✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

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〜第九章 メモリア・白き風〜

158話❅態度❅

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 部屋に行くとその剣士は治療の後が痛々しくはあるが一命は取り止め、起きて素直に医者に診て貰っていた。
 パリィが入って行くと、剣士はパリィを睨んで言う。


「なんで俺を助けた?」
 パリィはその言葉には答えず医者に聞いた。

「この人はまた剣を振れますか?」

「あぁ一ヶ月ほどで
また動けるようになるだろう
安静にしてればだがな」
医者が言う。

「ありがとうございます」
パリィは丁寧に礼を言う。


 剣士は疑問に思った顔をしてパリィに同じことを聞いた。
「なんで俺を助けた?」

「その前に
助けて貰ったんだから名前くらい
名乗ったらどうなの?」
パリィが聞く。

「はぁ?
エルフのガキが何を偉そうにしてるんだ?」
 剣士は腕が立つせいか救われた割には偉そうにしている。

「偉そうでは無く
偉いんだアイファスの長に向かって
口に気をつけて話せ」
バイトが割って入った。

「マジかよ……どう見ても
まだ千歳いってない子供じゃないか……」
その剣士が言う。

「そう言うあなたも
まだ千五百歳位でしょ!」
パリィが言い返す。



 その部屋を遥か上空からユリナは様子を見ていて呟く。

「千五百才か……
私は知らないなぁ……」


 ユリナは普通のエルフが過ごすその時期を知らなかった、それはこの世界より前の世界で過ごすことが出来なかった時期、ユリナは精一杯の想いで多くの代償を支払い、この世界へ未来をつなげたのだ。


「時空の狭間で
ニヒルと千年も戦っておったからであろう?
思ったよりも
世界の創生が遅れてしまったからのぉ」
ムエルテが言う。

「でも仕方なかったよ
ニヒルを説得しないと
お母さんを
最高神にしてもらえなかったから」
ユリナが微笑みながら言う。



 そして眼下ではパリィに言われ続けたせいか、その剣士が名乗る。

「わかったわかった
とりあえず礼は言っとく

ありがとな。

 俺はセド

セド・リバーだ
で名は名乗ってやったんだ
なんで俺を助けた?」

 相変わらず態度が大きい。


 だがこれは仕方ない事でもある、セドやパリィの様に腕の立つ者は、用心棒や戦があれば大金を支払い、雇いたい者が頭を下げて依頼に来る、仕事が数多くあちらから来るのだ、パリィも前世で賞金稼ぎをしていた頃に多くの誘いを受けた経験があった。

 パリィはアイファスの長と言っても、アイファスはまだ小さな街で、セドが大きな態度を取っても仕方なく思える。

 だがパリィにとってはそれは都合が良かった。

「うん

元気そうだし傷が治ったらお金も渡してあげるから

何処にでも行きなさい
あなたくらいの腕があれば
何処でもやって行けるから」
そうパリィは優しく笑顔で言い席を立った。

「ちょっと待てよ
おい!」
 セドは焦った、初めてそんな扱いを受けたのだ、セドは助けた恩と言う話でパリィが雇い話をしてくると思っていたのだが、パリィはあっさり手放したのだ。


 上空ではユリナがその様子を見て微笑んで言う。

「うん
お姉ちゃんの方が一枚上手だったわね」

「一枚も二枚も上手じゃのぉ……」
ムエルテが鼻で笑いながら言う。



「うん?何かしら」
パリィは振り向きながら聞く。

「雇わないのか?
俺の腕はお前が知ってるだろ?」

「えぇ、
私は貴方よりも強い人を知ってるから
今はいないけど……
それに助けてもらって
感謝しない人に興味無いの」
パリィはそう言い部屋を立ち去った。


セドは暫く呆然としてしまった。


「パリィさん
あれで良かったのですか?」
テミアは部屋の外で話を聞いていた。

「うん、だって嫌じゃない?
偉そうな態度でたかを括る人に
近くに居て欲しいって思う?」

「思わなーい」
テリアが本心で言った。


その頃セドは……。


「あの女っ!
美人で長だからって俺を安く見やがって!
絶対に雇わせてやる!」
プライドが高いのか不機嫌になっていた。


 数日経ちパリィは街を見回っていた、既に越冬用の小屋は全て出来ている。
 そして、この小屋は冬を越したら解体して運べる様にテミアとテリアが考えてくれた、旅立つ準備で新しい馬車も作られている。


 パリィは道筋も解っている、極北地域に行く手前に一つ険しい山脈があるが、迂回路がありそこを通れば馬車も、時間はかかるが通る事が出来る。

 アイファスの街はかなり忙しく、多くの者が働いている、本格的に来る冬の為に、家を補強したり薪を集めたり、保存用の食料を用意したりと街の冬支度は慌ただしく進んでいく。


 そして三日後、積もる程の雪が静かに静かに降った、厳しい冬の始まりである。
 今日一日で膝までの高さは積もりそうだ、アイファスの街も吹雪ではない為に、街の人々が雪かきをしている。

 街には生活用の大きな水路がある、その水路は大陸南部に向かう川に繋がっていて、流れが速く雪を流しても詰まることも、凍る事もない、街の人々はその水路に雪を流して行く。


 パチパチと暖炉が温もりのある音を立てている、パリィの家ではパリィがピルトの香油を作っていた。
 極北地域に向かってる時には作れないので、今のうちに作り置きして置くのだ。

 あれば長い旅にかなり便利な香油である、アイファスの街の人々も一緒に来る事になった為にかなりの量が必要であった、パリィはテミアとテリアに作り方を教えながら手伝ってもらっていた。


「パリィさん、これで良いの?」
テリアが聞いた。

「そうそう
そうして殻を割って身を取り出して
布に入れて絞って……」
パリィは手際良く作業を進める。

 テミアとテリアも流石ドワーフ、作る事は覚えるのが早い、すぐに優秀な助手になってくれる。

 街の様子も何事もなく雪かきや旅の支度をしている、特に保存の出来る食料を作る事に忙しい街の人々の二ヶ月分の食料は欲しい、旅にはそれだけの食料が必要であった。


 その他にもこの冬に使う薪をだいぶ気にしていた、アイファスの街の東には林があるが、木を切るとピルトのお爺様達に申し訳ない気がしていた、倒木を探すには時間がかかるかも知れない、パリィは宿屋まで行き待機している護衛団に雪が止んだら天候を見て、林まで倒木を探しに行く事を伝えた。


 午後になり護衛館に足を運んだ、セントリアとの戦いで、家を失った人々の様子も気にかけていたのだ。

 あの黄泉の老婆がパリィに言った言葉。

(其方の民だ……)

 その言葉が心に刻まれ心配になる。

 テミアとテリアは、すっかり自宅になった宿屋の離れと宿屋の雪かきを手伝ってくれている。

 降る雪が冷たく寒さを感じさせるが、冬服のパリィはいつもと違い大人びている。

 森にいる時こんな日は、小屋から一歩も出なかったなぁ、と考えながら護衛館に着いた。

 護衛館の中は暖かい、あの戦いから前の長の屋敷で行われていた街の会議は全て、護衛館で行われる様になっていた。
 街の様子はパリィが長になり、三分の一程があの戦いで焼失したが、以前より活発になった気がした。

前の長には家族は居なかった。

 何人かのメイドが居たが、長が居なくなっても、パリィが護衛館で働く様に促し冬になっても路頭に迷う事なく過ごせている。

 バイドも今は魔法道具屋と護衛館を行き来している。

「パリィ……さん
林に行く話を聞いたが
氷ダケがあったら摘んできてくれないか?」
 バイドも、長や様付けで呼ぶのを今は止められているが、ついつい言いそうになってしまう。

「うん、高いけどいい?」
パリィは笑顔で冗談を言う。

「ふっ……まいったな
越冬小屋の人達に薬を作って分けようと思うんだが、頼めないか?」
バイドは鼻で笑いながら訳を説明した。

「はい
解りました
出来るだけ取って来ますね」
 パリィはバイドの説明に納得し笑顔で答えた、氷ダケは冬に見かけるキノコで、寒さに対して抵抗力をつけたり、霜焼けや凍傷を防いだりしてくれる、冬にあれば有難いキノコだ。


 翌日はよく晴れたが吐く息は白く寒い日であった。

 パリィは護衛団を五十人引き連れ東の林に朝から向かった。
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