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第五部 第一章 若草物語
71話 免許皆伝
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精霊院療養所の一室でアーノルドは、四柱の特級精霊に囲まれていた。
ミサ、ミコ、魔子の正会員と、最近ようやく見習いで入会を認められたハニーだ。
会の活動中は庶民形態のフラワーハニーでいる事を義務付けられている。
「もうすぐアーミアが来るから、打合せの通りにするのよ。いいわね?」
「あい分かった」
「くれぐれも、さっきみたいな事を言ったら駄目よ」
「あれは引くわぁ~」
平凡の友の「愛の聖女に恋人誕生!」と題した独占スクープの取材で来たのだ。
「アーミアの何所を好きになったの?」
と聞いたら
「あの氷の様な目で見つめられたい」
とか・・・
「あの天使の声で罵られたい」
とか・・・
「麗しい指先で魔法を叩きつけて欲しい」
とか・・・
12歳とは思えない香ばしい発言が個室の空気を振動させた。
「ちょっとぉ、こいつヤバいよ」
「目覚めちゃってるよぉ」
「どうする?中止する?」
最近はネタ不足でマンネリ化に悩んでいた。
こうなったら脱ぐしか無いのか?
と思案していた所に飛び込んで来た話題である。
ボツにするには惜しい!
初デート企画!とか、接吻の決定的瞬間!とかシリーズ化する予定だった。
「えぇ~大丈夫だよぉ~カルアンみたいなもんだしぃ~」
「そ、そうよね!」
「逆にお似合いだわ!」
「まともな人間に聖女の相手は無理よ!」
お気楽ハニーの言葉に背中を圧されて、売り上げの誘惑に負けた・・・
「あっ!来たみたい!」
「じゃぁ皆んな配置に着いて!」
「チラロイドはオッケーよ!照明さん!影の映り込みに注意してね!」
「はぁ~~~い!」
ハニーよ・・・
君は序列第二位の先輩なのだよ・・・
***
保護者同伴で来た。
と言っても双子とアルサラーラだけれども。
「大丈夫よ!私達が付いているから!」
「から!」
「いきなり砲撃しては駄目ですわよ!」
「う、うにゃらご」
ガチガチに緊張している。
恋愛免疫ゼロである。
侍女が来訪を告げると、取次の侍従が応答し中へと案内をする。
さぁ!ご対~面~
「はぁ~い、アーミア~笑って~こっちに視線お願いしまぁ~す!
はい!オッケーでぇ~す!」
「貴方達は何をしているの?」
アルサラーラは呆れてしまった。
「あぁ~私達の事はお構いなくぅ~」
「単なる取材ですからぁ~」
「はい、続けて続けて~」
「はぁ~仕様の無い子たちですわね。まぁ良いですわ、話を済ませましょう」
「ちょっと貴方!あれは本気ですの?」
「ですの?」
グッと前に出た双子がアーノルドに詰め寄る。
「もちろんだ!姫に誠を捧げよう!」
言葉は格好良いけれど目がいっちゃってる~
「だそうよ、どうするの?アーミア」
「どうするの?」
「ふにゃらもごにょ・・・」
それは知らない方が・・・
「何故に私か?と言っていますわよ」
通訳はアルサラーラが務める。
「あぁ!何もかも愛おしいのだ!その目も!その声も!狂った頭---」
「はぁ~い!アー君~ん!目線こっちへちょうだぁ~~~い!」
「ごにょろ?」
頭って言ったよ、狂った頭って。
「いやぁ~愛されてるねぇ~一途だよぉ~アー君はぁ~
良かったねぇアーミア~」
「どうやら本気らしいわね」
「ね」
「お姉様はどうですの?」
「え、えぐも・・・にょれ・・・」
「姫!どうか私の愛を受け入れて欲しい。その目に我を映し給え。
その口で我の名を呼び給え。その手で我に触れ給え。
我は汝の僕となりて、その足元に膝まづかん」
一体なにを教えているんだよぉ!
「うわっ!キモっ!」
思わず言ってしまったねサラーラ。
確かにキモいけど~
「もごごうにゃふにゅごにょりごにょごにょ」
意外とツンデレ~~~
***
オバルト王国の史書には、およそ千五百年前に地方豪族の首領であった
黎明王ウイルアスが、周辺諸国をまとめ上げ建国したと記されている。
その時の腹心の部下だった四人の将軍達が、今の選帝侯の先祖だ。
ナーバル選帝侯
ウェルベム選帝侯
サースー選帝侯
ポインテス選帝侯
この四家で元老院の常任理事を担っている。
そこへ王の兄弟が臣籍降下して大公となり、議員として加わる。
現在ではターラム大公、ウイルヘイズ大公。
そしてフリーデルのキーレント大公だ。
大公家は他にもあるが直近三代の王の兄弟が任命される。
王家自体の権力はさほど強く無い。
直轄の軍も四選帝侯の軍より規模は小さい。
単体ではダモンにも勝てないだろう。
だから婚姻による信頼関係の醸成に努めて来た。
実はこの弱い王家こそ千五百年に渡り王国が存続出来た要因なのだ。
王家を軸として強力な家臣団が支える。
権力を分散し、その支点となる事で政治的に安定した国家と成った。
王太子ナコルキンは決して馬鹿では無い。
しかし優等生に過ぎるのだ。
融通が利かない。
「なんだっ!あの態度はっ!無礼者がぁ!」
「如何なされたので御座いますか?殿下」
大法院から帰ったナコルキンは荒れた。
王太子妃ビリジアンヌが心配そうに尋ねる。
「あぁ、アンヌ・・・済まぬ。つい大声を出してしまったな」
レイサン家は元老院直参の家門だ。
つまりは陪臣である。
分かり易く言えば子会社の社員。
その妻が本社の次期社長に向かって上から目線で物を申してお咎めなし。
それどころか社長がご機嫌取りをしているのだ。
「このままでは示しが付かぬ。王家の威光を蔑ろにされては、
やがて国の乱れとなろう」
確かにそれは正論かも知れない。
しかし・・・とビリジアンヌは窓の外に視線を流す。
王宮の至る所に植栽されている柳の木。
王家の紋章にも描かれている。
その枝に一匹の猫が寝そべっている。
”オバルト”は古代ジンムーラ語で”柳の木”を意味する言葉が語源である。
黎明王はそれを国名に選んだ。
風に吹かれてサラサラと揺れながら、しなやかに身を躱す柳の枝のようであれと。
ナコルキンは生真面目な人物だ。
夫としては何の不満も無い。
しかし次代の王としては、些か視野が狭い。
ビリジアンヌは精霊院でエルサーシアの後輩として間近にその為人を見て来た。
(嵐の様な人だ・・・正面から立ち向かってはいけない)
しかしそれを口にする事は無かった。
***
「な、な、何と申した!」
ターラム大公家当主ルイスールはあわや腰を抜かしそうになった。
「サラアーミア殿に求婚を致しました」
あぁ~なんと晴れやかな顔で・・・
とんでもない事を言いやがった!
「気は確かなのか!い、医者を!医者を呼べ!」
きっと打ち所が悪かったに違いない。
怪我は治ったが気が触れてしまったらしい。
そうルイスールは思った。
まぁ、あながち間違ってはいないけどぉ、
元々かも知れないしぃ~
目覚めちゃったものは仕方が無いよねっ!
「お待ち下さい!私は正気です!」
だったら余計に怖いよぉ~ん。
だって治らないもぉ~ん。
「何をしたのか分かっているのか!」
理解不能のとんでも一家の娘を嫁に?
そんな事になったら我が大公家は・・・
おや?
ちょっと待てよ?
何か不都合でも有るか?
個人的な性格は、この際は置いといて、聖女がターラム家の一員に成るのだ。
わが家門が聖女の血統になるやも知れぬ。
「して聖女殿の返答は?」
「本人からは色よい返事を頂戴しております!」
「でかした!アーノルドよ、さすがは我が孫である!」
「ではお許し頂けるのですね!」
「もちろんである。早々に婚姻の申し入れを行うとしよう」
本来の手順を飛ばして求婚したのは不手際であったが、それは謝罪で済む。
事前に知っていたら許可など絶対にしなかっただろう。
今回の拙速な行動は、むしろ僥倖であった。
(内側に取り込んでしまえば、もうこちらのものだ。
頭の固い殿下を説得するのは難儀だが、まぁ、これでターラム家は安泰だ)
うわぁ~腹黒~い。
***
大広間にずらりと特級精霊が並ぶ。
久々の勢ぞろいだ。
その中心にはエルサーシアが何時になく真剣な表情で席に付いている。
その目には厳しさの中にも隠し切れない慈愛の光が揺蕩う。
相対しているのはリコアリーゼ。
レイサン家の長女である。
こちらもまた真剣勝負に挑む闘士の面持ちで構えている。
「これより”精霊の歌い手”認定試験を始めます」
ルルナが開始を告げる。
「課題曲は、はしだのりひことクライマックスの”花嫁”です」
「今日まで学んで来たことの集大成よ。貴方なら出来ると信じているわ」
「はい!お母様!」
この日の為に用意した衣装は、真っ赤なカーネーションをイメージした、
フリフリのミニだ!
もちろん!ハイソの絶対領域!!
大きく息を吸い込み、目を閉じる。
ふぅ~っと静かに吐き出して、キッ!と前を見据える。
さぁ!歌うのだ!アリーゼ!
チャッチャ~♪
チャラチャラ♪
チャチャッチャ~ララ~♪
チャ~~~♪
チャラ~ラ~~~♪
鼻~くそは~~~♪
指で~丸めて~~~♪
前歯~にぃ♪
つけ~るぅの~~~♪
チャンチャン♪
チャカチャンチャンッ♪
あ~の~人の~~~♪
視線を~受~けて~~~♪
ニヤリ~と~♪
笑~う~の~~~♪
パァ~ン♪パパァ~ン♪
パパァ~~~ン♪
命っち♪か~けて~~~♪
萌~え~~~た~~~♪
癖っ♪が報~くわ~れ~る~~~♪
止~め~れない~~~♪
ドン引き~~~♪
されても~~~♪
むしろ~~~♪
ごほ~う~び~~~♪
パァ~ン♪パパァ~ン♪
パパァ~~~ン♪
萌え尽きたぜ・・・
真っ白な灰にな・・・
ポッ!ポッ!と綿精霊が現れてリコアリーゼを囲む。
祝福しているのだ。
早速に審査が始まった。
特級精霊たちが意見を戦わせている。
全てを出し尽くしたリコアリーゼは、
満たされた気持ちで真っ直ぐ母を見た。
エルサーシアも瞬きもせず娘を見つめる。
「審査結果を発表します!」
大広間に緊張が走る!
振動を止めた空気に鼓膜が痛い・・・
「リコアリーゼを”精霊の歌い手”と認めます」
「おめでとうアリーゼ」
「あぁ!お母様!私・・・私・・・」
娘に駆け寄り胸に抱きしめる母。
目に涙を浮かべながら寄り添う、母より胸の大きな娘。
ちょっとイラッとする母・・・
「お姉様!おめでとう!」
「素敵な精霊歌でしたわ!お姉様!」
サラアーミアとアルサラーラも我が事の様に喜び泣いている。
エルサーシアの精霊歌。
その真髄は今ここに娘へと受け継がれた。
免許皆伝~~~ん!
ミサ、ミコ、魔子の正会員と、最近ようやく見習いで入会を認められたハニーだ。
会の活動中は庶民形態のフラワーハニーでいる事を義務付けられている。
「もうすぐアーミアが来るから、打合せの通りにするのよ。いいわね?」
「あい分かった」
「くれぐれも、さっきみたいな事を言ったら駄目よ」
「あれは引くわぁ~」
平凡の友の「愛の聖女に恋人誕生!」と題した独占スクープの取材で来たのだ。
「アーミアの何所を好きになったの?」
と聞いたら
「あの氷の様な目で見つめられたい」
とか・・・
「あの天使の声で罵られたい」
とか・・・
「麗しい指先で魔法を叩きつけて欲しい」
とか・・・
12歳とは思えない香ばしい発言が個室の空気を振動させた。
「ちょっとぉ、こいつヤバいよ」
「目覚めちゃってるよぉ」
「どうする?中止する?」
最近はネタ不足でマンネリ化に悩んでいた。
こうなったら脱ぐしか無いのか?
と思案していた所に飛び込んで来た話題である。
ボツにするには惜しい!
初デート企画!とか、接吻の決定的瞬間!とかシリーズ化する予定だった。
「えぇ~大丈夫だよぉ~カルアンみたいなもんだしぃ~」
「そ、そうよね!」
「逆にお似合いだわ!」
「まともな人間に聖女の相手は無理よ!」
お気楽ハニーの言葉に背中を圧されて、売り上げの誘惑に負けた・・・
「あっ!来たみたい!」
「じゃぁ皆んな配置に着いて!」
「チラロイドはオッケーよ!照明さん!影の映り込みに注意してね!」
「はぁ~~~い!」
ハニーよ・・・
君は序列第二位の先輩なのだよ・・・
***
保護者同伴で来た。
と言っても双子とアルサラーラだけれども。
「大丈夫よ!私達が付いているから!」
「から!」
「いきなり砲撃しては駄目ですわよ!」
「う、うにゃらご」
ガチガチに緊張している。
恋愛免疫ゼロである。
侍女が来訪を告げると、取次の侍従が応答し中へと案内をする。
さぁ!ご対~面~
「はぁ~い、アーミア~笑って~こっちに視線お願いしまぁ~す!
はい!オッケーでぇ~す!」
「貴方達は何をしているの?」
アルサラーラは呆れてしまった。
「あぁ~私達の事はお構いなくぅ~」
「単なる取材ですからぁ~」
「はい、続けて続けて~」
「はぁ~仕様の無い子たちですわね。まぁ良いですわ、話を済ませましょう」
「ちょっと貴方!あれは本気ですの?」
「ですの?」
グッと前に出た双子がアーノルドに詰め寄る。
「もちろんだ!姫に誠を捧げよう!」
言葉は格好良いけれど目がいっちゃってる~
「だそうよ、どうするの?アーミア」
「どうするの?」
「ふにゃらもごにょ・・・」
それは知らない方が・・・
「何故に私か?と言っていますわよ」
通訳はアルサラーラが務める。
「あぁ!何もかも愛おしいのだ!その目も!その声も!狂った頭---」
「はぁ~い!アー君~ん!目線こっちへちょうだぁ~~~い!」
「ごにょろ?」
頭って言ったよ、狂った頭って。
「いやぁ~愛されてるねぇ~一途だよぉ~アー君はぁ~
良かったねぇアーミア~」
「どうやら本気らしいわね」
「ね」
「お姉様はどうですの?」
「え、えぐも・・・にょれ・・・」
「姫!どうか私の愛を受け入れて欲しい。その目に我を映し給え。
その口で我の名を呼び給え。その手で我に触れ給え。
我は汝の僕となりて、その足元に膝まづかん」
一体なにを教えているんだよぉ!
「うわっ!キモっ!」
思わず言ってしまったねサラーラ。
確かにキモいけど~
「もごごうにゃふにゅごにょりごにょごにょ」
意外とツンデレ~~~
***
オバルト王国の史書には、およそ千五百年前に地方豪族の首領であった
黎明王ウイルアスが、周辺諸国をまとめ上げ建国したと記されている。
その時の腹心の部下だった四人の将軍達が、今の選帝侯の先祖だ。
ナーバル選帝侯
ウェルベム選帝侯
サースー選帝侯
ポインテス選帝侯
この四家で元老院の常任理事を担っている。
そこへ王の兄弟が臣籍降下して大公となり、議員として加わる。
現在ではターラム大公、ウイルヘイズ大公。
そしてフリーデルのキーレント大公だ。
大公家は他にもあるが直近三代の王の兄弟が任命される。
王家自体の権力はさほど強く無い。
直轄の軍も四選帝侯の軍より規模は小さい。
単体ではダモンにも勝てないだろう。
だから婚姻による信頼関係の醸成に努めて来た。
実はこの弱い王家こそ千五百年に渡り王国が存続出来た要因なのだ。
王家を軸として強力な家臣団が支える。
権力を分散し、その支点となる事で政治的に安定した国家と成った。
王太子ナコルキンは決して馬鹿では無い。
しかし優等生に過ぎるのだ。
融通が利かない。
「なんだっ!あの態度はっ!無礼者がぁ!」
「如何なされたので御座いますか?殿下」
大法院から帰ったナコルキンは荒れた。
王太子妃ビリジアンヌが心配そうに尋ねる。
「あぁ、アンヌ・・・済まぬ。つい大声を出してしまったな」
レイサン家は元老院直参の家門だ。
つまりは陪臣である。
分かり易く言えば子会社の社員。
その妻が本社の次期社長に向かって上から目線で物を申してお咎めなし。
それどころか社長がご機嫌取りをしているのだ。
「このままでは示しが付かぬ。王家の威光を蔑ろにされては、
やがて国の乱れとなろう」
確かにそれは正論かも知れない。
しかし・・・とビリジアンヌは窓の外に視線を流す。
王宮の至る所に植栽されている柳の木。
王家の紋章にも描かれている。
その枝に一匹の猫が寝そべっている。
”オバルト”は古代ジンムーラ語で”柳の木”を意味する言葉が語源である。
黎明王はそれを国名に選んだ。
風に吹かれてサラサラと揺れながら、しなやかに身を躱す柳の枝のようであれと。
ナコルキンは生真面目な人物だ。
夫としては何の不満も無い。
しかし次代の王としては、些か視野が狭い。
ビリジアンヌは精霊院でエルサーシアの後輩として間近にその為人を見て来た。
(嵐の様な人だ・・・正面から立ち向かってはいけない)
しかしそれを口にする事は無かった。
***
「な、な、何と申した!」
ターラム大公家当主ルイスールはあわや腰を抜かしそうになった。
「サラアーミア殿に求婚を致しました」
あぁ~なんと晴れやかな顔で・・・
とんでもない事を言いやがった!
「気は確かなのか!い、医者を!医者を呼べ!」
きっと打ち所が悪かったに違いない。
怪我は治ったが気が触れてしまったらしい。
そうルイスールは思った。
まぁ、あながち間違ってはいないけどぉ、
元々かも知れないしぃ~
目覚めちゃったものは仕方が無いよねっ!
「お待ち下さい!私は正気です!」
だったら余計に怖いよぉ~ん。
だって治らないもぉ~ん。
「何をしたのか分かっているのか!」
理解不能のとんでも一家の娘を嫁に?
そんな事になったら我が大公家は・・・
おや?
ちょっと待てよ?
何か不都合でも有るか?
個人的な性格は、この際は置いといて、聖女がターラム家の一員に成るのだ。
わが家門が聖女の血統になるやも知れぬ。
「して聖女殿の返答は?」
「本人からは色よい返事を頂戴しております!」
「でかした!アーノルドよ、さすがは我が孫である!」
「ではお許し頂けるのですね!」
「もちろんである。早々に婚姻の申し入れを行うとしよう」
本来の手順を飛ばして求婚したのは不手際であったが、それは謝罪で済む。
事前に知っていたら許可など絶対にしなかっただろう。
今回の拙速な行動は、むしろ僥倖であった。
(内側に取り込んでしまえば、もうこちらのものだ。
頭の固い殿下を説得するのは難儀だが、まぁ、これでターラム家は安泰だ)
うわぁ~腹黒~い。
***
大広間にずらりと特級精霊が並ぶ。
久々の勢ぞろいだ。
その中心にはエルサーシアが何時になく真剣な表情で席に付いている。
その目には厳しさの中にも隠し切れない慈愛の光が揺蕩う。
相対しているのはリコアリーゼ。
レイサン家の長女である。
こちらもまた真剣勝負に挑む闘士の面持ちで構えている。
「これより”精霊の歌い手”認定試験を始めます」
ルルナが開始を告げる。
「課題曲は、はしだのりひことクライマックスの”花嫁”です」
「今日まで学んで来たことの集大成よ。貴方なら出来ると信じているわ」
「はい!お母様!」
この日の為に用意した衣装は、真っ赤なカーネーションをイメージした、
フリフリのミニだ!
もちろん!ハイソの絶対領域!!
大きく息を吸い込み、目を閉じる。
ふぅ~っと静かに吐き出して、キッ!と前を見据える。
さぁ!歌うのだ!アリーゼ!
チャッチャ~♪
チャラチャラ♪
チャチャッチャ~ララ~♪
チャ~~~♪
チャラ~ラ~~~♪
鼻~くそは~~~♪
指で~丸めて~~~♪
前歯~にぃ♪
つけ~るぅの~~~♪
チャンチャン♪
チャカチャンチャンッ♪
あ~の~人の~~~♪
視線を~受~けて~~~♪
ニヤリ~と~♪
笑~う~の~~~♪
パァ~ン♪パパァ~ン♪
パパァ~~~ン♪
命っち♪か~けて~~~♪
萌~え~~~た~~~♪
癖っ♪が報~くわ~れ~る~~~♪
止~め~れない~~~♪
ドン引き~~~♪
されても~~~♪
むしろ~~~♪
ごほ~う~び~~~♪
パァ~ン♪パパァ~ン♪
パパァ~~~ン♪
萌え尽きたぜ・・・
真っ白な灰にな・・・
ポッ!ポッ!と綿精霊が現れてリコアリーゼを囲む。
祝福しているのだ。
早速に審査が始まった。
特級精霊たちが意見を戦わせている。
全てを出し尽くしたリコアリーゼは、
満たされた気持ちで真っ直ぐ母を見た。
エルサーシアも瞬きもせず娘を見つめる。
「審査結果を発表します!」
大広間に緊張が走る!
振動を止めた空気に鼓膜が痛い・・・
「リコアリーゼを”精霊の歌い手”と認めます」
「おめでとうアリーゼ」
「あぁ!お母様!私・・・私・・・」
娘に駆け寄り胸に抱きしめる母。
目に涙を浮かべながら寄り添う、母より胸の大きな娘。
ちょっとイラッとする母・・・
「お姉様!おめでとう!」
「素敵な精霊歌でしたわ!お姉様!」
サラアーミアとアルサラーラも我が事の様に喜び泣いている。
エルサーシアの精霊歌。
その真髄は今ここに娘へと受け継がれた。
免許皆伝~~~ん!
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