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〜第十二章 メモリア・時の女神
217話❅フロースデア❅
しおりを挟むそしてユリナ達は更に奥に進み、一番奥にある二体の石像の前まで来た、その石像の前に一つの祭壇がある、二体の石像はエルフが手の平を襲い掛かってくる獣に向けて突き出し何かを叫んでいる。
そして二体の間に石碑があり、ユリナとオプスが読めなかった文字が書いてあった。
「繋ぎし女神……」
パリィがまた読みあげる。
「なる程、そう読むのですね」
オプスが言い、この一番奥の空間に描かれてる壁画を調べていくそしてユリナが始めて気付いたユリナをかたどった石像の後ろの壁画だけは、ほかと違った。
等身大のドラゴンナイトのエレナの壁画であり、あの時を再現されていた。
この神殿をエレナが作ったとしたらユリナは、そう考えながら二つの壁画を探していた。
最初に来た時は驚きが強く見落としていたのかと思い気には止めなかった、でも今回二度目に来て探していたが、やはりそれは無かった。
「お母さん
何を探してるの?」
パリィがユリナに聞いた。
「偉大な英雄の壁画を
探してるんだけど
見当たらないの
何でだろう……」
ユリナがそう言いながら壁画を探していた。
「お母さん
この神話を知ってるの?」
パリィが不思議そうに聞いた。
「……」
ユリナは汗を流す、ここにはパリィに必要な記憶が全てと言える程描かれている。
だが、それがオディウムとの戦いに関わりがあることか解らない、そしてユリナが母ではなく妹である事も、全ての壁画を調べればパリィは気付くかも知れない。
全ての記憶を取り戻す事が、パリィにとって必要なことなのか、過去の世界でカナはとてつも無く苦しんだ時期もある、そして幸せを掴み取る前にあの戦いが起きたのだ。
カイナが背負い続ける過去の罪、それを覚えて居るからこその重み、それ知ったユリナは判断に迷った。
エレナが記憶を本当に取り戻したかまだ解らない、それが迷いを更に大きくしていた。
「私が話して伝えたのです
この神話を……
ただここには一人の英雄と
一人の神が描かれていないのです」
オプスがそう話を繋げてくれた。
(ユリナさん女神でも悩む時はあります。
ですが後に引くべきではありません
貴方達お二人のために……)
オプスはそう言いパリィを導こうとした。
「オプス様はこの神話を……」
パリィが聞いた。
「はい私もムエルテと二人で
この獣と闘いましたから……
パリィさん此方に……」
オプスがそして一つの壁画の前にパリィを導いた。
(オプス様それは……)
ユリナが少し戸惑いながら呟く。
(ユリナさんあなたは……
テンプスとしてパリィさんを
導いたのですか?
それとも妹として導いたのですか?
この神殿にパリィさんを
導いた時にどちらでも構いません
覚悟をしておくべきです……)
オプスはユリナの迷いを見抜き、パリィをユリナのかわりに導いていく。
パリィがその壁画を触れながら見始める。
エルフと二体の獣が激しく戦い始める、エルフの方は一瞬一瞬に擦り切れてしまいそうな運命を感じさせるが、二体の獣は遊ぶ様にエルフを追い詰めていく、そしてついにエルフは弾き飛ばされ、大きな何かに叩きつけられる。
「ごめんぬ……」
ユリナの声が悲しく寂しくパリィの頭を駆け抜けた。
(お母さん……の……声……)
壁画は真っ白になり、一人のエルフがその中から飛び出し、諦めてしまったエルフを叩き叫んだ。
「諦めちゃダメ!走って!」
そして二人のエルフは走り抜けていく壁画であった、それはパリィの声であり思わず声を出した。
「えっ!私なの⁈」
そしてパリィは思い出した。ある夜に見た不思議な夢を、その夢を見て起き、夢では無いことを確認した途端に強烈な眠気に襲われ再び寝てしまい、綺麗に忘れていたのだ。
そしてこの壁画と夢を照らし合わせて思い出して行くと、その先をはっきり思い出した。
その助けたエルフの顔を、それは母ユリナであった、そして光の剣や今までパリィを導く様に振る舞っている事、一つ一つをつなぎ合わせて行くと、繋がらない点もあるが確信した。
ユリナは母では無い。
「お母さん……
いえ……
ユリナさんは誰なの?」
パリィがユリナに聞き始める。
サクヤは状況が解らず焦りながらも見守る。
「私はユリナさんを
守らないといけない気がしていたの
それは今でも変わらないけど
お願いだから教えて……」
パリィは涙を溜めているが流さないでいた、今まで秘密にされていたその苦しみが湧き出していた。
「わ、私は……」
ユリナが言い出せないでいたのを見て、オプスが優しく言う。
「パリィさん
もっと夢を思い出して見なさい……
大切な気持ちを知りますよ」
オプスが優しく言うとパリィは瞳をつぶり思い出そうと、必死に記憶の糸をたぐる。
そしてパリィはあの闇の中、まだエルフであったユリナの手を引いて走っていた、獣に襲われ、剣で戦いユリナの声を聞いた。
(お姉ちゃん……ありがとう……)
そして思い出した……。
その言葉を……夢では無い夢の中でユリナが言った言葉をはっきりと思い出した。
「お姉ちゃんって言うことは……
私の……」
パリィが呟いた。
「今はそうでは無いかも知れません
でもユリナさんは
パリィさんの前世の妹なんです
ですからユリナさんは
パリィさんに思い出して欲しくて……
でもそれが正しいのか
とても深く悩んでいたのです」
オプスはユリナが時の女神だと言う事を伏せて、全ての記憶には触れずにそう説明してくれた。
その説明はパリィの中である程度納得いくものであった、そして静かにユリナに歩みより、静かに息を吸い瞳をつぶり瞳を見開き……。
思いっきりユリナを引っ叩いた。
ユリナは懐かしく熱く暖かい痛みをその頬に感じた。今までと同じカナに叱られる時の痛みだ。
「ユリナさん……
私は勘違いしてました
私はお母さんだから
お母さんだから
ユリナさんを……
守らないとって思ってました
でも私の妹だったんですね
サイン間違ったよね?
フロースデア・ユリナって
書いたよね?
なんでもっと早く
言ってくれなかったの?
なんでっ!
ユリナから言ってくれなかったの……」
「お姉ちゃん……」
パリィはなんて話して良いのか解らなかった、ユリナもそれは同じだったが、お姉ちゃんと、やっとやっと呼べた気がした。
「お願い教えて……
何にも解らないよ
私はなんて名前だったの?
なんで忘れちゃってるの?
なんで大切な事を忘れちゃってるの?」
パリィが妹を前にして何も解らず、前世を忘れてしまってる事を嘆き、涙を流し始めている。
パリィはユリナが妹である事を疑わなかった、ユリナはそっとパリィを抱きしめて言った。
「フロースデア・カナ……
それがお姉ちゃんの昔の名前だよ
私が泣いて何も出来なくなったらいつも
今みたいに叩いてくれたの
全部忘れちゃってるのは私が悪いの……
本当にごめんね……」
パリィは少しでも落ち着こうとしながら話していた。
「カナって言うんだ
ありがとう……
ユリナさんが悪いって言うのは
ここに関係があるの?
あの石像はユリナさんだよね?」
ゆっくりと優しくパリィがユリナに聞く、ユリナは必死に受け入れようとしてくれるパリィを感じて辛くなっていた。
「お姉ちゃん……
ユリナでいいよ……
あの石像はわたし……
お姉ちゃんが助けてくれたから
今があるの……
本当にありがとうお姉ちゃん」
パリィはまだ解らなすぎる事が多すぎていたが、ユリナが辛そうにそして複雑な気持ちで話しているのも悟りはじめる。
「みんな……ごめんね
少しオプス様と二人にしてくれないかな
本当にごめんなさい」
パリィはユリナから全てを聞きたいが、まだ無理な気がした、ユリナから言えないのかも知れないそう思い、闇の女神オプスに聞く事にした。
それはパリィも知らない、いやシュンパティア大陸全体を見ても知る者は皆無である存在であり、パリィもオプスと言う神をもっと知りたかった事も重なりそう願ったのだ。
ユリナもパリィの言う通りにしてあげたいと思いその場を離れる、その神殿から出て、外の空気を吸いたくなりユリナは王宮の外に向かう、地下から地上に向かっている階段の途中で何かを感じ走り出した。
サクヤはそれが解らなかったがユリナについていく、地下から抜けて王宮を走り抜けようとした瞬間、僅かに時が止まったがユリナは関係なく走り抜ける。
「オディウム!何故セディナに!」
ユリナは先程までの感情を心の奥深くにしまい、瞳を鋭くし王宮から飛び出して街を一望する。
五芒星の街道の一部で砂埃が舞い、凄まじい戦いが起きているのが解った。
オディウムとムエルテが戦っているのだ。
「なぜここに来た!
貴様のベルスは妾の放った神罰により
貴様は離れられぬはず!」
ムエルテが叫びながら大鎌を使い、オディウムの大剣と激しい攻防を繰り広げている。
「離れられない?
ムエルテ何か勘違いしてないか?
何故ベルスをこの俺が
守らなければならない?
守るよりも敵を焼き払う方が
手っ取り早いじゃねぇか」
オディウムが嘲笑うように言った。
「…………」
ムエルテが己のミスに気付いた、オディウムが人を守る訳がない、それは知っていたはずだった、冥界にオディウムがいた時からその性格を解っていたはずだった。
ムエルテから静かに怒りが溢れ出していた、ベルスであろうと民に罪は無い、今ムエルテの放った疫病で兵は疲弊している。
もしこれを機に、無理してでもベルスを倒そうとする国家が現れればベルスは崩壊する。
世界はそれを望んでいる……。
だがそうなれば民はどうなる?ムエルテが守り抜いた命である事は変わりない、滅びた国の民がどうなるかなどは考えなくても解る。
オディウムがベルスを離れれば、災いを振り撒き憎しみで世界を溢れさせようとするオディウムでも神は神だ、神の守護無しにベルスの崩壊は目に見えている。
「クッ……」
すぐにムエルテは手のひらの闇の星から、カイナをベルスに向かわせた。
(すまぬカイナよっ
いまは妾よりオプスの言葉に従いたい
だろうが頼まれてくれっ‼︎)
ムエルテは心でカイナに叫んでいた。
他ならぬ罪なき民を守る為に、オディウムと戦いながら叫んでいた。
ベルスは倒さなくてはならないが、戦が起きれば罪の無い民がどうなるか解らない。
オディウムを誘き出す事は考えていたが、まだ何も策を考えて居なかったムエルテにとってこの状況は、罪の無いベルスの民を人質に取られたに近い状況になってしまった。
思慮深いムエルテが大きなミスを犯してしまっていた事に気付いたが、神のあるまじき行動を取るオディウムに許せなくなっていた。
ムエルテの心の奥底から、神であるムエルテですら抑えきれない感情が噴き出し我を忘れていく事にすら気付かなかった、そしてムエルテはオディウムに対して氷の様に冷たく、慈悲なき殺気を放ち姿を消した。
「はっ
ムエルテ無駄だ貴様が姿を消しても……」
オディウムは焦った、既にムエルテの刃はオディウムの首に届き、僅かな血が流れている。
刹那と言える程の一瞬、時を止めるのが遅かったらオディウムの首は飛ばされていた。
オディウムが躱し時が動き、ムエルテに斬りかかろうとした時に、ムエルテはオディウムの斬撃を躱し冷たい瞳のまま、骨の剣でオディウムの腕を斬りつける。
「グッ……狂神か……」
オディウムは痛みに耐え、大剣を振り抜きムエルテの胴を斬り裂いた。
僅かにムエルテは躱したが深く斬り裂かれている、だがムエルテは表情を変えずに立っている、それを見たオディウムは即座に時を止めて去ろうとしたが、凄まじい勢いで何かがオディウムに斬りかかった。
「ユリナかっ!
こんな時に来やがってっ‼︎‼︎」
オディウムはこの場から逃げようとしていた、それはオディウムに恐怖を与えた存在が目覚めようとしていた。
「逃がさない!オディウム‼︎」
ユリナが斬りかかりオディウムは大剣で見事に防ぎ、二人は三度程剣を交えた時、時が動き始め、オディウムがニヤッと笑った。
「?」
ユリナはオディウムの不敵な笑みを理解出来なかった。
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