✡︎ユニオンレグヌス✡︎

〜神歌〜

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〜第十一章 メモリア・黒い天使〜

205話❅闇の女神❅

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「黒い天使……」

 パリィが呟いた、戦った時も感じたがその力は磨き抜かれ、その意志は何処までも真っ直ぐだった。

 地上の者では無い強さがそこにあり、それでいて黒というには似合わない正しさに満ち溢れていた、パリィはそのカイナの優しさに似合わない、凶々しい骨の左腕、何故そうなのか気になっていた。


 その晩、皆んなが寝静まったあと、カイナが一人で小屋から出て星を見上げていた、ピルトのお爺さんもお婆さんも極北地域に行っている為に、以前より広い夜空が見える。


「オプス様……」
カイナが夜空を見て呟いていた。


「カイナさんどうしました?」
パリィが気になって小屋から出てきたのだ。


「パリィ様?」
カイナがそう言った。


「普通に呼んでいいよ
ここはセクトリアじゃないから
ちょっと聞いていい?」

パリィはそう聞いた。

「?」
カイナが不思議な顔をした。


「話したく無かったら
話さなくていいけど
左腕……どうしたの?」
パリィが静かに聞いた。


カイナは小さく微笑んだ。


「私は罪人だったのです……
ですがムエルテ様に導かれ
闇の女神様に許され
今の私がいるのです」

 カイナは星空を見上げ、左腕を見せて話を続ける。


「この腕は神々が……
私に下さった罰なのです


私は神々に弓引く事を決め
多くの罪を犯していた時に……


闇の女神オプス様が

強き者を連れて現れたのです
その者は弱くなかった
でも戦えない相手では無かったんですけど……」

カイナは涙を流し始めた。


「私はオプス様の前で何も出来なかった
信じられ無かった」
カイナは鮮明に思い出していた。

 古の大陸でクリタス平原で、闇の女神オプスを初めて見た時のことを。

 美しい夜空に満月が輝く、カイナが満月の力を支配しようとしたとき、オプスが空に手をかざしただけで、星が月よりも輝きオプスが呟いた。



「この力……
なんて寂しい力なの……

闇の中でこそ光は輝く
この人も輝けるはずなのに……」

 オプスはカイナに気付いていた。

「トールっ!
命は取らないで下さい
敵ではありませんっ!」

 オプスがそう言いながら、無数の星の力を引き出し月の力を退けた、カイナはそれに気付いて自らの魔力を高めようとした時、トールが斬りかかって来た、カイナは暗黒を躱し、槍の長さを利用して素早い攻撃を繰り出した。

(輝きが変わった
月よりも星が……
あり得ないっ‼︎‼︎)

 カイナはそう思っても大地に手をつき、死霊を呼び寄せトールを襲わせた時……。


「死者を操りし者よ!
退きなさい!
闇の女神の私とレジェンド相手に
あなたは良く戦いました
もういいでしょう……」


 そのオプスの言葉を聞いたカイナは、なぜか力が抜けてしまった、地上に神がいる、カイナは信じられないが、信じるしか無かった……。
 星の輝きで月が抑えられた、新月でもないのに月の力を封じられてしまったのだ、そしてカイナは僅かな隙をついたトールの斬撃を躱しきれず、左腕を失ったのだ。


 カイナが夜空を寂しそうに見て思い出していた。


「人の為に力を使う神を
初めて見たのです
地上に降りた神を初めて見たのです

そして神々を憎んだ私自身が
信じられなくなって
何も出来ずにこの腕を失いました……」

 カイナが様々なことを思い出していた、それはエレナとカイナが出会う前に犯した全ての罪を思い出していた。


「オプス様って……
どんな神様だったの?」
パリィが聞いた。


「オプス様はあの世界で……
地上を最も愛され

どの神々よりも慈悲深い女神様で
きっとこの世界でも
ベルスの様な国を許されないでしょう」


カイナが懐かしそうに言う。


「いい神様だったんだね……」
パリィが寂しそうに言った。


「闇の子達も光の子達も……
生きとし生きる全ての命は」

 カイナがオプスの言葉を静かに言い、パリィはそれを聞きながら優しい表情のまま瞳を瞑る。


「産まれたその時より
光も闇も共に抱きしめ産まれるのです
良く解らなければ
瞳をつぶりなさい……

闇に包まれます
ですが恐ろしい物ではなく
不思議と落ち着き安らぐのです


闇が無ければ
夜空に星は瞬かない様に
光りが輝く時には
必ず闇がそこにあるのです


私達……
闇の眷属は冥界をその闇で包み
光り輝く世界を守っているのです
私達がいなければ
世界に光りは産まれません


ですから闇に産まれたからと言って
それを恥じる事はありません」


 なぜかそれを聞いて、パリィは安らぎを覚え、そんな世界になればいいなと思えてきた。


「闇の子らよ……

全ての生ける命の為に
冥界を闇で包みなさい

私達が輝かせる夜空の星々を
白銀に輝く大きな月を
一人で見ることを寂しいと思いなさい」


 パリィはその最後の言葉を聞き、その女神に会いたいと思って瞳を静かにあけた。



「オプス様がオプスより生み出された
この世界で言う魔物を超える者達に
そう言われたそうです……


なんで……
なんでどうして‼︎
命を落とされたのですか!
あの戦いで!
何故死なれてしまったのですか⁈」

 カイナが膝をつき大地を叩いて叫び泣いて星を再び見上げた。

「今の世界に……
オプス様が居ない世界なんて……」

カイナが静かに言う。




 その様子を深い森の中から見ている者が居た……その者が呟く。

「オプス
いつまでそうしているのですか?
カイナが可愛そうじゃない」


 その者は闇の神剣暗黒を背負っていた、ユリナであった。

暗黒が囁く……


「ユリナさん
そう思うなら早くオディウムを
見つけて下さい
私より見つけられるはず

ニヒルと同等の力を持つ
時の女神テンプスなんですから

カナさんも可愛そうだって……
思わないのですか?
今は生まれ変わって
パリィとして頑張ってるんですよ!
過去の記憶も失ってしまってるし……」

 ユリナはそれを聞いて、パリィ達と同じ空を見上げる。


 パリィはカイナの悲しみを感じていたが、静かに立った。


 パリィはカイナを立たせて、優しく引っ叩いた。

「えっ?」

 カイナは驚く、暗黒の中にいたオプスも驚いたがユリナは驚かなかった。


(私の時より優しくない?それ……)
ユリナはそう思っていた。


「一人じゃないよ一緒に星を見よう……

寂しく思うのはきっと気のせいだよ
オプス様は近くにいるよ。
だから祈ろうよ

私も祈ってあげるから
神様って祈ってくれる人が
いなくなった時が本当の死なんだって

聞いた事あるの

だから祈っていればいつか
また出会えるよ」

パリィがカイナに優しくそう言った。



 ユリナはそれを見て微笑みお姉ちゃんらしいなと感じていた。

「ほら
お姉ちゃんなら大丈夫……
そんな弱い人じゃないから
さてとセディナに行こうか」

 ユリナはそう言い、時の風に乗りセディナに向かって行った。


 後にはひざまづき、夜空に向かいオプスへ祈りを捧げる二人が居た、その祈りはオプスに痛い程届き、暗黒から闇の光が放たれた。

 それと同時に夜空の闇が濃くなり、小さな星々が美しく瞬き、そして青や緑の美しい光のカーテンが波打ち、全ての憎しみや悲しみを打ち消す程に夜空が輝いた。


「オ……オプス様……」
カイナが呟く。


闇の女神オプスが小さく囁く


「全ての闇は
悲しみも寂しさも
入り混じるのです
だからこそ……

ひかり生まれ輝き
そして希望を輝かせ

再会も友情も
喜びも華やかさも

輝く時に

それが本当の美しさになるのです


闇と光が手を取り合うことが
全てを輝かせるのです
闇が無ければ
光が輝くことはありません

この夜空の様に……」


 その囁きは夜空に流れ、その星々を見ている全ての人々の心に静かに響いていた。

 カイナにもその声は届き、溢れる涙を流しながら心で呟いていた。

(いらっしゃるのですね……
オプスさま……

この世界にいらっしゃるのですね……)





メモリア~第十一章 黒い天使~
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