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ムーランティス外伝
42話 ムーランティス封印
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沢山の人が死んだ。
信者同士の抗争で夥しい血が流された。
戦闘は主に教区本部と周辺の出家信者の里の間で行われたので、
部外者への被害は極稀であった。
そのため各国は積極的な介入はせず、成り行きを見守っていた。
ルルベロは無効化したが、それ以外の精霊は従来通りだ。
システムはどちらの味方にもならない。
ルルベロの無効化は業務連絡を怠った事に関して、
調整が必要と判断されたからだ。
***
“永遠の伊予ちゃん”計画に賛同した真司は大志側に付いた。
幸いにも光一は伊予に味方して呉れた。
「大志の奴、国を動かす積りらしい」
「そんな!戦争になっちゃうよ!」
どんな取引を持ち掛けたのかは分からないが、
北の王国デーデルンから軍隊が派遣されるとの情報が齎された。
故郷であるドーモン王国からの支援を伊予は断って来たが、
他国の軍が動けばドーモンは黙っては居ない。
大志と真司の勢力にデーデルン軍が加われば勝ち目が無い。
かと言ってドーモンに助けを求めれば大規模な戦争に発展する。
負ければ忌まわしい実験が再開されてしまう。
たとえ勝利しても大志と真司は処刑されるだろう。
それだけは回避したいが、主導権は国が持っている。
不穏分子を生かして置くはずが無い。
伊予は追い詰められてしまった。
「どうしよう・・・」
気持ちが焦るばかりで考えが纏まらない。
「伊予ちゃん、此処を捨てよう」
「捨てる?」
光一が思い詰めた顔で言った。
良く意味が分からない。
「あぁ、この大陸を出て行こう。もしもの事を考えて船を用意して有るんだ」
「大陸を出る・・・」
言われてみれば大陸がひとつとは限らない。
むしろ複数の大陸が在って当たり前だろう。
その事にまったく考えが及ばなかった。
視野と言うものは、なかなか外に向かないものである。
光一の一番弟子ゲラスが、東の港町パシパで段取りを付けている。
出て何所へ行くと言うのか?
「海へ出て東へ行けば、別の大陸が在るってミサが言ってるんだよ」
ファ・ジンムーラ・デアル大陸の事である。
「本当なの?サリーちゃん!」
「えぇ本当ですよ」
「行けるの?」
「私がサポートしますから大丈夫ですよ」
「その船って、どれくらいの人が乗れるの?」
「大型船だけど200人が限度だ、2隻だから400人」
少ない・・・
側近の高弟達だけで満杯だ。
「しょうがないよ、もう余裕は無いんだ。決断してよ、伊予ちゃん」
迷っている場合では無い。
「分かったよ、行こう!新大陸へ!」
「10日以内に人選と準備を整えよう。伊予ちゃんのグループから先に出発してね」
「光一君はどうするの?」
「俺は殿を受け持って後から行くよ」
こうして大陸脱出作戦は開始された。
信者達は伊予の脱出に理解を示した。
我らが大導師様を守れ!新大陸に精霊の声を届けるんだ!
「僕達が出航したら、直ぐに降参してね。生き延びる事を考えるんだよ」
そう言い残して伊予達は出発した。
パシパの港に着いたのは40日後。
追撃を受けながらの苦しい道のりであった。
「さぁ!早く乗船して下さい!」
ゲラスが準備万端整えていた。
優秀である。
5日遅れて光一達のグループも到着した。
追手が攻めて来るまでには半日程の猶予しか無い。
今直ぐにでも出航しなければ成らない。
「沖に出たら、この大陸を封印します。彼らが追って来る事は有りませんが、
二度と此処に戻る事も出来なくなります」
サリーちゃんの管理者権限はこの為に有る。
今生の故郷との決別に伊予は万感の思いで振り返る。
そしてちびっこ伊予ちゃん達を見る。
やがて水平線を見つめて言った。
「行こう!冒険の始まりだ!」
ムーランテス外伝 完
信者同士の抗争で夥しい血が流された。
戦闘は主に教区本部と周辺の出家信者の里の間で行われたので、
部外者への被害は極稀であった。
そのため各国は積極的な介入はせず、成り行きを見守っていた。
ルルベロは無効化したが、それ以外の精霊は従来通りだ。
システムはどちらの味方にもならない。
ルルベロの無効化は業務連絡を怠った事に関して、
調整が必要と判断されたからだ。
***
“永遠の伊予ちゃん”計画に賛同した真司は大志側に付いた。
幸いにも光一は伊予に味方して呉れた。
「大志の奴、国を動かす積りらしい」
「そんな!戦争になっちゃうよ!」
どんな取引を持ち掛けたのかは分からないが、
北の王国デーデルンから軍隊が派遣されるとの情報が齎された。
故郷であるドーモン王国からの支援を伊予は断って来たが、
他国の軍が動けばドーモンは黙っては居ない。
大志と真司の勢力にデーデルン軍が加われば勝ち目が無い。
かと言ってドーモンに助けを求めれば大規模な戦争に発展する。
負ければ忌まわしい実験が再開されてしまう。
たとえ勝利しても大志と真司は処刑されるだろう。
それだけは回避したいが、主導権は国が持っている。
不穏分子を生かして置くはずが無い。
伊予は追い詰められてしまった。
「どうしよう・・・」
気持ちが焦るばかりで考えが纏まらない。
「伊予ちゃん、此処を捨てよう」
「捨てる?」
光一が思い詰めた顔で言った。
良く意味が分からない。
「あぁ、この大陸を出て行こう。もしもの事を考えて船を用意して有るんだ」
「大陸を出る・・・」
言われてみれば大陸がひとつとは限らない。
むしろ複数の大陸が在って当たり前だろう。
その事にまったく考えが及ばなかった。
視野と言うものは、なかなか外に向かないものである。
光一の一番弟子ゲラスが、東の港町パシパで段取りを付けている。
出て何所へ行くと言うのか?
「海へ出て東へ行けば、別の大陸が在るってミサが言ってるんだよ」
ファ・ジンムーラ・デアル大陸の事である。
「本当なの?サリーちゃん!」
「えぇ本当ですよ」
「行けるの?」
「私がサポートしますから大丈夫ですよ」
「その船って、どれくらいの人が乗れるの?」
「大型船だけど200人が限度だ、2隻だから400人」
少ない・・・
側近の高弟達だけで満杯だ。
「しょうがないよ、もう余裕は無いんだ。決断してよ、伊予ちゃん」
迷っている場合では無い。
「分かったよ、行こう!新大陸へ!」
「10日以内に人選と準備を整えよう。伊予ちゃんのグループから先に出発してね」
「光一君はどうするの?」
「俺は殿を受け持って後から行くよ」
こうして大陸脱出作戦は開始された。
信者達は伊予の脱出に理解を示した。
我らが大導師様を守れ!新大陸に精霊の声を届けるんだ!
「僕達が出航したら、直ぐに降参してね。生き延びる事を考えるんだよ」
そう言い残して伊予達は出発した。
パシパの港に着いたのは40日後。
追撃を受けながらの苦しい道のりであった。
「さぁ!早く乗船して下さい!」
ゲラスが準備万端整えていた。
優秀である。
5日遅れて光一達のグループも到着した。
追手が攻めて来るまでには半日程の猶予しか無い。
今直ぐにでも出航しなければ成らない。
「沖に出たら、この大陸を封印します。彼らが追って来る事は有りませんが、
二度と此処に戻る事も出来なくなります」
サリーちゃんの管理者権限はこの為に有る。
今生の故郷との決別に伊予は万感の思いで振り返る。
そしてちびっこ伊予ちゃん達を見る。
やがて水平線を見つめて言った。
「行こう!冒険の始まりだ!」
ムーランテス外伝 完
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