迎えに言ったりはしないかもしれないです」
「そんな時は私を頼ってくれてもいいんだからね。私は信と違って車もあるし免許も持ってるからね。それだけでも私は昌晃君の役に立てると思うんだけどな」
「そんなに気を遣ってもらわなくても大丈夫ですよ。僕は萌さんの事もちゃんと感謝してますから。一人でいつも暇している僕にかまってくれるのは萌さんと信さんだけですからね」
「いとこの子たちは構ってくれたりしてないの?」
「そうなんですよ。でも、今は久しぶりに向こうの両親と合ってるんで仕方ないと思います。べつに、普段からそんなにやり取りしているわけでもないんで、そんなに連絡がこないことに対して思うことも無いんですけどね」
「そんなに寂しい夜を過ごしているって言うんだったらね、私がいくらでも相手をしてあげるわよ。そうだな、さっそく今日の夜を一緒に過ごしてみようか?」
「今日は早く寝ようと思ってるんでごめんなさい」
「そうなんだ。じゃあ、また今度にしておくね」
気のせいかもしれないのだけれど、先程よりも車のスピードが上がっているように感じていた。僕は車の運転をしたことが無いので正確な事は言えないのだけれど、明らかに先程よりも景色が流れていく速度が上がっているように見える。
それでも、僕は萌さんの運転に不安を覚えることは無かった。どこに向かっているのかもわからないのだけれど、そんな事も気にならないくらい安心感があったのだ。
「昌晃君はさ、どこに向かっているのか知りたくなったりしないの?」
「それは知りたいですけど、萌さんが行きたいところなら変なところじゃないと思うんで、そこについた時にわかればいいかなって思ってるんですよ」
「ふふ、そこまで信用してもらえるってのは嬉しいかも。もちろん、昌晃君の期待を裏切るような事はしないからね。とってもいいところに連れて行ってあげるよ」
家からどのくらい離れているのかわからないくらい遠くまで来ていたのだけれど、不思議と見慣れた景色のように感じていた。なぜそう思ったのかはいまだにわからないのだが、窓の外を流れる景色をどこかで見ていたような気がしていた。
そのまましばらく車を走らせていたのだが、脇道に入ると見覚えがあった理由が理解出来た。この辺りは、僕がちょっと前に見たことがあるアニメの舞台になった場所だったのだ。地元から少し離れた場所がアニメの舞台になっているというのは知っていたのだけれど、ここまで再現されているとは思っても見なかった。見比べてみれば違うところもあるのだろうけど、僕の記憶の中にある場面と目の前に広がっているこの風景は同じ物のように感じていた。
アニメの中では太陽が高い位置にある昼間だったので、今みたいに太陽が沈みかけている時間帯とは少し趣が違うのだけれど、それでも僕はアニメの主人公になったような気がしていた。いつもよりもテンションが高かったかもしれない。
「どう、喜んでもらえたかな?」
「はい、アニメで見た風景の中にいるみたいで凄く嬉しいです」
「良かった。昌晃君の部屋にあった漫画を見てて思いだしたんだけど、アニメも見てるんだったらこの辺りに来たら喜んでくれるんじゃないかなって思ってね。マイナーな題材の漫画なんで知ってる人はほとんどいないし、この辺が聖地って気付いている人もそんなに多くは無いんだよね。でも、昌晃君はあの漫画を全巻揃えていたし、ここに来たら気付いてくれるんじゃないかなって思ってたんだ」
「もしかして、萌さんもあの漫画が好きなんですか?」
「特別好きってわけじゃないけど、普通に好きだよ。近くにモデルになった場所があるって知った時に見に来たくらいは好きなんだよ。じゃあ、あの最後のシーンを再現してみようか?」
「え、最後のシーンって、あれはダメだと思いますよ。誰か来たらどうするんですか?」
「大丈夫。誰も来ないと思うよ。でも、漫画版じゃなくてアニメ版にしておこうね」
僕は萌さんが差し出してきた手を自然と握り返していた。普段だったら手を繋いで歩いたりなんてしないけれど、あのアニメのラストシーンを再現するという理由もあるので繋いでしまった。
萌さんと手を繋いでいると、何時もよりも心臓が早く動いているような気もしていたのだけれど、それは萌さんと手を繋いでいることからくる緊張なのか、アニメの再現をしているという高揚感からくるドキドキなのか僕には判断がつかなかった。
萌さんは僕の手を握ったまま坂を上り、そのまま展望台へと入っていった。
アニメでは昼間の綺麗な海が一面に広がっていたのだけれど、こうして夕日に染まりつつある海を見るのもなかなか良いものであった。
しばらく二人で海を眺めていたのだけれど、僕はアニメをなぞるように一人でベンチに腰を下ろした。そのまま海を眺めていると、僕の目の前に萌さんが立ってその小さな体を一杯に使って僕の視界を遮っていた。
萌さんは僕の前に立ったままじっと見つめてきているのだが、一瞬だけ空いた間が何かを決心したようにも感じていた。
萌さんはアニメとは違ってスカートを履いていなかったので、ズボンを膝までおろすと僕にパンツを見せてくれた。
そのパンツはアニメに出てきたような可愛らしいものではなく、大人の女性が身に付けるような赤くてセクシーなものだった。今まで見てきたどのパンツよりも、大人の色気というやつを感じるものだった。
「ねえ、感想は?」
「とても綺麗だよ」
僕の言葉は萌さんに対しての物だったのか、この景色を見ての物だったのかはわからないが、二人とも嫌な気持ちにはならなかった。
「別に、普通に世間話をしていただけだよ。昌晃君と話をしていると、俺も高校生に戻ったような気がしててさ」
「そうなんだ。じゃあさ、私も昌晃君とお話をしてたら高校生みたいに見えるって事かな?」
「まあ、萌ちゃんは背も低いから制服も似合いそうだけどね。許されるのなら、昌晃君のいとこの制服を借りて着てみてもいいかもね」
「いや、さすがにそれはダメでしょ。私だってそれくらいは良くない事だってわかるよ。でも、大紅団扇大付属高の制服って一度くらいは着てみたいかも」
「でも、制服の持ち主がいないんじゃそれも叶わないね。さすがに昌晃君の制服を着るわけにもいかないしな」
「私は別に男子の制服でもいいんだけど、ちょっといけないことをしているような気分になりそうだからやめておこうかな」
「萌ちゃんが昌晃君の制服を着たとしても、前のボタンを留められなさそうだからだらしない格好になりそうだよね」
「それって、私が太ってるって言いたいわけ?」
「そうじゃなくて、ほら、萌ちゃんは胸が大きいからそのせいでボタンがとめられないんじゃないかなって思っててね」
「その言い方もちょっとセクハラっぽいよ。私は気にしない方だからいいんだけど、他の人に言ったら一発でアウトになる発言かもね」
「そういうつもりじゃないんだけどな。でも、確かに言い方は良くないかもしれないな。今後気を付けるよ」
「ま、私は気にしてないからいいんだけど、他の女性は気にしちゃうかもね。私と比べると小振りな人が多いみたいだからね」
僕らは三人で楽しく漫画やゲーム談議に花を咲かせていたのだけれど、楽しい時間というのは唐突に終わるもので、気付いた時には二人が帰る時間も差し迫っていた。
二人とも名残惜しそうに僕の部屋を見ているのだが、いつかまた遊びに来てもいいと伝えたところ、二人ともとても嬉しそうに喜んでいた。その様子はまるで、新しいおもちゃを買ってもらった子犬のようにも見えていた。
僕たちは連絡先を交換して機会が合えばまた遊ぼうと言っていたのだが、社会人であり忙しい二人と遊ぶ機会なんてほとんどないだろうという事は僕もわかってはいた。それでも、時間が合えば一緒にオンラインでゲームをやったりして過ごすことが出来ていた。
三人ともそれなりにゲームが得意なので様々なジャンルのゲームで遊んだりしたのだが、最終的には雑談をして終わることも多かったりした。それはそれで楽しかったし、僕は男性と話すことが学校でほとんどなかったので信さんとの会話は普通に楽しかった。
そして、その次の土曜日。僕はなぜか萌さんの車の助手席に座って目的地のわからないドライブへ出かけていた。
「ねえ、昌晃君は三人で遊んでる時に私の事よりも信の事ばかり気にしているのってなんでかな?」
「なんでと言われましても。僕くらいの年代だと年上の女性よりも男性の方が話しやすいとか思うからですかね」
「それって、私とは喋りにくいって事かな?」
「いや、そう言うわけじゃないですけど」
「そうだよね。私と喋りにくかったらこうして二人でドライブなんてしないよね。私と喋りたくなかったら車になんて乗ってこなかったよね」
「いや、信さんも一緒だと思ったのもあって萌さんの車に乗ったんですよ。信さんは今日来ない感じですか?」
「信なら来ないよ。だって、誘ってないもん。でもさ、どうしても誘いたいって昌晃君が言うんだったら誘ってもいいんだけどさ、それって、ゲームを一緒にやってる時みたいに私を置いて楽しみたいって事なのかな?」
「別にそういう意図は無いんですけど。結果的に萌さんがそう感じてたんだとしたら、僕の配慮が欠けていたんだと思います。ごめんなさい」
「あのね、私は昌晃君の配慮が欠けているとは思ってないし、謝ってほしいわけじゃないの。私が言いたいのはね、なんで私よりも信の方が好きなのかなって思ってね。もしかしてだけど、昌晃君って本当にそっち方面の人だったりするの?」
「そっち方面とは?」
「ほら、信と一緒にポーズをとってもらってたあれよ。女性よりも男性の方が好きってやつ。そうなの?」
「違いますよ。僕は普通に女の子が好きです。それは間違いないです」
「それならいいんだけどさ、ところで、今はどこに向かっているかわかっているかな?」
「いや、全然わからないです。こっち方面に来たことがほとんど無いからどこにいるのかもわかってないです」
「それならそれでいいんだけど、喉乾いてたりしないかな?」
「喉は乾いてないですよ。お腹もそんなに空いてないですし」
「そっか、そうなんだね。じゃあ、喉が渇いたりお腹が空いた時は遠慮なく言ってね」
その言葉を交わしたっきりで僕と萌さんは無言のままだった。一本道なのでここがどこへ向かっているのかは大体わかるのだけれど、どうして僕がそっち方面に行かないといけないのかその理由がわからず、僕は少しだけ良くない想像をしてしまっていた。
山道を抜けた先で綺麗な海岸線が僕たちを待ち受けていた。すれ違う車もほとんどいない道ではあったのだけれど、時々農作業をしている人を見かけるだけでも不思議と安心感を抱いてしまっていた。
「昌晃君のいとこの子たちって明日帰ってくるんだっけ?」
「明日じゃなくて月曜なんで明後日に帰ってくるはずですよ」
「そうなんだ。昌晃君は迎えに行ったりするの?」
「たぶん行くと思いますよ。父さんと母さんと三人で迎えに行くと思います。でも、車の調子があまり良くない見たいんで、いつもと違う車だったらみんなで迎えに言ったりはしないかもしれないです」
「そんな時は私を頼ってくれてもいいんだからね。私は信と違って車もあるし免許も持ってるからね。それだけでも私は昌晃君の役に立てると思うんだけどな」
「そんなに気を遣ってもらわなくても大丈夫ですよ。僕は萌さんの事もちゃんと感謝してますから。一人でいつも暇している僕にかまってくれるのは萌さんと信さんだけですからね」
「いとこの子たちは構ってくれたりしてないの?」
「そうなんですよ。でも、今は久しぶりに向こうの両親と合ってるんで仕方ないと思います。べつに、普段からそんなにやり取りしているわけでもないんで、そんなに連絡がこないことに対して思うことも無いんですけどね」
「そんなに寂しい夜を過ごしているって言うんだったらね、私がいくらでも相手をしてあげるわよ。そうだな、さっそく今日の夜を一緒に過ごしてみようか?」
「今日は早く寝ようと思ってるんでごめんなさい」
「そうなんだ。じゃあ、また今度にしておくね」
気のせいかもしれないのだけれど、先程よりも車のスピードが上がっているように感じていた。僕は車の運転をしたことが無いので正確な事は言えないのだけれど、明らかに先程よりも景色が流れていく速度が上がっているように見える。
それでも、僕は萌さんの運転に不安を覚えることは無かった。どこに向かっているのかもわからないのだけれど、そんな事も気にならないくらい安心感があったのだ。
「昌晃君はさ、どこに向かっているのか知りたくなったりしないの?」
「それは知りたいですけど、萌さんが行きたいところなら変なところじゃないと思うんで、そこについた時にわかればいいかなって思ってるんですよ」
「ふふ、そこまで信用してもらえるってのは嬉しいかも。もちろん、昌晃君の期待を裏切るような事はしないからね。とってもいいところに連れて行ってあげるよ」
家からどのくらい離れているのかわからないくらい遠くまで来ていたのだけれど、不思議と見慣れた景色のように感じていた。なぜそう思ったのかはいまだにわからないのだが、窓の外を流れる景色をどこかで見ていたような気がしていた。
そのまましばらく車を走らせていたのだが、脇道に入ると見覚えがあった理由が理解出来た。この辺りは、僕がちょっと前に見たことがあるアニメの舞台になった場所だったのだ。地元から少し離れた場所がアニメの舞台になっているというのは知っていたのだけれど、ここまで再現されているとは思っても見なかった。見比べてみれば違うところもあるのだろうけど、僕の記憶の中にある場面と目の前に広がっているこの風景は同じ物のように感じていた。
アニメの中では太陽が高い位置にある昼間だったので、今みたいに太陽が沈みかけている時間帯とは少し趣が違うのだけれど、それでも僕はアニメの主人公になったような気がしていた。いつもよりもテンションが高かったかもしれない。
「どう、喜んでもらえたかな?」
「はい、アニメで見た風景の中にいるみたいで凄く嬉しいです」
「良かった。昌晃君の部屋にあった漫画を見てて思いだしたんだけど、アニメも見てるんだったらこの辺りに来たら喜んでくれるんじゃないかなって思ってね。マイナーな題材の漫画なんで知ってる人はほとんどいないし、この辺が聖地って気付いている人もそんなに多くは無いんだよね。でも、昌晃君はあの漫画を全巻揃えていたし、ここに来たら気付いてくれるんじゃないかなって思ってたんだ」
「もしかして、萌さんもあの漫画が好きなんですか?」
「特別好きってわけじゃないけど、普通に好きだよ。近くにモデルになった場所があるって知った時に見に来たくらいは好きなんだよ。じゃあ、あの最後のシーンを再現してみようか?」
「え、最後のシーンって、あれはダメだと思いますよ。誰か来たらどうするんですか?」
「大丈夫。誰も来ないと思うよ。でも、漫画版じゃなくてアニメ版にしておこうね」
僕は萌さんが差し出してきた手を自然と握り返していた。普段だったら手を繋いで歩いたりなんてしないけれど、あのアニメのラストシーンを再現するという理由もあるので繋いでしまった。
萌さんと手を繋いでいると、何時もよりも心臓が早く動いているような気もしていたのだけれど、それは萌さんと手を繋いでいることからくる緊張なのか、アニメの再現をしているという高揚感からくるドキドキなのか僕には判断がつかなかった。
萌さんは僕の手を握ったまま坂を上り、そのまま展望台へと入っていった。
アニメでは昼間の綺麗な海が一面に広がっていたのだけれど、こうして夕日に染まりつつある海を見るのもなかなか良いものであった。
しばらく二人で海を眺めていたのだけれど、僕はアニメをなぞるように一人でベンチに腰を下ろした。そのまま海を眺めていると、僕の目の前に萌さんが立ってその小さな体を一杯に使って僕の視界を遮っていた。
萌さんは僕の前に立ったままじっと見つめてきているのだが、一瞬だけ空いた間が何かを決心したようにも感じていた。
萌さんはアニメとは違ってスカートを履いていなかったので、ズボンを膝までおろすと僕にパンツを見せてくれた。
そのパンツはアニメに出てきたような可愛らしいものではなく、大人の女性が身に付けるような赤くてセクシーなものだった。今まで見てきたどのパンツよりも、大人の色気というやつを感じるものだった。
「ねえ、感想は?」
「とても綺麗だよ」
僕の言葉は萌さんに対しての物だったのか、この景色を見ての物だったのかはわからないが、二人とも嫌な気持ちにはならなかった。
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