【完結】魔法学園のぼっち令嬢は、主人公王子に攻略されています?

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04 ルシアン殿下との狩り

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 生徒手帳を重ねるとパーティーを組むことができるシステムのため、殿下と私はパーティーを組み、モンスターを探して森の奥へと歩き出しました。

「あのう……、ルシアン殿下。どうして手を繋がなければならないのでしょうか?」
「この辺りのモンスターは、見つけてから剣を構えても十分に間に合うし、ミシェルはよくつまずくようだから心配で」
「…………」

 苦笑気味に微笑む殿下には、返す言葉がありません。
 私は確かによくつまずくので、幼い頃はつまずくたびにセルジュ様に大笑いされたものです。
 そしてそのまま土に埋められそうになった経験は、数知れず……。
 嫌なことを思い出してしまいました。

「ダークマウスだ。ミシェル少し離れていて」
「はいっ」

 殿下は私の手を離すと、腰に帯びている剣をつかみました。
 剣は引き抜いたと同時に、炎に包まれます。
 噂には聞いていましたが、殿下は無詠唱で炎を出すことができるようです。

 一連の動作があまりにも優雅で、思わず見惚れてしまいましたが、私はハッと我に返り杖を構えました。

 どんなに弱いモンスターが相手でも、パーティーメンバーには補助魔法をかけなければなりません。
 それが学園でのルールなのですが、今にして思えばそれがゲームのバトルシステムだからでしょう。

「ミシェルの愛を受け止めて!」

 補助魔法を詠唱すると、殿下の身体は一瞬だけ淡く光りました。
 この補助魔法は、各種ステータス値を上げる便利魔法スキルですが、魔法をかけられた殿下は妙に嬉しそうに微笑みました。

「もちろんだよ」

 そして、私は気がついたのです。

 私の魔法スキルが、こんなに恥ずかしいものだったなんて。
 前世の記憶が戻り今の今まで、気にも留めていなかった自分はどうかしています。
 ゲームでは『CV.人気声優』でこれが詠唱されていて、男性プレイヤーに人気の要素だったようですが、これでは主人公へアピールしているようなものではありませんか。

「あの、今のはただの詠唱で……」

 一応、言い訳をしてみましたが、殿下は私の発言を華麗にスルーして、ダークマウスに切りかかりました。

 見事にスパッと真っ二つに割れたダークマウスは、砂粒のように消え去り。
 後に残ったは、マウスの皮と共に『ミシェルの欠片』が。

 キラキラ光るそれがどうして私の欠片だとわかるかというと、しっかりと私の顔・・・があったからです。
 むしろ、手のひらサイズの私の顔がドロップされたと言うべきでしょうか。
 この上なく不気味です。

 そんな異様なものがドロップされたにも関わらず、殿下はそれが目に入っていない様子でマウスの皮だけを拾い上げ、私に渡してくれました。

「どうかしたの? ミシェル」
「いえ……、ありがとうございます」

 オンラインゲームでは、『特定の人にしか見えないアイテム』というものが存在しますが、もしかしてそのたぐいなのでしょうか。

 試しに、自分の欠片を拾ってみました。
 手のひらサイズとはいえ、光る自分の生首はあまり触りたくありませんが、ありがたいことに皮膚っぽい感触はありません。どちらかといえば、お人形のような触りごこちでしょうか。

 それを殿下の前で振り回してみると、殿下は拳を口元に当ててくすりと笑いました。

「可愛い動きだね。急にどうしたの、ミシェル」
「少し準備体操をと思いまして」

 どうやら本当に、殿下にはこの欠片が見えていないようです。
 私にだけ見えるのは、私が転生者だからなのでしょうか。

「ミシェルと狩りをするのは楽しいよ。嬉しい補助魔法もかけてもらえるし」
「詠唱に深い意味はありませんが……」
「できることなら、その補助魔法は俺だけのために使ってほしいな」
「授業があるので難しいと思います」
「ミシェルと一緒に授業を受けるには、俺が下位クラスに入るのとミシェルが上位クラスに入るの、どちらが良いと思う?」
「殿下が下位クラスにだなんて、困ります」
「それなら答えはひとつだね。これから毎日、レベル上げを一緒にがんばろうか」

 にこりと微笑んだ殿下は、私の手を取って再び森の奥へと歩き出しました。

 誘導尋問的に、とんでもないことが決まってしまったような気がするのですが。今のは冗談ですよね?
 私が上位クラスを目指すなんて途方もない作業ですよ。


 この学園のクラス分けは、レアリティ別になっていることからも解るとおり、ほぼ基礎能力値で決まっているようです。
 けれど私のように、その枠から外れている人も何人かいます。
 その人たちの共通点としては、座学か実技の成績が極端に平均から外れているということでしょうか。

 私は座学の成績は良いほう。なので上位クラスを目指すには、実技の指標であるレベルを上位クラスの平均値までに上げる必要があると思います。
 あるいは私がSSRだということを踏まえると、基礎能力値でURに劣るので平均以上のレベルが必要になるかもしれませんが。

 どちらにせよ、皆が何年もかけて積み上げてきたレベルに追いつくなんて、到底不可能だと思います。
 さすがに殿下は冗談を言ったのでしょう。

 と、思ったのですが……。

 
 翌日の放課後。図書委員の活動中に殿下の本を選び、彼とはお別れしたはずなのに、活動を終えて玄関に向かってみれば殿下が待ち構えてるではありませんか。

「日が暮れるまであまり時間はないけれど、少しでもレベルを上げておこうか」

 冗談ではなかったことに驚きつつも、上位クラスへ編入なんて現実的ではない提案にお付き合いする義理もありません。

「それはありがたいご提案ですが、馬車を待たせておりますので」
「ミシェルの馬車には、屋敷に帰るよう伝えておいたよ。帰りは俺が送るから心配しないで」
「…………」

 さすがは殿下。ターゲットの退路はすでに断っていたようです。

 残念ながら私は、おとなしくレベル上げをするしかないようで。殿下との接点を増やしたくないと思っているのに、どうも上手くいきません。

 せめて欠片を集めて、エピソードの開放だけは阻止したいですが、殿下が見えていない欠片を集めても意味がないのではとも思ってしまいます。
 とりあえず狩りはするので欠片は集めますが、他に確実なハーレム回避方法がないか考える必要がありそうです。

「それじゃ、行こうか」

 爽やかに微笑んだ殿下は、当然のように私の手を握りました。



 殿下が張り切って狩りをしてくれているおかげで、私のレベルは順調に上がっており。
 素材もたくさんいただき欠片も増えて、私だけが得をしているような気分です。

 殿下の得になることはひとつもないのに、そこまでして私の魔法スキルを独占したい理由が不明です。
 別に私でなくても、殿下のクラスにはUR美少女が大勢いるというのに。
 魔法スキルも、URキャラのほうがよほど性能は良いのですが。

 ただ、今狩っているモンスターの素材は次の授業で使うので、とても助かります。
 お礼を言うと、どうやら殿下も次の授業で同じ素材を使うようで。

「素材加工の授業は内容が同じなのですね」
「そうみたいだね。いつも素材集めはどうしているの? この辺りは下位クラスだと少しきついだろう?」
「クラスでパーティーを組むこともありますが、私は中位クラスから買い取る場合が多いです」

 私はこのとおり足手まといでしかないので、あまりパーティーに呼ばれることもなく。ほとんど買取で済ませています。
 
 中位クラスの方が売ってくれる素材はぼったくり価格ではありますが、それがなければ授業を受けられませんので助かっています。

「それなら授業で使う素材は、レベル上げついでに一緒に集めることにしようか」
「……助かります」

 また接点が増えてしまいますが、どのみち上位クラスに編入するまで開放してもらえなさそうです。それに素材集めは正直いうと、本当に助かります。

 なんだかんだで殿下には助けてもらってばかりで、素直に感謝したいのにハーレムがそれを邪魔します。



 日が暮れるまで狩りをした後、殿下は約束通りに私を馬車で送ってくれました。
 屋敷に到着し、今日のお礼を言って降りようとしましたが、殿下は私の手を握ってそれを遮ります。

「ミシェル……、本当に嫌な場合ははっきりと断って良いからね」

 何の脈絡もなくそう言った殿下は、辛そうなお顔をしています。
 彼自身、強引に事を進めている自覚はあったのかもしれません。

 私は本当に殿下のハーレムには入りたくないので、できることなら関わりたくないと思っています。
 けれどここ数日間に殿下と接してわかったのは、彼は優しくて頼りになり、笑顔の絶えない素敵な男性ということ。

 それに対して私ときたら、常に無表情。

 いくらハーレムが嫌だからといって、彼をこんな顔にさせてしまうのは違うのではないでしょうか。

「今日の狩りは、とても楽しかったです。おやすみなさい、ルシアン殿下」

 機敏に動くことが苦手な私は、補助役としてもパーティーではお荷物で。狩りを楽しいと思ったことは、今まで一度もありませんでした。
 けれど私が補助魔法をかけやすいように殿下が気を遣ってくれたおかげで、殿下との狩りは本当に楽しく思えたのです。

 感謝の意味を込めて初めて殿下に微笑んで見せると、彼はぽかんとした表情で握っていた私の手を離しました。

 ここで黙られても、困ります。

 慣れないことをして急に恥ずかしくなった私は、逃げるように馬車を降りたのでした。
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